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ミステリの祭典

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幽霊の2/3
ベイジル・ウィリングシリーズ

作家 ヘレン・マクロイ
出版日1962年01月
平均点7.42点
書評数12人

No.12 6点 ミステリ初心者
(2020/08/16 17:21登録)
ネタバレをしています。

 登場人物がまあまあ多く、やや読むのに苦労しました(笑)。
 パーティでの毒殺があった後、探偵役ベイジルの調査によって被害者の正体が徐々に明らかになっていき、物語全体の謎が解けていくという流れです。ベイジルが出てきてからは物語が盛り上がっていき、読むスピードも上がっていきました。
 本全体の”何が起こっていたのか?”系の謎に関しては、面白い2時間ドラマや映画のような趣があり、楽しめました。

 一方で、毒殺トリックとしてはあまりに小粒で必要性を感じませんでした(笑)。私は面白い毒殺トリックをいうものをまだ見たことがなく、ただ殺害方法が毒殺だったという作品ばかりです。どうやって気づかれずに毒をいれたのか?や、どうやって特定の人物にだけ毒を飲ませられたのか?などを問う小説は、思い出しても3~4作品だけであり、しかもその小説のメイントリックではありませんでした。そのため、幽霊の2/3の帯に書かれた毒殺の文字に、勝手に心躍らせていました(笑)。
 私の勘違いもありましたが、フーダニットや毒殺トリックとしては弱いと思います。

No.11 8点 八二一
(2019/12/16 18:06登録)
エイモスの莫大な印税に群がる人々の欲と駆け引きや複雑な人間関係、秘密が徐々に露呈していく過程が緊密に描かれ、いくつもの人生が鮮やかに浮かび上がる。古さを全く感じさせない作品を読み終え、人間性は時代を経ても不変なのだと、あらためて感じた。

No.10 7点 ボナンザ
(2019/10/08 23:00登録)
ホワイダニットとしては大分上位の出来。流石ずっと復刊リクエストが絶えなかっただけある。

No.9 7点
(2018/04/04 13:57登録)
人気作家エイモスが、仲間内のパーティーの席上、「幽霊の2/3」というゲームの最中に毒殺される。
ベイジルが刑事さながらに捜査をする、といった典型的な推理小説ではない。
もちろんある程度の聞き込みはする。しかしどちらかといえば少ない関係者の行動や会話などから、読者が謎の世界にはまっていけるところが、この小説のうまいところです。

文庫裏の解説から、エイモスが殺害されることは読む前から知っていましたが、事件が起こるまでも、事件後、彼の過去がわかってきてからも、殺される理由がわかりませんでした。
真相がわかれば、なるほど!
こんなことを想像もしなかったとは、まだまだあまい!
タイトルは絶賛です。多くの作家さんにも見習ってほしい。

本格派ミステリーを期待すると裏切られ感があります。そこをどう評価するかは読み手次第でしょう。個人的には、中途半端なトリックなら、むしろない方がましなのではとも思います。
また女流作家らしい、柔らかいタッチは読みやすさに貢献していますが、全体的に視点が入り乱れているのには抵抗を感じます。これは外国小説の欠点なのでしょうか?
まあでも今作は、そんなところがうまく作用しているのかもしれません。

この作家はまだ3作目ですが、いまのところベストです。

No.8 7点 クリスティ再読
(2016/12/07 22:36登録)
本作にたぶん一番近いのは、「文学部唯野教授」だと思う...小説の楽屋裏のスノッブぶり(紳士&教養人ぶっていても所詮すべて銭!)を、シニカルに描いたあたりが一番の読みどころである。登場人物の一人が自虐する「われわれは文学にたかる虱みたいなものなんだ」って言い回しが、心理的にはシラケつつノるような綱渡りな実相を伝えているような気もするよ。この伝で言えば評者なんぞ、立派に殺人者の資格がありそうだ....「文学界の外には、文学者が正気だと信じている人など一人もいやしませんからね」
まあミステリとしてはHowの部分の小ネタはどうでもいい。実際には中盤に明かされる被害者の身元が、これ自体ミスディレクションになっているあたりが非常いいうえに、小説の中身自体が手がかり、という趣向もイイ。タイトルになっている「幽霊の2/3」というゲームの名前が真相をうまく言い当てているあたり秀逸。

どうも皆さん書いてないので、少し思い出を。本作の旧訳は初期の創元のラインナップにあったんだけど、短期間で消えた作品だったんだよね。だから評者がミステリ読みだした70年代だと、古本とか図書館で借りた創元推理文庫の古い本の既刊目録に載ってるけど、まったくお目にかからない本として有名な本だった(あと「死時計」とか「反逆者の財布」とか)。まあ本作非常に印象的なタイトルなので、よけい記憶に残っていたよ。本作面白いけど、60年代初めだとウケなかっただろうな...

No.7 7点 あびびび
(2015/11/29 23:14登録)
だれが犯人でも驚けない、意外性がないという物語。この作品は、真相が明かされるまでの作者の絶妙な筆致、これを味わうべきだと思った。

ヘレン・マクロイという女流作家をよくぞ復活させてくれた…という感謝しかない。この作品の中で、「ミステリなんか誰でも書ける」と、言うくだりが印象に残っている。つまり、文学的には評価されないジャンルだったわけだ。

文学界では、売れない純文学を大衆小説の上りで保護するという暗黙の了解があったらしいが、ジャンルを問わず、いいものは残るのではないか。

No.6 9点 ロマン
(2015/10/20 14:36登録)
パーティーで行われたゲーム「幽霊の2/3」の最中、人気作家が殺害される。事件が起こるまでに読み手に知らされた各登場人物の性格付けと、本格ミステリのお約束である3つの謎。それに加えて次々と増していく謎が読み手の進路を誤誘導する。ただ本格としてはもうひとつインパクトに欠ける。個人的には事件の謎そのものより、登場人物たちの自己本位さと、出版業界裏側の描写に惹き付けられた。秘められた真実を表すタイトルが何より秀逸。

No.5 9点 nukkam
(2015/08/12 14:54登録)
(ネタバレなしです) 1956年発表のベイジル・ウィリングシリーズ第11作です。1940年代後半あたりから作品がサスペンス小説中心になってきたと言われるマクロイですが、本書は本格派推理小説でしかも1級品です。さりげなく、しかし印象的に描かれる登場人物間の利害関係や第13章での疑問一覧リストなどわくわくさせる謎解きに加えて、9章では作家が成功する秘訣を語らせたり10章では推理小説をこき下ろしたりとビブリオミステリーとしても面白いです。最初に本書を手に取ったときには「?」と思わせるタイトルでしたが、読んでみると実に意味深だったとことに気づかされます。

No.4 7点 蟷螂の斧
(2013/09/01 10:16登録)
人気作家がパーティで毒殺されるが、参加者に動機のある者が見当たらない・・・。題名、動機隠し(真相)は、うまいと思いました。難を言えば、人気作家の過去を調べることに重点が置かれているため、警察の捜査状況(毒殺方法)にほとんど触れられていない。従って、犯人からの立場で、いつバレるのかという緊迫感が伝わってこなかった。作家の処女作を加筆訂正する(読者は内容を知っている)のですが、評論家にその加筆訂正した部分を酷評される(原作の方がよい)点など笑ってしまいました。この辺も伏線の妙で感心しました。

No.3 8点 E-BANKER
(2011/09/17 00:06登録)
精神科医ウィリング博士を探偵役とする作者の第15長編。
女流作家らしい丁寧な筆致が心地よい。
~人気作家エイモス・コットルを主賓に迎えたパーティーが、雪深いコネチカット州にある出版社社長の邸宅で開かれた。腹に一物あるらしき人々が集まる中、余興として催されたゲーム「幽霊の2/3」の最中に、当のエイモスが毒を飲んで絶命してしまう。招待客の1人、精神科医のウィリング博士は、警察に協力して関係者から事情を聞いて回るが、そこで次々と意外な事実が明らかになる。果たして真相は?~

これはさすがの面白さ。
本筋の毒殺事件のトリックや真犯人そのものは、それほどたいしたものではない。
本作は、むしろ主人公かつ被害者である、エイモスという人物そのものの謎にスポットライトを当て、周りの怪しげな人物を含めた謎に深みをもたらしてる感じ。
探偵役であるウィリング博士が行き着いた真相そのものは、ミステリーとしての奇抜さはともかく、プロットの妙は十分に堪能させてもらいました。
まぁ、うまいですよねぇー
当時の出版業界の裏側も垣間見えるようで、その辺も興味深く読ませていただきました。
まずは、安心してお勧めできる佳作という評価でしょう。
(ヴィーラって、悲しい女だねぇ。 まっ、自業自得だけど・・・)

No.2 7点 こう
(2010/07/19 01:15登録)
 「殺す者と殺される者 」が面白かったので続けて読了しました。
 毒殺トリックはちゃちすぎて読者もほとんどの方は知っててもまさかこれだとは思わないでしょう。(この作品がオリジナルなのかもしれませんが)
 真相の方は実際のところ成功するか正直疑問ですしわざわざそんなことをする必要があるのか疑問です。現実世界で同様の成功例も聞いたことがないですが50年代以前のアメリカではそういうこともありえたのでしょうか。ミステリだからその点を追及しなければ作品世界は昔ながらの本格世界で個人的には楽しめました。

No.1 7点 kanamori
(2010/05/03 21:47登録)
ベイジル・ウィリング博士が探偵役を務めるシリーズ第11作。
出版業界を舞台背景に人気作家の毒殺事件を描いていて本格ミステリではありますが、意外な犯人像を狙ったものではありませんし、作中の毒殺トリックも平凡です。
作者の狙いは犯人当てより被害者の人気作家の秘密に関わるサプライズにありますが、物語に出てくるゲーム<幽霊の2/3>に二重の意味を持たせたところが巧いと思います。
タイトルのセンスのよさ、伏線の張り方の巧妙さなどいつものマクロイです。

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