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ミステリの祭典

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赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。
昔話ミステリ

作家 青柳碧人
出版日2020年08月
平均点5.75点
書評数4人

No.4 6点 E-BANKER
(2023/03/03 19:09登録)
作者の初読みとなる今回。シリーズとしては本来「むかしむかしあるところに死体がありました」から先に読むべきかもしれないが・・・(仕方ないだろう)
誰もが知っている西洋の童話を下敷きにしたブラック風味の連作短編集。
単行本は2020年の発表。

①「ガラスの靴の共犯者」=タイトルどおり「シンデレラ」が下敷きとなる作品。改めて指摘されると、「シンデレラ」って“灰かぶり”が名前の由来になっていて、決して〇〇シンデレラっていうひたすら美しく、良いイメージの現在とはかけ離れたネーミングになっている(今さら、という方も多いでしょうが)。で、本題としてはまぁジャブ程度という評価で。
②「甘い密室の崩壊」=これは「ヘンゼルとグレーテル」じゃなくて、「青い鳥」と言えばいいのか? 密室の対象は当然「お菓子の家」。なのだが、甘いお菓子の特性が密室トリックのカギを握る。(まさかアレがないとはね・・・)
③「眠れる森の秘密たち」=「眠れる森の美女」である(当然)。12人の魔法使いによって12の幸せが与えられるはずだった王女が、ひとりの意地悪な魔女のせいで100年もの眠りについてしまった。それはいいとして、赤ずきんが推理した真相はなかなか手が込んでいる。ていうか、偶然の連続というヤツ。こんなことが一晩で起こって、それを看破する赤ずきん、なんてシュール!
④「少女よ、野望のマッチを灯せ」=連作のシメは「マッチ売りの少女」である。金の亡者と化した「マッチ売りの少女」なんて見たくない! で、連作のラストらしく伏線は回収されていくわけなのです。最後は童話らしく“因果応報”なラストが待ち受けています・・・

以上4編。
うーん。面白いといえば、面白い。かな。
子供のころ誰もが接したことのある西洋の童話を下敷きに、21世紀の現在らしい皮肉も込めてのラストがどれも用意されている。連作っぽい仕掛けは今イチかなとは思ったけど、まずまず万人が楽しめる内容にはなっている。

童話が実は恐ろしい裏面を持っている、というのは今や常識といってもいいし、本作に出てきた童話もきっとドロドロした経緯がそれぞれあるんだろうね。
赤ずきんの名探偵ぶりもなかなか決まっていて、オオカミとの有名なシーンを彷彿させる一幕なども用意されていて、思わずニヤリ!
(②や④のブラック風味がよかったと思う)

No.3 6点 まさむね
(2021/06/07 23:21登録)
 昔話ミステリ第2弾。
 前作のテーマが「日本昔話」だったのに対し、今回は「西洋童話」で、「シンデレラ」「ヘンゼルとグレーテル」「眠れる森の美女」「マッチ売りの少女」 が元ネタ。
 前作との一番の違いは、探偵役を固定したことでしょうか(タイトルどおり「赤ずきん」が探偵役)。連作短編としてのメリットは当然ありましょうが、一方で、各短編の変化を付けにくい(思い切った設定変更がしにくい)デメリットも否定できない。まぁ、本作は連作短編として綺麗に締めた方が印象に残っていいのかも。各短編は、パロディのパターンが似通っている印象もありましたが、ファンタジックな側面を巧く活用したりして、結構楽しかったですよ。

No.2 5点 YMY
(2020/11/03 19:56登録)
赤ずきんがシンデレラとカボチャの馬車でお城の舞踏会に出掛ける時に男をひき殺してしまう「ガラスの靴の共犯者」、ヘンゼルとグレーテルによる犯罪を赤ずきんが解明していく「甘い密室の崩壊」、お城で眠り続けるお姫様のもとで殺人事件が起きる「眠れる森の秘密たち」、マッチ売りの少女が社長になり世界に不幸をもたらす「少女よ、野望のマッチを灯せ」の4作。
アリバイ、密室、ダイイングメッセージなどを用いた緊密なミステリ劇だった前作に比べると謎解きの面白さはやや薄いが、そのかわり童話を大胆奇抜に作り替えて、悪意と皮肉をまぜた大人の残酷劇にして秀逸。ピカレスクものとしてのシンデレラやヘンゼルとグレーテルの話も面白いが、マッチを夢見る麻薬になぞらえる「少女よ、野望のマッチを灯せ」が薬物依存を主題にして、なかなか鋭く現代的。

No.1 6点 文生
(2020/09/20 09:52登録)
赤ずきんちゃんを探偵役に据えた連作ミステリーであり、「シンデレラ」「ヘンゼルとグレーテル」「眠り姫」「マッチ売りの少女」といった原典のネタをミステリーに上手くアレンジしてそれなりに楽しめる作品に仕上がっています。
ただ、着想の奇抜さ、トリックの面白さなどに関しては前作の「むかしむかしあるところに、死体がありました。」のほうが数段上です。本作の場合、探偵役を固定して普通の本格ミステリのフォーマットに落とし込んだために、無難にまとまりすぎた感があります。

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