香菜里屋を知っていますか 『香菜里屋』シリーズ4 |
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作家 | 北森鴻 |
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出版日 | 2007年11月 |
平均点 | 7.25点 |
書評数 | 8人 |
No.8 | 7点 | ALFA | |
(2022/04/14 17:15登録) お気に入りのバーは自分の財産だと思っているので、この世界観は大好き。香菜里屋にも香月にも行ってみたいなあ。 シリーズ最終巻というのは承知でこれを先に読んでしまった。そのうちさかのぼって第一巻から読んでいくか。 本格的な謎解きではなく、謎を肴に酒を飲むといった風情。 お気に入りは「ラストマティーニ」。老バーテンダーが作る完璧なクラシックマティーニがその日に限って不出来だったのは?・・・ マティーニだけあって辛口で逆説に満ちた動機がいい。 私はひとひねり前のケレン味たっぷりな動機でもいいとは思うが・・・ ただし谷川への香月の「頼むよ、爺さん。少し濃いめに」はあり得ない。 客として入っても同業者にこんな言葉遣いはしない。まして相手が先輩バーマンなら尚更。 シリーズ最終巻としてのエンディングも味わい深い。 |
No.7 | 4点 | ボナンザ | |
(2022/02/03 21:16登録) 最終巻を意識しすぎたか、やや唐突な内容。 |
No.6 | 7点 | メルカトル | |
(2020/12/06 07:39登録) ビアバー香菜里屋は、客から持ちこまれる謎がマスター・工藤によって解き明かされる不思議な店―。常連客は、工藤による趣のある料理とともにこの店を愛していた。だが、その香菜里屋が突然たたまれてしまう。そして若かりし頃の工藤の秘密が明らかになる。シリーズ完結編。 『BOOK』データベースより。 これがシリーズ完結篇だったと気付かず、うっかり先に読んでしまいました。しくじったなあ。でもいずれ読むはずだったし、この作品を踏まえたうえで先行作をじっくり楽しむのもアリかとは思い、自分を納得させているところです。しかし、流石に評判が良いだけあり、格調高い文章で綴られる本作は、やや淡白な感は否めないものの、掉尾を飾るに相応しい作品集となっていると思います。そして、工藤の過去を知り、香菜里屋の最期を迎えるという場に立ち会えた事を感無量の想いで読み終得ることが出来、我知らず感銘を受けました。 そして最終話には驚きました。読者サービスの一環かも知れませんが、北森作品には欠かせない人やあの人が登場し、最後を盛り上げてくれます。やや散文的に過ぎる感はありますし、取って付けたような感覚は否めませんが、読者にとっては嬉しい誤算だったのではないでしょうか。それにしても、工藤の作る料理の数々は誰しもが一度は口にしてみたくなるようなものばかりで、やはり本シリーズを語る上ではなくてはならないアイテムとして機能していた事は書いておきたいですね。いずれ読むであろう、残りの未読作品も楽しみです。 |
No.5 | 6点 | take5 | |
(2019/02/07 22:36登録) 料理やお酒の描写が玄人好みですね。 日本語のリズムもよろしくて、 謎解きだけを捉えたら… という書評が 野暮と言われてしまいそう、 そんな作品です。 |
No.4 | 8点 | あびびび | |
(2018/09/16 00:08登録) 連作だが、この本だけでも楽しめるということで読んだ。ほとんどが、旅立ち、別れの話で、少し昏くなったけど、人生の味わい、転機と言う部分はさすがだと思う。 自分はだいたいE-BANKERさんの書評を参考にして次に読む作品を決める場合が多いけど、最高得点をつけられたのも分かるような気がします。 |
No.3 | 8点 | ボンボン | |
(2017/06/17 17:39登録) 『終幕の風景』のラストは、もう本当に堪らない。終わってしまった。 自分の生活の中に香菜里屋があったような、それを失ってしまったような感じ。解説の中島駆氏が「リアリティが魅力」とおっしゃるとおり、このシリーズ独特の感覚だ。 各話で描かれる人々の旅立ちは、確かな前進としての別れであるというのに、こんなに悲しいのは、やはり北森鴻氏がもういない、ということをいちいち思い出してしまうからだ。 しかし、そういったことを抜きにしても、本作はシリーズ中最高の出来だろう。絶好調だ。ミステリとしては特に、老バーマンの洒落た幕引きを描く『ラストマティーニ』が良かった。 |
No.2 | 8点 | まさむね | |
(2015/07/28 23:50登録) 「香菜里屋」シリーズ完結編。 序盤は、香菜里屋の常連客を含む、シリーズ主要メンバーの人生の「転機」が描かれます。いずれも、応援したくなる、前向きな「転機」であって、爽やかな読後感ではあるのですが、だからこそ、「嗚呼、シリーズの締めが近づいているのだなぁ…」という寂しさも感じざるを得ない展開。 その中で語られる工藤マスターの過去と香菜里屋の閉店。そして閉店後の後日談…。シリーズをほぼ一気通貫で読了した読者としては、自分も香菜里屋の昔からの常連といった心持ちになっているので、心に沁みましたね。 ちなみに、このシリーズが本書をもって終結したのが2007年11月。作者が48歳という若さで亡くなったのが2010年1月。何らかの覚悟あって、このタイミングでの終結としたのか…。いずれにしても、哀しく、そして惜しまれます。 シリーズ全体の評価として、個人的採点基準では相当に上級のこの点数で。 |
No.1 | 10点 | E-BANKER | |
(2011/05/06 23:40登録) ついに香菜里屋シリーズも完結! 今回もまさに「珠玉」の連作短編集になってます。 ①「ラストマティーニ」=工藤や香月も通う1軒のバー。老練のバーテンが香月に供したマティーニにいつもの味がないのはなぜか? 小粋なラスト。 ②「プレジール」=シリーズの1作目「花の下にて春死なむ」からの「常連組」、飯島七緒も新たな人生への旅立ちが・・・そして、香月も結婚。 ③「背表紙の友」=こんな偶然あったらすごい! でも、「このまま今の会社しか知らない人生でいいのか?」という東山の思いには同感。 ④「終幕の風景」=ついに「香菜里屋」が閉店! そしてマスター工藤の過去が明らかに・・・ ⑤「香菜里屋を知っていますか」=香菜里屋そして工藤なき今・・・工藤や香月に纏わる過去の因縁が明かされる。冬狐堂や蓮丈那智など、他作品のキャラクターまでもが工藤を懐かしむ・・・ 以上5編。 とにかく、本シリーズは素晴らしい。 解説の中嶋某氏は、「香菜里屋シリーズでは、登場する人物たちの時間がきっちり流れている。そして、登場人物たちが体験したであろう時間の重みをシリーズを通読することで一緒になって追体験できる・・・」と書かれてますが、まさにその通りだと思います。 だからこそ、マスター工藤の発する言葉が読者の胸にも響き、心地よい余韻となっていく・・・そんな気がします。もちろん、素晴らしい料理の数々も・・・ 今回は本作だけでなく、シリーズ通じての評価として「10点」進呈! こんなに高貴で繊細で、どこか温かみのあるシリーズなんてもう読めないかもしれませんし、若くして逝去された作者については、やはり本当に残念でなりません。 (どこかに「香菜里屋」みたいなビアバーないかなぁー。日常生活で背負った「重荷」や「鎧」を解ける店・・・) ※因みに、文庫版では「双獣記」という未完の作品も併載してます。 |