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ミステリの祭典

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あの頃の誰か

作家 東野圭吾
出版日2011年01月
平均点4.22点
書評数9人

No.9 5点
(2024/04/02 20:47登録)
あとがきとセットで読むとそれなりに楽しめました。

No.8 5点 Tetchy
(2014/10/04 00:26登録)
収録作品は雑誌に掲載されながらもある理由によって短編集として纏められなかった、作者曰く「わけあり物件」らしい。
例えば掲載されていた雑誌が出版社の倒産によって作品がお蔵入りしたり、有名になってしまった長編の原型だったり、単純に短編集に纏める機会がなかったりと、そんな落穂を拾うかのように編まれたのが本作だ。

個人的には「再生魔術の女」の発想の妙を買う。被害者の胎内に残された精液から代理母に子供を産ませ、それを容疑者の養子として送り込み、復讐する。顔立ちが似てくれば容疑者が犯人だったことが解る、遠大な復讐だ。果たしてそれは復讐者による脅迫のためのフェイクだったことが解るのだが、このトンデモ科学のトリックとでも云おうか、鬼気迫る復讐者の執念、いや情念に畏れ入った。

収録作は89年から95年にかけて書かれた作品で、バブル景気に浮かれる日本を髣髴させるキーワードが物語に織り込まれていて感慨深い。特に顕著なのが、第1編目の「シャレードはいっぱい」と2編目の「レイコと玲子」。あとがきで作者自身が「もはや時代小説だ」というように、「バブルは遥かなりにけり」の感はあるが、これはこれでそういう時代があったことを知る貴重な資料にもなるのではないか。

しかしこのような長い創作活動の中で埋もれてしまった短編が再び日の目を見るように本に纏められるのも東野が今や当代一の人気ミステリ作家になったからこそだ。こんな東野作品もあったのだと、今の作品群と読み比べてみるのもまた一興かもしれない。しかしやはりバブルは強烈だったなぁ。

No.7 4点 ∠渉
(2014/01/12 13:27登録)
こういう所から始まって後に良い作品ができていくのを鑑みると結構楽しかったですけどね。「とりあえず書かなきゃいけない」みたいな気持ちが出てて。
もちろん読者に対して親切でなくてはいけないというのは作家のスタンスとしては大事だと思いますが、そんな気概もないような感じが少し感慨深いし、東野さんにとっても感慨深いものだったのではないでしょうか。
「名探偵退場」が一番好きです。あとは・・・。

No.6 4点 まさむね
(2011/09/17 11:50登録)
 うーん。作者が語るとおりの「わけあり物件」揃い。東野さんだけに,何とも言えない残念感が残りました…。
 純粋に良かったのは「再生魔術の女」のみ。他の作品はちょっとなぁ…何がしたかったのか,よく分からない作品もありますしねぇ…。
 ちなみに,収録作品のうち「さよなら『お父さん』」は,「秘密」を読了してから読むべきでしょうね。まぁ「秘密」の読了後ならば無理して読む必要が無いという考えもありますが。

No.5 4点 白い風
(2011/06/20 11:54登録)
帯に”東野圭吾の「わけあり物件」はこんなに面白い!”とあったけど、わけあり物件は所詮わけあり物件だね。
この本はもう東野作品を1、20冊以上読んでいる東野通にしか楽しめないかも。
(東野ファンにもあんまりお勧めしないけどね(爆))
唯一「再生魔術の女」だけは評価6でもいいけど、ほとんどが4以下評価だね。
”秘密”の原型の「さよなら『お父さん』」はオイラは読みたく無かったな。
もし、これを読んでから”秘密”を読んだら秘密の評価も下げざるを得ないかも。

No.4 4点 3880403
(2011/04/06 20:08登録)
短編で読み易いけど印象に残らない。
昭和の話(バブルとかそのへん)は、その時代の人なら楽しめるかも。
ホラーやファンタジーっぽい話もイマイチ。

No.3 3点 こう
(2011/03/22 00:47登録)
 全体としては「わけあり」小説という枕詞そのままの作品集でした。
 私はそうでもないですが「秘密」好きにはそのオリジナルの「さよなら「お父さん」」は一読の価値があるかもしれません。
 「名探偵退場」は確かに一読しただけで後の天下一シリーズを思い起こす作風になっていました。
 「再生魔術の女」は面白かったです。あとの作品は正直微妙ですね。
 ただこれで新刊でお金を取るのか、と考えると確信犯的で正直不満です。それこそ作者が嫌っている古書もしくは図書館で手に入れるのをお薦めする作品集です。

No.2 5点 ミステリー三昧
(2011/02/12 02:32登録)
<光文社文庫>久々のノンシリーズ短編集です。
『白銀ジャック』に続き、いきなり文庫にて最新刊とのこと。できるだけ出版順に読むスタイルを貫きたかったが、衝動に駆られて購入してしまった。ノンシリーズの短編集だからってのが一番の理由。別に「わけあり物件」というフレーズに惹かれた訳ではない。きっと単行本で出す価値はなく、でも勿体ないからストレートに文庫ならばという軽い考えがあったと思います。
気軽な気持ちでいざ読んでみると、年代の古い作品ばかりで最近の東野圭吾を知らない私にとっては逆に馴染みやすく割と読んで正解だったというのが正直なところ。
『シャレードがいっぱい』・・・殺人が起きるものの、遺言状の隠し場所やその中身、人間関係の解き明かしがメインで嗜好からズレるあたりが東野作品らしい。一応推理はあるが、雑学の知識が混じった解決が好きではない。ついでに主人公の性格が嫌い。この女性のモデルって東野圭吾の身近にいたのでしょうか。タイトルを『あの頃の誰か』にしたきっかけがこの作品ってのが意味深です。ちなみに読んで思い出されたのが『ウインクに乾杯』でした。途中で読むのをやめた作品です。
『レイコと玲子』・・・東野圭吾の得意とする分野だと思います。いわゆる「私」系ミステリーで、主人公自身を謎とした失われた記憶を追求するお話。読んで思い出されたのが『変身』『分身』『むかし僕が死んだ家』など。
『再生魔術の女』・・・私的ベストです。いわゆる「奇妙な味」系の東野作品って読んだことがなかったので、新鮮味があり、自然と物語に惹き込まれました。ただオチは想定範囲内でしたが。『怪笑小説』や『毒笑小説』ってこんな感じに面白いのかな。
『さよならお父さん』『名探偵退場』・・・これらは確かにわけあり物件でした。まさか原型があったなんて。
他、ショートショートは普通。『二十年目の約束』は駄作。なんだこれ。

No.1 4点 江守森江
(2011/02/09 01:30登録)
これも、いきなり文庫化だが、訳ありで埋もれた作品の寄せ集めで(それを宣伝文句にしたから裏切られた感が大きく)決して褒められた出版姿勢ではない。
しかし、こんな作品集が幾ら東野圭吾だからってベストセラーになり、今年に入っての図書館予約が一位を独走するんだから呆れて開いた口が塞がらない。
バブル期にノスタルジーを擽られる最初の作品はまだしも、他は普通の作家なら商品として成立しないだろう。
埋もれるべき作品は掘り起こすべきではない!
こんな販売戦略は、ポプラ社の某ベストセラーとは別方向で、出版業界に自分で自分の首を絞める結果を齎すのではないだろうか?
「東野圭吾の訳ありなら・・・」なんて宣伝は大嘘で、やっつけ仕事感満載な近作よりも低レベルで(東野圭吾に求める基準レベルの高さを考えれば)これらの出版を許可した作者も読者を裏切っている。
作品集そのものは3点だが、発売日に図書館へ予約に出向くまでして読んだ自分の行動力を評価して4点にした。
※色々なネット書評を見たら「駄作だがファンには読めて嬉しい」的コメントが多数で驚いた。

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