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ミステリの祭典

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立待岬の鷗が見ていた
函館物語シリーズ

作家 平石貴樹
出版日2020年07月
平均点5.75点
書評数4人

No.4 7点 測量ボ-イ
(2023/06/25 21:15登録)
まさむねさんとほぼ同意見で、地味ながら良い作品。
第一の殺人のトリックは、平凡ながら凝っています。
鮎哲さんの作品にもありそう。
不満点あるとすれば、第二の殺人で現場見取り図かなく
わかりにくいところか?
実は筆者はつい2ケ月ほど前に旅行で函館を訪れ、その
ときの記憶をたどることもできて楽しい読書でした。

<追記>
前の書評でキリ番600。500から600まで5年もかかっ
てます。1000の大台はまだ遠いです。

No.3 6点 まさむね
(2020/11/29 22:09登録)
 岬シリーズ(と勝手に呼んでいる)の第2弾。前作「潮首岬~」と比べて地味です。と、いうか一般論としても地味でしょう。作中作の内容や、その使い方も含めて地味でしたね。
 でも、個人的には嫌いではないタイプの作品。方言や情景の描写など、函館の雰囲気を感じられたからなのか、何というか、安心して読めたのですよね。丁寧な地味さの心地よさ。

No.2 5点
(2020/10/26 11:32登録)
 5年前に起きた連続殺人・傷害致死事件。美貌の作家として注目され始めた柚木しおりは、その一連の事件の関係者だった。彼女の作品を読んだことをきっかけに、舟見警部補は以前にも事件の解決を導いた青年ジャン・ピエールに、再び捜査協力を依頼。関連があるのかどうかも分からなかった3つの事件について当時の記憶を辿り始める。
 積み重ねられた事実と痕跡で、見えてくる事件の真相!
 「このミス」2020年版:第10位にランクインした『潮首岬に郭公の鳴く』に続いて発表された、ジャン・ピエール・プラットシリーズ第二弾。2020年7月刊。今回は湯ノ川署警部補・船見俊介の依頼を受けて、二〇一三年三月冬に函館山周辺部で立て続けに起きた、三つの事件の謎に挑みます。タイトルに掲げられている立待岬での最後の事件(事故?)が、イレギュラー的な轢き逃げで犯人も別人臭く、各事件がリンクしてるようなそうでもないような雰囲気なのがミソ。
 〈微妙〉〈地味〉と割とボロクソ批評されてますが、この手のミステリは結構好きなのでそこまで苦痛には感じませんでした。前作同様題名が暗示的なところも良いです。構想としてはそんなに劣っていませんね。
 ただ問題なのは悪意の不在。良くも悪くも『潮首岬~』は、犯人像が最後の告白込みで読者に強い印象を残しますが、こちらはそういった要素皆無。一部真相に触れる為詳細は省くとして特にドラマ的な素晴らしさとかもなく、比較するとややセールスポイントに欠けます。まあ〈今度は八つ墓村〉という訳にもいかないので、それだけ掴みが弱くなるのは仕方無いんですが。
 ミステリとしては作中作から導かれるジャン・ピエールのプロファイリング「無意識のパターン」がキモですが、これは平石氏自身の著作にもかなり当て嵌ってくる事なのでどうなのかな。あまり持ち上げるほどでもないような。前作の場合世間の注目も集まってたし、確たる裏付けも出てきたしで良かったんですけどね。今回の場合数年前の事件で証拠も弱いため、このスピーチで決定打という訳には行きません。
 総合的に纏めると・・・やはり地味かな(笑)。立待岬関連はまあまあですが、そこをとっぱずすとちょっとしょぼくさい。若干落ちるけど前作とあまり差を付けるのも何なので5.5点。その辺にしときます。

No.1 5点 nukkam
(2020/08/24 21:47登録)
(ネタバレなしです) 2020年発表の函館物語シリーズ第2作の本格派推理小説です。シリーズ前作の「潮首岬に郭公の鳴く」(2019年)の作中時代は2016年ですが、本書ではそれより前の2013年に起きた未解決事件の謎解きに挑戦します。三つの事件が紹介されるのですが三番目の事件は轢き逃げ殺人で、目撃者情報により轢き逃げ犯が逮捕されて自供までしているので未解決かというと微妙ですが(被害者が第二の事件の容疑者ではあるのですけど)。第4章で容疑者である作家が書いた3つの小説と1つのエッセイから船見警部補が事件を解くヒントを得られないかと試みてますがこの作家が決定的な容疑者というわけでもなく、また仮に犯人だとしても自作でヒントを与えるような自爆的行為をするはずないだろうとこれまた微妙な展開です。まあ事件自体も捜査も地味なので物語のアクセントとしては悪くないですけど。容疑者のちょっとしたミスに着目しての謎解きは丁寧ですが、派手な手掛かりも切れ味鋭いトリックもなく最後まで地味に終始した感があります。

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