影の座標 |
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作家 | 海渡英祐 |
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出版日 | 1968年01月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 5点 | 人並由真 | |
(2020/06/20 05:08登録) (ネタバレなし) 大企業「光和化学」の社長・関根俊吉の娘婿で、同社の研究所所長でもある岸田博が行方不明となった。岸田は会社が開発中の新製品・仮称「NK剤」の研究スタッフ主幹で、ライバル企業にその情報を渡した末に<何か>があったのではとも疑念が持たれる。社史と社内報の編集に携わる閑職の「私」こと稲垣昭彦は、同僚で旧友のそしてアマチュア名探偵として一部に知られる雨宮敏行とともに社長に呼び出され、岸田失踪事件の極秘裏の調査を行うように請願された。これに際していきなり社長相手に「名探偵」としての権限を主張する不敵な雨宮。稲垣はそんな雨宮をかつてのあだ名「エラリイ・レーン」で呼び、自分は相棒かつ格下の「ワトソン」役として調査を開始する。だがそんな彼らの周辺で、岸田失踪事件の重要な証人らしき人物がまもなく殺されて……。 ……うーん、弱ったな……。かなり早い段階から作者の狙いが見え見えで(汗)。それで結局(中略)。刊行当時はそれなりに反響はあった? かもしれないが、21世紀の現在、本作の読者が100人いたとして、その中でこの真相を意外に思う読者は10人もいないだろ(汗)。 まあ見方によっては、新本格超人気作品の先駆で原型みたいな趣もあるので、そういう興味でミステリブンガク史探求的に読むならアリかも。 (実際、作品総体としても、80年代後半からの新本格系列に似たような香気を感じる面はある。) あと最後の真相解明の際にちょっと面白い方向から、先に散りばめていた伏線や手がかりを回収するのは、本作の一応の興趣だとはいえる。 一言でいえば、賞味期限が切れてしまった当時の力作。 犯人告発時のあのパワーワードは、ちょっとスキだけれど。 |
No.1 | 5点 | kanamori | |
(2010/04/30 01:02登録) 乱歩賞受賞後の第1作。 前作とは全く趣を変えて現代もので産業スパイが題材ですが、それは表面上だけで意外な犯人ものの本格ミステリになっています。 ただ、現在ではこの意外な犯人像は典型的な「意外な犯人」になってしまっており、逆説的にもはや意外な犯人とは言えません。 ある工夫をして隠蔽していますが、成功しているとは言い難いと思います。 |