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ミステリの祭典

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水の肌

作家 松本清張
出版日1978年10月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 まさむね
(2020/12/10 18:29登録)
 5編が収録された短編集。
 「留守宅の事件」のみ、別の短編集(証明)で読んでいて再読となりましたが、結果としては、この短編がベストの印象。いわゆる「アリバイ物」なのですが、「だんだん近づけていく」動きや、想定外の証言者などの工夫に作者らしさを感じます。
 「小説 3億円事件」は、この作品に込められた作者の推理自体が有名であるので、むしろその内容を淡々と確認させていただいたといった印象。
 表題作は、急いでラストに持っていきましたといったイメージで、主人公の身勝手さだけが印象に残りそうです。

No.1 5点 E-BANKER
(2018/02/10 21:04登録)
1978年。新潮社で編まれた作品集。
~表題作をはじめ測りがたい人間の愛憎と欲望をテーマに、現代社会の不確実な内面を抉る推理小説集~とのことだが・・・

①「指」=清張作品でたびたび目にする趣の作品。要するに「因果応報」っていうことなんだろうけど、まさに“人間の愛憎と欲望”の行く末っていう感じだ。が、外目には「何も殺さなくても・・・」っていう気になってしまう。
②「水の肌」=こういう人間(特に男)はよくいるんじゃないか。プライドが異様に高くて、自分がへりくだることができない奴・・・。とにかくいけ好かないのだが、こういう奴に限って犯罪まで引き起こしてしまうのだ・・・。とにかく付き合わないに限る。
③「留守宅の事件」=①②とは打って変わって、アリバイ崩しがテーマとなる作品。かなり堅牢なアリバイに見えたのだが、最後はアッサリと解決する。まっ、昭和三十年代ですし、清張ですから・・・
④「小説 3億円事件」=例の戦後の大事件。実は3億円事件って、あまり知らないんだよねぇ・・・。ということで、読んでても今ひとつピンとこなかった。
⑤「擬視」=“冤罪”テーマということでいいのだろうか? 最後は「なんだそりゃ!」的な終わり方だった・・・

以上5編。
清張の作品集としては小品、中の下という出来栄え。
さすがにうまくまとめてはいるけど、斬新なアイデアや熱意はあまり感じられなかった。

その分、ネチネチした感覚や戦後の暗~い雰囲気もないので、軽い読書には適しているかも。
特に③はアリバイトリックとしては、鮎川作品に通じるものもある。
評価としては・・・こんなもんだろう。

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