(2016/01/24 18:59登録)
(ネタバレなしです) 低予算映画の監督で映画製作関連本も書いている米国のジョン・ガスパードが最初に書いたミステリーが2012年に発表したマジシャン探偵イーライ・マークスシリーズ第1作の本書です。創元推理文庫版の巻末解説で実在のマジシャンであるハワード・サーストンの三原則という、「事前に説明しないこと」「同じマジックを繰り返し見せないこと」「種明かしをしないこと」というマジシャン間の暗黙のルールがあることを紹介し、作中でもイーライはこのルールを遵守してマジックのネタバラシはしないようにしています。犯罪の謎解きだけでなくマジックの種明かしにも積極的だったクレイトン・ロースンのマジシャン探偵グレート・マーリニとは大違いですが、もしかするとロースンの方が業界マナー違反だったのかもしれませんね。さて本書ではマジシャンが何人も登場してその中から被害者も出るのですが、不可能犯罪が起きるわけではありませんのでトリック破りを期待してはいけません。犯人をカモフラージュするミスディレクションの方が目を引きます。但し推理説明による謎解きを期待してるとこれまた肩透かしをくらってしまうところが本格派推理小説としては個人的にちょっと不満です。
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