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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:1254件

プロフィール| 書評

No.554 5点 東京結合人間
白井智之
(2015/11/07 21:57登録)
 うーん、「結合人間」という特殊設定を活かしたと言ってよいものかどうか、微妙です。序盤のグロさに嫌悪感を持つ方もいらっしゃるでしょう。最終的に本格度は高いと思うのですが、終盤の捻りも含めて、何かスカッとしない。
 作者のデビュー作「人間の顔は食べづらい」を超えることはなかったなぁ…という印象かな。


No.553 5点 この国。
石持浅海
(2015/11/03 18:36登録)
 一党独裁の管理国家。しかし戦争を放棄した平和国家であり、治安がよく、経済も発展していて、国民の満足度は高い。そんなパラレルワールドの日本(決して作者は日本とは断言していないが)を舞台とした連作短編集。
 そんな国では、小学校卒業時に児童の将来が決められ、国防軍は名ばかりのものとなり、多くの女性が国外から売春婦としておとずれ、「カワイイ」文化を愛する…。
 この設定自体は、かなり興味深いと思うのです。柔軟問わず、様々な切り口での作品が出来上がりそう。でも、活かしきれていないなぁ…と。サクサク読み進められる展開も、番匠中佐のキャラも嫌いじゃないのだけれど、個人的には、もの凄く勿体ない印象を受けました。もっとこの舞台を縦横無尽に活用してほしかったなぁ。


No.552 8点 宵待草夜情
連城三紀彦
(2015/10/30 22:27登録)
 マイベストは、「花虐の賦」。反転が実にお見事で美しい。傑作です。
 表題作「宵待草夜情」の全体を包み込む儚い空気感も素晴らしい。
 とにかく短編集全体が、大正ロマン溢れる筆致で男女の情愛を描いており、今の時代だからこそ、この雰囲気が活きてくるような気もします。
 「戻り川心中」や「夜よ鼠たちのために」とともに、これぞ連城!というべき短編集ではないでしょうか。


No.551 5点 公開処刑人 森のくまさん
堀内公太郎
(2015/10/24 19:45登録)
 導入部からテンポが良く、ストレスなく読み進められます。(後半はちょっとクドイ印象もありますが。)
 でも、犯人は分かりやす過ぎたなぁ。逆に何かあるに違いないと疑いたくなるような展開。きっと、多くの方が「そのままかい!」と突っ込むことになるでしょう。
 ソコも含めて、楽しめはしたのですが。


No.550 5点 踊るジョーカー
北山猛邦
(2015/10/12 16:17登録)
 もの凄く気弱な名探偵「音野順」が登場する短編集第1弾。
 ほとんどの短編について、一般的には「いやいや、そこまではやらないでしょ、普通は」と突っ込まれること必至でしょうねぇ。個人的には、作者のその覚悟にこそ、本格愛を感じたりするのですが(笑)。
 とはいえ、「見えないダイイング・メッセージ」のロジックなど、細かい点で結構「ほほう」と思う箇所もあり、キャラの良さも含めて、嫌いなタイプではないです。本格バカミス系統が好きな方には、よりフィットするかも。


No.549 6点 交換殺人はいかが?
深木章子
(2015/10/10 17:05登録)
 その経歴から、個人的に注目していた作家さんなのですが、これまでの作品は何となく手を出しにくいなぁ…という勝手な思い込みで、未読の状態が続いておりました。この初短編集は、いかにも読みやすそう…ってことで、手にした次第。
 ミステリ作家を目指す小学生(作中、中学生に成長)の求めに応じ、一人暮らしの元刑事の祖父が、過去の事件を語ります。孫の推理で事件の構図がガラッと変わって…というスタイル。
 「密室」、「幽霊」、「ダイイングメッセージ」、「交換殺人」、「双子」、「童謡殺人」という、王道(?)のテーマが揃っていて、なかなか楽しいです。表題作の「交換殺人はいかが?」、双子ならではの「ふたりはひとり」、ダイイングメッセージをホワイに活かした「犯人は私だ!」が良作。捻りが効いています。


No.548 5点 あぶない叔父さん
麻耶雄嵩
(2015/09/26 14:50登録)
 うーん、「ひねくれてますねぇ、相変わらず」って感じ。良くも悪くも、ひねくれているんだよなぁ。
 探偵役とは何かを突き詰めた設定なのだという受け取り方もあると思うのですが、個人的には金田一耕助のパロディに見せかけたバカミスっていう評価。「マジか?」と突っ込まざるを得ない低レベルのトリックも散見されます。真紀と明美を設定した意義も、最終的にはよく判らない。
 様々な側面で中途半端な印象を受けましたねぇ。続編を想定しているのであれば、まぁ、分からないではないけど…。


No.547 6点 変調二人羽織
連城三紀彦
(2015/09/21 22:43登録)
 作者の処女作(表題作)を含む、初期5作品で構成される短編集。
 表題作「変調二人羽織」は、第3回幻影城新人賞受賞作だけに、なるほど、最後までの捻り込みが作者らしい。しかし、個人的に最も印象に残ったのは、「六花の印」。明治と昭和をリンクさせた中での、意外性が素晴らしい。
 他も、一筋縄ではいかない作品が並んでいますが、全体的な完成度となれば、その後に発表された短編集に譲るかな…という印象。


No.546 6点 柘榴パズル
彩坂美月
(2015/09/21 21:47登録)
 読みどころは最終話の「バイバイ、サマー」で、最終話に至るまでの個々の短編については、正直、ミステリとしてちょっと弱い。でも、私は結構好み。陳腐という印象を受ける方もいらっしゃると思いますが、個人的には「こういうのも、たまにはいいじゃない」って感じですねぇ。


No.545 7点 鳴風荘事件
綾辻行人
(2015/08/31 21:19登録)
 殺人方程式シリーズ第2弾。
 「読者挑戦モノ」ってこと自体で評点が高くなるワタクシでございます。ちなみに、「なぜ被害者の黒髪が切られたのか」という謎自体は判りやすかったものの、犯人特定までには至りませんでした…。
 その中で繰り広げられた犯人特定のロジックは、正直楽しめましたねぇ。地味という印象もありましょうが、特に読者挑戦モノのド本格作品というのは、どうしてもそういった傾向になるような気がします。
 シリーズ第3弾を読んでみたいものですが、無理かなぁ。


No.544 6点 透明人間の納屋
島田荘司
(2015/08/22 23:53登録)
 島荘による「ミステリーランド」作品。いやー、この時点で既に興味津々ですよねぇ。(私だけか?)
 で、魅力的な謎と人物描写、そして何より真相の規模と結末…この構想自体がまさに島荘。読中、様々な感情を抱かせてくれました。流石であります。
 一方で、密室トリック自体は、ちょっと拍子抜け。まぁ、このトリックは「おまけのおまけ」みたいなものですがね。
 ちなみに、イラストも含め、少年・少女にはちょっとキビシイ感じがするなぁ。


No.543 5点 ぶぶ漬け伝説の謎
北森鴻
(2015/08/22 23:31登録)
 裏京都ミステリーシリーズの続編。
 登場するキャラ自体は嫌いではないのですが、ミステリ度は前作よりも落ちる印象。ちょっと強引というか、こねくり回し過ぎというか…。京都に関する小ネタが仕入れられるのは嬉しいですけどね。


No.542 6点 支那そば館の謎
北森鴻
(2015/08/10 23:26登録)
 あまり芳しくない評価もあるようですが、雰囲気も含めて私は好きなタイプ。ベストは「鮎踊る夜に」かな(事件そのものは、何とも陰惨でありますが…)。
 なお、後半から登場する、売れないバカミス作家「ムンちゃん」の存在自体はウザいものの、彼が唯一受賞(大日本バカミス作家協会賞)したという設定の作品名が「鼻の下伸ばして春ムンムン」って…。そのちょっとした作者の遊び心(?)が、個人的に結構ツボでした。
 ちなみに、舞台となっている、京都嵐山の大悲閣千光寺は実在するとのことで、是非とも訪れてみたくなりましたねぇ。


No.541 6点 腕貫探偵、残業中
西澤保彦
(2015/08/10 23:08登録)
 腕貫探偵シリーズの第2作。
 私事で恐縮ですが、高知を旅行することになったので、高知出身(かつ在住?)の作者の作品を手にした次第。
 今回は、タイトルに「残業中」とあるとおり、探偵役の「市民サーヴィス課」職員としての就業時間外の推理(サービス残業?)で構成されています。
 作者らしく、サクサク読み進めさせながらの後半の反転が楽しいですね。探偵役よりも目立っているといっても過言ではない、住吉ユリエ嬢のキャラも良く、結構好きなタイプの短編集でした。個人的ベストは、過去・現在・未来の絶妙なバランスが印象に残った「夢の通い路」かな。


No.540 5点 ライオンの歌が聞こえる
東川篤哉
(2015/08/09 22:36登録)
 シリーズ第2弾。これまでの作者のシリーズと比べて、キャラ自体の特徴は弱めなのですが、逆に使い勝手は良いのかもしれません。だからなのでしょうか、ちょっと「やっつけ感」が匂わないではありません。③がなかったならば、4点レベルかなぁ…。
①亀とライオン:犯人がわざわざ策を弄した意義がよく判りませんねぇ。私だったら、そんなことはせずに「とても急いでいたようでしたので…」と証言するだけだけれどなぁ。
②轢き逃げは珈琲の香り:小さな思い付きから即興で作られた作品…って感じ。
③首吊り死体と南京錠の謎:密室をベースにしながらの反転が実にお見事で、本短編集中のベスト。雰囲気は全然違うものの、個人的には「容疑者Xの献身」を思い起こしましたねぇ。
④消えたフィアットを捜して:いやいや、いくらなんでも強引すぎますなぁ。


No.539 5点 松谷警部と三鷹の石
平石貴樹
(2015/08/01 19:51登録)
 松谷警部&白石巡査によるシリーズ第二弾。
 伏線とその回収は流石なのですが、読者としては聞き込み捜査によって得られた新たな事実をひたすらに追いかける…といったスタイルにならざるを得ず、好まない方もいらっしゃると思います。
 全体的に地味な印象で、犯人特定のロジック自体も期待を下回ったと言わざるを得ないのですが、登場人物たちのキャラがなかなか面白く、その流れの中で終盤に明らかにされる、とある人物間のサプライズは個人的にツボだったので、この点数に。


No.538 8点 香菜里屋を知っていますか
北森鴻
(2015/07/28 23:50登録)
 「香菜里屋」シリーズ完結編。
 序盤は、香菜里屋の常連客を含む、シリーズ主要メンバーの人生の「転機」が描かれます。いずれも、応援したくなる、前向きな「転機」であって、爽やかな読後感ではあるのですが、だからこそ、「嗚呼、シリーズの締めが近づいているのだなぁ…」という寂しさも感じざるを得ない展開。
 その中で語られる工藤マスターの過去と香菜里屋の閉店。そして閉店後の後日談…。シリーズをほぼ一気通貫で読了した読者としては、自分も香菜里屋の昔からの常連といった心持ちになっているので、心に沁みましたね。
 ちなみに、このシリーズが本書をもって終結したのが2007年11月。作者が48歳という若さで亡くなったのが2010年1月。何らかの覚悟あって、このタイミングでの終結としたのか…。いずれにしても、哀しく、そして惜しまれます。
 シリーズ全体の評価として、個人的採点基準では相当に上級のこの点数で。


No.537 6点 螢坂
北森鴻
(2015/07/25 23:35登録)
 連作短編集「香菜里屋」シリーズ第3弾。
 「雪待人」を初めとして、まずは美しい。表題作「蛍坂」は、現実的にソコまでする女性がいるかはともかくとして、とにかく哀しい。その哀しさを、個人的には決して美しいとは表現できないけれども、人によってはそう感じる方もいらっしゃるであろうし、その感覚も否定はできますまい。
 本格度という面では何らコメントできない弱さもありますが、既にそういう視点で読ませていないところがこのシリーズの真髄。マスター・工藤の過去の秘密も気になりますし(醸し出し具合も絶妙なんだよなぁ…)、早速続編(シリーズ最終短編集)も手にすることになりそうです。


No.536 6点 桜宵
北森鴻
(2015/07/20 16:34登録)
 連作短編集「香菜里屋」シリーズの第2弾。
 前作「花の下にて春死なむ」における、ビアバー「香菜里屋」の雰囲気に魅了されたワタクシといたしましては、謎に対する伏線があったのか…とか、ちょっと現実には考えられないよなぁ…とかいうことは脇に措いて、楽しめましたね。常連客がいい味を出しているんですよねぇ。料理の表現がまたイイ。皆さまが書かれておりますとおり、こんなバーが近くにあればなぁ…と思わずにはいられません。個人的ベストは、珍しく工藤マスターが主張し、かつ、怒りを隠さなかった「約束」か。


No.535 5点 セブン
乾くるみ
(2015/07/18 10:27登録)
 「林真紅郎と五つの謎(探偵役:林真紅郎)」、「六つの手掛り(探偵役:林茶父)」があって、このタイトル。またまた林兄弟が登場かと思いきや、林兄弟とは何ら関係のない独立した短編(一部掌編)集でした。
 とはいえ、収録されている7つの短編&掌編は、何らかの形で「7」に関係するもので、その点に関する一定の拘りは感じるのですが、なんと申しますか、ちょっと唯我独尊的な面も否めません。数学学科卒らしい「ラッキーセブン」などは悪くはないのですが、あまりにも作られたゲーム性が鼻について、イマイチ琴線に触れなかった。ハズレだったかな…と読み進めた中での最終話「ユニーク・ゲーム」のロジックはそれなりに楽しめたので(オチ自体は判りやすかったけれども)、ギリギリこの点数ということで。

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