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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.87点 書評数:1227件

プロフィール| 書評

No.907 5点 琴乃木山荘の不思議事件簿
大倉崇裕
(2020/08/20 23:40登録)
 標高2200mにある山小屋「琴乃木山荘」を舞台にした短編集。「山と渓谷」に掲載された短編が大半で、山や自然に対する愛情を感じることができます。こんな山荘でアルバイトしながら過ごせたら心が洗われるだろうなぁ、何より、今は下界と違って熱帯夜ではないのだろうなぁ…と羨ましくはなりました。
 ちなみに、ミステリとしてはかなり緩めの内容。連作短編としての転換はあると思いきや…期待外れだったかな。オマケしてこの採点といったところ。


No.906 5点 猿島館の殺人~モンキー・パズル~
折原一
(2020/08/15 23:07登録)
 黒星警部シリーズの第2弾。
 うーん、どうなのだろう。読中は、オーソドックスかと思っていたのですがねぇ。「○○じゃが仕方がねえな」を楽しめるか(許せるか?)否か。ちなみに密室の真相は、正直いただけない。
 個人的には、脱力感の後に「たまにはコッチ系もいいか…」という気になったので、この採点で。


No.905 5点 ルパンの娘
横関大
(2020/08/14 17:59登録)
 泥棒一家の娘と警察一家の息子との結婚騒動。これに殺人事件も絡みます。現に連続ドラマ化されているのですが、確かに、ドラマ化or映画化に適したストーリーではあります。主演・深田恭子も違和感ないですね。ドラマは観ていないのですが。
 展開も早く、リーダビリティも高いので、読書としては楽しめたかな。この作家さんの作品は何冊か読んでいますが、物語の紡ぎ方が達者です。その反面、印象に残りにくいような気もしていたのですが、この作品で広くアピールできたのでは。


No.904 6点 いけない
道尾秀介
(2020/08/11 11:22登録)
 「『ここ分かった!? 』と読み終えたら感想戦したくなること必至の、体験型ミステリー小説」、らしい。
 確かにそうかもしれない。どこで、どうやって気付くか…ってのはあるけど。あまり1編ごとに深追いしないで、最後まで読みきった方が楽しめるのかも。いや、人によるか。
 とてつもない大技がある訳ではないのだけれども、趣向自体はいかにもこの作者らしく、印象に残りそうです。語弊があるかもしれないけど、作者の「遊び心」をどう受け取るか…ということなのかな。


No.903 7点 眼の気流
松本清張
(2020/08/04 22:33登録)
 やっぱり清張短編はいいですねぇ。作者の女性不信が端々に表れている気がするのですが、単なる不信では言い切れない深みを感じます。④がベストで、②が続くか。
①「眼の気流」 序盤からグイグイ引っ張られます。後半は急ぎまとめた印象も。
②「暗線」 語り手が馳せる想いと、最後の心情の変化が印象深い。短い作品の中に複数の人生を感じさせる手腕。
③「結婚式」 男の幸せって何だろう。
④「たづたづし」 これも印象深い。絶妙な後味を残す好短編。真実はどうだったのか非常に気になる。
⑤「影」 現在の二人が作中で直接接触しない深さ、その余韻。


No.902 6点 犬神館の殺人
月原渉
(2020/07/28 23:40登録)
 ツユリシズカシリーズの第三弾。
 三年前の三重密室と現在の三重密室の二重奏。密室を構成しているのは「鍵箱」と呼ばれる棺桶のような装置。「鍵箱」の中に人間が固定され、施錠される。戸が開けられると、鍵箱の中のギロチンが首を…。「人を殺してまで密室に踏み込もうとする者はいない」という発想ですね。「ほほう」って思いますよねぇ。(私だけか?)
 なお、他の評者の方も書いておられましたが、交互に語られる「三年前」と「現在」の書き分けがイマイチで読みにくい。シズカ以外の登場人物の描き方も薄いため、どっちのパートを読んでいるのか、結構混乱します。工夫できる余地は大いにあったと思いますね。それと、最終的に、三年前と現在をリンクさせた効果がそれほど大きくないような気も…。
 とは言え、このシリーズを通して、個人的には嫌いではないです。全体の「作り物感」がイイ(現実味とか考えてはいけないのだな、と自分を納得させられますし)。そして何よりも、ド直球を投げ込み続けようとする作者の気概が天晴。続けてほしいです。


No.901 6点 記録された殺人
岡嶋二人
(2020/07/25 16:49登録)
 ノンシリーズの短編集ですね。とても読みやすく、好きなタイプの短編集なのですが、一方で、岡嶋二人だけに、もう一歩の踏み込みを求めてしまう自分がいたりもします。いや、水準以上に面白いのですけれどね。
 ベストは、テンポも抜群な表題作でしょうか。「遅れて来た年賀状」も、構図がシンプルなだけに、むしろ印象に残りそうです。


No.900 7点 黒い画集
松本清張
(2020/07/18 22:24登録)
 読みごたえのある、松本清張らしい中短編集。
①「遭難」 緊迫感のある良作。(9点)
②「証言」 「人間の嘘には~」のラスト1行がイイ。(6点)
③「天城越え」 老刑事の執念をもってしても動機は…(8点)
④「寒流」 こんな上司は嫌だ。でも最後はちょっとすっきりしたかも。(6点)
⑤「凶器」 ネタは早めに判ってしまうけれど、ラスト1行は印象的。(6点)
⑥「紐」 個人的にはこの中短編集のベスト。最後まで繰り返す反転が心憎い。(9点)
⑦「坂道の家」 堕ちていく男って哀しいなぁ。「一応ミステリーにしてみました」という、やっつけ感も残るかな。(5点)


No.899 5点 山女日記
湊かなえ
(2020/07/05 20:50登録)
 大人の女性たちの山登り小説短編集…ですかね。どの短編の主人公も悩みを抱えているものの、すべて前向きな結末で、いつもの湊テイストとはちょっと違う感じ。湊さんの山を愛する心が伝わってくるようです。
 読後感も含めて好印象なのですが、ミステリーとは言い難いので、このサイトでの採点はこの辺りにしておきましょう。


No.898 7点 刀と傘 明治京洛推理帖
伊吹亜門
(2020/06/27 21:28登録)
 明治維新の京都を舞台とした連作短編。
 ベストは第12回ミステリーズ!新人賞を受賞した「監獄舎の殺人」。斬首を目前に控えた罪人が何故毒殺されたのか、がポイント。法月氏の「死刑囚パズル」を思い起こしますねぇ。ラストの捻りも印象的です。
 佐賀の乱で有名な江藤新平と、この作品のための架空の人物・鹿野師光との関係性、時代小説としての一面…などなど、短編集全体としても様々な読みどころがあって、好きなタイプの作品でしたね。


No.897 5点 プラスマイナスゼロ
若竹七海
(2020/06/15 23:26登録)
 作者のコージー・ミステリ、「葉崎市シリーズ」の第5弾だそうです。神奈川県の架空の町を舞台にしたこのシリーズ、私は「クール・キャンデー」以外は未読だったのですが、特に問題は無かった(のだと思います)。
 毒が無いわけではないのだけれども、作者の他作品に比べれば薄目。女子高生3人による青春ミステリとしての色合いもあって、文庫版での終盤2短編には、結構ホロっとさせられましたね。


No.896 6点 猫丸先輩の空論 超絶仮想事件簿
倉知淳
(2020/06/13 16:25登録)
 タイトルどおり、まさに「空論」って感じの短編集。猫丸先輩シリーズらしく、スルスルと楽しく読んだのですが、「普通、そこまではしないだろう…」とか、「いやいや、途中で気付くだろう…」とかの突っ込みどころも。それと、繰り返しが多く、間延びしてる印象を受けた短編もあったかな。


No.895 7点 巴里マカロンの謎
米澤穂信
(2020/06/06 16:29登録)
 小市民シリーズ11年ぶりの新作。久しぶりですねぇ。そしてタイトルは「冬期限定~」ではないのですねぇ。
 ベストは「伯林あげぱんの謎」で、謎の置き方と伏線の配置、そして遊び心が好きですね。新たな妹的キャラ・古城秋桜を登場させたうえで、「花府シュークリームの謎」で締めた短編集としての全体構成にも好感。
 小佐内さんと小鳩くんの掛け合い(?)は相変わらず楽しいのだけれども、さてさて、このシリーズは今後どうなるのだろう?


No.894 5点 化学探偵Mrキュリー4
喜多喜久
(2020/05/30 16:17登録)
 シリーズ第4弾。この後もシリーズが続いているってことは、一定売れているのだろうなぁ。Mr.キュリーこと沖野春彦准教授と大学職員・七瀬舞衣のコンビが安心感を生んでいるのでしょうか。
 ちなみに、本書の5短編はいずれも、ミステリとしては正直底が浅いですね。理系要素から無理やり作り出した感もあるし、結末が判り易い短編も多かったです。4.5点の気分で、四捨五入してこの採点か。


No.893 5点 証明
松本清張
(2020/05/17 21:23登録)
 各短編の共通項を見出そうとすれば「男と女」ってことになりますでしょうか。「男と女」とか書きますと、連城短編を思い浮かべる方もいるとは思うのですが、ソコは筆致から全く異なる清張短編。嗚呼、松本清張を読んでるんだなぁ…としみじみ感じることができます。
 ちなみに、「密宗律仙教」はある意味で凄いです。どうなんだ、どうにかできなかったものか。


No.892 6点 心とろかすような−マサの事件簿
宮部みゆき
(2020/05/06 22:30登録)
 前作「パーフェクト・ブルー」に比して、蓮見探偵事務所の用心棒(元警察犬)「マサ」の語りが格段に多くなった短編集。「マサ、留守番する」はタイトルのとおりで、加代ちゃん・糸ちゃん・所長さんはほぼ登場しないですしね。
 筋立てはさすがにしっかりしているし、苦みがある一方での温かみを感じられて楽しめましたよ。


No.891 6点 Iの悲劇
米澤穂信
(2020/03/30 23:10登録)
 合併で誕生した南はかま市。全住民が退去した山間の集落へのIターン支援プロジェクトを実施するのは、課長を含む3名の職員で組織される「甦り課」。選ばれた「移住者」は、それぞれ一癖ありそうで…という設定での連作短編集。
 限界集落の現実だとか、Iターンの実情だとか、地方公務員の日常だとか、現実味が有りそうで実は無さそうな、逆に無さそうで確かに有りそうな、そんな印象。ラストで印象がごちゃごちゃになった感もあります。新しい形の社会派作品、と言えるかもしれませんね。


No.890 7点 東海道新幹線殺人事件
葵瞬一郎
(2020/03/18 21:03登録)
 図書館で書架を眺めていたところ、結構新しい本であるにもかかわらず、今時では珍しい昭和感あふれるタイトルに目が留まりました。「俺は試されているのか?」という、そこはかとない不安を抱きながらあらすじを拝見しますと、謎自体は結構好みのタイプっぽい。では読んでみるか…といった流れで手にした次第です。これも出版社の戦略なのでしょうか。結構リスキーだと思うのですがね。
 で、読後の第一印象としては、何気にいいモノ見つけちゃった、って感じ。序盤のアリバイトリックは、なぜに警察が気付かないのか?といったレベルのもので、まさかコレで引っ張り続ける訳ではないよな…と不安だったのですが、ソレは単なるストーリーの一部というか導入部であって、中盤以降の展開が結構面白い。前の評者の方がおっしゃるとおり、トリックとしては、私も「黒いトランク」と「マジックミラー」を思い浮かべましたね。そして、作者は、おそらく西村京太郎と内田康夫のファンなのでしょうね。
 一方で、文章は決して上手とは言えないかな。サクサクと面白く読ませてはいただいたのですけれどもね。


No.889 6点 猫は知っていた
仁木悦子
(2020/03/15 22:05登録)
 昭和31年に書かれたとは信じられないほど読みやすく、その点は驚かされました。その当時の東京の生活様式が表れているのも、ある意味で新鮮。二木兄妹が現存しているとすれば80歳は超えている訳で、その二人が大学生の時の事件…と考えながら読むのも一興か。
 ワクワクしながら読ませていただきましたし、幅広い謎が明らかになる過程も楽しい。しかしながら、やはりどうしても、複数の登場人物の行動の不自然さが気になってしょうがなかったですねぇ。60年以上前は不自然じゃなかった?…ってことにはならないですねぇ。名作ではあるが、その辺りは気になったかな。


No.888 9点 刺青殺人事件
高木彬光
(2020/03/14 19:09登録)
 作者のデビュー作にして、名探偵・神津恭介の初登場作品。作者は幼い頃から刺青に興味があったとのことですが、その刺青の活かし方が抜群で、正統派の本格作品に色を添えています。否、色を“添えている”というよりも、色そのものが作品って感じか(ちょっと意味不明か)。種々のミステリベスト選出モノで常に取り上げられることも納得です。

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