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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1515件

プロフィール| 書評

No.555 5点 殺人犯はわが子なり
レックス・スタウト
(2012/09/10 21:15登録)
最初の設定がおもしろい作品です。失踪人(というか11年前に追い出した息子)探しの事件から、邦題どおりの状況の意外な展開になるところがうまくできているのです。ネロ・ウルフがとりあえず依頼人にはどうなっているかを隠したまま調査を続ける理由も納得できます。スタウトらしいウィットに富んだ表現は、個人的には少々気取りすぎと思えるところもありますが、まあいいでしょう。
殺人事件の概要は早いうちからわかるものの、容疑者になりそうな人物はなかなか登場しません。登場した後も、ネロ・ウルフの家に集まるシーンでうまく描写されているところがあるとはいえ、それぞれの人物像が今ひとつはっきりしないように思えました。
事件が立て続けの連続殺人にまで発展していくわりには、最後の解決部分には特に意外性もありませんし、論理性にも見るべきところはありません。竜頭蛇尾とまでは言いませんが、どうも…


No.554 5点 上靴にほれた男
ジョルジュ・シムノン
(2012/09/07 16:59登録)
チビ医者の犯罪診療簿の第2巻で、7編が収録されています。最初の『オランダ人のぬれごと』の冒頭に登場するのはメグレものでもおなじみのリュカです。トランス刑事の名前も出てきますが、メグレもの常連とはイメージが違うような…
犯罪診療簿も後半に入って、名探偵として知られるようになったジャン・ドーラン医師、パリなどへ事件の依頼を受けて出かけていくようになります。7編中最も気に入ったのは『提督失踪す』。ごく短時間での不思議な人間消失事件の上に、さらに1件人間消失が起こる展開で、解決もなかなか鮮やかにうまく処理してくれています。『非常ベル』はこのシリーズ中の異色作というべきで、謎解き要素もありますが、むしろドーラン医師の身に迫る危険のサスペンスが中心になっています。
最後の方になると、多少息切れが感じられるところもありますが、全体的にはそれなりに楽しめました。


No.553 6点 招かれざる客
笹沢左保
(2012/09/03 20:38登録)
久々に再読してみると、笹沢左保も最初はこんながっちりした渋めの本格派を書いていたんだなあと多少びっくりさせられました。特に第1部後半は警察の調書をそのまま載せたという体裁です。
メインのアリバイ・トリックは、気づかれる危険性がかなりあったのではないかという点が気になりましたが、おもしろいアイディアではあります。シンプルな暗号は、一般読者にとっては変換方式がわかるはずがありませんが、これはこれでいいと思います。第2の殺人の手順については、犯人の計画に、都合の良い偶然がなければ成り立たない部分があるのがちょっと不満です。
渋めといっても、最後の方タイトルの意味が明らかになる部分には、後の作品をも思わせるメロドラマチックさがありました。その秘密は意外だったのですが、本当にそのことをしなければならなかったのかという疑問も感じます。その心理を納得させるような結末にはできなかったのかなあ。


No.552 7点 死の統計
トマス・チャステイン
(2012/08/31 20:22登録)
カウフマン警視シリーズの番外編ということですが、元のシリーズを読んだことがないため、他作品とのスタイル比較はできません。しかし本作に限って言えば、私立探偵が活躍するハードボイルドで、途中にマーロウやサム・スペードの名前も(実在の人物という設定でしょう)出してきています。カウフマン警視を始めとするたぶんシリーズの常連警官たちは、脇役に徹しています。
この私立探偵スパナーの女性関係が奇妙で、印象に残ります。離婚歴2回で、その2人の元妻と一緒に探偵事務所をやっているという設定なのですから。そんな人間関係を嘘っぽく感じられないようにまとめあげる作者の手際は、たいしたものです。
事件の展開も、スパナーによる目撃から死体盗難、行方不明者とのつながりの有無、さらに起こる殺人など、おもしろくできていますし、各章の始めに添えられている小見出しというか引用の中にも伏線を入れてあるなど、よくできた作品です。


No.551 6点 エラリー・クイーンの事件簿1
エラリイ・クイーン
(2012/08/29 13:47登録)
映画のノベライゼーションであることを意識して再読してみると、収録2作ともいかにも映画的な場面展開ですし、カーチェイス、尾行など視覚効果を意識した作りになっています。軽いノリは、少し前の『ドラゴンの歯』にも通じます。
『消えた死体』の元になった長編は小説らしい重厚な作品でしたが、全く異なるシチュエーションにして、なかなかよくできたヴァリエーションだと思えます。映画公開が1940年であることを考えると、あの原作長編を選んでこのような形に変えたのは、当時のアメリカ世情を考慮してのことかもしれません。
翌年製作の『ペントハウスの謎』は当時の中国政情を背景にして、スパイ小説的な味を加えています。しかし映画でも、電球に関する推理にはクイーンらしさがありました。
『靴に棲む老婆』より前、ニッキー・ポーターが別設定で登場する2作品でもあります。しかも『ペントハウスの謎』依頼人名はシーラ・コッブねぇ…


No.550 7点 腐蝕の構造
森村誠一
(2012/08/25 11:56登録)
森村誠一が日本推理作家協会賞を受賞した大作ですが、なぜか『高層の死角』や『人間の証明』に比べると知名度は低いようです。
しかしこれは読みごたえがありました。森村が社会派的な傾向を強めるきっかけになった作品とも言われていますが、作者は以前の作品でも事件の社会的背景、特に企業の悪辣な駆け引きを何度か取り上げてきました。ただ、以前にはアリバイや密室などのトリックをメインにした謎解き要素が強く、警察の捜査が中心になっていたのに対して、本作ではダイナミックで意外なストーリー展開が読みどころになっています。作者お得意の登山が繰り返し、季節を変えながら描かれ、話を盛り上げてくれます。
まあ、実のところ本作唯一の殺人は密室的状況ではあるのです。しかし作中の図を見る限りでは、実行不可能と言わざるを得ませんし、不可能状況を作り出した理由をちょっと考えれば犯人は明らかです。


No.549 6点 死体が空から降ってくる
ジョルジュ・シムノン
(2012/08/21 21:18登録)
田舎の開業医ジャン・ドーランを探偵役にした、謎解き要素の強い短編集の前半6編を収めています。1編平均ハヤカワ・ポケミスで40ページ以上で、全部だと長すぎるため2巻に分けたものです。なお巻末解説では全部で12編としていますが、実際には13編です。シムノンはメグレものを始める直前頃に、『13の秘密』等謎解き要素の強い短編(掌編)集を3冊発表していますが、これらもすべて13編。メグレもの以外の謎解きミステリ短編集については、シムノンは収録作品数にこだわりがあるのでしょうか。
謎解きと言っても、ドーラン医師の推理方法はメグレと同じように事件関係者の立場になりきるというのが中心で、大げさなトリックなどはありません。しかし、どの作品も事件の中心となる謎を明確にした上で、なかなかきれいに解決して見せてくれます。
ただ翻訳については、明らかな誤訳や日本語として変なところも目立ちました。


No.548 7点 ブルー・ベル
アンドリュー・ヴァクス
(2012/08/18 12:11登録)
ヴァクスの代表作と言われる作品なので、期待して読み始め、確かにアウトロー世界の迫力は充分なのですが、うーん。
第1作のフラッド(本作でも回想されています)はバークの依頼人であったわけですが、本作のベルは、バークに事件依頼の連絡はしてくるものの、本来の依頼人に頼まれて電話をかけただけです。それがきっかけでバークと知り合い、関係を深めていくことになります。一方にバークとベルのラブ・ストーリーがあり、もう一方に「幽霊ヴァン」と呼ばれる娼婦連続殺人事件がある、という並行構造になっているわけで、そこが今ひとつのめり込めなかった理由でしょう。
ベルや、バークの仲間たちについての描写が多く、事件そのものはごく単純というところは『フラッド』と同じです。訳者あとがきでも書かれている少年少女に対する虐待のテーマは、本作では中心となる事件よりもベルの過去に強く表れています。


No.547 7点 啄木鳥探偵處
伊井圭
(2012/08/16 09:57登録)
石川啄木については、「蟹とたはむる」「三歩あゆまず」などわずかな短歌しか知らなかったのですが、名探偵の役を演じるというのは、一つの虚構的啄木像として感心しました。ワトソン役が金田一先生(国文学者京助先生のことです!)だというのも、おかし味があります。実際啄木と交友のあったこの学者が、勇敢で当然死体や流血にも慣れた軍医であったワトソン医師とはまるっきり違ってやたら臆病なところも、史実なのでしょうか。地の文はさておき、台詞の中にも時代考証の面から気になるところはありましたが。
ミステリのタイプで言えば、都筑道夫のなめくじ長屋シリーズに近いでしょうか。論理のアクロバットが、時代小説設定であるがゆえにより冴えて見える、という感じを受けたのです。なるほどそうか、と感心させられる推理の作品が並んでいます。各話の最後に啄木の歌をうまくあてはめて見せているのも気が利いています。


No.546 7点 煙幕
ディック・フランシス
(2012/08/11 08:50登録)
これは一流と言われるプロフェッショナルに対する讃歌だ、と断言してしまいたい作品です。そのことを端的に示しているのがラスト数行で、最後の決め台詞も、いかにもではありますが、いいなあと思わせられます。そして、フランシス自身一流の作家であるのも間違いのないこと。
プロット自体はいたってシンプルで、えっ、もうクライマックスに突入しちゃったの、と驚かされたほどです。このじわじわとしんどさが増してくるクライマックス部分の描き方はさすがです。しかし一方ミステリ的な点では、馬を不調にする動機がおもしろい程度で、それも考えてみれば少々不自然です。
乗馬スタントマンから出発したスター俳優が主役という点は、ちょっと意外性があります。冒頭シーンは当然のように撮影現場で、競馬とは何の関係もないのですが、映画ファンでもある自分としてはこれだけでもなかなか楽しめました。


No.545 6点 謎まで三マイル
コリン・デクスター
(2012/08/07 20:43登録)
魅力的な邦題ですが、読後に考えてみると適切ではありません。三マイルかかるのは謎そのものではなく、その解明だからです。原題を直訳すれば「三マイル目の謎」で、これはなるほどと思えますが。
それにしても、登場人物が少ない。デクスターなので当然容疑者リストから外せる(少なくとも今まで読んだ作品から判断すれば)警察関係者を除くと、登場人物表に載っているのはたった5人です。まず提出される謎は、首無し死体は誰か、ということです。その謎でじっくりと読ませてくれるのかと思っていたら、2/3を過ぎるあたりから、第2の殺人を手始めに事件は急展開していきます。モース主任警部の推理ではなく、その「そして誰もいなくなった」的な構成にびっくりさせられました。ただ最後の1人についてはあっさりしすぎていて、不満でしたが。
章ごとに小見出しをつけていて、「早く最初の死体に出会いたがっている読者の期待がみたされる」といったお遊びも愉快です。


No.544 5点 夜の触手
大岡昇平
(2012/08/04 11:31登録)
『俘虜記』等戦争文学が有名な大岡昇平は松本清張と同じ年の生まれで、この最初の長編推理小説は1959年に雑誌連載ですから、『点と線』に遅れること約2年。長さは文庫本で200ページちょっとぐらいのものですが、32もの章に細分されています。第8章が、小説タイトルと同じ「夜の触手」。
実はずいぶん以前に1度読んだことがあったのですが、内容は完全に忘れてしまっていました。謎解き要素ということでは、特筆すべきところはありません。作者は清張について、反骨精神を買いながらも、「英米の傑作と比べては、至極お粗末なもの」とまで書いていますが、それにしてはトリックなどのアイディアは『点と線』等清張作品に比べてもお粗末なものです。もちろんそれ以外のところで見るべきところはあり、作者が描きたかったのであろう人間関係だけでなく、真犯人を追い詰める捜査過程も悪くはありませんでした。


No.543 5点 メグレと宝石泥棒
ジョルジュ・シムノン
(2012/08/01 08:34登録)
現在メグレもの長編は原作発表順に再読していっていますが、前作の続編ともいうべきストーリーになっているのは、本作が初めてです。その前作『メグレたてつく』の完全ネタばらしまで第1章でしてしまっているので、未読の方はご注意を。
頻発する宝石泥棒の事件は前作の時から問題になっていて、前作は、その捜査の途中でメグレが全く別の事件に巻き込まれる話でしたが、今回は宝石泥棒事件の最終決着です。メグレが長年その首謀者とにらんでいた男が殺され、それを契機にすべてのからくりが明らかになります。出来が悪いというわけではないのですが、事件の重要な関係者の人物像の描き方が、この作家にしてはいまひとつ迫ってこないように感じました。
原題の意味は「メグレの忍耐」。宝石泥棒事件を長年追ってきたメグレが、最初の方で「私は我慢強いのです」と局長に言うところがあります。


No.542 6点 死の猟犬
アガサ・クリスティー
(2012/07/28 11:57登録)
戯曲化、映画化(ビリー・ワイルダー監督の『情婦』)で有名な『検察側の証人』の原作は、30数ページ程度の短編です。全体的な構成はさすがですが、短くまとめすぎていてどんでん返しがあわただしくなり、物足らないような気もします。
収録作のうちこの作品を除く他の11編すべてが超常現象がらみということでも、クリスティー短編の中でも特に有名なこの作品は、集中で目立つ存在になっています。まあ他の作品も、超常現象と言っても中にはディクスン・カーのような見せかけだけのタイプもありますが。
多重人格(短編集発表が1933年ですよ!)に対するある解釈『第四の男』、現象から予測はすぐつくものの、最後のひねりがうまい『ラジオ』、痛快とも言える『青い壺の秘密』あたりがよくできていると思います。ただ個人的には、完全に幽霊ホラー系の『ランプ』が怖さと哀しさをあわせ備えていて、一番好きな作品です。


No.541 6点 逃げられない女
フランセス・ファイフィールド
(2012/07/25 20:30登録)
ファイフィールドの公訴官ヘレン・ウェスト・シリーズについては、本作を読んで初めて知ったのですが、邦題はすべて「~女」で統一されています。で、原題はと見ると、特に統一性はありません。本作の場合「影絵遊び」というわけで、邦題よりも内容に則しています。
コーンウェルあたりと共通する感じなのか(イギリス作家ですから地味ではあっても)と思っていたら、全然違っていました。訳者あとがきによると本作は特に異色作のようではありますが、警察小説系ではなくて、完全にサスペンスものです。ヘレンもいわゆる探偵役ではありません。犯罪者、ヘレン、さらに実質的な主人公ともいうべきローズの視点を中心としながら、細かく(数ページごとに)様々な登場人物の視点を切り替えていく手法で、特に前半はミステリ的要素が少ないストーリーが語られます。ローズが、読者には早い段階で明かされる秘密を周囲の人に長く隠しすぎかな、と思えますが、まあ。


No.540 5点 三毛猫ホームズの怪談
赤川次郎
(2012/07/21 10:50登録)
ご存じシリーズの第3作です。
猫の化身のような女に片山刑事が夜行列車の中で出会うプロローグの後、本筋西多摩のニュータウン近くにある村の<猫屋敷>で起こった殺人事件の関係者の一人が彼女だったというつながりが出てきます。
ただしそのつながり方は、結局偶然だったのか、なぜその列車に乗っていたのか等あいまいなままでした。その他にも、死体検査で当然ばれるはずの偽装工作があったり、それだけの人を完全に説得できるのかと思えるところがあったり、ある人物の行動が事件を混乱させるためのご都合主義としか思えなかったり、結局何のために傷口に細工をしたのかあいまいだったり、片山刑事の無茶な女難の意味が結局不明だったり、終わってみれば突っ込みどころ満載です。
それでも、横溝正史風とも見える最初の事件から、猫の祟りがささやかれる展開が赤川タッチで描かれているのは、とりあえず楽しめました。


No.539 7点 ヒルダよ眠れ
アンドリュウ・ガーヴ
(2012/07/18 21:22登録)
以前は「悪女もの」の代表作の1つのように言われていた作品で、旧訳で最初に読んだ時には、ちょっと違うかなとも感じたのでした。
ところが数年前に出た新訳版では、カバー作品紹介には「悪女」という言葉はありませんし、巻末解説でもほとんど見落としそうなぐらいさりげなく1ヶ所出てくるだけです。最初に殺されるヒルダの特異な人物像が、現代では一般的にもよりよく理解されるようになったということでしょう。彼女には決して悪意があるわけではありません。悪意というのは、人が自分と異なることを認識できるからこそ、抱けるものですが、彼女はただ自分とは異なる他者の存在が理解できないのです。解説では「ゾンビさながらのモンスター・ペアレント」と言っています。
アイリッシュの『幻の女』とプロットに共通点があることが指摘されていますが、アイリッシュ・タイプの刺激的なサスペンスを期待するのは、的外れです。


No.538 7点 メグレたてつく
ジョルジュ・シムノン
(2012/07/14 20:52登録)
メグレが自宅に帰ってきて、奥さんに今扱っているのは「メグレ事件だ」と言うところがありますが、タイトルもこれに合わせて「メグレ自身の事件」とでもしてもよかったかもしれません。メグレ自身が身に覚えのない罪を着せられそうになるという事件です。パリ警視庁(司法警察)局長は(世代交代もあります)、他の作品にもよく出てきますが、今回メグレを呼び出すのは警視総監です。別の建物の警視総監官房というところにいるということです。
政治家が圧力をかけてきたわけですが、総監から手を出すなと言われているにもかかわらず調べていくと、メグレを陥れようとしている理由はどうも政治がらみではないらしいということになってきます。最後に真相が明らかになってみると、ある偶然と誤解がきっかけになっていたのでした。メグレのたてつきっぷり、犯人の不思議な感じのする性格設定など、かなり楽しめる作品でした。


No.537 5点 能登の密室 金沢発15時54分の死者
津村秀介
(2012/07/11 00:09登録)
タイトルの密室は、オート・ロックでないホテルの部屋を利用したものですが、どうということもないトリックで、しかも気づかれれば犯人に直接つながる証拠がすぐに見つかってしまうという問題を抱えた方法です(実際にそういう話になります)。それよりもメインになるのはアリバイ崩しです。作中では列車を密室に見立てたりもしていますが、それはこじつけでしかないでしょう。
作者は鮎川哲也から多大な影響を受けたそうですが、アリバイというだけでなく、容疑者を絞り込んでいくあたりの展開も、ちょっと感心させてくれました。偽アリバイの構築方法も、凝ったことをやってくれていますが、鮎川と比較すると、トリック解明のプロセスに論理性が乏しい点、不満が残ります。また複雑な方法を採った理由が不明確で、推理小説というよりトリック小説になっているのが、クイーン好きの鮎川とは違うところです。


No.536 6点 薔薇荘にて
A・E・W・メイスン
(2012/07/07 12:10登録)
1910年発表作なので、複雑な謎解きは期待していなかったのですが、全体的にはかなり楽しめました。
アノーがその人物を怪しむきっかけになったある証言は、最後になって実は、と明かされるだけです。まあその証言はあまりに直接的なので、読者に早い段階で知らせるわけにもいかなかったでしょうが。
また論理性の面で、甘いところがあります。犯人の一人は被害者に招待されるのですから、薔薇荘に手引者が住んでいる必要はありませんし、玄関ではなく窓から出たことについては疑問視されてしかるべきです(理由は最後に示されますが)。
しかし犯罪計画の全体的な構成、苦境に陥った犯人の機転など、なかなかよくできています。事件解決後に、当夜の出来事を関係者の視点からかなりのページを費やして描いているのも、悪くないと思いました。
しかしアノーはパリ警視庁の探偵というだけで、地位もファースト・ネームも明かされないというのは…

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