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ミステリの祭典

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吠える犬
ペリイ・メイスン

作家 E・S・ガードナー
出版日1955年06月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 8点 弾十六
(2018/10/31 21:26登録)
ペリーファン評価★★★★★
ペリー メイスン第4話 1934年6月出版 Liberty(1934-01-13〜1934-03-17)連載。創元文庫で読みました。
実はシリーズ第3話で、雑誌連載の都合上「幸運の脚」の後の出版となりましたが、冒頭を読めば「怒りっぽい娘」の次の話であるのは明白) 異常と疑われる依頼とメイスンの過剰な対応で冒頭からすぐに引き込まれます。ドレイク探偵局が活躍しすぎないのが良く、メイスンの大胆な行動(完全にやり過ぎです…)が痛快。意外と本格的な推理もあります。タフガイ刑事ホルコムは今作が初登場。フランク エバリー君がメイスンの陪審論を拝聴します。
作者もお気に入りの作品らしく、第10話や第18話など後年のシリーズ中で「吠え犬」は度々言及されています。
なお次の話に繋ぐラストの予告編は10作目まで(本国初版では)ちゃんと続いているのですが、ペーパーバック化に際して別のと入れ替えたり、再版時に削除されたりで、翻訳では結構バラバラになっちゃっています。

No.2 6点 nukkam
(2018/05/26 21:09登録)
(ネタバレなしです) 1934年発表のペリイ・メイスンシリーズ第4作の本格派推理小説です。隣家の犬が吠えてうるさい、いや吠えていないというミステリーネタとして食指が動きそうにない問題で幕開けしますがメイスンは結構大真面目に取り組んでます。依頼人が駆け落ち(?)でいなくなってしまいメイスンは新たな依頼人を見つけてきますが、最初の依頼人の利益を損ねる可能性があるからと複数の依頼を引き受けるのに慎重な後年作品のメイスンとは少し違いますね。また弁護士の信条についてメイスンが何度も熱く語っているのが印象的ですが、依頼人を守るためとはいえ相当過激な手法をとってます。謎解きはかなり粗く、18章でメイスンが語る真相の一部には驚かされますが推理の根拠をほとんど説明していないので合理的とは言えても論理的とは言えないように思います。なお最後に生きるか死ぬかの問題を抱えているらしい女性の訪問で「奇妙な花嫁」(1934年)へ続くという幕切れにしていますがこの場面、新潮文庫版では読めますが創元推理文庫版とハヤカワポケットブック版では削除されています(創元推理文庫版ではその場面は「義眼殺人事件」(1935年)に挿入されています。でもそれだと出版順と矛盾してるんですけどね)。

No.1 6点
(2014/10/04 10:13登録)
かなり以前に読んだ時は、あまり感心しなかった作品です。
今回再読してみて、見解が完全に変わったわけではありませんが、前回の不満点はかなり解消されました。理由は、この犯人の意外性を許容できるようになったことと、メイスンの法廷戦術がはっきり理解できたことです。特に法廷戦術の方は、これまでに読んだこのシリーズの中でも極めつけの荒業です。後から、あれは証人に対する反対尋問だったのだとメイスンが説明する策略は、検察側の常套的なやり方を見越しての綱渡りですが、確かに違法ではないんだろうけど、と驚かされました。作中でのメイスンについての「聖者と悪魔の申し子」との評にも納得。
それでも、犬は吠えたのかどうか、また吠えたとしたらその理由は何かという点に関してのメイスンの推理は、根拠薄弱だと思えました。また、最後のどんでん返しも一応明確な伏線はあるものの、ちょっと唐突な感じがします。

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