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ミステリの祭典

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nukkamさんの登録情報
平均点:5.44点 書評数:2940件

プロフィール| 書評

No.1020 6点 青雷の光る秋
アン・クリーヴス
(2016/01/27 17:38登録)
(ネタバレなしです) 2010年発表のシェトランド四重奏最後の作品となった本格派推理小説で、ジミー・ペレス警部が婚約者のフランを連れて故郷のフェア島へ戻って事件に巻き込まれます。何と前半は嵐の孤島状態となりペレス以外にプロの捜査官がいないのですが、その割にはのんびりしているとは言わないまでも緊急事態という切迫感が乏しく、手ぬるい捜査に感じました。しかし最後には衝撃的な結末が待っています。ちなみにジミー・ペレスシリーズはこの後も続いて書かれます。


No.1019 5点 死にぞこない
飛鳥高
(2016/01/27 17:24登録)
(ネタバレなしです) 失踪した社長の足跡が砂の真ん中にぽつんと建っている石碑の前まで続き、そこからどこへも足跡は続かず、波打ち際は石碑から10メートル近く先だったという謎が魅力的な1960年発表の第4長編です。しかし失踪人探しがメインプロットで、殺人事件も起きるのですが犯人当てとしては推理の要素はほとんどないのが本格派推理小説としては中途半端感が残ります。中盤で主人公が自分の行動を「失踪者の周囲に何か黒雲のようにもやもや漂っているものを取り払う」と振り返っていますが、その目的からしてどこかもやもやしているように感じます。もっともつまらない作品では決してなく、足跡トリックはトリックメーカーと評されている作者ならではの巧妙なものだし、主人公を微妙に捜査に消極的な役柄に設定しているのも物語的には成功しています。余韻を残す結末も選出効果が高いです。


No.1018 4点 クレオパトラの黒い溜息
小峰元
(2016/01/27 16:22登録)
(ネタバレなしです) それほど著名な作品ではありませんが1984年に発表された本書は小峰作品のみならず全てのミステリー作品の中でもユニークな試みがあることで知られます。それは横書きで書かれたことです(小説としては日本初らしいです)。電子メールが日常ツールとなっている現代ではこの横書き形式もそれほど苦労せずに読めると思います(従来の縦書きより有利だとも思いませんが)。このタイトルで「プラトンは赤いガウンがお好き」(1977年)に登場したパトラというニックネームの女子高生の再登場を期待した人、残念でした。全く関連のない作品です。成績優秀であっても大人にいいようにあしらわれてしまう主人公(男子高校生)の物語ですが、低俗に走り過ぎなストーリー展開が私の好みに合わず主人公にも共感できません。各章の最後で「振出へ戻る」という設定なのがこれまたユニークですが、捜査や推理が進んでいるというより行き詰まり気味なので「戻る」感じの演出が弱く趣向倒れの印象が残ります。但し最終章での推理説明にはインパクトがあり、「振出へ戻る」も上手くはまっています。


No.1017 5点 夏油温泉殺人事件
中町信
(2016/01/25 20:40登録)
(ネタバレなしです) 1990年発表当時は「不倫の代償」というタイトルだった氏家周一郎シリーズ第8作の本格派推理小説です。乗用車とマイクロバスが接触事故を起こして両方とも崖下に転落して10名もの死者を出した事故が起こり、記憶喪失を起こした生き残りの乗客が犠牲者の一人が殺されるのを見た気がすると発言したことから謎が深まります。読みにくくはないのですが人間関係が意外と複雑な上に、バスにいたはずの乗客が乗用車に乗っていたのではとか乗用車に乗っていたはずの乗客がバスに乗っていたのではとか話がどんどんややこしくなります。動機の探求やアリバイ調査もありますが最後の決め手は第10章で図解入りで説明されるある証拠。しかしこれは何とでも解釈できそうな弱い証拠だと思います。何とでも解釈と言えばダイイング・メッセージの謎解きも同じで、私には真相の説得力が「そうかもしれない」という程度でした。


No.1016 5点 マジシャンは騙りを破る
ジョン・ガスパード
(2016/01/24 18:59登録)
(ネタバレなしです) 低予算映画の監督で映画製作関連本も書いている米国のジョン・ガスパードが最初に書いたミステリーが2012年に発表したマジシャン探偵イーライ・マークスシリーズ第1作の本書です。創元推理文庫版の巻末解説で実在のマジシャンであるハワード・サーストンの三原則という、「事前に説明しないこと」「同じマジックを繰り返し見せないこと」「種明かしをしないこと」というマジシャン間の暗黙のルールがあることを紹介し、作中でもイーライはこのルールを遵守してマジックのネタバラシはしないようにしています。犯罪の謎解きだけでなくマジックの種明かしにも積極的だったクレイトン・ロースンのマジシャン探偵グレート・マーリニとは大違いですが、もしかするとロースンの方が業界マナー違反だったのかもしれませんね。さて本書ではマジシャンが何人も登場してその中から被害者も出るのですが、不可能犯罪が起きるわけではありませんのでトリック破りを期待してはいけません。犯人をカモフラージュするミスディレクションの方が目を引きます。但し推理説明による謎解きを期待してるとこれまた肩透かしをくらってしまうところが本格派推理小説としては個人的にちょっと不満です。


No.1015 5点 死のある風景
鮎川哲也
(2016/01/24 00:15登録)
(ネタバレなしです) 創元推理文庫版の作品紹介で「鮎川ミステリ屈指の傑作」と評価の高い1965年発表の鬼貫警部シリーズ第8作の本格派推理小説です。事件関係図や時刻表が豊富に揃えられ、(部分的には時代の古さを感じさせるものの)緻密に考えられたアリバイトリックなど鮎川らしさはよく発揮されていると思います。ところで創元推理文庫版の巻末解説(ネタバレありなので作品を読み終えてからどうぞ)では鬼貫をクイーンの流派の天才探偵として位置づけ、「アリバイ崩しにクイーンの作法を持ち込んだ」と絶賛していますが、本書の場合はどうでしょう?全13章の内、鬼貫の登場はわずか1章のみ、おまけに真相説明しているのは別人なのです。これでは鬼貫の天才ぶりがまるで伝わらないのでは。


No.1014 4点 短刀を忍ばせ微笑む者
ニコラス・ブレイク
(2016/01/23 23:32登録)
(ネタバレなしです) 1939年発表の本書はナイジェル・ストレンジウェイズシリーズ第5作と紹介されることも多いですが、主人公はナイジェルの妻ジョージアです。ナイジェルはほとんど登場せず、さりとて裏で暗躍していた様子もなくシリーズ番外編と言うべき作品だと思います。第二次世界大戦の直前に書かれたと思われ、秘密組織の黒幕探しの冒険スリラー小説となっています。謎解き要素がほとんどないのはまだしも、捜査の進展が場当たり的のため前半の展開がだらだら感が強いのは作品の弱点と思われます。後半になるとジョージアに迫り来る危機描写でやっとサスペンスが盛り上がります。タイトルが(短刀が登場していないので)作品内容と合ってるのか意味不明でしたが、kanamoriさんのご講評の説明でようやく理解できました。この場を借りて御礼申し上げます。


No.1013 6点 ダリの繭
有栖川有栖
(2016/01/23 23:20登録)
(ネタバレなしです) シュールレアリスムの画家サルヴァドール・ダリに心酔し、ダリを真似た髭をトレードマークにしていた男が殺される事件の、1993年発表の火村英夫シリーズ第2作の本格派推理小説です。不思議なタイトルが目を引きますが、「繭」についてはプロットの中で巧く活用していると思いますが「ダリ」についてはタイトルに採用するには作中の扱いが物足りなく感じます。もっとも私のように美術に関心の低い読者だと、美術用語を多用されてもそれはそれで読みづらくなってしまうのですけど。謎解きはそつなくまとめてはいますが、記憶に残るような特色がなく地味な印象の作品でした(自分の記憶力の問題は棚上げ)。


No.1012 5点 花の旅 夜の旅
皆川博子
(2016/01/23 23:07登録)
(ネタバレなしです) ミステリーの初期代表作と評価の高い1972年発表の本書は、花をモチーフにした短編の仕事の依頼を受けた売れない作家がカメラマン、マネージャー、モデル、アシスタントらとの取材旅行を続けながら作品を書いていくが怪事件が発生するという展開を見せます。作中作の短編第一話で始まり、その後に現実の世界が続き、その後も虚構の世界と現実の世界が交互に描かれる凝ったプロットの本格派推理小説です。作中作はどれももやもや感が濃い上に、時に虚構の世界か現実の世界かよくわからなくなり、終盤で登場人物に「読者はめんくらうでしょうね」と言わせています。謎解きもしてはいますが解決のすっきり感よりも幻想性の方が高かった印象を受けました。ミステリーとしては「紙芝居殺人事件」(1984年)の方が本書より完成度が高いように感じられて個人的には好みなのですが、幻想作家としての皆川を期待している読者には本書の方が受けがいいかもしれません。


No.1011 6点 奥様は失踪中
サイモン・ブレット
(2016/01/23 22:33登録)
(ネタバレなしです) 1988年発表のパージェター夫人シリーズ第2作です。この作者は軽妙な文章による読みやすさを特徴とし、時にユーモアも織り込みますが一方で落ち目の人生とその悲哀を描くことにも秀でており、本書でも第29章の描写は非常に印象に残ります。犯人を特定する手掛かりらしい手掛かりもなく、最後は犯人をおびき寄せる作戦で正体を見抜くという結末だったのでサスペンス小説かと思いましたが、一応はパージェター夫人が謎解き伏線の説明をしており何とか本格派推理小説としても成立しています。


No.1010 5点 マヂック・オペラ
山田正紀
(2016/01/23 22:29登録)
(ネタバレなしです) 「二・二六殺人事件」の副題を持つ、2005年発表の黙忌一郎シリーズ三部作の第2作となる、幻想性の強い本格派推理小説です。ミステリにおいてはしばしば謎の人物が登場して謎を深めるのに重要な役割を果たしますが本書の場合はそういう人物が多過ぎて、私のような単純な読者は人物整理が追いつかず謎解きに集中できませんでした。これでもかと言わんばかりの謎の提供が圧巻だったシリーズ前作「ミステリ・オペラ」(2001年)と違いを出そうとするのはいいのですが、歴史描写の充実と引き換えに謎解きが後退しているのは残念です。タイトルに使われている「マヂック」もぴんと来ませんでした(一応は密室殺人事件がありますが)。


No.1009 5点 探偵ダゴベルトの功績と冒険
バルドゥイン・グロラー
(2016/01/23 22:15登録)
(ネタバレなしです) オーストリアのバルドゥイン・グロラー(1848-1916)はコラミニスト、編集者として活躍し、小説もかなりの作品を残しています。探偵愛好家のダゴベルト・トロストラーシリーズは1910年から1912年にかけて18短編が6冊に分けて出版され、更に1914年発表の4短編を収めた短編集があり、そして短編集未収録の1編と合計23編の短編があるそうです。本書(創元推理文庫版)は初期18編の中から9編を抜粋したものです。解決済みの事件をダゴベルトがグルムバッハ夫妻に語って聞かせるプロットのためか、謎解きプロセスを楽しめる作品ではなく、また真相を明かすよりもスキャンダルにならないように処理することに重点を置いた作品が多いのも特徴です。それが同時代のメルヴィル・D・ポーストのアブナー伯父シリーズやジャック・フットレルの思考機械シリーズとは異なる作品個性でもあるのですが、謎の魅力のアピール度が低いのがミステリーとしての弱みになっているように思えます。風変わりな殺害方法の「特別な事件」とスリリングな冒険談の「ダゴベルトの不本意な旅」が印象的でした。


No.1008 6点 摩天楼の弩
高柳芳夫
(2016/01/23 22:04登録)
(ネタバレなしです) 1983年発表の本書ではコンピューター産業と企業秘密を巡る産業スパイ行為がちらつきますが社会派推理小説でもスパイ・スリラーでもなく、本格派推理小説に分類すべきミステリーです。「摩天楼」というタイトルが作品内容と合っているとは言い難いのが(高層ビルが舞台になっているわけではありません)少々気になりましたが、緻密に考えられた犯罪をどんでん返しの推理で明らかにしていく展開は謎解きの面白さ十分です。中盤での企業間の関係説明はあまり万人向けとは思えませんが、全体の中ではそれほどの弱点に感じませんでした。


No.1007 5点 月曜日ラビは旅立った
ハリイ・ケメルマン
(2016/01/23 21:53登録)
(ネタバレなしです) 米国では第二次世界大戦以降から長い間本格派推理小説の人気が低迷し、ジョン・スラデックの傑作「見えないグリーン」(1977年)でさえもあまり評判にならなかったようです。しかしケメルマンのラビ・スモールシリーズはそれなりの人気があったらしく、中でも1972年発表のシリーズ第4作である本書はイスラエルを舞台にしたという珍しさもあってか小説部門のトップ10入りしたほどヒットしたそうです。もっともラビは休暇に徹していてあまり目立たないし、事件は中盤まで起きません。しかも起こった事件がテロリストによる無差別爆弾殺人風とあっては謎解きのワクワク感がいまひとつ盛り上がりません。もちろん犯人はテロリストではありませんし、最後は推理による謎解きで辻褄は合わせてますが。米国で人気が高かったのはこのシリーズが本格派推理小説だからではなく、ユダヤ社会の描写が注目を浴びたからではないでしょうか。


No.1006 5点 最後の人
樹下太郎
(2016/01/23 10:12登録)
(ネタバレなしです) 樹下太郎(きのしたたろう)(1921-2000)はミステリー作家としてデビューしましたがミステリーを書いたのはわずか5年ほどで、サラリーマン小説家としての活躍で有名です。1959年に発表された本書が長編ミステリー第1作にあたります。登場人物たちの心理を丁寧に描写したサスペンス小説としてなかなかよくできた作品だと思います。社会常識や価値観は時代と共に変化するところもありますけど、人間の感情の本質は今も昔も同じ、現代の読者が読んでもそれほど古臭さを感じないと思います。3月23日に卒業を控えた大学生3人による女性暴行事件が起き(官能描写はほとんどありません)、その1年後の3月23日に彼らの1人が変死体となる事件を扱い、犯人当ての興味を最後まで維持していますがたった一つの手掛かりに基づく一発推理勝負に近いので本格派推理小説としての謎解きはおまけ程度と思った方がよいです。


No.1005 4点 本の町の殺人
ローナ・バレット
(2016/01/23 10:02登録)
(ネタバレなしです) ローナ・バレットはL・L・バートレットやロレイン・バートレット名義でも作品を発表している女性作家です。2008年発表の本書は本の町ストーナムのミステリ専門店店主のトリシア・マイルズを主人公にしたシリーズ第1作です。主人公の設定がキャロリン・G・ハートのデス・オン・デマンドシリーズを連想させますが、残念ながらハートの作品ほど謎解き伏線が用意されているわけではなく読者が推理に参加できる余地がほとんどありません。トリシアがコンビを組むことになる人物との人間関係の紆余曲折が数少ない読みどころです。


No.1004 5点 消える「水晶特急」
島田荘司
(2016/01/23 09:50登録)
(ネタバレなしです) 1985年発表の吉敷竹史シリーズ第4作でそれまでのシリーズ作品とはかなり異なる印象の作品です。前半は何とトレインジャックを描いたスリラー小説風で、サスペンスは豊かですが謎らしい謎がありません。後半になるとタイトル通り列車と乗客が「消える」事件が起きるのですが、吉敷の描写が少ないだけでなく彼の行動自体が謎を多く含んでいて、主人公の女性記者と一緒に読者も何がどうなっているのかわからなくてやきもきさせられます。最後は様々な伏線を見事に回収して真相が明らかになるのですが読者にあらかじめ知らされていない要素も多く(プロットの性格上これはやむを得ないのですが)、読者が謎解きに参加するのは難しいと思います。個人的には本書はサスペンス小説への分類に一票投じます。


No.1003 4点 フィリップ・マーロウよりも孤独
平石貴樹
(2016/01/23 09:27登録)
(ネタバレなしです) 1986年発表の長編ミステリー第3作です。レイモンド・チャンドラーの私立探偵フィリップ・マーロウ(読んだことありませんが私でも名前は知っています)をタイトルに使っていますが、ハードボイルドどころかミステリーでさえあるかさえ個人的には微妙な作品でした(強いて言えば本格派でしょうか)。大学の工事現場から10年以上前に殺されて埋められたらしい白骨死体が発見され、主人公はかつてオニイと呼んでいた人物が犯人ではないかと疑います。そこから主人公の回想を通しての謎解きが(本格派風に)始まるのですが、この回想が主人公とオニイとママの奇妙な三角関係描写中心でしかも筋道無視の妄想気味、ミステリーである以前に小説として読みにくいです。終盤に主人公が「謎は解決されるのでなく、かたちを得てはっきり残ったのだ。あたしに」と謎めいた述懐しているように、すっきり感のないままに終わってしまいました(私の理解力も弱いのですけど)。


No.1002 6点 不必要な犯罪
狩久
(2016/01/23 09:10登録)
(ネタバレなしです) 狩久(かりきゅう)(男性作家です)(1922-1977)は1951年に作家デビューして約100編の中短編作品を世に送り出しました。本格派推理小説から官能サスペンス、SF小説と作風は幅広いです。1962年から休筆状態になってしまいますが1975年に復活します。本格派の中編「虎よ、虎よ、爛爛と-101番目の密室」(1976年)(これは傑作ですよ)で長編執筆への自信を得た作者が生前の1976年に発表できた唯一の長編作品が本書です。セックス描写があるのは本来は私がミステリーに期待していることではないのですが、本書の場合は乱れた人間関係が本格派推理小説としての謎を深めるのに必要な要素となっています。さすがに子供にも勧められる作品とは言えませんけど、どんでん返しの連続が圧巻の謎解きを構築していることは間違いありません。復活した作者に残されていた時間がわずかだったのは本当に惜しまれます。


No.1001 5点 風の時/狼の時
天城一
(2016/01/23 08:52登録)
(ネタバレなしです) 数学者であった天城一(1919-2007)にとってミステリー執筆は余技でしたが、1947年から本格派推理小説の短編を書き始めました。本書は1990年発表の長編本格派推理小説ですがなかなか数奇な経緯をたどっており、最初に完成されたのが1948年で、その後改訂されて「圷家殺人事件」というタイトルで1955年に私家版で出版されました。作者は更に大幅に手を加え(殺人のあった圷家が阿久津家に改名されました)、まるで小野不由美の十二国記シリーズみたいなタイトルを付けて発表したのが本書です(本書の方が十二国記シリーズよりも先なんですけどね)。ちなみに1990年の出版もまた私家版で、ようやく商業出版されたのは作者没後の2009年でした(長編「沈める濤」やいくつかの短編が一緒に収まってます)。ということで最終版になるまでに作者の半生を費やした作品ではあるのですが、さぞや思い入れたっぷりかと思いきや意外とドライに淡々と書かれています。作者は動機とトリックにこだわったと述べていますが、喜怒哀楽がほとんど表現されていない人物描写ではせっかくの独創的な真相もインパクトが弱いです。途中の戦史評論もいかにも学者風な堅苦しい評論で血沸き肉踊るような戦闘描写など全くなく、冗長にしか感じられませんでした。

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