home

ミステリの祭典

login
臣さんの登録情報
平均点:5.90点 書評数:660件

プロフィール| 書評

No.580 4点 2分間ミステリ
ドナルド・J・ソボル
(2019/03/04 12:53登録)
解けるか、解けないかは別にして、推理クイズとしては、まずまずの出来だろう。
というか、文章だけで推理クイズを成立させ、それを本にするのには、この程度の短さ、この程度の内容が精一杯なのだろう。
ちなみに、私も正答率は3割程度だった。

でも、やはりミステリと呼ぶにはあまりにも短すぎる。小説として成立していない。
ウェバーの「5分間」シリーズというのがあるようなので、つぎはこれに挑戦しよう。


No.579 6点 悪魔の降誕祭
横溝正史
(2019/02/19 09:30登録)
「悪魔の降誕祭」 6点
絵に描いたような本格ミステリー中編作品。ドラマでいえば、60分に収まりそうな内容です。でも、160ページだけど2つの殺人があって、それだけで楽しめる要素は十分です。しかもコンパクトなのでわかりやすい。
犯人に意外性があり、金田一の謎解きは筋が通っているのだが、なんとなく釈然としない。動機なのかなぁ?

「女怪」 7点
金田一の恋心がベースとなっている、というのが特徴の短編小説。ミステリー的にみればたいしたことはありませんが、個人的にはお気に入りのベスト短編です。

「霧の山荘」 6点
CC館モノか、いや、一族モノか?実際はどちらの要素もかなり薄めで、あっさりしている。
でも本格要素はすくなからず詰め込んであり、イイ感じに仕上がっています。
真相は中編ならではといった感じ。かる~く楽しめます。


No.578 5点 白い僧院の殺人
カーター・ディクスン
(2019/02/06 12:37登録)
読みにくさが、まず気になりました。
前の方もご指摘されているように、場面転換がわかりにくく平板に見えること、見取り図がないこと、翻訳の問題など、ちょっと不手際に感じます。
3ページ進むごとに前に戻ったり、人物表を見返したり、とけっこう苦労しました。人物表を見ても、職業は書いてあるも性格はわからず(当たり前か)、少し書き込みしした程度ではほとんど役に立たず、といったところでしょうか。
ストーリーテラーと呼ぶには程遠い気がしました。
今まで読んだカーとは違うなぁ、せめて怪奇色があればなぁ、という印象です。
作者は人間関係を色濃く描くことで、推理ゲームではない、高尚なミステリー小説を書くぞ、と意気込んでいたのかもしれません。ところが意に反して、それほどうまくいかず、トリックだけが目立ってしまった。そんな感じでしょうか。

最後のHM卿の謎解きには熱くなりました。そこだけが高ポイントです。


No.577 9点 七つの会議
池井戸潤
(2019/01/23 10:15登録)
「シャイロックの子供たち」と同様の連作短編スタイルであるが、本書はさらに進化させた、まぎれもない長編ミステリーである。著者にとって、短編ごとの謎解きなんてどうでもよかったのだろう。短編をつないでどうやって大きな真相にもっていくのか。一話まるごとが伏線で、しかも一話ごとにも楽しめる。
どんな事件が待ち受けているのだろうか?何が謎なのか?中盤になってもわからない。そこがこのミステリーの面白いところ。

(以下、ネタバレ風)

じつは、本書のストーリーは、5,6年前にNHK版の「七つの会議」を観て知っていた。原作とは主人公が変えてある。というか原作には、短編ごとに主人公がいても全体としては、くせ者ぞろいの群像劇スタイルなのではっきりしない。「東京建電」という企業が主人公といってもいい。しかし、最終的には、ある人物が主人公で、他のある人物が最大の悪者であると判明する。だからこそ、晴れ晴れとした120%の満足感は得られたが、犯罪小説に徹してみるのもよかったのかも。
その点だけが個人的にはマイナス要素だった。なおテレビ版では悪側で苦悩する主人公がよかった。
まもなく公開される映画版は、原作に近いのか、テレビ版に近いのか、それともさらにガラッと変えてあるのか。配役を見てある程度想像できたが・・・

東京建電の親会社である企業の会社名がすごい。これは、映画ではもちろん、スポンサーのないNHKでも使わなかった。
この親会社の社長だけはまともかと思いきや、この人物も出来がよくない。内部告発の可能性を考えれば最後の判断はダメ。あんな状況だから判断も鈍るのか。


No.576 5点 騙し絵の牙
塩田武士
(2019/01/17 09:32登録)
俳優の大泉洋さんを当て書きした作品です。
表紙、裏表紙は大泉氏のカラー写真で構成され、章ごとにも白黒写真が挿入されている。
出版業界の内部が描いてある。
主人公の速水は、小説好きの雑誌編集長で、仕事はでき、社交術に長け、浮気もする、この業界ではありがちな(よくは知らないが)、スーパー編集長、スーパーサラリーマンである。

タイトルにときめき図書館で借りてしまったが、これがミステリーなのか?
タイトルと表紙写真があまりにもアンマッチだったので、初めから不安ではあったが、そこだけがミステリーなのだろうとあきらめ気分で、期待せずに読んだ。

一気読みできるほど楽しい読書ではあった。
後半になって小さな事件が種々勃発するが、事件発生が遅すぎるし、その事件もミステリー的には些末すぎる。
やはり業界の裏話的な物語を楽しく読めただけ、という感じがする。
とはいえ、どんでん返し(らしきもの)はいちおうある!(かな?)

こんな書き方をすれば、このサイトではまず読んでもらえない。
だから、抜群のリーダビリティで出版業界の内幕を鋭く描いた社会派ミステリー秀作ということにしておきます。


No.575 7点 蝶々殺人事件
横溝正史
(2018/12/19 13:35登録)
いま読んでも違和感はない。まあ現代風と言えなくもない。
トリックもまずまずの出来、いや多くの読者が感心するレベルだろう。
ただ、犯人はこの人しかいない、というのが欠点かな。でも当時は驚いたんだろうなあ。
ということで、いちおうは上出来レベルの評価である。

でも、そんな評なんてどうでもいい。
それよりもストーリーの記憶がまったくよみがえってこないことに驚嘆した。
映像を観てないせいなのか?
ずっと、なんとなくだが、横溝長編の中で本作は、6,7番目ぐらいの出来だと記憶していたが、これはひどい、ひどすぎる。(自分自身の記憶力のことです。)
金田一長編なら、「悪魔の手毬唄」「夜歩く」「犬神家」「獄門島」「女王蜂」
金田一短編なら、「女怪」
由利長編なら、「真珠郎」「蝶々殺人事件」
由利短編なら、・・・忘れた!    (時代物は読んでいない)
と、自分勝手なランキングを楽しんでいたのに、これもかなりあやしくなってきた。
たしか、数年前、「夜歩く」を再読したときも、もしかして初読かと思ったぐらいだ。
じつは、「真珠郎」「悪魔が来りて笛を吹く」は再読せずに書評したが、これらも2,3%ぐらいしか覚えていない状態だった。「手毬唄」も未再読だがちょっとマシで5,6%ぐらいか。「犬神家」の記憶は、映像版をなんども観たのでかなりマシ。
とにかくひどすぎる。


No.574 7点 赤毛のレドメイン家
イーデン・フィルポッツ
(2018/12/10 09:38登録)
あのような事件だと、多くの読者は疑うはずです。
でも、著者がウラをかくこともあるし、ウラのウラ、さらにまたウラをかく場合だってある。
ということで、後半まで疑いをいだきながらも、ずっとワクワク感が持続しました。
ということでトリックは、当時なら上等、いまでも十分に通用するレベルです。

サスペンス要素がたっぷりあるし、人物が面白く描いてあったり、場面を種々変転させたりと、著者は楽しませる要素を熟知しているようです。エンタメ小説としてのプロットは抜群の出来です。
最後の告白の分量が多すぎることだけが、マイナス点です。

情景描写を多く盛り込んで文芸作品に見せながらも、じつは、読者を惹きつけるのが巧みなコテコテの大衆文学作品でした。


No.573 6点 二年半待て
新津きよみ
(2018/11/22 10:13登録)
2018年、徳間文庫大賞を受賞。
松本清張の短編小説に「一年半待て」というのがある。それからの連想でちょっと読んでみた。
就活、婚活、恋活、妊活、保活、離活、終活などがテーマの家庭ミステリー短編集。
このテーマだから当然、社会派ではあるが社会派らしい重さはまったくない。著者お得意の心理ホラーでもない。

作品紹介には大どんでん返しミステリーとある。たしかに最後にどんでん返しのようなものはあるが、なぜか驚けない。想定の範囲というわけではない。ようするに、最後にいきなりきても、「あ、そうなの」という程度にしか感じられないというレベルだ。
保活の「ダブルケア」、離活の「糸を切る」、終活の「お片づけ」は6~7点。他は4,5点というところか。
最後の「お片づけ」だけは、はっきりとした謎が提示される日常の謎モノで、これだけはミステリーと言えるかもしれない。

ということで全体としてミステリーとしては低評価になってしまうが、ストーリーそのものはおもしろく、しかも時事ネタが盛り込んであり、上等の短編集だと思う。
読んで損はないし、かるく読めるし、ひまなときにさっと読むのにはちょうどいい。


No.572 7点 日本庭園の秘密
エラリイ・クイーン
(2018/11/15 10:07登録)
興味がそがれることなく最後まで楽しめました。つまり、少ない登場人物にもかかわらず、解けそうに見えてまったく真相にたどりつけず、でも飽きることもなく、嫌気がさすこともなく、事件に対する興奮が最後まで持続したということです。

本格ミステリーとしては、やや変化球気味。これでもトリックなのか、とも言えますが、これを密室に絡めたことが最高のテクニックなのでしょう。
クイーンは密室が苦手なのか、密室トリックをバカにしているのか、あるいはいいネタが思いつかなかったのか、とも言えますがね。
そしてトリックと同程度にすごいのが、エラリーの過激な推理です。これが際立っています。
たしかに、推理は飛躍しすぎの感もあり、なんでそこまでわかるの、という疑問はあります。でも、それを話の面白さがカバーしてくれます。
ようするに、トリック、推理、ストーリーの三拍子そろった作品でした。

ちょっと褒めすぎか?
日本の文化、習慣を題材にした作品なので、ちょっと贔屓してしまいました。


No.571 6点 どんどん橋、落ちた
綾辻行人
(2018/10/30 09:58登録)
フーダニットに特化した、おふざけ短編集。
皮肉はないが、遊び心がたっぷり詰まっていて、東野圭吾氏の『名探偵の掟』の対抗馬と云っていいだろう。
謎解き性のみ有り、物語性無し、動機無しの、こんな短編集は、本格好き、というよりもパズル好きにはたまらん。数独、論理クイズに臨むような感覚です。
でも、表題作で、ちょっと違和感を覚えた程度で、結局、全く解けなかった。
じつは、物語性無しとか云いながら、『伊園家の崩壊』では話に夢中になりすぎて、ミステリであることを忘れてしまっていた。

『どんどん』が7点、『ぼうぼう』が6.5点、『フェラーリ』『伊園家』が6点、『意外な犯人』が5点。


No.570 7点 ユリ迷宮
二階堂黎人
(2018/10/19 09:52登録)
ロシア館の謎・・・7点。館消失モノ。壮大で滅茶苦茶なトリックが良い。島田氏の「ロシア幽霊軍艦事件」みたいに長編にしてもらいたかった。でもそうなるとぼろが出るから、このぐらいがちょうどいいところか。想い出語りスタイルも良い。

密室のユリ・・・6点。普通の密室モノ。「ロシア・・・」の後だから、どんな凄いのが出てくるかと思っていたら、意外にフツー。でも短編本格としては十分に満足した。

劇薬・・・7点。毒薬ブリッジ中編モノ。いやこういうのを読むとワクワク感がたまらんな。二転三転も良い。気合が入っていると思われるのに、さらっと書いてあるのがとても良い。


No.569 5点 完全・犯罪
小林泰三
(2018/10/12 18:56登録)
短編5編。
初めての作家さんです。

1.「完全・犯罪」 6点
星新一のショート・ショートにありそうな内容で、ボリュームは5倍ぐらい。
途中でわからなくなったのが残念だが、ナンセンスなのがグッド。

2.「ロイス殺し」 5点
復讐物。火刑法廷のオマージュらしいが・・・

3.「双生児」 4点
双子の同一性がテーマか?
よくわからん。

4.「隠れ鬼」 4点
これもよくわからん。印象が薄い。

5.「ドッキリチューブ」 5点
テレビのドッキリ番組は趣味が悪いが、ついつい観てしまう。
それと同じで厭らしい感じがあるも、テレビと同じで、馬鹿げた内容に乗せられて、ページを繰る手が止まらず、あっという間に読んでしまった。

アイデアが色々あるようで、共通点はブラックなところだけで、5編の関連性はない。
1、2編目はまずまずだが、共通点はないのに、なぜか3、4編目で飽きてきて中だるみし、5編目で少し盛り返したという印象。文章が合わないのかなぁ?

ほかに評価の高い作品もあるようだし、本格ミステリーもあるようなので、それらに期待します。


No.568 7点 バスカヴィル家の犬
アーサー・コナン・ドイル
(2018/09/28 13:07登録)
ホームズの出番はわずか。そのせいなのか短編のように、とんとんとんと急展開に話が進むことはありません。ホームズ短編は良すぎるから、くらべることに無理があります。
とはいえ長編としては上出来の部類で、読み終えてみれば、長編4作の中で、「緋色の研究」より上位のベスト長編となりました。

2部構成にはせず、平板になりつつある中盤に脱獄囚を絡ませたり、その後絶妙なタイミングでホームズを再登場させたり、さらに冒険要素を盛り込んだり、とストーリーに変化をつけ、長編らしいサスペンス性豊かな作品に仕上げているのが、他の長編との違いです。
謎の提起や謎解き自体に醍醐味があるのも特徴です。

ホームズの再登場の遅さの理由は想像どおり。このことを含め種々の事情を最後の背景開示&謎解き解説で説明してくれます。このパートは15ページほどありますが、この部分が、ドイルお得意の2部構成の第2部のようにも思えます。


No.567 5点 シンメトリー
誉田哲也
(2018/09/10 14:52登録)
姫川玲子シリーズの初短編集。全7編が収録してある。
表題作が4編目で、目次を見たところ、「シンメトリー」を中心に左右対称っぽく見える。それも意識したのだろうと解説者は述べている。

通俗的で浪花節的なストーリーで読者を惹きつけてくれるのが、この著者の得意技なのだが、短編では人物造形も薄い感がして、それらの特徴は長編ほど顕著ではない気がする。
さらに個人的には、主人公・姫川のキャラにクールさが漂っているのも気にいらない。短編だから仕方がないのか。それとも、映像での記憶に押されて、記憶がねじ曲がってしまい、姫川を少しドジな熱血女刑事だと思い込んでいたためなのか。
まわりの刑事たちの個性もほとんど目立たない。
本格要素がほとんどないのも残念なところ。

とはいえ、先へ先へとページを繰ってしまうリーダビリティの高さは賞賛に値する。本格性については期待せずに、捕物帳を読む程度で臨めば問題はない。
しかも、ワンパターンにならず、プロットに種々工夫もある。

好きな作品は、殺し方が凄い「シンメトリー」と、人情物の「手紙」の2編。


No.566 6点 七色の毒
中山七里
(2018/08/29 14:58登録)
社会派本格短編・犬養編。
いつもなら各編の記憶は、次編を読み始めてすぐにぶっ飛ぶのに、おもいのほか長持ちしたのには驚いた。全編読了した後でも、おおむね記憶に残っていた。これはめったにないこと。
出来としてはとびきり上等というのはないが、けなすような作品もない。
みな、そつなくうまくまとめながらも記憶に残すような色が施してある、という印象。

それほど差はないが、いちおうマイベストは、第4話の「青い魚」。ただし本格ミステリーとして、描写において気になる点はあった。
それと、第7話の「紫の供花」を、第1話の「赤い水」に絡ませていることも気に入っている。別にどうということはないけど、連作のラストとしてまとめてあるのがいい。


No.565 6点 メグレと火曜の朝の訪問者
ジョルジュ・シムノン
(2018/08/17 16:36登録)
ある男がメグレを訪ね、その後、その妻がメグレを訪ねる。
序盤の二人の訪問で、その後、ホームズ物のように、事象や事件が飽きることなく発生し、とんでもない方向へと進んでいく、なんてことを希望的に想像したが、そうはいかないのがメグレ物。
これはどうみても私立探偵の仕事。それをメグレにやらせるのが、メグレ物らしさなのか。

後半になって、マイナス時間から、ゼロ時間(斎藤警部さんの用語を拝借)へと悪い方向に進むのは、メグレにとってはおもしろくないが、もちろん読者にとっては期待どおり。でも遅すぎる。まあそこまでの経過(人間関係の開示)が重要ではあるのだが。

主たる登場人物はメグレを除き3人。
たった3人なので、その人間関係におもしろみはないが、二人の訪問の趣旨と、3人が絡む事件との関係を容易には見抜けないような真相にしてあることと、その謎解きとは、それなりの出来のように感じた。
とはいっても、べた褒めというわけではありませんが。

最後にひとこと。
空さんとtider-tigerさんは、登場人物の女性に対し種々感想をお持ちのようですが、自分は特に何の感情も抱きませんでした。冷血なのか、鈍いのか、鷹揚なのか、それとも読みが浅いのか、シムノン作品を読む資格なしなのか、ちょっと考えてしまいました。

さらにもうひとこと。
最近、シムノン・コーナーは活気がありますね。私が参入したときは評者として二人目だったのに、いまは凄い人数です。うれしいです。
読む資格なしは撤回し、もう少し読んでみます。


No.564 7点 黒いトランク
鮎川哲也
(2018/07/20 11:12登録)
1956年初出版、鮎川の代表作です。
謎解き小説としてはかなり手ごわい作品です。そもそも、犯人当てというよりも、アリバイトリック絡みの真相解明を問うたものなので、難易度が高いのはやむを得ません。
ただ、難解ではあっても手がかりは揃っていて、しかも作者による図表などの手助けもあるので、フェアな本格ミステリーとしてはベスト中のベストと言ってもいいしょう。

とはいえ、いまあらためて感じるのは、じつはトリック自体は平易だということです。それを登場人物(おもに鬼貫)の言動や行動による誘導で複雑化しただけ、ということが今回判明しました。まあ、それも推理小説のテクニックにはちがいありません。

アリバイ崩し(をメインに据えたミステリー)といえば、決して似ているわけではありませんが、本書よりも後発の、松本清張の『点と線』(1958年)、森村誠一の『高層の死角』(1969年)と比較したくなります。
東西ミステリーベスト100での順位を見れば、『点と線』はかなりの上位で、なぜか本書はそれよりも下位、『高層の死角』はさらに下です。
結局、好みの問題だとは思いますが、『点と線』がなぜこんなに評判がいいのか、いまだに理解できません。


No.563 6点 ジョーカー・ゲーム
柳広司
(2018/06/27 09:52登録)
結城中佐をトップとするスパイ養成機関、「D機関」のメンバーたちが活躍するスパイ・ミステリー。

長岡弘樹氏の『教場』の評で、雰囲気が似ているとの感想がちらほらある。
主人公(風間教官と結城中佐)のキャラクターや雰囲気は似ている。そして物語中の主人公キャラの比重もおおむね同じ。
ミステリーとしては、『教場』は伏線たっぷりで、へぇ~と感心はしても、やや不自然な印象を受けてしまうのに対し、本『結城中佐』シリーズは、プロットで勝負し、結末で、へぇ~となってしまう。そんな感じか。どちらをうまいと評すべきか。
ベストは『魔都』。次点が評価の高い『幽霊』。他も悪くない。


No.562 4点 書斎の死体
アガサ・クリスティー
(2018/05/25 13:03登録)
書斎に見知らぬ女性の死体が・・・
たしかに斬新な冒頭シーンかもしれません。
全体を通してみれば、登場人物が多く、その人間関係もプロットも複雑で、背景もいろいろあります。
でもそのわりに、ミステリー的には平板な感じがします。
むしろマープルとバントリー夫人の会話が楽しめました。

トリックや伏線など見るべき箇所はありますが、個人的には切迫したサスペンスが伝わってこず、平凡な印象を受けました。
どうしても安楽椅子探偵モノには抵抗を感じます。


No.561 8点 高層の死角
森村誠一
(2018/04/17 09:40登録)
森村誠一氏の代表的本格ミステリ作品と言えば、乱歩賞受賞作品でもある本作。

密室トリック、アリバイトリック、さらに暗号トリックもある。欲張りすぎで、きっと気負いはあったのかもしれないが、でもみなうまくはまり、どれも上質に仕上がっている。力作です。

特にアリバイトリックには、力が入れてある。
かなりのページ数を割き、一歩進んでもすぐには答えにたどり着けない多段階構成となっている。時刻表はたしかに出てくるが、それだけではなく、組み合わせ技であるところがすごい。
解決のかけらを小出しにしながら読書欲を持続させてくれるこの展開は、ほんとうに堪らない。これこそがすぐれたリーダビリティにつながっているのでしょう。

660中の書評を表示しています 81 - 100