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ミステリの祭典

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金沢逢魔殺人事件
旧制高校シリーズ

作家 梶龍雄
出版日1984年01月
平均点6.75点
書評数4人

No.4 7点 蟷螂の斧
(2020/04/07 18:52登録)
見え見えのミスリードと見え見えの犯人?。このあたりの見せ方と伏線は相変わらずうまいと思いました。但し、元となる事件の動機が犯人の口から語られていないので、推理だけでは腑に落ちないし、また納得もできません(苦笑)。

No.3 6点
(2020/01/29 21:17登録)
 昭和十一年二月、雪に埋もれた金沢の町でむごたらしい殺人が起きた。東京から金沢四高にやってきた男爵家の令息、文甲二年の宮地晴雄が医療用メスで右目を刺されて殺されたのだ。晴雄は腸チフスに罹患し落第〈ドッペリ〉したのち時習寮からある士族邸の離れに移っていたが、郵便配達夫が荷物を届けた直後、犯人に襲われたのだった。晴雄の部屋は荒らされ、その数時間後には家の子供が現場から立ち去る片目マントの男を目撃していた。だが、事件はこれで終わりではなかった。
 茫洋とした貧家出身の大物寮生、不運続きでねじけてしまった理乙三年の医者の息子、そして秀才の誉れ高い理甲二年生。次々に同じ手口で四高生たちが殺されてゆく。そして事件前に送りつけられる右目をベットリと塗り潰された八幡起上がりと、当局を嘲笑うように現場に姿を見せる頭巾〈フード〉つきのマントを被った黒い眼帯の男。
 北陸日報の敏腕インテリ記者・新保正吾と文甲二年きっての秀才・岸本真一は、謎の連続殺人犯の正体を暴こうとそれぞれに調査を進めるが・・・
 「若きウェルテルの怪死」に続く旧制高校シリーズ第3作で、1984年発表。この年は著者が「奥鬼怒密室村の惨劇」「蝶々、死体にとまれ(後に「幻の蝶殺人事件」に改題)」など6冊を刊行した当たり年。おそらく一番ノッていた時期でしょう。短めの長編ですが中身はかなり詰まってます。舞台となる金沢市内のリサーチや時代考証も邪魔にならぬ範囲で適確なもの。時節柄二・二六事件も重なり、事件の展開に影響を与えます。
 ただしあまり手際のほどは上手くなく、二段組み200P程の紙幅に最終的には殺人が六つ。急ぎすぎた感は否めません。「清里高原殺人別荘」でも感じましたが、フーダニットが得意な人ではないですね。本人もその弱点は知悉しているらしく最終章で論理の鬩ぎあいを試みていますが、片方はピースが何個か欠落してるのですぐ分かります。というか仮にその場は凌げても、警察に仔細に検討されれば個々の事象が自分にだけ都合良く転がってくれてる訳がないので。何となくネット荒らしの悪足掻きを連想しました。勿論、議論にケリを着ける手段もちゃんと用意してあります。
 作中でも犯人がこれ以上の犯行を躊躇うシーンがありますが、連続殺人は三件だけにして、解決前に一呼吸置いた方が良かったと思います。手掛かりの散りばめ方はいつもながら精緻ですが、犯行手段を推理するにはいささか物足りません。

No.2 8点 nukkam
(2020/01/13 20:32登録)
(ネタバレなしです) 全4作の旧制高校シリーズの第3作にあたる1984年発表の本書は、タイトルから予想がつくように旧制四校が登場します。作中時代は1936年です。青春物語要素はシリーズ中一番希薄なのですがそれが弱点とは感じられないほど本格派推理小説としては圧巻の出来栄えです。怪人「片目マント」が目撃される連続猟奇殺人事件のサスペンスも出色ですが、最終章での火花散るような推理バトルがこれまた息を呑むようなスリルを生み出します。一気に読み終えたのが惜しまれるような謎解きでした。

No.1 6点 kanamori
(2010/05/01 17:35登録)
旧制高校シリーズの第3弾。
今回は旧制四校が舞台で、猟奇的な連続殺人事件を扱っていて、前2作と少々テイストが違います。
著者が得意のミッシング・リンクもので、終盤ちょっと驚く仕掛けがありますが、短めの長編なので読み終わって充実感が味わえなかったです。

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