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ミステリの祭典

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メグレの財布を掏った男
メグレ警視

作家 ジョルジュ・シムノン
出版日1978年05月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点
(2012/10/18 20:10登録)
早春のパリの明るい雰囲気から始まる作品です。タイトルどおり、バスの中でメグレが身分証明のメダルも入れた財布を掏られるのが事件の発端ですが、これもユーモラスな筆致で描かれています。
ところが死体が発見され検死が終わった後は、何となく初期作品を思わせるような雰囲気になってきます。メグレと顔なじみの男が経営するレストランでの食事風景にもそんなところがありますが、特にラストの中庭での会話から殺人事件のあったアパートに踏み込むあたりの情景に、雰囲気小説とも言われていた時期に近い味があるのです。これを後ろ向きと批判する人もいるでしょうか。
真相自体はオーソドックスなパターンにはまっている上、メグレも途中でそのことを気にしているので、すぐに見当がつくでしょう。まあ、意外性より犯人の心理に対するメグレの最後のセリフが印象に残るような作品ではあります。

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