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ミステリの祭典

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写楽 閉じた国の幻

作家 島田荘司
出版日2010年06月
平均点7.00点
書評数12人

No.12 7点 あびびび
(2017/07/17 00:07登録)
歴史の中の謎として上位ランクとされる「写楽は誰?」、もう出し尽くされているはずなのに、その熱意が冷えることはない。

写楽物はこれが2冊目だが、思ったよりも楽しく読めた。序盤は関係のないやり取りが多く、やや退屈。しかし、終盤は強引に結末に入る感じがあり、まだ続きがありそうな感覚だった。

中盤が一番ハラハラして、印象深かった。

No.11 8点 E-BANKER
(2016/05/15 16:33登録)
2010年に発表された作者初の本格歴史ミステリー。
これまで多くの学者や文化人が挑んできた「写楽の正体」について、大ミステリー作家となった作者が肉薄する(のか?)
新潮文庫版では上下分冊のボリューム。

~“世界三大肖像画家”とも称される写楽。彼は江戸時代を生きた。たったの十か月だけ・・・。その前も、その後も、彼が何者だったのか、誰も知らない。歴史すら、覚えていない。残ったのは、謎、謎、謎・・・。発見された肉筆画。埋もれていた日記。そして、浮かび上がる「真犯人」。元大学教授が突き止めた写楽の正体とは?? 構想二十年。美術史上最大の「迷宮事件」を解決へと導く、究極のミステリー小説~

どうだろうか?
文庫版の作者あとがきを読むと、「写楽の謎」に対する作者の並々ならぬ熱意が窺える。
確かに、これまで数多の評論家や学者、文化人や作家たちが魅了されてきた謎!
これだけ諸説が飛び交う謎。これが古代の話なら分かるが、ほんの二百数十年前の江戸時代の話なのだ!
これはまさに島田荘司がチャレンジするだけの大いなるミステリーといえる。

写楽の正体についての真偽は、本作を読了した後も正直なところよく分からない。
確かにこれまでの発想では解けない謎なのだから、突飛というか異なるアプローチをしていくしかないのは分かる。
解説を読んでも、かなり資料を綿密に調査したことが窺えるし、もしかしたら真相に迫っているのかもしれない。
(ウィキペディアを参照すると、直近ではどうも当初の「斎藤十郎兵衛」説に立ち戻っているようだが・・・)

読み物としての本作は作者らしい実に面白い小説に仕上がっていると思う。
いかにも島荘作品の登場人物らしい造形なのがどうかという感じはするが、こういう壮大なスケールの物語を紡げる才能というのは、やはり作者の真骨頂だろう。
長すぎるとか、江戸編はいるのかとか、いろいろとご意見はあるようだが、「これはこれでいいのだ」!!
個人的には近頃ないスピードで読み切ってしまった。
それだけ夢中にさせられたのだろうと思う。

「江戸」の姿を辿る・・・っていうと「火刑都市」や「奇想、天を動かす」、「網走発遥かなり」など初期の作品を思い出してしまった。
こういう話も作者の十八番だったんだよね。
やっぱり、良くも悪くも他の作家とはひと味も二味も違うなぁ・・・
(結局回転ドアの話は何が言いたかったのか、イマイチ不明)

No.10 6点 いいちこ
(2014/08/11 18:46登録)
読了した当時、本作が指摘した東洲斎写楽の正体が著者独自のアイデアであると誤認し、プロットには顕著な破綻が見られるものの、その奇想は突出していると極めて高く評価した。
しかし、それは私の勉強不足であり、その真相には多数の前例があることを知った。
それをふまえて、再度本作を評価するならば、着眼点以外に評価すべき点がなく、プロットの破綻ばかりが目に着く印象。
本題に無関係の導入部が延々と続き、肝心の重要な伏線が回収されず、それを後書きで紙幅が足りなかったとエクスキューズしている点。
現代編だけで読者を説得できる材料が十分に整っていたにもかかわらず、蛇足と言うべき江戸編が存在している点。
読書時点で前例があることを知っていれば、さらに評価が低くなったであろうことは明白だが、読了当時の興奮を考慮して6点とする
数多い読了作品のなかで、とりわけ評価が難しく、ほろ苦い印象の残る作品となった

No.9 7点 測量ボ-イ
(2014/02/09 18:23登録)
これは純粋に面白かったです。
写楽探しの説はいろいろありますが、この○○○説は僕の知る
ところでは初めてです。
これが本当なら、歴史のロマンを感じるところです。
問題点は、やはり話しが冗長すぎるところでしょう。特に最初
の100頁は10~20頁くらいにできるのでは?回転扉の話しは
いらないと思いますけどね。

No.8 7点 Tetchy
(2013/02/16 22:12登録)
島田荘司が今まで数多の研究家や作家がテーマに取り上げた写楽の正体の謎に挑んだ意欲作。構想20年の悲願が結実したのが本書。
物語は現代編と江戸編が交互に語られる。しかしとにかく本編に行くまでが長い!冒頭の現代編で語られるのは東大卒で某会社の社長令嬢と結婚しながらも美術大学の教授から美術館の学芸員、そして塾の講師へと転落の人生を送っている在野の浮世絵研究家の話が延々と語られる。

江戸編では現代編の論考を裏付けるような蔦屋重三郎と写楽との邂逅の話が語られる。これが実に写実的で素晴らしい。江戸っ子のちゃきちゃきの江戸弁で繰り広げられる物語は実に映像的で、眼前に当時の江戸が浮かび上がるようだ。ここは物語作家島田のまさに独壇場。実に面白い。

私は写楽に纏わる作品は本書以外には泡坂妻夫の『写楽百面相』しか読んだことがないので、ほとんど門外漢なのだが、数多ある写楽の正体を探った作品や探究書の中でも本書が特徴的だと思われるのは、なぜこれほどまでに記録が遺されなかったのかに着眼している点だと思う。記録そのものに書かれた文章の行間を読み解くのが専らであるこのような研究に対してまずその背景からアプローチしていったのが斬新だったのではないか。

私は写楽の正体の謎へ迫る面白さがそれを小説とするための在野の研究家佐藤貞三が写楽の正体を探るまでのサイドストーリーがまだるっこしくて半減してしまった感がある。転落するばかりの人生の男の愚痴が長々と続く件は、本書は本当に『このミス』2位の作品か?と思ったりもした。写楽の正体が斬新だっただけに勿体ない思いが強い。しかし本書はそれも含めて島田の特徴が色濃く表れた作品だろう。

No.7 7点
(2013/01/19 14:45登録)
現代と江戸時代を交互に話が進みますが、現代編は中途半端に終わっている感がします。続編があれば読みたいですね。

No.6 6点 touko
(2012/01/14 23:47登録)
主人公の妻を完全悪役扱いにするんなら、ただの見栄っ張りで我儘なお嬢様にしておけばいいのに、主人公の親を単身赴任中に丸投げで介護させて欝病にさせたことがあるとか、二度と子供が作れない身体である、なんてエピソードいらないでしょ……おかげで、主人公のいちいちデリカシーにかけるわりに、無辜の被害者ぶる身勝手さやウジウジぶりにイライラしてしまい、感情移入できませんでした。

女性学者は、妻と正反対の主人公にとって理想的女性像なのかと思ったら、詳しいことは何も書かれないまま、都合よく登場しては、尻切れトンボに退場。

ミソジニーがきついのは毎度のことだから慣れてるけど、頁数稼ぎの手段に使うのはきつすぎ。。

歴史の謎解きそのものは面白かっただけに、小説としては破綻しているの残念。

No.5 7点 虫暮部
(2011/06/08 16:20登録)
 江戸編の後半が感動的。ミステリの感動ではないけど。
 日本人論については“またか”という感じ。美人教授も島田荘司作品に良く出て来る類型的な変人だと思った。
 “やれ突け”なんて単語が説明なしで使われているが、これは常識の範疇なのだろうか。

No.4 10点 HORNET
(2011/03/20 15:31登録)
 久しぶりの10点満点。
寛政6年に彗星のごとく現れ,その年の内に姿を消した謎の浮世絵師,東洲斎写楽。その正体についてはこれまで多くの研究者が諸説を唱えてきたが,それらとは全く異なった推理が本書で展開される。
 氏としても初の長編歴史ミステリであったと思うが,私自身も読むのは初めてだった。しかも江戸時代の浮世絵文化という,ほとんど自分には知識のないジャンルが舞台とされているので,はじめは及び腰でもあったが,読み進めるうちに謎にどんどん引き込まれていった。作品で,写楽や歌麿の描き方について説明されているくだりがあるが,実際に見てみたいと,図書館で浮世絵や写楽の本まで借りて,夢中で読んだ。
 述べたように,浮世絵文化や研究史に知識はないので,この島田氏の推理しか知らないわけで,これまでの諸説と比較することは出来ないが,少なくとも史実や文献に基づいた推理は非常に説得力を感じさせるとともに,見事なまでに一本につながっていくさまは,何か背筋が震える感じさえした。
 虚構ではない,史実の謎を追う楽しみと,自分の見聞が広がっていく楽しみを存分に味わえた。

No.3 7点 白い風
(2010/07/27 23:35登録)
「写楽」の謎をテーマで内容は面白かったですね。
ただ、700p近くあるのに、事件の発端となった様々な布石がそのまま、置き去りがザンネンですね。
その点を解決すべく、続編はあるのかな?(無い気がするけど・・・)あれば読むと思いますね。

No.2 7点 kanamori
(2010/07/26 21:06登録)
著者初の本格的な歴史ミステリ。
「成吉思汗の秘密」や「時の娘」は、始めに仮説がありそれを証明するアリバイ崩し的な歴史ミステリと言えると思いますが、写楽の謎(=写楽は何者だったのかという謎に収斂する)は、一種のフーダニットものに通じる魅力があり、本書の「真犯人」も島荘らしい奇想天外さで楽しめた。
現代編は主人公の家庭環境の話題など冗長と思える点とか、本作で解明されない事象が残ったりで不満ですが、蔦屋重三郎視点で描かれる江戸編のエピソードはなかなか軽妙で、その中にさりげなく写楽のアリバイ崩しの伏線である暦の話題を入れるなど、巧妙な構成になっていると思います。

No.1 5点 seiryuu
(2010/07/26 17:40登録)
読みづらかったけどラストがよかった。
その後が気になるから続編も読みたい。

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