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ミステリの祭典

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別れの顔
リュウ・アーチャーシリーズ

作家 ロス・マクドナルド
出版日1970年01月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 4点 クリスティ再読
(2018/03/12 19:25登録)
さすがに本作マズイだろう...というのは、本作はその前作である「一瞬の敵」の書き直しみたいなもので、「一瞬の敵」をずっと地味にしたようなものである。本当に「一瞬の敵」が「ああだったこうだった」が読んでてカブる...アイデアが枯渇したのか?と疑うくらいの再利用ぶりである。
真相も「一瞬の敵」ほど派手なものではないが、サイコな真相になるので、ミステリとしてのフェア感はない。バタバタと終盤に真相が関係者の告白で解かれていくようなもので、謎解きの妙味は薄い。
それでもいいところはいくつかあって、最終盤に昔のホームムーヴィーを見るシーンがあるけど、これが結構ウルっとくる。あと、精神科医の妻とアーチャーの関係がなんとなく、いい。それからラストは「さむけ」みたいな結末を決めている。努力の跡もあるわけで、無下に否定するのも何か...とは思わなくもないが、やはりどうも釈然としない。まあ評者、アメリカ人の大好きなフロイトがらみのサイコ系は、興味本位なセンセーショナリズムとしか思えなくて、そもそも嫌いなんだよね。
だから本作はロスマクの退歩、といったのがトータルな印象。いい点はつけられない。

No.2 7点
(2012/09/30 18:54登録)
盗まれた金の函の捜査から始まる事件は、最初の殺人を手始めに、次から次へと関係者を増やしながら、意外な方向へ複雑な展開を示していきます。誰と誰がどうつながっているのだか、途中でストーリーを整理しながら読み進めないと、よくわからなくなってしまいます。最初の方で、これは重要な要素なんだろうなと思ったことがあったのですが、話が広がっていくうちにいつの間にか忘れかけていました。
そのややこしい事件も、最後にある登場人物の重要な秘密が明かされることによって、一気に解決していきます。ただし第1の殺人事件については、結局犯行の状況はあまり明確にされません。犯人は間違いなくこの人物だろう、ということにはなるのですが。犯人の最後の行動も、そうならざるを得ないかなあとは思うのですが、なんとなくもやもや感が残ります。とりあえずこの後、若い2人に救いのある未来を願って…

No.1 8点 Tetchy
(2009/05/19 23:12登録)
最後の章でバタバタ、と不明だったピースが嵌め込まれ、全体像が浮かび上がる所が凄い。
今回は終わってみれば実はサイコ・サスペンスでロス・マクドナルドの心理学への興趣が色濃く表れている。
また、最後の章の盲目の母の何気ない一幕で、無力だと思われていた存在が実は絶大なる支配力を持っていたという畏怖を表す所もまた印象深い。

もしかしたら法月氏は某作を創るのに本作の影響を少しばかり受けたのかもしれない。

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