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ミステリの祭典

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霧の塔の殺人
藤田警部補シリーズ

作家 大村友貴美
出版日2009年09月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 4点 nukkam
(2015/08/16 00:10登録)
(ネタバレなしです) 藤田警部補シリーズ三部作の第3作ではありますが藤田警部補、ますます影が薄い!前半と後半でがらりと雰囲気が変わるプロットです。前半は連続首切り殺人の捜査が中心ですが、後半になるとそれまで小物っぽい人物が突如大暴走します。最初は場当たり的な犯罪だったのにいつの間にか警察をきりきり舞いさせるテロリストみたいになってなかなか収拾がつきません。どうにかこうにかそれが一段落してようやく首切り殺人の謎解き、一応手掛かりによる推理もありますが説明者は藤田警部補ではありません。また犯人が判って大団円というわけではなく、どうしてこんな犯罪になったかの背景が長々と解説されます。そこには地方社会ならではの様々な問題が提示されます。私も空さんの講評通り、本書はどちらかと言えば社会派推理小説かなと思います。横溝正史との共通点はほとんどありません。

No.1 6点
(2014/11/01 15:38登録)
タイトルに偽りあり、これは『霧の峠の殺人』であるべきじゃないかと思えました。「塔」はエピローグで象徴的に軽く触れられますが、「殺人」と組み合わされるような使われ方ではありません。
帯には相変わらず「現代の横溝正史」なんて言葉が載っていますが、この第3作では、霧の深い峠のベンチに切断された首が置かれていたという事件の不気味さを除くと、横溝との共通点はありません。ジャンルとして社会派に登録したのですが、本当にむしろ松本清張に近いとも思えるほどです。殺されたのはその地方の有力者で、首相の地位が狙えるほどの政治家ともコネがある人物ですから、事件は当然地方政治がらみで捉えられます。さらに最初の殺人とは無関係に後半に起こる放火殺人では、地方における就職問題も取り上げられています。
小清水警部に関する部分は不必要ではないかとも思えますが、社会派ミステリとしての評価はこれくらいでしょうか。

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