home

ミステリの祭典

login
修道女フィデルマの叡智
修道女フィデルマ

作家 ピーター・トレメイン
出版日2009年06月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 6点 nukkam
(2012/12/25 21:37登録)
(ネタバレなしです) 「From Hemlock at Vespers」というタイトルで15の短編を収めて上下巻で2000年に出版されたのが本国オリジナルです。その中の5作品を選んで日本独自編集で出版したのが本書で、作者了解をちゃんと取ってはいたそうですがわずか5作品しか紹介しなかったことに当時の私は結構憤慨してました(笑)。その後「修道女フィデルマの洞察」、「修道女フィデルマの探求」で5作品ずつ小出し紹介して結局全作品が読めるようになったのでほっとしましたが。長編だと謎解き以外に時代描写や冒険小説要素などが織り込まれていますが、短編では謎解きに絞り込んでおり作風は少し違いますがアガサ・クリスティーに匹敵するほど引き締まったプロットだと思います。どんでん返しの印象度で「ホロフェルネスの幕舎」と「大王の剣」がお勧めですが、他の作品も甲乙つけがたいレベルだと思います。

No.2 4点 E-BANKER
(2012/02/26 14:18登録)
舞台は7世紀のアイルランド。主人公であるフィデルマは、ドーリィという法廷弁護士の資格を持つ修道女という設定。
東京創元社で先に長編2作が翻訳されており、本作が初の作品集。

①「聖餐式の毒杯」=当地では異人に当たるゴール人の男性が聖餐式の最中、毒入りワインを飲んで死亡してしまう。毒殺の仕掛け自体はたいしたことはないが、「動機」の解明の方に見るべきものあり。
②「ホロフェルネスの幕舎」=夫・子供殺しの疑いをかけられた旧友のために、フィデルマが事件解明を請け負う。本作のプロットはよくある手のもので、いわゆる「裏の裏は表」ということなのだが・・・
③「旅籠の幽霊」=雪嵐に巻き込まれ、とある旅籠に泊まったフィデルマが幽霊騒動を解決する。これはかなりいいかげんなプロットのように見えた。特に、幽霊の正体に捻りがなさすぎる・・・
④「大王の剣」=アイルランドのとある王国の王位継承をめぐる殺人事件が舞台。これも②とプロットが完全に被っている気がするのだが・・・ まぁこれも「動機」が一番の肝だねぇ。
⑤「大王廟の悲鳴」=これもプロットは実に単純。ごく短い作品だけに、容疑者は最初から3名しかなく、動機も見え見えなのがちょっといただけない。

以上5編。
うーん。ちょっと退屈だったなぁーというのが正直な感想。
舞台が中世のアイルランド、かつ宗教用語が頻繁に出てきて読みにくいこともあったが、それよりもプロットにキレが乏しい。
フィデルマ自体はなかなかのキャラだとは思うのだが、いかんせん謎そのものがちょっと貧弱。

長編は未読なので、どうなのかという興味はあるが、あまり期待できないかな?
(なかでは④がいいかな。プロットは被るが②が次点)

No.1 6点 kanamori
(2010/04/29 17:31登録)
7世紀のアイルランドを舞台背景にした連作ミステリ短編集。
長編が3作邦訳されていますが、一冊も読んでいないので、探偵役の法廷弁護士&裁判官フィデルマの造形がいまひとつ分からない所がありますが、キレのある本格ミステリでもあるので結構楽しめました。
なかでは、王位継承の儀式に必要な刀剣の盗難事件の二転三転する推理が楽しめる「大王の剣」が印象に残りました。
逆の立場で、織田信長推理帳を英国人が読むとどうなんだろうとか、しょうもないことを考えてしまった。

3レコード表示中です 書評