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ミステリの祭典

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春から夏、やがて冬

作家 歌野晶午
出版日2011年10月
平均点6.00点
書評数14人

No.14 7点 パメル
(2024/04/10 19:27登録)
第146回直木賞候補作。スーパーで保安員をしている平田誠は、万引き犯の末永ますみ捕まえるも、警察に突き出すことはしなかった。そのことに恩義を感じたますみは、彼に近寄っていき交流が始まる。平田には、ますみと同い年の娘・春夏がいたのだが、轢き逃げ事故で亡くしていた。平田は、ますみを失った娘・春夏の姿を重ね、彼女を見捨てず手を差し伸べる。
平田は、辛い過去を背負い自らを責め、生きることすら諦めている。自責の念に苛まれる平田を救うために、ますみはある行動を起こす。この行動が哀切に満ちた結末を導くことになる。ますみの行動に賛否両論あると思うが、不器用ながら一生懸命考えたのだろうと伝わってくる。お互い相手を思って実行した結果が、あの結末と考えると胸が痛くなる。解き明かしてはいけない真実、ささやかな絆で結ばれた二人が、それぞれに向けた思いは償いのためか、救済のためか。誰が救われ、誰が心の安寧を得たのか。それでもアンハッピーとは言い切れない揺らぎが静かな余韻を残す。
謎を解き、真相を暴くミステリとは明らかに異なる、人の心がいかに深い階層を持っているかを突き付けられる優しくも残酷な物語。

No.13 7点
(2019/07/16 10:40登録)
きっと何かあるのでは、と常に気にしながらの読書でした。
しかし、気にかかっても大抵の場合、少し読み進めば著者からの回答が得られ、な~んだ考えすぎかと、少し安心したり、少し残念に思ったりもします。
娘をひき逃げで亡くした平田と、その娘と同年代のますみとの交流が中心に描いてあり、それを読むだけでも十分に楽しめます。

読み終えてみればミステリーとしては物足りなさを感じる反面、全編をただようミステリーの雰囲気にはおおいに楽しめました。
それに、二人はいったい何を考えていたのだろうと、いろいろ想像を巡らすことができ、藪の中的な読後感が得られたのにも満足しました。
語り合うのに最適な小説かもしれません。

No.12 5点 E-BANKER
(2017/06/22 21:02登録)
2011年発表のノンシリーズ長編。
他の方の書評を見ても、「叙述」がどうしても気になる作品のようだが・・・

~スーパーの保安責任者・平田誠は万引き犯の末永ますみを捕まえた。いつもは容赦なく警察に突き出すのだが、ますみの免許証を見て気が変わった。昭和60年生まれ。それは平田にとって特別な意味があったのだ・・・。偶然の出会いは神の導きか、悪魔の罠か? 動き始めた運命の歯車がふたりを究極の結末へと導く!~

冒頭で触れたとおり、既読の皆さんは「葉桜・・・」的な叙述トリックではないかと身構えていたようである。
私も「もしかして・・・」と考えないではなかった。
でもまぁ、さすがに二番煎じはしないよねぇ。
どちらかというと、「葉桜・・・」よりは、「世界の終わり、あるいははじまり」に近いテイストの作品だった。

ただ、このトリックというか、仕掛けは既視感あるなぁー
「ミステリー寄りの文学」というジャンルならこれでいいのかもしれないけど、やっぱり歌野だもんなー
当然「文学寄りのミステリー」を書こうとしていたんだろうし、だとしたら決して成功とは言えないように思う。
この「仕掛けの拙さ」は、ある登場人物自身の「拙さ」とリンクしているのは分かるんだけど、これが本作のメインテーマなのだとしたら、膨らませがいのないテーマだったのではないか?
そんなことを感じてしまった。

平田とまゆみをめぐる人々とのやり取り、会話もどこかの地上波ドラマに出てきそうで、正直「パッとしない」と思う。
小瀬木医師もなぁー、結局傍観者だしなぁー
・・・なんてことを考えた次第。
まぁ今回は小品ってことだな。
(なんだか偉そうな書評になってスミマセン。まっ、期待の大きさの裏返しということで・・・)

No.11 7点 斎藤警部
(2016/02/03 12:19登録)

予想外 。。。。 結末も 幕引き人(探偵役?裏主人公??)も 真犯人(?)も 真相(??)も

ネタバラシ。。。を言うと 少しは明るい終わりなのか そうでないのか モヤモヤしたままなのが本当に 予想外

反転。。はさほど強烈でない だが物語の構成 不思議な終わらせ方が 救いの無い中にも 謎めいた感動を招き入れている


No.10 6点 名探偵ジャパン
(2015/06/01 09:31登録)
叙述トリックというものは、つくづく作家にとっては劇薬だなあと感じた。
もう、最初から疑ってかかって読んじゃうからね。「この登場人物の性別は? 年齢は? 舞台となっている時代は?」地の文でそれらを表す記述が出ると、ほっと胸をなで下ろす。しかし、「いやいや、この地の文自体が何者かの手記、という可能性も…」だめだ、全然話に入っていけない。もう頭からっぽの夢詰め込める状態で読もう。
結果、夢どころか、陰鬱な結末によるブルーな気持ちだけが詰め込まれてしまいました。悲しい話だ。悲しいだけならいいのだが、ヒロイン(?)を地獄の道に連れ込んだ人物に対する作中の解答がないまま終わってしまっている。確か、他の作家だが、「天使のナイフ」という作品でも同じような事を書いた記憶があるが、エンターテインメントなら、悪には作中できっちり裁きを下してもらいたい。社会派はエンターテインメントを標榜してるわけじゃないからいいのかなぁ?

No.9 6点 yoneppi
(2015/03/01 12:23登録)
帯の葉桜うんぬんのせいで構えて読んでしまったが満足はしている。
それにしても悲しすぎる結末。

No.8 5点 シーマスター
(2015/02/15 21:32登録)
寄り添えども寂しく、想えども切なく、美しくも哀しく愚かしい喜劇にも似た悲劇。

No.7 6点 蟷螂の斧
(2014/03/07 12:39登録)
救いようのない残酷な物語でした。ミステリー要素は薄いが、題名は秀逸。

No.6 6点 ぶん太
(2012/09/12 19:48登録)
帯がひどいな~。作者が意図していないものだとしたら
これを考えた出版社は罪である・・。
帯に引っ張られて、先が気になるのは確かだが、
作品全部を読んだら、帯のせいで脱力してしまうことは
分かりそうなものだが・・。

主人公の日常を記した筆力はさすが。どことなく奥田英朗を
思わせる。
また、少女の独白部分は携帯小説をパロった感じが、
ふざけてはいるがこの作者の妙。
結末云々ではない部分に7点、結末で±0、帯で-1。

No.5 6点 まさむね
(2012/07/26 22:36登録)
 タイトルから,どうしても「葉桜~」を念頭に読んでしまいますねぇ(私だけ?)。結果,ソッチ系ではなく,反転レベルも期待ほどではなかったものの,残念感は抱きませんでした。淡々とした書きぶり,そして悲しさと切なさと優しさが入り混じった読後感は記憶に残りそうです。この作品の本質は,反転ではなく,その後の余韻にあるような気がしますね。(好き嫌いはありそうですが…。)

No.4 4点 いけお
(2012/06/03 16:21登録)
明確で魅力的な謎がないのがつらい。
最終的に不要な回想も多いし、ラストのどんでん返しというのも微妙。

No.3 6点 白い風
(2012/03/01 23:24登録)
う~ん、悲しすぎる・・・。
基本、ミステリーは事件が起こり、つまり人が亡くなる訳なんだけど、今回は殺す側、殺される側も救いが無い気がする。
作家があの「葉桜」の歌野さん、帯に”ラスト5ページで世界が反転する!”とあったので、前半から必要以上に慎重に読んじゃったよ(笑)
後半「そんな偶然ないだろ!」とツッコミながら読んでいたけど、やっぱり無いよね(笑)

No.2 7点 虫暮部
(2012/02/23 06:43登録)
 つくづく、『葉桜』は歌野晶午にとって重い枷になってしまったなと思う。こういった、人生の悲喜こもごもを描く類の長編を読むと、ついついどんでん返ししかも叙述トリック系を期待してしまうけれど、そういうネタは予め期待している時点で効果半減なのである。
 本作も、先入観がなければ結末でもっと驚き、感動できたのに。ということで、いっそのことこれ系は別名で発表して下さい!!

No.1 6点 kanamori
(2011/11/10 19:04登録)
元エリートの中年警備員が、スーパーの万引き娘を捕まえるところから始まる物語には、謎らしい謎の提示もなく、自分の娘をひき逃げで亡くした中年男の心情と、生活苦の娘への施しと交情を淡々と展開させているだけなのですが。

そこは作者のこと、”ラスト5ページで世界が反転する”。
大どんでん返しと言うほどのインパクトはないんだけど(なにせ、帯にネタバレぎみに「反転」と謳われている)、物語のテーマと仕掛けが綺麗に合致しているように感じた。
小粒ながら無難にまとめ上げた佳作といったところでしょうか。

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