まさむねさんの登録情報 | |
---|---|
平均点:5.86点 | 書評数:1195件 |
No.895 | 7点 | 巴里マカロンの謎 米澤穂信 |
(2020/06/06 16:29登録) 小市民シリーズ11年ぶりの新作。久しぶりですねぇ。そしてタイトルは「冬期限定~」ではないのですねぇ。 ベストは「伯林あげぱんの謎」で、謎の置き方と伏線の配置、そして遊び心が好きですね。新たな妹的キャラ・古城秋桜を登場させたうえで、「花府シュークリームの謎」で締めた短編集としての全体構成にも好感。 小佐内さんと小鳩くんの掛け合い(?)は相変わらず楽しいのだけれども、さてさて、このシリーズは今後どうなるのだろう? |
No.894 | 5点 | 化学探偵Mrキュリー4 喜多喜久 |
(2020/05/30 16:17登録) シリーズ第4弾。この後もシリーズが続いているってことは、一定売れているのだろうなぁ。Mr.キュリーこと沖野春彦准教授と大学職員・七瀬舞衣のコンビが安心感を生んでいるのでしょうか。 ちなみに、本書の5短編はいずれも、ミステリとしては正直底が浅いですね。理系要素から無理やり作り出した感もあるし、結末が判り易い短編も多かったです。4.5点の気分で、四捨五入してこの採点か。 |
No.893 | 5点 | 証明 松本清張 |
(2020/05/17 21:23登録) 各短編の共通項を見出そうとすれば「男と女」ってことになりますでしょうか。「男と女」とか書きますと、連城短編を思い浮かべる方もいるとは思うのですが、ソコは筆致から全く異なる清張短編。嗚呼、松本清張を読んでるんだなぁ…としみじみ感じることができます。 ちなみに、「密宗律仙教」はある意味で凄いです。どうなんだ、どうにかできなかったものか。 |
No.892 | 6点 | 心とろかすような−マサの事件簿 宮部みゆき |
(2020/05/06 22:30登録) 前作「パーフェクト・ブルー」に比して、蓮見探偵事務所の用心棒(元警察犬)「マサ」の語りが格段に多くなった短編集。「マサ、留守番する」はタイトルのとおりで、加代ちゃん・糸ちゃん・所長さんはほぼ登場しないですしね。 筋立てはさすがにしっかりしているし、苦みがある一方での温かみを感じられて楽しめましたよ。 |
No.891 | 6点 | Iの悲劇 米澤穂信 |
(2020/03/30 23:10登録) 合併で誕生した南はかま市。全住民が退去した山間の集落へのIターン支援プロジェクトを実施するのは、課長を含む3名の職員で組織される「甦り課」。選ばれた「移住者」は、それぞれ一癖ありそうで…という設定での連作短編集。 限界集落の現実だとか、Iターンの実情だとか、地方公務員の日常だとか、現実味が有りそうで実は無さそうな、逆に無さそうで確かに有りそうな、そんな印象。ラストで印象がごちゃごちゃになった感もあります。新しい形の社会派作品、と言えるかもしれませんね。 |
No.890 | 7点 | 東海道新幹線殺人事件 葵瞬一郎 |
(2020/03/18 21:03登録) 図書館で書架を眺めていたところ、結構新しい本であるにもかかわらず、今時では珍しい昭和感あふれるタイトルに目が留まりました。「俺は試されているのか?」という、そこはかとない不安を抱きながらあらすじを拝見しますと、謎自体は結構好みのタイプっぽい。では読んでみるか…といった流れで手にした次第です。これも出版社の戦略なのでしょうか。結構リスキーだと思うのですがね。 で、読後の第一印象としては、何気にいいモノ見つけちゃった、って感じ。序盤のアリバイトリックは、なぜに警察が気付かないのか?といったレベルのもので、まさかコレで引っ張り続ける訳ではないよな…と不安だったのですが、ソレは単なるストーリーの一部というか導入部であって、中盤以降の展開が結構面白い。前の評者の方がおっしゃるとおり、トリックとしては、私も「黒いトランク」と「マジックミラー」を思い浮かべましたね。そして、作者は、おそらく西村京太郎と内田康夫のファンなのでしょうね。 一方で、文章は決して上手とは言えないかな。サクサクと面白く読ませてはいただいたのですけれどもね。 |
No.889 | 6点 | 猫は知っていた 仁木悦子 |
(2020/03/15 22:05登録) 昭和31年に書かれたとは信じられないほど読みやすく、その点は驚かされました。その当時の東京の生活様式が表れているのも、ある意味で新鮮。二木兄妹が現存しているとすれば80歳は超えている訳で、その二人が大学生の時の事件…と考えながら読むのも一興か。 ワクワクしながら読ませていただきましたし、幅広い謎が明らかになる過程も楽しい。しかしながら、やはりどうしても、複数の登場人物の行動の不自然さが気になってしょうがなかったですねぇ。60年以上前は不自然じゃなかった?…ってことにはならないですねぇ。名作ではあるが、その辺りは気になったかな。 |
No.888 | 9点 | 刺青殺人事件 高木彬光 |
(2020/03/14 19:09登録) 作者のデビュー作にして、名探偵・神津恭介の初登場作品。作者は幼い頃から刺青に興味があったとのことですが、その刺青の活かし方が抜群で、正統派の本格作品に色を添えています。否、色を“添えている”というよりも、色そのものが作品って感じか(ちょっと意味不明か)。種々のミステリベスト選出モノで常に取り上げられることも納得です。 |
No.887 | 5点 | 魔法使いと最後の事件 東川篤哉 |
(2020/03/02 22:44登録) 「魔法使いマリィ」シリーズの第4弾にして最終巻(らしい)。まぁ、ハッピーエンドなのだろうけれども、何となく中途半端な印象も受けましたね。 収録された短編はいすれも倒叙モノで、ネタとしては可もなく不可もなくといったところですが、犯行現場に残された傘がキーとなる「魔法使いと五本の傘」がベストかな。 ちなみに、個人的には、主人公マリィよりも、椿木綾乃警部の思考?の方が気に入ってます。作者への貢献度という面でも、マリィを凌駕していました。 |
No.886 | 7点 | むかしむかしあるところに、死体がありました。 青柳碧人 |
(2020/02/27 23:10登録) 一寸法師、花咲か爺さん、鶴の恩返し、浦島太郎、桃太郎と、皆様ご存じの昔話をモチーフにした短編集。結構売れているようですね。昔話の舞台設定と本格要素とが、ほどよく融合していて、楽しく読ませていただきました。 昔話の設定を最も忠実に再現(?)しているのが、浦島太郎をモチーフにした「密室龍宮城」か。「つるの倒叙がえし」の仕掛けも嫌いじゃない(蟷螂の斧さんの書評のとおり、私もタイトルには疑問を感じるけど)。 昔話の舞台設定と本格要素との融合という観点では、「そして誰も~」を彷彿とさせる最終話「絶海の鬼ケ島」がベストか。それまでの短編における「アイテム」を登場させたりする辺りも心憎い。楽しかったな。 |
No.885 | 6点 | 平成ストライク アンソロジー(国内編集者) |
(2020/02/23 12:18登録) 福知山線脱線事故、児童虐待、新宗教、消費税、東日本大震災…平成時代の事件・事象を、9人の作家が各々のテーマで紡ぐ短編集。青崎有吾・井上夢人・千澤のり子・遊井かなめ・小森健太朗・白井智之・乾くるみ・貫井徳郎・天祢涼が名を連ねています。 個人的には千澤のり子「半分オトナ」の仕掛け、白井智之「ラビットボールの切断」における“作者らしさ”が印象的だったかな。他の作品も含め、こういった形で平成を振り返るのも悪くないですね。「平成って、実は俺の人生の多くを占めたんだよなぁ…」と感じ入った次第です。 |
No.884 | 6点 | パーフェクト・ブルー 宮部みゆき |
(2020/02/17 23:09登録) 「そういえば、宮部作品って、短編集しか読んでないような気がするなぁ。長編も読んでみるか」と、今更ながら思い至り、ならばデビュー長編から…と手にした次第です。(家族が宮部作品の文庫版を多々所有していたことも少なからず影響しています。) 場面変更のぎこちなさ等、特に中盤までは「若書き」の印象も抱いたのですが、ストーリーとしてはグイグイ引き込まれました。全体の緩急も程よく、今後ベストセラー作家に駆け上がる素養は十分に感じることができましたね。 |
No.883 | 5点 | 道具箱はささやく 長岡弘樹 |
(2020/02/11 18:49登録) 10数ページの短編18本から成る短編集。1編がすぐに読み切れる長さだし、結末としても一定の幅(ほっこり系からブラック系まで)があるので、スキマ読書としてはいいのかも。 一方で、気になった点も。まずは、18短編もあるのだからやむを得ない面もあろうとは思うのですが、この短編集内でのネタ被りが散見されたこと。さらに、そのうちの一つは、他の短編集からのネタの使い回しと言って差し支えなさそうなこと。最初に読んだ時は「ほほう」と感心したのですが、こう何回もコピーされまくられると…。それと、これはあまり言いたくないけれども、登場人物の行動に「いやはや、無理があるでしょ」とか「いやいや、そんな迂遠なことはやんないでしょ」と感じすにはいられないこと。 何かトリビア的な知識を得たら、それを無理やり使って(こじつけて)物語に仕立て上げよう…そんな姿勢が浮かび上がってきます。なので、中身としては決して深くはなりません。個人的には、ブラック系の短編の方が「読めた」印象。 |
No.882 | 5点 | 珈琲店タレーランの事件簿5 岡崎琢磨 |
(2020/02/09 21:49登録) シリーズ第5弾。元々「ビブリア古書店」シリーズとの類似性を感じてはいたけれども、今回扱っているのが「源氏物語」だけに、もはや登場人物を入れ換えても読めちゃうような気がします(笑)。 全体として悪くはないのだけれども、「何やら面倒なことになってるなぁ(面倒なことをしてるなぁ)」と、色んな意味で感じちゃったかも。技巧面や登場人物の行動面も含め、広い意味でね。 |
No.881 | 4点 | 朝比奈うさぎの謎解き錬愛術 柾木政宗 |
(2020/02/07 22:30登録) 美少女女子大生「朝比奈うさぎ」のキャラ、「迅人さんはうさぎのこと、好きなのですね」辺りの決め台詞に、最初は結構戸惑いましたね。いや、最後まで結構戸惑ったかな。「新感覚ラブコメ本格ミステリ」との謳い文句ですが、ラブコメ要素もミステリ要素も、特筆する部分は少ないかも。最終話での捻りや伏線回収は、この作者の得意パターンではあるのですが、本作では絶大な効果とまでは言い難いですね。4点と5点の間といった印象かな。 |
No.880 | 6点 | 化学探偵Mrキュリー3 喜多喜久 |
(2020/02/02 19:01登録) 理学部化学科の准教授(沖野春彦)と大学庶務課に所属する新人事務員(七瀬舞衣)のコンビによるシリーズ第三弾。ガンガン続編が出ていますし、一定の人気を獲得しているのでしょう。非常に使い勝手が良さそうなコンビで、舞台は多様な人々が集まる大学、理系知識も活かしやすい…ということで、作者にとっては抜群のポジションを獲得したように思います。 軽く読む分には悪くない短編集、という意味での安定感はあります。キュリーと化学少年の交流が微笑ましかったな。 |
No.879 | 6点 | 駅路 松本清張 |
(2020/01/27 22:14登録) やっぱり、清張短編は響くなぁ…という印象。一方で、別短編集「張込み」の収録作と比べると、本作の方が清張の研究気質が強く出ている影響もあるのか、スパッと切り取る鋭利さという面では、多少劣る気もします。あくまでも「張込み」収録作との相対比較であって、水準以上であることは間違いないのですが。 いくつかの短編の短評を(丸数字は新潮文庫の掲載順番)。 ①白い闇:読むのは多分3度目かな。何度読んでもラストシーンが印象深い。 ④巻頭句の女:短尺でありながら、読中あれこれ想像させられる展開は流石。 ⑤駅路:あの時代だからこそという面がある一方で、サラリーマンの本質は変わっていないかもという面が何気に興味深い。 ⑧薄化粧の男:ミステリーとしても面白いのだけれども、個人的には2つ目の「死」に至る心情に想いを馳せざるを得ない。 ⑩陸行水行:「邪馬台国」問題。若い時分に読んで、途中で挫折したような気がする。今読んでみると、奇妙な味わいのある作品とは言えるかな。 |
No.878 | 7点 | 新鮮 THE どんでん返し アンソロジー(出版社編) |
(2020/01/19 23:47登録) 新進気鋭の作家による短編集。総じて楽しめましたね。 1 密室竜宮城(青柳碧人) 全体のトリックは措くとしても、お伽噺の世界の変転のさせ方が楽しく、昨年話題となった作者の単行本「むかしむかしあるところに、死体がありました。」も読んでみようかな、という気にさせられました。(本短編も収録されているようですし。) 2 居場所(天祢涼) 社会派短編と言ってよいかも。ラストの余韻がなかなか沁みます。 3 事件をめぐる三つの対話(大山誠一郎) 会話のみで構成された作品。そういった構成例は多々ありますが、最終的にはその構成自体にニヤリとさせられます。 4 夜半のちぎり(岡崎琢磨) ちょっと予想しやすいかな。このアンソロジーの中では目立たない。 5 筋肉事件/四人目の(似鳥鶏) 類似例があるとはいえ、丹念に作り込まれていることは間違いなく、二度読み率も高いだろなぁと思います。 6 使い勝手のいい女(水生大海 ) サスペンス風。簡単に揺さぶられ、単純に引っかかりました。 |
No.877 | 7点 | 潮首岬に郭公の鳴く 平石貴樹 |
(2020/01/14 22:22登録) 精緻に組み上げられた正統派の本格作品といった印象。確かに、登場人物が多く、しかも何やら裏(の関係)がありそうな人物ばかりなので、度々「振り返り」をしながら読み進めざるを得ない面もあったのですが、最終的には「だからこその面白味」があったのも事実。終盤の絵解きは読みごたえがあり、正直、真相にも驚かされました。「松谷警部シリーズ」に比して本格度数も高く、作者の「北海道愛」が示されている辺りにも好感。終盤に浮かび上がってくるタイトルも印象的です。 |
No.876 | 6点 | 長崎・ばてれん列車殺人号 辻真先 |
(2020/01/09 22:45登録) 個人的な話で恐縮ですが、昨年の秋に松浦鉄道を辿って平戸を訪れる機会がございました。急ぎ足の観光となりましたが、平戸島の方々も大変親切で、今度はもっとゆっくりと訪れてみたいとものだと感じました。年を越し、古本屋の新春セールで見かけたのが本書。平戸の印象が鮮明であったこともあり、詳しい内容も確認せずに、思わず手にしたものです。 テツに造詣の深い辻御大だけに、鉄道系アリバイを使ってくるのかと勝手に想像していたのですが、内容としては密室×2でしたね。1つ目の密室については、まぁ積極的なコメントはしにくいですが、メインの密室や人間関係を含めた全体構成は流石に堅実ででした。会話など、ちょっとむず痒い書きぶりもございましたが、個人的な旅愁も手伝って、なかなか楽しめましたよ。 |