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ミステリの祭典

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文生さんの登録情報
平均点:5.87点 書評数:510件

プロフィール| 書評

No.510 8点 未だ本能寺にあり
今村翔吾
(2026/10/01 16:17登録)
本能寺の変後に織田信長の遺体が発見されなかったことから、生存説の疑念が生じ、羽柴秀吉から真相究明を命じられる駒井八右衛門重勝。八右衛門は本能寺の変に居合わせた人々のもとを訪ね歩き、彼らの証言から真実を探ろうとするが……。

著者の名前から想像できる通り、作品のタッチは正統派の歴史小説です。しかし、全体のプロットが本格ミステリそのものであることには驚かされました。
関係者8人の証言には数々の伏線が織り込まれており、記憶力に優れた主人公がそれらを整理して真相へとたどり着くプロセスが実に見事です。
また、メイントリック自体は海外の古典作品に前例があるものの、巧みなミスディレクションによって容易にはその可能性に思い至らないよう構成されています。
歴史小説と本格ミステリを融合させた作品としては、『黒牢城』に匹敵する傑作です。


No.509 6点 シュレディンガーの密室
麻根重次
(2026/09/28 23:53登録)
現実の事故をシュレディンガーの猫に見立てるアイディアは面白い
しかし、その割にミステリーとしての仕掛けは小粒で、真相がシュレディンガーの猫とあまり関係ないのが残念。
個人的にはダミー推理で用いられた仮説の方がシュレディンガーの猫との関連性も高くて魅力的でした。


No.508 3点 弾丸とヒマワリ
箕輪尊文
(2026/09/24 19:37登録)
第72回江戸川乱歩賞受賞作。
女子高生が自宅で射殺された事件を軸に、2人の元自衛官の目を通して、PKO問題や戦場でのPTSD、さらには現代社会における違法薬物問題などが描かれているものの、どうにもパッとしない印象です。
その主な原因は、乱歩賞の選評でも指摘されていたように自衛隊の描写はしっかりしているのに対して、裏社会の描写が荒唐無稽な点にあります。そのため、戦場帰りの自衛隊員の転落のドラマがいま一つ説得力に欠けているのです。
さらに、殺人事件の真相もいろいろ無理がある気がします。前年受賞作の『殺し屋の営業術』が面白かっただけに、個人的にはかなりがっかりな作品でした。


No.507 7点 命取りのエピソード
アンソニー・ホロヴィッツ
(2026/09/21 09:47登録)
本作は、映画『メインテーマは殺人』の撮影現場でホーソン役の役者が何者かに殺される前半と、ホーソンが警察を辞めて間もない頃の事件を描いた後半の2部構成になっており、最後に両者の意外な関係が明らかになるプロットは、アティクス・ピュントシリーズ(『カササギ殺人事件』など)を彷彿とさせます。
トリックらしいトリックはないものの、巧みな伏線回収によって意外な真相を浮かび上がらせる手管はまるで後期クリスティ作品のようです。
本格ミステリとしての派手さには欠けますが、一級の技巧に支えられた傑作です。


No.506 7点 名探偵ジェリコ
ウィリアム・ハッセー
(2026/09/20 09:13登録)
「新本格のような」という出版社の宣伝に釣られた人にとってははがっかりな作品ですが、ハードボイルド+サイコホラー+謎解きの、いかにも現代欧米風本格であることを踏まえても読めば結構面白い作品です。
失意の主人公が名探偵として復活するプロセスはドラマとして読み応えがありますし、シリーズを通して宿敵になりそうな邪悪な犯人もキャラが立っています。それに、見立て殺人の意外な目的も個人的には面白いと感じました。
いずれにしても、本作を読む場合はガチの本格を期待するのではなく、本格要素のあるハードボイルドもしくはサイコサスペンスだと思って読むのが吉でしょう。


No.505 8点 『石球城』殺人事件
北山猛邦
(2026/09/19 10:07登録)
『人狼城の恐怖』ぐらいから増えてきた感のある密室殺人や不可能犯罪を枯れ木も山の賑わいとばかりに大量にばら撒くタイプの作品はあまり好きではないのですが、本作に関しては13の密室殺人が世界観や犯人像と密接に結びついていたために非常に引き込まれました。それになんといっても、100ページを超える推理パートが圧巻。リアリティには欠けるものの、それを上回る魅力を有した傑作です。


No.504 5点 囁く逆婿 怪民研に於ける記録と推理
三津田信三
(2026/09/15 09:11登録)
瞳星愛がまたしても因習村の婚礼儀式に参加して事件に巻き込まれるシリーズ第3弾。
今回は発端の事件が怖すぎて大いに期待したものの、その後は派手な展開もなく、尻すぼみな印象でした。
加えて、事件の真相もいま一つです。過去の不可能犯罪の謎に関しては完全に肩透かしですし、本作のメインとなるホワイダニットも個人的には期待外れでした。
あの動機ではただのサイコパスであり、狂気の犯行の裏に秘められた合理的な動機といった本格ミステリとしての魅力が満たされていません。この題材であれば、いっそサイコサスペンスとして深く掘り下げた方が、より面白くなったのではないでしょうか。


No.503 8点 月下の盤
睦月準也
(2026/09/11 07:21登録)
アガサ・クリスティー賞の『マリアを運べ』は話題にもなりませんでしたが、デビュー2作目で大化け。ハードボイルド+本格ミステリの傑作です。
4日後に閉館するホテルにいるはずのゴウダトオルを探してほしいという謎の依頼を受けて問題のホテルに行ってみると、ゴウダトオルの名前はそこかしこから漏れ聞くものの、本人を知っている人間は誰もいないという展開が謎めいていて引き込まれました。
それに何より秀逸なのが、殺人事件を巡るアリバイです。パズルチックなトリックが非常によくできており、アリバイ崩しミステリーとしては近年屈指の完成度ではないでしょうか。
ただ、最後に明かされるゴウダトオルの秘密に関しては「未だにそれがそんなに価値があるものなのか?」という疑問が拭いきれず、その点は減点対象です。


No.502 7点 楽園
夕木春央
(2026/09/05 14:57登録)
シリーズ恒例のクローズドサークルものながら、主人公サイドは命の危機をあまり感じない立場なので緊迫感はいまひとつ。
犯人も前作、前々作を読んだ人なら薄々気付くと思います。
しかし、指名手配犯たちが暮らす隠れ里的な設定が面白く、なにより最後に明かされるホワイダニットが強烈。
方舟とはまた違った意味で面白い作品でした。


No.501 5点 永遠の記憶
東野圭吾
(2026/09/03 10:11登録)
シリーズの愛読者にとって後半の展開はぐっとくるものがり、ラストを飾るにふさわしい作品である点において異論はありません。
しかし、メインの事件は謎めいた冒頭こそ引き込まれたものの、巧妙な仕掛けがあるわけでもなく、真相も特に驚く要素もありませんでした。後半の展開にぐっときたといってもミステリーの本筋とは違う部分に対してですし、そもそも、過去作を読んでなければピンとこないでしょう。
というわけで、作品の評価に外的要因を持ち込みたくない自分としてはあくまでも単体の作品として評価し、点数はこのくらいで。


No.500 7点 世界の終わりの最後の殺人
スチュアート・タートン
(2025/04/17 18:39登録)
黒い霧によって人類のほとんどが死に絶え、100名あまりの人々が暮らす人類最期の砦たる島にも危機が迫るという終末SF的なシチュエーションは非常に好みではあるものの、著者ならではの複雑な設定に最初はかなり手こずりました。しかし、馴れてくるとその設定が面白く、最初は混乱の一因となった特殊な視点も新しい試みとして興味深いものがあります。そして、SFど真ん中な設定を用意しながら、一方で名探偵の苦悩を描いてみせるのも新本格ぽくていい。さらに、二転三転する展開もミステリーとしての魅力に満ちていて悪くありません。ただ、仕掛けやロジックに関してはパンチ不足でもの足りなさが残るのが惜しいところ。


No.499 5点 謎解き広報課 わたしだけの愛をこめて
天祢涼
(2025/04/17 12:47登録)
広報課三部作の完結編。東日本大震災をテーマにしており、大地震に遭遇した主人公たちの苦悩や奮闘はヒューマンドラマとして読み応えありです。ただ、ミステリー要素があまりにも薄いのはどうにもものたりません。代わりに、シリーズ全体を通して謎が明らかになるので、ミステリーとしてはその辺が最大の読みどころでしょうか。したがって、手を出すのであれば、やはり1冊目から順番に読んでいくことをおすすめします。


No.498 6点 謎解き広報課 狙います、コンクール優勝!
天祢涼
(2025/04/17 12:39登録)
町役場を舞台にした日常ミステリーの第一2弾。ミステリーとしては小粒ですが、広報課の仕事にさりげなく謎を絡ませ、お仕事小説+謎解きの合わせ技で読み手を引き込んでいます。要所要所で散りばめられたラブコメ要素も楽しい。


No.497 6点 写楽 閉じた国の幻
島田荘司
(2025/04/17 07:26登録)
意表を突いた写楽の正体は推理ものとしてなかなか楽しい。ただ、後半に舞台が江戸時代に移り、再現ドラマになっているのはミステリーとして蛇足に感じました。ページが足りなくて伏線回収がしきれなかったとありますが、それならば江戸編を丸々カットしてほしかったところです。


No.496 7点 弥勒戦争
山田正紀
(2025/04/16 13:16登録)
朝鮮戦争の行方を巡って神の力を持つ一族が戦いを繰り広げる物語は、スケールが大きくて面白い。また、仏教をベースにした設定も独創性に富んでいて魅力的ですし、史実との絡ませ方も巧みで歴史SFとしても読み応えありです。ただ、惜しむらくはストーリーの壮大さに比べてページ数が少なすぎます。約240ページと中編程度の長さしかなく、ボリューム不足からくる物足りなさは否めないところです。


No.495 5点 ダブルマザー
辻堂ゆめ
(2025/04/15 18:57登録)
若い娘が駅で飛び込み自殺を行い、死んだのは自分の娘に間違いないと2人の母親が名乗りを挙げるという謎はかなりのインパクトです。しかし、このからくりがあまりにも無理筋すぎてにわかには納得できません。家族の欺瞞を暴くドラマやダークな結末など、ストーリー自体は読み応えがあるだけに仕掛けの雑さが残念です。


No.494 6点 壁から死体?
ジジ・パンディアン
(2025/04/15 05:20登録)
若くして引退に追い込まれたイリュージョニストの女性が不可能犯罪に挑む〈秘密の階段建築社〉の事件簿シリーズ第1弾。
新たに塗りなおした痕跡もない何十年も前に作られたはずの壁から殺されたばかりの死体が発見されるという謎はなかなかスリリングですが、トリックや謎解きは正直大したことはありません。しかし、全編を貫くディクスン・カーへの愛が素晴らしい。カーマニアの幼馴染を登場させて新たな密室講義に挑戦するのもうれしいところ。同じカー好きとして評価は甘めに。


No.493 5点 1(ONE)
加納朋子
(2025/04/14 12:09登録)
まさか新作が読めるとは思ってなかった20年ぶりの駒子シリーズ。
しかし、著者が冒頭で説明しているように続編というよりは、世界観を同じくしたスピンオフの色が強く、期待していたものと違っていたのはがっかり。
ミステリー色は前作の『スペース』と比べても低いですし、犬が主役のエピソードなどは旧シリーズとは全くの別物です。まあ、ヒューマンドラマとしてはよくできた作品なのでまったく楽しめなかったわけではなく、母親になった駒子も相変わらずちょっと天然でチャーミングなのはよかった。
でも、できるならば『スペース』の直接的な続編で愛ちゃんやふみさんとの絡みをみたかったところ。


No.492 5点 天女の密室
荒巻義雄
(2025/04/12 09:44登録)
古文書や浦島太郎伝説を絡めた伝奇小説的な道具立てはそそりますし、そこに密室殺人を重ねることで事件の不可思議性が強調されていくのもスリリング。密室トリック自体もなかなかユニークで悪くありません。なのにあまり面白くない。どうも事件解明に向けてのハッタリが不足しており、謎解きがそっけなさすぎてカタルシスに欠ける印象です。非常に惜しい作品。


No.491 7点 蜘蛛の牢より落つるもの
原浩
(2025/04/10 20:05登録)
関係者の口から語られる21年前の集団生き埋め事件が訳がわからなすぎてとにかく怖い。その事件を調べているうちに起こる現代の事件もかなりの不気味さです。このまま怪異ホラーとして突っ走っても十分に面白そうですが、最後は伏線を回収してミステリーとして着地します。これだけの怪現象を論理的に説明したのはなかなかに見事です。ホラーミステリーとして十分レベルの高い作品だといえます。ただ、謎解き自体にホラー描写ほどのインパクトはなく、前半と比べてパワーダウンの印象も。

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