空さんの登録情報 | |
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平均点:6.12点 | 書評数:1515件 |
No.735 | 6点 | 侵入 ディック・フランシス |
(2014/09/22 23:02登録) 2冊ある騎手キット・フィールディング登場第1作とまずは言っておきますが、フランシスは同一主人公を通常使わない作家ですから、『大穴』だってそうですが、本作もシリーズ化を最初から考えていたわけではないでしょう。 読後に振り返ってみると、ミステリとしては実に地味な事件です。大筋は、主人公の妹夫婦の経営している厩舎が、悪意の中傷記事によって窮地に追い込まれたのを、何とかして救い出すというだけで、殺人は1件も起こりません。中傷記事が書かれた背景には、義弟の父親(何とも嫌な奴です)に対する陰謀があるのですが、そのからくりも大したことはありません。しかしそれでも、ストーリー展開の仕方はうまく、それをフランシスの文章で書かれるとおもしろいのです。 また、レース・シーンの描写が特に多く、競馬小説として充分楽しめるのも本作の特徴となっています。馬主のカシリア王女がいいキャラクタですね。 |
No.734 | 6点 | 裏切りの銃弾 スチュアート・カミンスキー |
(2014/09/18 22:25登録) 老刑事リーバーマン・シリーズの1冊ですが、必ずしも彼を絶対的な主役に据えていない、警察小説らしい作品です。 ある刑事が自分の妻とその不倫相手をショットガンで打ち殺し、アパートの屋上に爆弾を持って立てこもるという事件で、どんな派手な展開になるかと思わせられますが、巻末解説にも書かれているように、登場人物たちそれぞれの思惑がじっくり描かれた渋めの作品になっています。ただ、途中で出てきてこの大事件に勝手に関わることになる2人組については、必要だったのかなとも思えます。その後の見せ場の1つとの対比を作者は当然考えていたのでしょうが、かえってしつこくなり過ぎたように感じました。 また、最初の登場シーンではなぜこんな男が出てくるのか疑問に思った登場人物がいたのですが、これは全然別の事件でした。こっちの方は最終的な解決はつかないままで、解説によれば次回作に持ち越しだそうです。 |
No.733 | 8点 | 張込み 松本清張 |
(2014/09/14 12:34登録) 表題作は25ページほどのものですが、野村芳太郎監督は張込み刑事を1人から2人に増やし、その刑事の1人の家族生活の回想を付け加えたぐらいで、これを2時間近くもある映画に仕立てています。それでも映画が間延びした感じになっていないのは、監督の腕でもあると同時に、原作がそれだけの内容を凝縮しているということでもあるでしょう。強盗殺人犯人よりも、犯人の愛人であった現在は平凡な主婦を、刑事の視点から描いた作品で、サスペンスはありますが、ミステリ度は希薄です。 他の作品もそれぞれおもしろいのですが、特に印象に残ったのは次の3編。『顔』は二重のどんでん返しが用意されています。犯罪者は余計な事をしなければよかったのに… 『鬼畜』は犯罪小説としてすさまじいものがあります。リアリズムでここまで描かれると、主役夫婦に嫌悪感を通り越した感情を持ってしまいます。『投影』はまさに社会派謎解きミステリ。 |
No.732 | 6点 | 危険なやつは片づけろ ハドリー・チェイス |
(2014/09/10 22:11登録) これまでに読んだ2作が相当気に入って、今回も期待を持って読み始めたハドリー・チェイスだったのですが。 いや、やはりおもしろいことは間違いありません。しかし『ミス・ブランディッシの蘭』『蘭の肉体』のようなとんでもないところがないのも、確かなのです。雑誌記者が失踪人の行方を追っていくと、次々に殺人が起こって、彼自身も危険にさらされ…という粗筋は、まさにハードボイルドど真ん中のプロットですからね、派手なアクションや誇張された悪徳警官に牛耳られた町の扱い等はさすがチェイスらしい楽しさですが、意表を突く展開にはなりようがありません。ラストも、いかにもなパターンに主人公の密かな考えをひねりにしてあって決して悪くないのですが、上述2作ほどのインパクトはありません。 考えてみれば、最初の密室状況からの失踪を、共犯者を使ってまで演出する理由など全くないのですが、こういう作風ですから、まあいいでしょう。 |
No.731 | 6点 | グリフターズ ジム・トンプスン |
(2014/09/06 22:00登録) スコセッシが製作したスティーヴン・フリアーズ監督による映画化は未見。 サブ・タイトルのとおり、意味が「詐欺師たち」なので、『白昼の死角』みたいなスケールの大きさは最初から期待していないにしても、気の利いたクライム・ストーリーかと思って読み始めたのですが、いつまでたっても話はミステリになりません。本作の大部分は、詐欺師というより作中の言葉では詐話師である若者の視点から描かれています。彼の日常生活や生い立ちが中心で、母親と愛人との3人のうまくいかない関係が、どうなることかと気をもませます。仕事は最初の釣銭詐欺(かなり知られたやり方で、失敗します)と途中のさいころいかさまの2回だけ。 全体の8割を過ぎるぐらいになって、やっとミステリ的になってきたかと思ったら、話は急激な展開を見せ、意外でかなり後味の悪い結末を迎えます。途中まで地味な異色作としては、これくらいの点数でしょうか。 |
No.730 | 6点 | 魔弾の射手 高木彬光 |
(2014/09/02 22:19登録) 「魔弾」トリックは、海外有名作のコピーであることより、魔弾でなければならない理由が、その元ネタに比べて弱いのが気になりました。しかしそれは、本作においては実は付け足し程度のもので、むしろ顔のない死体のアイディアの方が中心でしょう。このアイディアの変形は、後に国内の某有名作でも使われていました。 冒頭の神津恭介に送られてきた招待状からそのいかにもな「顔のない死体」殺人へと、新聞連載だからということもあったのでしょうが、はったりめいた見せ場を連続させる通俗スリラーっぽい展開です。ただ、その雰囲気も途中からは控えめになり、怪しげな登場人物たちの動向を小出しにして読者の興味をつないでいきます。 犯人の意外性にこの手を使うなら、もっと明確な容疑回避ができそうな点、不満はありますが、動機の問題に対する答等感心するところもあり、かなり楽しめました。 |
No.729 | 6点 | 赤い箱 レックス・スタウト |
(2014/08/29 22:08登録) 巻末解説にはそれまでのネロ・ウルフ・シリーズの集大成的な作品としてありますが、初期作品を読んでいないので、その点は何とも言えません。全体的には、ウルフを辟易させるようなうるさい人物は登場するものの、むしろじっくり型です。動機の基になった秘密はミステリとしてはよくあるパターンと言えるでしょう。事件関係者はごく限られていて犯人の意外性はそれほどありませんし、特にミスディレクションもなく、事件の構造としては非常にストレートです。それでも、真相はそれなりに満足できるものになっていました。また、解決部分での赤い箱の使われ方には驚かされました。 ウルフがグルメや蘭のためではなく、事件捜査で外出するのは(もちろんそんなこと、めったにありません)、ある意味お約束的なギャグなのかもしれませんが、事件の性質から見て必要だったとは思えませんでした。 |
No.728 | 7点 | ファーガスン事件 ロス・マクドナルド |
(2014/08/25 22:29登録) ロス・マクドナルドが『ウィチャリー家の女』の前に書いた本作は、久々にリュウ・アーチャーの登場しない小説です。ただしやはり一人称形式で、私立探偵でこそありませんが、弁護士が活躍する話ですから、アーチャーものとそれほど違うところはありません。探偵役が変わったことによって多少雰囲気は変わりますが。また、真相はその弁護士が見破るのではなく、事件関係者から説明されることになりますが、必ずしもそうしなければならなかったわけでもないでしょう。 巻末解説では、様々な要素を詰め込みすぎていると評していますが、ストーリーの流れは自然で、複雑すぎるという印象はありませんでした。久々の再読で、内容もすっかり忘れていたので、記憶が理解を助けたわけでもなさそうです。この作者らしく、最後には様々な出来事がきれいに収束していきますが、その最後の「事故」だけはちょっと作り過ぎかなと思えました。 |
No.727 | 6点 | 浜名湖殺人事件 富士ー博多間37時間30分の謎 津村秀介 |
(2014/08/21 22:41登録) トラベル・ミステリと呼ぶには、地方の雰囲気が伝わってきません。やはりアリバイトリックの専門家による純粋なアリバイ崩しミステリです。 と言っても、構成に工夫は凝らされています。プロローグはどう見ても叙述トリックが仕掛けられているなとはわかるのですが、全体の2/3ぐらいのところに挟まれた(珍しい)ミドローグでなかなかうまく解説してくれます。ただしエピローグは、どうということもありません。 そのミドローグの前まででアリバイの前半は解明されてしまいますし、実際ありふれたトリックなのですが、犯行後の部分が時間的に無理だということになってくるのが、本作のポイントでしょう。この後半部分のトリックでは、珍しいものが使われているのですが、その使い方にもひねりが加えられていました。 犯行計画そのものが、そんな人目を引くことをしなくても、と思えるところはあるのですが、かなり楽しめました。 |
No.726 | 7点 | 細い線 エドワード・アタイヤ |
(2014/08/18 22:51登録) アタイヤは、英語版Wikipediaによればレバノン人で、むしろ自伝やノンフィクションの方が重要な作品とみなされているようです。しかし邦訳はこの1冊だけ。バウチャーや乱歩の称賛もあってか、成瀬巳喜男監督の映画以外にも3回もテレビドラマ化されています。また、フランスでもシャブロル監督が1971年に映画化しています。視覚的に派手なところは一切なく、映像向きとはあまり思えないのですが。 簡単に言えば、友人の奥さんを殺してしまったピーターの罪悪感による心理葛藤を描いた犯罪心理小説で、彼が殺人現場を離れるところから話は始まります。警察の捜査は全く描かれませんし、ピーターの仕事も登場人物表ではジャーナリストとなっていますが、会社が通信社だというだけで、具体的な仕事内容は不明。ひたすら個人的な面のみで構成された作品です。タイトルの「細い線」とは心理的な境界線のことで、第3章と第9章にこの言葉は出てきます。 |
No.725 | 6点 | モーおじさんの失踪 ジャネット・イヴァノヴィッチ |
(2014/08/14 18:50登録) 本作は英国推理作家協会のシルヴァーダガー賞を獲ったステファニー・プラム・シリーズ第3作です。第3作であることは原題からもわかることで、”Three to Get Deadly”、使われる数字がシリーズ番号を示しています。 イヴァノヴィッチを読むのは2冊目ですが、前回は番外編だったので、本来のシリーズ・スタイルは本作が初めてということになります。で、感想はというと、なるほど、これなら巻末解説に出てくるパレツキーやグラフトンとの比較も可能かなというところ。ただし、この作者の持ち味であるユーモアが、中心となるモーおじさん失踪事件と結びついていないことが多いのも確かです。軽トラックや髪の毛、チキンなどの印象に残るギャグは、モジュラー型的にステファニーが並行して扱う小事件の方に関係しているのです。削除してもミステリの本筋には影響ないのですが、中心事件はかなりシリアスな真相ですので、しかたないのかもしれません。 |
No.724 | 6点 | 松本恵子探偵小説選 松本恵子 |
(2014/08/11 12:55登録) 名前だけは記憶にある作家だなと思っていたら、そうか、クリスティー等の翻訳者として有名な人でした。『青列車の秘密』を最初に読んだのは、この人の翻訳本だったのです。この選集にはそんな人らしく、翻訳・翻案もたぶん珍しいと思われるものが4編収められています。翻案の2編は原作者も不明な作品ですが、翻案のひとつ『懐中物御用心』が、ミステリ要素とユーモアのブレンド具合がよく、最も気に入りました。 松本恵子自身の創作作品は11編。そのうち2編はミステリではありません。その非ミステリの1作『ユダの歎き』は、集中最も長い作品で、ユダがイエスを裏切った理由、ユダの性格に対する新解釈を示した力作です。1938年作であることを考えると、当時の軍国主義批判とも受け取れそうな内容になっています。 他の作品は軽いタッチでちょっとひねったオチのあるものが多く、気軽に楽しめました。 |
No.723 | 6点 | 魔女の隠れ家 ジョン・ディクスン・カー |
(2014/08/03 15:16登録) フェル博士初登場の本作は、カーにとって一つの節目となる作品だと思われます。といっても直前の『毒のたわむれ』は読んでいないのですが。 初期バンコランものでは衝撃的な現象がこけおどしに過ぎず、トリックやロジックにいいかげんなところがあったのですが、後の作品では怪奇性は保持しながらも結末の意外性、合理性をむしろ重視するようになります。本作でも廃れた監獄の不気味な雰囲気はたっぷりですが、一家に伝わる肝試し的儀式の手順を犯人が殺人トリックに利用し、さらに偶然を組み合わせることで不可能性を強調しているところなど、論理的整合性を重視して、解決はなかなか鮮やかです。そんな事件を捜査するフェル博士の磊落でユーモラスな人柄設定(本作ではこれまた楽しい性格のフェル夫人も登場)は、対比効果を考えてのことでしょう。 ラスト、犯人が供述書を書いた後の行動(というより不行動)が、なかなか印象的でした。 |
No.722 | 7点 | 恐怖の掟 マイクル・コリンズ |
(2014/07/31 00:45登録) マイクル・コリンズのデビュー作の原題はAct of Fear。確かに”Act” には法令の意味もあり、作者自身その意味も含めているのかもしれませんが、読み終えてみると、やはりこれは基本的には通常使われる「行為」のことでしょう。最終章では、犯人の恐怖ゆえの行為についてじっくり考察されています。 最初のうちは、社会的な問題などに対する言及が多少うるさい感じもしたのですが、そういったタイプの描き方が最後の動機考察とも結びついていたわけで、巻末解説にはロス・マクによる絶賛が掲載されていますが、それも納得できます。事件の大部分に対する解答(それ自体かなり満足できるもの)が出てしまった後、早川ポケミスで後50ページも残っているのです。いったいこの後何を書くのだろうと思っていたら、そこからが本作のテーマを語る部分になっていたわけで、私立探偵ダン・フォーチューンが片腕であることも活かされています。 |
No.721 | 7点 | 渇きの街 北方謙三 |
(2014/07/26 18:59登録) 1985年度の日本推理作家協会賞受賞作(皆川博子『壁・旅芝居殺人事件』と同時受賞)で、作者自身は受賞の言葉の中で「クライム・ノヴェル、青春小説として書いたものだ」と述べています。 確かに青春小説系ではあるのですが、あまりクライム・ノヴェルらしくありませんでした。殺人を犯しても、刑期が「五年ってとこ」と警察官が言うような状況であっては、犯罪性が薄いと思うのです。その意味では、暴力は満載であるもののミステリ度は低い作品です。北方謙三は初めて読んだのですが、こういうハードボイルドもあるのかな、という感じでした。作者の簡潔な、体言止めを多用する文体にしても、たとえば高城高がヘミングウェイから学んだという意味でのハードボイルド文体とは違うと思います。 しかし当然ジャンル云々で小説の出来が決まるわけではなく、主人公高志の描き方、最後のまとめ方など、さすがに良くできていました。 |
No.720 | 7点 | 狙った獣 マーガレット・ミラー |
(2014/07/22 23:07登録) 今まで読んだミラーの3作の中では、最もシンプルで、いかにも心理サスペンスといった趣の作品です。最初に読むミラー作としてはこれがいいでしょうか。 人間性をまるで理解していない駆出し作家ならともかく、これだけ登場人物の心理が克明に描かれている小説としては明らかに納得できないところがあることには、途中で当然気づくでしょう。実際のところ、クライマックスは説得力のあるもので、まあ当然こうならなければならないだろうと思わせられました。最終章の開始部分に起こった出来事が、その結末を急がせる要因になったのだろうなとも推測できます。また最初の方に非常に大胆な伏線があるのですが、すっかり忘れていたところ、最後にそれを指摘されて感心してしまいました。 ただ、第6章の終わりの方と第9章の最初の方に書かれたあることの符合は気になり、そちらの可能性も考えてはいたのですがね… |
No.719 | 6点 | マハーラージャ殺し H・R・F・キーティング |
(2014/07/16 22:39登録) 1980年に発表され、2度目のゴールド・ダガー賞を受賞した作品です。1回目の受賞作『パーフェクト殺人』から始まるゴーテ警部のシリーズは20冊以上あるそうですが、今までに翻訳されたのは4冊のみですから、知名度の割に紹介作の少ない作家です。まあ本作を読む限り、じっくり系フーダニットですから、派手な仕掛けを好む本格派ファンには受けないでしょう。 シリーズの「前日譚」(訳者あとがき)とも言うべき本作は1930年のインドが舞台で、『七つの時計』(1929作)を登場人物が読んでいたり、ポアロについて語られたりと、明らかにクリスティーを意識しているのですが、それにしてはハワード警視の消去法推理にはあまり説得力がありません。また決定的な手掛かりは、その事実が以前の事情聴取で明らかにされていなかったことが意外なくらいです。それなのに、さほど不満を感じなかったのは、作者の小説家としての腕ということでしょうか。 |
No.718 | 6点 | 暗い海 深い霧 高城高 |
(2014/07/12 16:07登録) 創元社の高城高全集3に収められているのは、表題作など13の短編です。その表題作と『海坊主作戦』は当時のソ連とアメリカの関係を反映したエスピオナージュです。『微かなる弔鐘』もスパイ活動がらみの作品。いずれも当時の北海道北部の海沿いならではのプロットです。その3編だけでなく、今回は収録作のほとんどが北海道を舞台にしていることを明示していて、その地方の雰囲気が魅力になっています。 チンピラ二人組の犯罪小説『ノサップ灯台』、倒叙もの『死体が消える』、ユーモラスな小品『アリバイ時計』など、さまざまな作品が並んでいますが、解説に紹介されている作者の「ハード・ボイルドとは、私がヘミングウェイから学んだかぎりでは、対象をいかに目をそらさず直視し、それをいかに無駄のない言葉で記すかということ」という定義からすれば、ほとんどの作品がハードボイルドと言えるでしょう。 |
No.717 | 6点 | 暗い鏡の中に ヘレン・マクロイ |
(2014/07/07 23:03登録) 再読だから特にそう感じたということを割り引いても、本作はハウダニットとは言えないでしょう。超常現象を起こす方法は、事件の詳細が目撃者によって語られた時点であまりに明らかとしか言えず、むしろ誰がなぜ、ということの方が謎の中心でしょう。 女学校の教員が突然解雇された理由をすぐには説明せず、読者を焦らせるところとか、その教員の以前の職場のことを途中で明かしてみせるタイミングとかは、さすがです。また、匂いに関するアイディアや、超常現象のきっかけなども、なかなかいいと思います。 ベイジル・ウィリング・シリーズの1冊で、ジャンルとしてはサスペンスよりカー系統の本格派と見るべきでしょうね。ただ、その解決部分に盛り込まれた趣向については、某有名作との共通点が、創元版の解説では指摘されているらしいですが、本作はその趣向のためかえって幕切れの鮮やかさに欠けると思いました。 |
No.716 | 6点 | サボイ・ホテルの殺人 マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー |
(2014/07/02 22:34登録) 本作の殺人事件が起こるサボイ・ホテルはストックホルムではなく、スウェーデン南部のマルメにあります。この町から最も近い大都会は何と言ってもデンマークのコペンハーゲンで、海を隔てること30km程度。マルメからストックホルムに短時間で行くには、外国経由で飛行機を利用するのが当然なのです。殺されたのが経済界の重要人物ということで、マルティン・ベックが単身、マルメに出張して捜査の指揮を執ることになります。ただしストックホルムでも捜査は行われ、お馴染みのメンバーが活躍します。 今回の特徴は、対比でしょうか。被害者を始めとする金持ちと、彼等に搾取される側との対比が中心で、あとがきにも社会派的作品であると指摘されています。しかしそれだけでなく、常連警部たちの有能さと、彼等に命令されて働く制服警官たちの間抜けぶりも対比されているのですが、これはあまりに型にはめすぎている感じがしました。 |