交換殺人はいかが? じいじと樹来とミステリー/君原元刑事とその孫・樹来 |
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作家 | 深木章子 |
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出版日 | 2015年06月 |
平均点 | 6.33点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 6点 | 虫暮部 | |
(2021/06/01 12:27登録) この作者の長編には非常にパターン化された人物が多く登場してしばしば鼻に付いて感じられるが、パターンでもキャラクターがあるだけまだましなのだと気付いた。本短編集に於ける事件関係者は、事件を構成する役割があるだけの記号と化している。 トリックが漫画的だったり純粋な推理クイズに近かったり(共に悪い意味ではない)して、そういう記号扱いが嵌まっているものもあるが、幾つかはもっと長くして人物に厚みを持たせた方が説得力が増すと思った。 |
No.5 | 6点 | メルカトル | |
(2020/12/17 22:42登録) 僕は君原樹来、小学六年生。将来の夢は推理小説作家。作品の題材になるような難事件の話を聞きたくて、元刑事のじいじの家に遊びに来た。そうしたら交換殺人や密室、ダイイングメッセージとかすごい謎ばかりで期待は的中!でもね、じいじ。その解決、僕はそんなことじゃないと思うんだけどなあ。可愛らしい名探偵の姿を通じて、本格ミステリーの粋を尽くした魅惑の短編集。 『BOOK』データベースより。 本格の定番のテーマを取り上げて、ちょっと変わった角度からアプローチした連作短編集。密室、超常現象、ダイイングメッセージ、双子、交換殺人、見立て殺人とずらりと並んだ本格ミステリ愛に満ちた作品集となっています。 第一話の密室を扱った『天空のらせん階段』はトリックはバカミスに近いものがありますが、螺旋階段を有機的に機能させた意表を突くもので、図面を備えて非常に分かりやすくとても良い作品だと思います。まあ無理がある点は否めませんが、発想は面白く個人的には満足です。 双子を扱った『ふたりはひとり』は従来の双子トリックを逆手に取って、これまた今までになかった新たな切り口で謎に迫っています。 じいじは孫息子の樹来をこよなく愛しているのですが、その妹である孫娘に対して何かしら訳ありげに距離を取っているのが些細な事ではありますが、何故か気になります。それにしても樹来はとても小学生とは思えぬ慧眼を持って、警察が解決できなかった事件や一応解決と考えられてきた過去の事件を、次々に暴いていきます。この調子では将来名探偵間違いなし、或いは彼が目指しているミステリ作家になる日は近いと思われますね。 全ての作品が一定の水準を保っていて、取り敢えず粒揃いと言っても過言ではないでしょう。 |
No.4 | 7点 | 名探偵ジャパン | |
(2019/01/16 14:11登録) 単行本の「いかにも子供だまし」みたいなイラストに反して(私が読んだものは文庫版でしたが)、なかなかに本格的なミステリでした。 中でも表題作がやはり一番の出来で、もっと膨らませて中編くらいにしても耐えうるネタです。 孫が次々に出してくるお題(?)に、しっかりと答え、事件の詳細から関係者の名前まで、全て記憶しているこのお爺さん、ただ者ではありませんし、口頭での説明だけでは小学生には理解が難しいのでは? と思えるような入り組んだ話にも、しっかりと食らいついて別解を出してくる孫も相当な大物です。 正直、第一話のバカミストリックを見たときは、このまま読み進めてもいいのか不安になりましたけど(笑) |
No.3 | 7点 | HORNET | |
(2016/04/16 10:35登録) すでに刑事を引退した君原のもとに、定期的に遊びに来る孫の樹来。将来ミステリ作家をめざしているという樹来は、君原が過去にかかわった事件の話を聞きたがる。かわいい孫とのその時間が君原の至福の時なのだが、事件の顛末を話す「じいじ」に、樹来は「そんなことじゃないと思うんだけどなぁ」と、真相を看破する推理を披露する。 ミステリ作家になりたいという樹来は、表題の「交換殺人」のように、「密室の事件ってあった?」「ダイイングメッセージの事件は?」など、ミステリの定番テーマに関する事件を聞きたがる。よってそうした定番モノを扱った各短編という構成になっているが、そうした使い古された「枠」を使いながら、当然トリック等は作者ならではの面白い仕掛けになっており、ライトなタッチの読みやすさも手伝って非常に楽しく読めた。 作者の他の作品と趣がずいぶん違い、引き出しの多さにも感心する。 |
No.2 | 6点 | まさむね | |
(2015/10/10 17:05登録) その経歴から、個人的に注目していた作家さんなのですが、これまでの作品は何となく手を出しにくいなぁ…という勝手な思い込みで、未読の状態が続いておりました。この初短編集は、いかにも読みやすそう…ってことで、手にした次第。 ミステリ作家を目指す小学生(作中、中学生に成長)の求めに応じ、一人暮らしの元刑事の祖父が、過去の事件を語ります。孫の推理で事件の構図がガラッと変わって…というスタイル。 「密室」、「幽霊」、「ダイイングメッセージ」、「交換殺人」、「双子」、「童謡殺人」という、王道(?)のテーマが揃っていて、なかなか楽しいです。表題作の「交換殺人はいかが?」、双子ならではの「ふたりはひとり」、ダイイングメッセージをホワイに活かした「犯人は私だ!」が良作。捻りが効いています。 |
No.1 | 6点 | kanamori | |
(2015/07/24 21:50登録) 推理作家志望の小学6年生・樹来(じゅらい)は、元刑事の祖父から過去に関わった怪事件の話を聞き出すや、「そんなことじゃないと思うんだけどなあ」と、独自の推理を披露する---------。 安楽椅子探偵モノの連作短編集。 樹来(じゅらい)のリクエストに応える形で、収録6編はそれぞれミステリにお馴染みのテーマ------密室、幽霊、ダイイングメッセージ、交換殺人、双子、童謡殺人を扱っていて、作者の長編とはちょっとテイストが異なる本格パズラー志向が強い連作です。 個人的ベストは表題作の「交換殺人はいかが?」で、交換殺人という手垢のついた趣向をヒネリにヒネッたプロットによって意外な構図を捻出しています。 旧家を舞台に2組の双子の男女が殺人事件に絡む「ふたりはひとり」も、複数のミスディレクションが効果的な考え抜かれた良作。双子なら当然アッチ系のトリックということになるのですが.....。 そのほかでは、納得感のあるダイイングメッセージもの「犯人は私だ!」、バカミス系の密室トリックもの「天空のらせん階段」がまずまずと思える出来栄えかと。 |