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ミステリの祭典

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宝島

作家 真藤順丈
出版日2018年06月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 バード
(2020/02/19 07:23登録)
1952~1972年(沖縄返還)の沖縄島を舞台にした話で、2019年の直木賞受賞作。
舞台が舞台だけに反戦物かと思いきや、そういった主張を押し付けてくる作品ではなく、戦争直後特有の理不尽な世界に身を置く主人公三人の感情の機微を丁寧に描いた作品である。ただし、終始暗い雰囲気の中で進行するので、描かれる感情は負の感情(喜怒哀楽の怒と哀)の割合が多く、そういう意味で主人公らの感情の起伏が小さい。それに引きずられる形で作品としてもややメリハリに欠けていると思う。
まあ、ほぼ怒と哀に関するイベントだけで一本書き上げた点が評価されたのかもしれないが。

点数の内訳は5(物語) + 1(雰囲気・オリジナリティ) = 6。
本作独自の雰囲気(沖縄訛りの語り口や語り部の正体など)は結構好き。また、少し長いなぁ、とは思ったが減点するほどではないかな。


(共通点はタイトルだけですが、新旧「宝島」対決は旧に軍配です。)

No.1 7点
(2019/06/05 13:15登録)
第160回、直木賞受賞作。
復帰前の沖縄が舞台で、突如として消えた、戦果アギヤー(米軍基地からの略奪屋)のリーダーを慕う男女3人(親友、弟、恋人)の、その後の沖縄返還まで(1950,60,70年代)を描いた青春ミステリー超大作。リーダーは、略奪はするも、奪った物をみなに分け与える、コザの義賊のような存在だ。

テーマはリーダー探しなのか?
年月が経つにつれ、三者三様、生き方や考え方が変化していく。3人がその後、あまりにもかけ離れた職業に就くところが面白い。
戦後の沖縄はおそらく荒廃していただろうに、登場人物たちは、なぜか荒々しく、生き生きとしている。こんな状態に置かれた人たちだからこそ、そうなるのだろうか。

読みながら、江戸侠客物や現代やくざ物、スパイ物、戦争物みたいな印象を受けていたが、やはり違う。沖、米、日が絡んだ国際謀略・闘争&青春物、といったところか。

直木賞の審査員評はおおむね絶賛。
個人的には、作風も分野も文体も、嗜好から少しずれていたが、シリアスな内容ながらも陽気な登場人物たちの行動に興奮しながら、楽しい読書ができた。しかも、アノ謎に最後まで引っ張られたのもよかった。
当時の沖縄を知らないだけに、リアリティがあるのか、荒唐無稽なのかもわからないが、スケールのでかい時代小説、冒険小説に臨むつもりで読めば、そのあたりは解消できるし、まずまず楽しめるだろう。

付け足しみたいだけど、ミステリー要素としては、大きな謎が2つあった。
大河小説なのにミステリー的な真相がラストに明かされれば、大河物としての値打ちが減殺したり、安っぽくなったりすることもあるが、本作については全くそんなことはない。
開示された真相は、期待以上のものだった。

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