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ミステリの祭典

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よろずのことに気をつけよ

作家 川瀬七緒
出版日2011年08月
平均点5.00点
書評数6人

No.6 4点 文生
(2023/08/15 12:01登録)
主人公の祖父が殺され、長年にわたって呪術をかけられていたことが判明する展開に引き込まれました。現代の世にあって本気で人を呪い殺そうとする行為に狂気じみたものを感じ、読んでいてぞくぞくしました。探偵役の民俗学者が登場し、呪術について語るくだりもなかなかに興味深いものがあります。
しかし、これらの道具立ての秀逸さに対して真相があまりにも凡庸。やがて明らかになる事件の全容は意外性の欠片もありませんし、呪術という狂気じみた方法に反して動機があまりにもまっとうすぎます。つかみは素晴らしかったのに、後半部はミステリーとしてまったく面白さが感じられなかったのが残念です。

No.5 5点 E-BANKER
(2020/11/18 15:31登録)
2011年の第57回江戸川乱歩賞受賞作にして、(当然)作者のデビュー長編。
この年は本作のほか、玖村まゆみ「完盗オンサイト」が同時受賞の栄誉に輝いている。
で、2011年の発表。(2回書かなくても・・・)

~都内に住む老人が自宅で惨殺された。奇妙なことに、遺体は舌を切断され、心臓をズタズタに抉られていた。さらに縁の下からは、「不離懇願、あたご様、五郎子」と記された呪術符が見つかる。なぜ老人はかくも強い怨念を受けたのか? 日本の因習に絡む、恐るべき真相が眼前に広がる! 第57回江戸川乱歩賞受賞作~

確かに龍頭蛇尾なところはある。
出だしの展開、謎は紹介文のとおりで、なかなかに魅力的なのだ。
得体の知れない土着的な風習なのか、宗教めいた話なのか、はたまたまるでアニメの世界のような呪術師が出てくるのかetc

物語の中盤。事件のベクトルが殺された老人の隠された過去に集約されていく。
いったいどんな凄まじい過去、事実が待ち受けているのか? それがどのように現代の事件に繋がっていくのか?
第二の殺人が起きるに及び、読者(=私)の期待はピークへ!

ここからの展開が今ひとつなのは、やはり処女作の所以なのかな。
事件の中心点となる〇〇県の山中へわざわざ飛び込んでいく主人公の男女2人。そこで、動機やら過去の顛末やらが明かされるのだが・・・うーん。ちょっと尻つぼみ。
割と”よくある”過去の過ちではないか!
言葉は悪いが、こんなことで舌を切断され、心臓をズタズタに抉られるなんて!
呪術師こえーよ。
ただ期待値からいうと、真犯人=もっと不穏で得体の知れない感半端ない奴という予想からするとねぇ・・・

でもまぁこの頃の乱歩賞受賞のコードは踏まえてる作品だろう。
巻末の選評を読んでると、総じて本作=まとまりがよい、というような評価だった模様。
まぁそれは首肯する。

No.4 5点 ボンボン
(2018/11/03 15:46登録)
何が起こるのか期待せずにはいられない、この題名が非常に良い。
犯人と被害者の物語。犯人捜しの意味ではなく、真実、誰が悪いのか、どっちが被害者なのかがテーマになる意外に重い話だ。
読み心地としては、結構グロくて気持ち悪いのだが、その割にそこはかとなく甘っちょろいところがあって、その辺はあまり好きにはなれなかった。
作者自身が「地元愛をふんだんにちりばめた」と言っているが、ちょっと悪く書き過ぎの感があり、読んでいる間は、てっきり舞台となった地方をディスっているのかと思っていた。出身地だったとは驚き。
作品の表層は、怨念や呪術、祈祷念仏などおどろおどろしい古来のあやしい因習に覆われているが、本筋は生真面目なほど論理的なので、意外に落ち着いた雰囲気。どうも爆発しているようでしていない、もどかしい中途半端な優秀さが残念。

No.3 3点 メルカトル
(2015/09/07 21:50登録)
これはいけません。
面白味のない文章に乗せて綴られる、男女の犯人探しの旅。そこに呪術という要素を取り込んで、淡々と語られるストーリー。一見面白そうに思われるかもしれないが、無味乾燥な文体でイマジネーションがかき立てられることもなく、正直ずいぶん退屈であった。
殺人事件そっちのけで被害者の過去を探るのに終始しているが、これといった盛り上がりもなく、最後に明かされる犯人と真相は至ってありきたりなもので、脱力感を覚える。ストーリー自体もごく単純で、これだけのボリュームにする必要性は全くなかったのではないかと思う。
一人称の文章だが、主人公が自分のことを僕と呼んでいるのには違和感を覚えるし、読んでいて三人称と錯覚するほど、心情が語られていない。
これだから乱歩賞は・・・と愚痴も言いたくなるというもの。
すみません、思ったことを正直に書くたちなので、反感を覚えた方もおられるかもしれませんが、どうかご容赦下さい。

No.2 7点 虫暮部
(2014/04/17 07:51登録)
吸引力抜群の冒頭からラスト前の八分目あたりまではスリリングで大変面白い。
 ただ、バランスを考えると、結末で明かされる祖父の過去の行為が全て伝聞で、妙に整理されて説明的なため、“59年に亘る呪詛”とつりあうだけの重さが感じられないきらいがある。一人称の文だから仕方ないかもしれないが、変則的にその部分だけ三人称で直接描写しても良かったと思う。
 味のあるキャラクターなのに湯山の出番が少ないのも勿体無い。 

No.1 6点
(2012/10/27 19:59登録)
呪術をからめた殺人というので、横溝正史系統なのかと思っていたのですが、かなり違っていました。2011年度乱歩賞受賞作ですから、現代的なタッチがあるのは当然ですが、それはともかくとして。
まず、全体構造がパズラーになっていないのです。ノックスの十戒を引き合いに出すまでもなく、真犯人は巻半ばぐらいまでには登場してこなければならない、というパズラーどころか社会派やハードボイルドでもたいてい守られている法則を無視しています。呪術の扱いもホラー的というより、主人公が文化人類学者だけにアカデミックで厳密です。まあ京極夏彦によると呪術に対する認識に致命的と言えるほどの瑕疵があるそうですが。
主人公に相談に来る真由のキャラがなかなかユニークに描けていますし、後半地方を飛び回るようになってからは雰囲気とサスペンスがきいていて、なかなか楽しめました。

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