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ミステリの祭典

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水時計
フィリップ・ドライデンシリーズ

作家 ジム・ケリー
出版日2009年09月
平均点5.20点
書評数5人

No.5 5点 八二一
(2019/11/14 15:30登録)
石と水の相克を通じて、沼沢地に生きる人々の希望と絶望、欲望と懊悩を摘出する、英国ミステリの伝統に根差した本格もの。舞台の風土のせいか二十一世紀っぽさがなんとなく希薄なのも面白い。

No.4 5点 E-BANKER
(2018/08/12 21:10登録)
五作目まで続いている新聞記者フィリップ・ドライデンを探偵役とするシリーズの第一作目。
作者のジム・ケリーも同じく元新聞記者(らしい)。
2002年の発表。

~痺れるような寒さの11月、イギリス東部の町イーリーで凍った川から車が引き揚げられた。トランクには銃で撃たれ、死後に首を折られた死体が入っていた。犯人は何故これほど念入りな殺し方をしたのか? さらに翌日、大聖堂の屋根の上で白骨死体が見つかる。ふたつの事件が前後して起きたのは偶然か? 疑問を感じた敏腕記者ドライデンは調査を始めるが・・・。粘り強い取材の果てに彼がたどり着いた驚愕の真相とは?~

何とも純正な現代英国ミステリーという雰囲気。
アメリカでも日本でも、今どきこんな重苦しくて重厚なミステリーにはなかなかお目にかかれない。
それはつまり、“いい意味でも”、“悪い意味でも”ということだ。

“いい意味で”言うなら、他の方もご指摘のとおり、丁寧な伏線の張り方だったり、徐々に高まるサスペンス感だったり、意外性のあるフーダニットだったり、というところ。
うん。まさに純正本格ミステリーという感じだ。
で、“悪い意味で”言うなら、あまりにも冗長すぎる中盤だったり、いちいち長すぎる説明文(場面に関する風景描写や説明があまりに多すぎ!)だったり、ずいぶん引っ張ったにしては予想範囲内の真相だったり、というところ。

ストーリーは、ふたつの殺人事件を捜査する過程で、過去の強盗殺人未遂事件がクローズアップされてくる展開。
現代と過去の事件がどのように関係してくるのかがプロットの軸となる。
これ自体はありきたりなプロットだし、恐らく現代の登場人物のなかに過去の事件の犯罪者が紛れ込んでいるのだろうという推測がついてしまうところがややツラい。
こういう題材に正攻法で挑んでくるあたりが、やはり「英国」ということなのか。
まぁ処女作品だしね。最初からそんなに変化球でこないところはむしろ好感が持てる。
・・・ということにしておこう。でも、結構長いよ。

No.3 5点 nukkam
(2016/07/13 13:44登録)
(ネタバレなしです) 英国のジム・ケリー(1957年生まれ)がジャーナリストから作家に転向して2003年に発表したのがフィリップ・ドライデンシリーズ第1作となる本書です。創元推理文庫版の巻末解説でも紹介されていますがドロシー・L・セイヤーズの名作「ナイン・テイラーズ」(1934年)の影響が見られる本格派推理小説です。もっともセイヤーズ作品に時折見られるのどかな雰囲気やユーモアは本書では皆無に近く、ドライデンの不幸な境遇の描写もあって重苦しさとシリアスさに満ちています。ただドライデンが妻以外の女性とベッドインしたりしているのでどこまで読者の共感を得られるかは未知数ですけど。プロットは予想以上に複雑で後期のアガサ・クリスティーが得意とした「回想の殺人」的な展開を見せるのも興味深いところです。

No.2 5点 mini
(2013/06/17 09:57登録)
* 4作限定私的読書テーマ、時計シリーズ最後の第4弾はジム・ケリー「水時計」

ジム・ケリーは英国の現代本格派作家らしいのだが詳しい事は不明
作風的には警察小説風だが主人公が新聞記者なので、形式的な分類上はやはり現代本格という事になるだろう
「水時計」はあの「ナイン・テイラーズ」へのオマージュ作だそうである
うんたしかに教養を感じさせる文体といい登場人物の設定などにそう思わせる要素が無くは無い
ただこの真相は極めて現代的だ
いや別に現代本格としてはこれでいい、いいんだけどさ‥
もしかすると「ナイン・テイラーズ」をリスペクトするからといって、現代を舞台にするなら敢えて同系統の真相にせずに現代的な真相に持っていったのかもしれない
だとすれば気持ちは分からんでもないんだけど‥
でもなぁ
セイヤーズを一切念頭から外して見れば、普通に佳作である
でもやはり「ナイン・テイラーズ」を引き合いに出すのなら、リアリティなどは無視して、セイヤーズ風な真相にして欲しかったなぁ

No.1 6点 kanamori
(2010/04/29 21:16登録)
新聞記者フィリップ・ドライデンを主人公にした本格ミステリ、シリーズ第1作。
修復中の大聖堂から発見された古い死体から30年前の事件が炙りだされる。米国の新聞記者ものとは少しテイストが異なる、いかにも英国風の伏線を丁寧に張った地味な本格編という感じです。
解説を読むと、作者はセイヤーズを敬愛していて本作は「ナイン・テイラーズ」の本歌取りとのことですが、バンター風の雇われ運転手が出てくるなど、たしかにそう読めないこともないです。

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