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ミステリの祭典

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江守森江さんの登録情報
平均点:5.00点 書評数:1256件

プロフィール| 書評

No.1216 6点 ポアロ登場
アガサ・クリスティー
(2011/02/14 04:53登録)
今日はバレンタインデー、チョコレート絡みで書評してない乙一や「インディゴ」シリーズは読む気にならなかった。
そこでポアロの失敗譚が描かれた「チョコレートの箱」が思い出され、収録された本書を図書館で読んで来た。
各話短く、しかもスーシェ版ドラマやNHKで放送したアニメで観た話なので結局おさらい読書になった。
各話の分量を考えるとスーシェ版ドラマの方が楽しみは大きいと思う。
スーシェはポアロになりきるために原作を読み込んだらしいので自分もスーシェになった気分で本書を読めばより楽しいだろう。
※以下バレンタインの余談
嫁は中国人ハーフ(トリリンガル)で、広州・シンガポールを経て来日したので、私と知り合って最初の情人節(バレンタインデー)では「アナタがプレゼントと愛の囁きを持って来ると思い家で待ちぼうけした」と後日痴話喧嘩の際に愚痴った。
それを踏まえ私は、翌年の情人節に指輪とプロポーズの言葉を携え嫁の家に向かった・・・・・・・・そして、今に至っている。
あれから十ウン年・・・・・嫁も日本人化して今年は私の好きなサンクスの「デカチョコプリン」と「チョコ餅」をセットでくれるらしい(←これって本命チョコなの?)
息子と一緒に中学受験の面倒をみている息子の彼女も今年は義理チョコをくれるらしい(将来そのまま家の嫁になってしまうのだろうか?当人同士と嫁同士には既定路線らしい)


No.1215 6点 相棒シーズン7下
碇卯人
(2011/02/14 03:57登録)
亀山薫退場、そして右京の単独捜査(相棒モドキが続々登場)最終回に新相棒・神戸尊登場とシリーズの転換点となるシーズン7。
今シーズンから上中下と3分冊になった最終巻。
ドラマ放送からの時間経過も短く何度も再放送され(テレビに毒され毎回視聴してしまう)印象が強いので図書館入荷を待たず書店に出向きおさらいな立ち読み(小一時間)で済ませた。
右京の単独捜査エピソードは陣川登場以外さして読み所がない。
逆に右京の学生時代の話は突っ込み所が満載で、放送当時2ch書き込みでの侃々諤々は楽しかった事が思い出された。
ラストの新相棒がミッチーだとの噂に今後はどうなるのかと思ったが、今では週間ドラマ視聴率ナンバーワンを大河ドラマと争っているのだから心配無用だった。
最終回のエピソードは次シーズンに繋がる良作だろう。
※ドラマ配役での余談
相棒連ドラ開始エピでの主演女優が純名里沙で、今シーズン最終回に再登場か?と思ったら宮本真希だった(宝塚関係に詳しい方々には似てると評判だったらしい)
恥ずかしい話だが、ドラマのストーリーや新相棒のミッチーより、宮本真希の《セーター下のたわわなおっぱい》に目が釘付けで、貧乳フェチではあるが巨乳も好きだと相棒を観て認識するとは思わなかった。
その後、宮本真希のヌード映像があると知りネット検索までしてしまい、嫁(一応美乳)に見つかり「私とどっちが良い」と責め立てられた。


No.1214 5点 スタイルズ荘の怪事件
アガサ・クリスティー
(2011/02/12 09:12登録)
スーシェ版ドラマ65作品のDVD&マガジン発売のテレビCMが鬱陶しいのは吹替が熊倉さん(昨年末の紅白歌合戦で「ゲゲゲの鬼太郎」を熱唱)ではないからだろうか?
ポアロのデビュー作にしてスーシェ版ドラマではクリスティー生誕100周年の記念作品でもある。
最初の作品にしてクリスティーらしいのだが、クリスティー作品を数作読んだ程度で読まないと犯人隠蔽技法はデータとしてインプットされていて直ぐに察せてしまう。
その意味でヘイスティングズの節操の無さを楽しむ作品なのかもしれない。
私的にはクリスティー作品及びポアロが好きなのではなく、ジェレミー(声は絶対露口茂)演じるホームズ同様にスーシェ演じるポアロ(字幕でもOK)のキャラが好きだと強く思えた。
※放送権利切れでチャンネル銀河にポアロ、ホームズを奪われた現状、AXNミステリーの巻き返しはあるのだろうか!


No.1213 5点 血ぬられた愛情
エリザベス・ジョージ
(2011/02/12 07:50登録)
12(Q)13(K)番目の書評はエリザベス(Q)ジョージ(K)作品で!
リンリー警部AXNミステリー昨日の放送エピソードは本作。
作品発表順とドラマ制作(放送)順が入れ替わったが影響は少ない。
前回に続き今回も英国ミステリーもう一つの定番設定、田舎と演劇集団で、更に過去の事件が絡むが事件自体はミステリーとして面白くない。
今回はリンリー警部と容疑者になる周辺人物(シリーズ・キャラ)との恋愛模様(やや一方的)がメインになる印象。
作品その物より原作文庫巻末のシリーズ・キャラ紹介が先に進むにあたり一番親切で嬉しい(これに1点加点)
※以下作者の名前に関する余談
海外(欧州)競馬で凱旋門賞や英ダービーに匹敵するビッグレースにキングジョージ6世&クイーンエリザベス・ステークス(アスコット・ダイヤモンドデー開催)があり、作者はそこからペンネームにしたのだろうと思っていたのだが、何とミドルネームを挟むものの本名だった。
この名前ならアメリカ人でも絶対英国に傾倒するだろうな、と変な納得があった。
同様な名前に女子プロゴルファーのクリスティー・カーがいる(こんなの江戸川コナンと同類でよくぞ親が名付けたものだ!)
※本作とは何ら関係ないがキングジョージ6世を描いた映画「英国王のスピーチ」がアカデミー賞を受賞し話題になっている。


No.1212 5点 忘られぬ死
アガサ・クリスティー
(2011/02/12 07:27登録)
AXNミステリーで再放送が開始されたクリスティー傑作シリーズ(ノン・シリーズの映像化作品を4作)最初の作品はコレ。
どこか既視感があったがポアロ物短編「黄色いアイリス」(←各所で作品名がさらされているので伏せない)の長編化作品だった。
魅力的な2件の同一設定な殺人の謎にメロドラマ的に入り組んだ人間関係を絡めて楽しませてくれる。
ポアロ物から変更した狙い?が解決編で分かる最後のお楽しみまでありサービス精神は旺盛。
それでも水準作な印象なのは短編を先に読んでいたからだろうか?!


No.1211 6点 名門校 殺人のルール
エリザベス・ジョージ
(2011/02/11 22:40登録)
日本なら物理的に開かれながら心理的に閉ざされた閉鎖社会として真っ先に大相撲や競馬界が思い浮かぶが、英国ミステリーでは田舎の村か寄宿制の名門校が定番。
リンリー警部AXNミステリー昨日の放送エピソードは本作。
定番設定故に楽しめるからなのかリンリー警部シリーズで一番巷の評判が良い作品。
舞台設定は、日本なら灘かラサールあたりの寄宿制名門進学校に相当するが、英国での階級意識は学生の頃には確立していて日本の比ではない。
小さな閉鎖社会につき物な虐めに特異な人間関係による操りを絡め、定番設定に飽きるよりも逆に楽しめる。
複雑な人間関係の割に解決編の説明がアッサリ過ぎて一読で理解し辛いので先にドラマ視聴で良かった。
原作での容赦ない陰鬱描写は作者の特徴でシリーズ全般に言えるらしいのだが、今回はさほど気にならなかった。
※英国制作原作あり刑事ドラマの私的な順位
「ダルジール警視」>「フロスト警部」=「バーナビー警部」>>「リンリー警部」=「ダルグリッシュ警視」
「モース主任警部」「ルイス警部」はドラマを視聴していないので原作もドラマ視聴後のお楽しみとして保留中(←永遠にその時が来ないかもしれない)


No.1210 4点 大いなる救い
エリザベス・ジョージ
(2011/02/11 02:52登録)
AXNミステリーで先日から帯再放送が始まったリンリー警部シリーズ。
ドラマ・エピソードと原作タイトルが違い戸惑ったが、電子番組表の番組解説には親切にも原作タイトルが銘記されている。
アメリカの女流作家ながら英国を舞台に描き英国で高評価らしい(作家の評価に無関心なので詳細不明)
結構原作も書かれていてドラマがひとり歩きしてはいないが翻訳がストップ状態でシーズン3まで日本語版ドラマが放送されエピソード的には先行されている。
貴族で男性の上司リンリー警部と平民で女性の部下ハヴァーズ刑事(ドラマと原作で名前の表記が違うのはダルジールに同じ理由なのか?)がコンビで事件解決にあたるが、先々信頼関係は築いても恋愛関係には発展しないらしいのが救い・・・でもタイトル「大いなる救い」の由来ではない。
最初から首なし死体やら陰鬱な舞台設定やら、更には主役達の周辺の入り組んだ人間関係やら非常に重苦しい(大横溝のオドロオドロした雰囲気を乾いた英国風にした感じ←正確な表現か自信なし)
性的虐待部分をカットしたドラマでも、事件と人間関係は鬼畜だらけな英国風(英国ミステリの第一印象)全開なので陰鬱で重苦しい作品を好きでないと厳しい(字幕をサラッと読みながら早送り視聴で逃げる手もある)
毎度のおさらい読書で鬱陶しい部分を端折って読んだから随分楽だったが、私には原作から先に手は出ない。
本来なら4点だが、原作とドラマ両方を批評した感想ブログが、先々のドラマ視聴とおさらい読書の参考になったので5点とする。


No.1209 6点 見切り千両
梶山季之
(2011/02/09 08:26登録)
米相場に復讐劇を絡めて描いた一代記。
作者の最高傑作と呼び声も高い「赤いダイヤ」の系譜にあるが、ボリュームは半分程度で得意のスケベ路線も抑えられている(個人的にはチョット残念)
博打に付き物な怪しい手口も紹介されコン・ゲームの要素まである。
サービス精神に溢れた作者らしい作品で久々の再読が楽しい読書になった。


No.1208 4点 あの頃の誰か
東野圭吾
(2011/02/09 01:30登録)
これも、いきなり文庫化だが、訳ありで埋もれた作品の寄せ集めで(それを宣伝文句にしたから裏切られた感が大きく)決して褒められた出版姿勢ではない。
しかし、こんな作品集が幾ら東野圭吾だからってベストセラーになり、今年に入っての図書館予約が一位を独走するんだから呆れて開いた口が塞がらない。
バブル期にノスタルジーを擽られる最初の作品はまだしも、他は普通の作家なら商品として成立しないだろう。
埋もれるべき作品は掘り起こすべきではない!
こんな販売戦略は、ポプラ社の某ベストセラーとは別方向で、出版業界に自分で自分の首を絞める結果を齎すのではないだろうか?
「東野圭吾の訳ありなら・・・」なんて宣伝は大嘘で、やっつけ仕事感満載な近作よりも低レベルで(東野圭吾に求める基準レベルの高さを考えれば)これらの出版を許可した作者も読者を裏切っている。
作品集そのものは3点だが、発売日に図書館へ予約に出向くまでして読んだ自分の行動力を評価して4点にした。
※色々なネット書評を見たら「駄作だがファンには読めて嬉しい」的コメントが多数で驚いた。


No.1207 4点 プラチナデータ
東野圭吾
(2011/02/09 00:52登録)
所得格差拡大に不景気も相俟って図書館利用で新刊購入しない人々(私も当然含む)が急増した昨今、図書館予約に出遅れた「白銀ジャック」(購入意欲は無)しかも、いきなり文庫だから文庫化での新規予約という奥の手まで使えず、二年近くは読めないだろう。
そんな折り、昨年やや出遅れ程度で予約した本書と先日発売で発売日予約に成功した「あの頃の誰か」が借りられた。
正直な話、ガリレオ・シリーズの長編と加賀シリーズだけしか(作品の方向性も含めて)期待出来ない作家になってしまった。
この作品など読みやすく楽チンなのだから私の読書方針にピッタリなハズなのだが、それが逆にやっつけ仕事感の増幅を齎してしまう。
半分程度読んで先が読める作品でもネームバリューでベストセラーになるのは如何なものだろう。
図書館利用で、出版不況に貢献している身だが、いっそのこと電子書籍化が加速すれば良いと、作品とは関係ない感想が先立ってしまった。
※余談
電子書籍化が完全普及したら地域の図書館はどうなるのだろうか?(地方予算の都合で大半が閉館すると予想)
完全電子書籍化時代が到来したら私は、ミステリはドラマ視聴のみに移行し書籍離れするつもりで今から対応している。


No.1206 5点 親指のうずき
アガサ・クリスティー
(2011/02/06 05:05登録)
トミー&タペンスの中年期以降の話で、「おしどり探偵」以降の消息を知りたい世界中のファンからの要望で書かれた作品。
中年になってもタペンスの好奇心は旺盛だし、中盤以降に登場のトミーも冴えているが、所詮ポアロやマープルとは違い本格ミステリと言うより冒険サスペンスではある。
それより映像化作品がマープルのシリーズに組み込まれたり、微妙なフランス版だったりと悲しい扱いしかされていないのでクリスティーも草葉の陰で嘆いているかもしれない。
因みに毎度のごとくAXNミステリーで放送されたフランス版を視聴してからのおさらいなのであしからず。


No.1205 4点 GIALLO 2001年夏号
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2011/02/06 04:45登録)
「このミス」等のムックも含め雑誌の基準点を一律の3点に設定していて、本誌は季刊雑誌なので当然の3点。
本書の登録目的が「本格ミステリ大賞・全選評」の感想にあるので掲載小説等には一切触れない。
第一回は倉知淳が受賞したが、投票者も以降の仕事振りまでは想像出来なかっただろうし(その意味では本格ミステリ発展への貢献は小さく)ご愛敬と言った感がある。
選評投票者の顔ぶれも近年とは微妙に変わっているのが面白い。
完全なる新作揃いなら泡坂妻夫が受賞していただろう。
しかし、収録作品の大半が過去の仕事な短編集で第一回目の受賞作から過去へ向かうのは相応しくないとの意見で(功労賞か特別賞にすべきと)他作品への投票が結構多かった。
受賞作は本格ミステリの新たな方向性を示す作品ではあるが、犯人が指摘されてなんらカタルシスを得られない(登場人物一覧が付されていたなら名前が載らない)作品でもあり受賞作として相応しかったのか微妙ではあるが、犯人を指摘するプロファイリング過程は真っ当な本格ミステリではある。
一回目から理由ありの棄権票まであり、今以上に会員の本格ミステリへの熱意が伝わるのが嬉しく1点加点した。
短編集で受賞を狙うなら全収録短編が別の短編集に収録されない形式でないと長編に比べ不利な事が第一回から示されている。


No.1204 5点 探偵Xからの挑戦状!Season2
アンソロジー(出版社編)
(2011/02/04 23:23登録)
NHKからSeason3の放送決定メールが配信されたのに合わせるようにSeason2の携帯小説が文庫化された。
携帯小説を読んでいたかは兎も角、NHKでの放送を観ていたならば本書の存在意義は薄い。
今回は推理クイズ企画に相応しく全4編が書き下ろしだった。
辻真先作品は捻りも抑えられた凡作だが、クイズとしての不満は少ない(作者らしいメタな趣向で驚かせてほしかった)
近藤史恵作品は重要と思える伏線を2つ放置した儘で理不尽な解決になってしまいネットでも不評だった。
井上夢人作品は解決に必要なピースの全てを明示した為に小説形式の論理パズルで終わってしまった(陰の伏線をピースの一つに絡めたらエラリー・クイーンのドラマ並みになったかも?)
我孫子武丸作品はSF設定なルールでの問題で、ルール運用の微妙さから2chスレでは少なくとも2つの別解が論理破綻なく成立していた。
推理を楽しむ企画自体は大好きだが、ネットで侃々諤々される時代に、視聴者挑戦に耐えうる作品が簡単に生み出されるハズもなく、結局いちゃもんを楽しむ企画になってしまうのが残念。
作品に接していない方にはワンコインでお釣りもくるし、ネットで侃々諤々を振り返る楽しみもありお得かも。


No.1203 3点 スミルノ博士の日記
S・A・ドゥーセ
(2011/02/04 04:12登録)
※今更読んでもしょうがないレベルな作品で、各所の推理評論等でもネタについては書かれているのでネタバレ配慮はしません。
当然ミステリとしてのネタは知っていたし、入手の困難さを考えるなら、わざわざ探し読む程ではないとの評判も知っていた。
昨今、日本でも翻訳ブームが到来しそうな北欧・スウェーデン作家だが、これは復刊されないだろう。
某サイトでの駄作認定に逆に興味をそそられアチコチの図書館検索で蔵書を見つけ出した(貸出不可で館内閲覧だけだが都立中央図書館には別の書籍で3冊ある)
広尾まで出向いて読んで来たがはっきり言って交通費(地下鉄運賃)の無駄だったかも?
これなら谷崎潤一郎やクリスティ「アクロイド」がオリジナル扱いされるのも納得(意外な犯人を設定しても怪しい行動をしまくる為に意外さが帳消し)
横溝正史が同種の技法を用いた作品では「アクロイド」より、こっちに影響を受けたらしいが何とも腑に落ちない。
入手困難だが、どうしても読みたい作品なら国会図書館や都立図書館まで出向けば何とかなりそうだと分かったのが本作で唯一の収穫だった。


No.1202 5点 大相撲殺人事件
小森健太朗
(2011/02/03 23:45登録)
言い逃れ出来ない物証(メール)ありでの八百長発覚オメデトウ!!!
国技大相撲も一皮剥いたらプロレスと同じでした。
謎と解決(←理事長の現役時代の四股名じゃないよ!)だけでなく描かれる相撲界も含めてバカミスだが、これ位の事件が起きなければ現実の相撲界は良くならない気がするから不思議なものだ。
幕下力士に「〜関」なんて表記があるのだから、作者はミステリ的発想を相撲に当てはめただけで相撲には無関心だったのだろう。
しかし、フィクションではあるが横綱を含めてメチャクチャに死亡するのに相撲界が壊滅しないのだから、現実世界でも八百長如きで大相撲は廃れまい!(大関互助会相撲万歳!私なんか、千代大海引退前過去5年間の魁皇対千代大海戦の勝敗予想が完全的中だった)
※恥ずかしい余談
両国国技館の近場に墨田区横網なる地名があるが、以前私は相撲関連から名付けられた地名で横綱だと思っていた。
2サス・ドラマで同様のネタが使われて横網だと認識出来た。


No.1201 7点 マッチメイク
不知火京介
(2011/02/01 09:54登録)
乱歩賞受賞作ながらミステリー及びサスペンス部分では先の展開がミエミエな凡作でしかない。
一方でプロレス業界内幕小説としての面白さは抜群で、加えて青春アスリート小説としてもベタながら面白い。
乱歩賞応募の為にミステリー的な展開にしただけで主眼は内幕&青春小説の部分にあるのだろうし、受賞理由もそちらの躍動感や面白さだと選評からも分かる。
ミステリ書評サイトでの採点ではあるが、私の採点も作品の主眼部分を重視し、それに加えてプロレス&スポ根好きなので大甘な7点とした(それでも遠慮して満点にはしない)
プロレス好きなら登場キャラと実在モデルとの摺り合わせも簡単でより楽しめるだろう。
作者の作品を2作読んだ感じではミステリーよりも特殊な題材での家族小説に本領を発揮する気がする(2作共面白かった)
※参考文献を見ても新日本プロレスをモデルにしているが、私は今でも全日本プロレスのジャイアント馬場&ジャンボ鶴田の師弟コンビがプロレスの王道だと思っている。
チャンピオン・カーニバルでの師弟直接対決で鶴田が一度も勝てなかったのが正に『マッチメイク』


No.1200 5点 犯罪ホロスコープⅠ 六人の女王の問題
法月綸太郎
(2011/01/31 07:58登録)
悩める名探偵・法月綸太郎も短編ではウジウジと悩まず、私好みな推理クイズ小説になっていて楽しめるので本来ならもっと高評価でもよい。
最近では、シリーズ短編は纏まって一冊になってから読む方が楽しみが大きいとの自説に変化があり、物凄く好きなシリーズ以外は年間ベスト級な作品をアンソロジー等で読み、他をスルーする方が楽チンだと思えてきた。
その意味で、発表時期が何年かに跨り各種アンソロジーに収録され先に3編を読んでいた本短編集は、残りの平凡な作品をスルーで良かった事になる。
息子の受験対策(息子と同様に自分も我慢が親としての務め)で読書時間削減中な私の現状では、読むべき作品を極力厳選すべきなのでスルー出来なかった自分への戒めとして1点減点して自省する。


No.1199 4点 殺人者の顔
ヘニング・マンケル
(2011/01/29 18:33登録)
今週木曜日からAXNミステリーで「スウェーデン警察クルト・ヴァランダー」のドラマシリーズ(スウェーデン制作版)帯再放送が開始された。
シリーズの最初は2話に跨る大作エピソード(本作が原作)でスタート。
毎度のごとくドラマ視聴後のおさらい読書だが、ドラマ視聴でミステリーとしての期待が皆無だったのが幸いし丁度良かった。
スウェーデンで真っ先にイメージするのが少年時代に見た北欧ポルノ雑誌な中年オヤジである私が感情移入するに相応しい主人公のキャラではあるが、私生活が充実している(敢えて断言する)私とは環境が違い過ぎて笑えてしまう。
主人公を含めたキャラを楽しむのが主眼になるので原作のイメージを損なうどころか増幅する適役を配したドラマ版を観るだけで事足りる気がする。
この作品が一家に一冊レベルなベストセラーであるスウェーデンは、私には理解し難い国でもある(もっとも私は、スウェーデンの社会情勢に全く興味がない)
このシリーズの影響下で「ミレニアム」シリーズが書かれた故に(うらぶれた中年男が主人公だとパクリと揶揄される懸念があり)対極的造形なリスベットが誕生したのなら、世界的にはそれが本作最大の意義かも知れない。
※余談
本シリーズが色々な言語に翻訳され世界中で2500万部も売れている現状を鑑みるに、私の求めるミステリと世界が求めるミステリーには大きな隔たりがある。
それでも私は、世界に迎合しない偏屈な日本人であり続けたい。


No.1198 5点 生贄
梶山季之
(2011/01/26 07:06登録)
インドネシアへの戦後賠償利権に絡む汚職過程で、ある意味で人身御供(生贄)にされた女性を描いた社会派作品。
舞台は昭和時代だが、水戸黄門の登場しない越後屋と悪代官の悪巧み話的な内容。
何処を読んでもデヴィ夫人がモデルだと分かるが、今のデヴィ夫人を見てしまうと(美しさは)想像し難い(厚顔さはそのまま)
デヴィ夫人側から訴えられ絶版になったが、差し止め前に10万部が売れ回収もされなかった。
一夫多妻制での第二夫人以降の存在は、当時の日本人感覚なら「お妾さん」でしかなく、世界的には華麗に社交界デビューしたデヴィ夫人も国内では「お妾さん」として貢ぎ物視されていたのがよく解る。
作者のトップ屋としての取材力の凄さを考えると、何処までがフィクションなのだろう?とデヴィ夫人をテレビで見る度に頭をよぎる。
※余談
25年前に古本屋の50円特売ワゴンで購入し今でも私的な梶山季之コレクションとして所持しているが、ネット販売価格が5万円オーバーなのに驚いた(コレクター心を擽られ1点加点)


No.1197 4点 取調室 静かなる死闘
笹沢左保
(2011/01/25 08:29登録)
主役である取調官を女性に変更したドラマが昨日放送された。
いや〜、このシリーズはいかりやさんの演技力で好評だったのだと再認識した。
アリバイ云々より取調室での落としがメインになるのだろうから執拗な心理戦を期待するがそこまでには至らない。
それも、今でこそ取調の可視化が問題視されているが書かれた時代の日本の取調を考えれば致し方ないのだろう。
司法取引の無い日本だからこそ自白より物的証拠を重視した捜査や裁判が大切だと改めて思う。
逆説的だが日本の制度下では「落としの達人(名人)」なんてのは冤罪の温床になっている気がする。
※但し書きm(_ _)m
裁判で勝訴出来るレベルまで詰めるアメリカのミステリ・ドラマ(特にロー&オーダーの2作品)に毒された視点で評価してしまいました。

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