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ミステリの祭典

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バック・ステージ

作家 芦沢央
出版日2019年09月
平均点5.50点
書評数4人

No.4 6点 ぷちレコード
(2021/09/26 22:10登録)
卓抜した心理描写を駆使したシリアスなサスペンスを描いた作品が多い中、本作はかなりポップな読み口になっている。(もちろん、ヒリヒリするような感情に迫るサスペンスもあるが...)
連作短編集の形をとっており、その仕掛けの鮮やかさには驚かされた。

No.3 6点 まさむね
(2020/11/14 22:39登録)
 連作短編集。本筋のストーリーがあり、その合間に4つの短編が挟み込まれているといった構成です。
 4つの短編の中では、第二幕の「始まるまで、あと五分」がベストかな。本筋のストーリーについては、痛快ではあったけれども、あっさり纏めすぎのような気もしましたね。「へぇ、芦沢さんって、こういうタイプの作品も書くんだなぁ」というのも、率直な感想。読後感は良いです。

No.2 6点 HORNET
(2020/07/05 21:26登録)
 嫌なパワハラ上司の悪事を暴こうと、休暇を取って調査をする男女社員。証拠となる通帳のコピーをゲットしたところで、たまたま居合わせた女子高生に鞄を取り違えられてそのコピーを持っていかれてしまう。女子高生の行く先は、もっぱら話題の舞台の初日。舞台俳優、マネージャー、観客、そして男女社員、それぞれの人たちの物語が微妙に交錯する短編集。

 それぞれのストーリーが緻密に絡み合って一本の筋になっているわけではなく、たまたま「同じ場所で起こった出来事」のそれぞれの短編集の体が強いが、結果としてそれでよかったと思える。一つ一つの話にドラマ性があり、無理に絡めようとするとそれが損なわれたかもしれない。
 ラストもハッピーエンドで、読後感もよかった。時間の空いた時に読むにはちょうどいい短編集。

No.1 4点 E-BANKER
(2019/10/08 21:22登録)
~パワハラ上司の不正の証拠を掴みたい先輩社員康子とその片棒を担ぐハメになってしまった新入社員の松尾。ふたりは紆余曲折の末、自社がプロモーションする開演直前の舞台に辿り着く。劇場周辺では息子の嘘に悩むシングルマザーや役者に届いた脅迫状など四つの事件が起きていた・・・~
2017年の発表。

①「序幕」=序幕、つまり始まりです。紹介文のとおり、松尾が康子に巻き込まれるさまが描かれる。
②「息子の親友」=これは分かるなぁー。親の気持ちとしては、自分の子供はみんなに愛される存在であって欲しい。ましてや無視される存在になんてなって欲しくない。兄と弟の関係もなんか・・・分かる。
③「始まるまで、あと五分」=年頃の女性は変わるものといったって、いくらなんでも分かると思うけどねぇ・・・。そりゃ女性からすればショックかもしれないけど、その場で訂正しろよ!って思ってしまう。
④「舞台裏の覚悟」=これが役者魂というやつ? こんなことで悩んでるような役者は大成しないと思うけどね。
⑤「千賀稚子にはかなわない」=老婦人役といえばこの人・千賀稚子!(もちろん作中だけの話)。認知症の気配が見え始めた大女優にマネージャーである女性は焦りを覚えて・・・
⑥「終幕」=終幕、つまり終わりです。なんか収まりが悪いというか、無理やり結末をつけたというか。要するにチープです。

以上6話から構成(文庫版はラストに「カーテン・コール」が追加)。

お手軽な作品。
このように紹介すると何だか一本の舞台作品のように見えるけど、実態は寄せ集めたものを何とかつないでみましたという感じ。
間に挟まった②から⑤はまずまず面白いけど、物語をつなげるはずの本筋が全くつまらない。
よって、結局締まりのない読後感になってしまう。

文量的には手頃だから、ちょっとした空き時間の読書には向いてるかも。
作者の場合、作品ごとの濃淡というか、熱量の多さに差があるような気がする。
本作はもちろん「軽い」方です。

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