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ミステリの祭典

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スペイドという男 ハメット短編全集2
スペード、オプもの ほか/旧題『ハメット傑作集2』

作家 ダシール・ハメット
出版日1976年01月
平均点6.33点
書評数6人

No.6 6点 弾十六
(2020/04/11 17:29登録)
冒頭にエラリー・クイーン(ダネイ)の「サム・スペイド ご紹介」(Meet Sam Spade)という前書きあり。EQMM誌のコメントのような感じの文章。ソフトカバーの単行本”The Adventures of Sam Spade & Other Stories” ed. Ellery Queen (Mercury Bestseller Mystery No. B50, 1944)に収録のもの。この本は7篇収録(Too Many Have Lived K67, They Can Only Hang You Once K68, A Man Called Spade K66, The Assistant Murderer K42, Nightshade K71, The Judge Laughed Last K22, & His Brother's Keeper K73)だが、翻訳の底本であるペイパーバック“A Man Called Spade”(Dell #90 Mapback, 1945)では収録は5篇のみ(K66, K68, K67, K42, K73とEQの序文。なおこのMapbackは#411(1950)と#452(1954)の全部で三つの異版がある。#90の表紙絵はGerald Greggだが#411と#452はRobert Stanleyに変更、裏表紙のMapはいずれもRuth Belewが描いたMax Blissのアパート図面、収録短篇は全て同じ)。これにK7, K17, K20, K26, K71を追加したのが本書、という成り立ちのようだ。結局K71はいったん削除されたが翻訳で戻ったわけである。
なおDon HerronのWebサイトを見ると、2000年以前のハメット短篇集のテキストはダネイ本に基づくもので、初出に手が加えられてることがあるようだ。
以下は初出順に並べ直し。カッコ付き数字はこの本の収録順。初出データは小鷹編『チューリップ』(2015)の短篇リストをFictionMags Indexで補正。K番号はその短篇リストでの連番。#はオプものの連番。★はEQ編1944以外からの収録作品。ついでに今回は米国EQMM再録号も表示。
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⑷ Holiday (初出The New Pearson’s 1923-7; EQMM掲載なし) K7 ★「休日」
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⑽ Bodies Piled Up (初出The Black Mask 1923-12-1; EQMM1947-4 as “House Dick”) K17 #5 ★「やとわれ探偵」: 評価7点
オプもの。冒頭のシーンが大好き。派手でヴィジュアル・インパクトが素晴らしい。途中、まともなデカならどうやって調査するか、というミニ講座あり。多分、探偵小説作家の皆さま方に教えてさしあげましょう、という優しい親切心(「皮肉」と書く)。こーゆーやり方でキチンと捜査したら大抵の探偵小説はあっさり解決しちゃうんじゃなかろうか。
ディック・フォーリイの喋りはまだ普通っぽい。(原文では主語を落とした文が多い感じだが、後年の単語を並べる境地には至っていない)
p321『暗黒の男』(the Darkman): 悪者につけられたあだ名だが、浅黒警察としては気になる。黒髪野郎、という意味ではないか。オプも黒髪なのか。
(2020-4-11記載)
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⑹ The Man Who Killed Dan Odams (初出The Black Mask 1924-1-15; EQMM1949-12) K20 ★「ダン・オダムズを殺した男」: 評価5点
テキストはダネイの所々数語カット版なので、Black Mask版を訳している『死刑は一回でたくさん』(講談社文庫1979、グーテンベルク21電子版が入手しやすい)の田中 融二 訳をお勧めする。訳文の調子も田中訳の方がキビキビしている。
(2020-4-12記載)
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⑼ One Hour (初出The Black Mask 1924-4-1; EQMM1944-5) K26 #9 ★「一時間」: 評価6点
オプもの。詳しいことは『死刑は一回でたくさん』参照。こちらの依頼人は関西弁じゃない。なおEQMM再録時のダネイの直しはほとんど無いらしい。
(2020-4-14記載)
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⑺ The Assistant Murderer (初出The Black Mask 1926-2; EQMM掲載なし) K42「殺人助手」: 評価7点
三人称の不細工な私立探偵アレック・ラッシュもの。ハメットが育った街、ボルティモアが舞台。
捜査方法や探偵センスはオプと同様。複雑な筋を見事にまとめている。キャラの描き方も良い。
p195 料金は一日15ドルと、ほかに実費(fifteen a day and expenses)◆米国消費者物価指数基準(15.88倍)で$1=1811円。
p197 色があさぐろくて(He’s very dark)◆「髪が真っ黒で」という意味で良いかなあ。後の方ではdark young manとか書かれている。(翻訳では「あさぐろい」の連発だが)
p198 五十セント◆ボーイへの情報料
p246 同じ問題をあつかった芝居(One of the plays touched the same thing)◆もしかしてアガサ・クリスティのアレかと思ったが初演1953なので違うようだ。ただしその小説の初出は米国パルプ雑誌Flynn's Weekly 1925-1-31。
(2202-2-13記載)
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⑴ A Man Called Spade (初出The American Magazine 1932-7 挿絵Joseph Clement; EQMM掲載なし) K66「スペイドという男」
American Magazineのこの号、広告も含め無料公開あり。イラストのスペイドは普通っぽい男に描かれている。
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⑶ Too Many Have Lived (初出The American Magazine 1932-10 挿絵J. M. Clement; EQMM1941秋[創刊号]) K67「赤い灯」
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⑵ They Can Only Hang You Once (初出Collier’s 1932-11-19; EQMM1943-3) K68「二度は死刑にできない」
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⑸ Nightshade (初出Mystery League 1933-10 [創刊号]; EQMM掲載なし) K71「夜陰」
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⑻ His Brother's Keeper (初出Collier’s 1934-2-17; EQMM掲載なし) K73「ああ、兄貴」

No.5 6点 クリスティ再読
(2020/04/09 22:51登録)
サム・スペイドというと「マルタの鷹」で有名なハードボイルド私立探偵の代表株、というのが通り相場なのだけど、作者のハメット的には自身を投影したコンチネンタル・オプよりも成功した....とは言い難いようにも思う。スペイド主演の3つの短編はハメットで最上の短編、とは言えないからね。やはり三人称ハードボイルド探偵という新境地の試作品みたいに感じることの方が多くて、ハメット流儀が完成しているオプ物の名作短編と比較すると今一つ、と感じる。
創元の本書は言うまでもなく稲葉明雄訳だけど、この人の独特のシャープな甘さがこの短編集だと効果的になっている作品は少ない印象。まあそれでも「夜陰」はいい。「夜陰」がこの本のベストで、三人称で余計なことを言わないハードボイルドだからこそ、で成立する話。すばらしい。
逆に「ああ、兄貴」は一人称の饒舌体が面白い。「おれがああまで阿呆でなかったら」を繰り返して話が変調していくラストの語り口は、小説家ハメットの技巧的な「技」というものでしょう。
ハメットという作家が「どう語るか?」に意識的だったか、というのを今回いろいろと検証していくような面白さを感じていた...で「殺人助手」はあまり大したことが起きずにラストになだれ込むのだけど、話が奇妙な方向に捻じれていくさまがヘンテコである。唖然とするほどにヘンである。これはリアリズム、というよりも予定調和をわざわざ突き崩すような、意地の悪いヒネクレ具合というものだ。ハメットがいかに「オハナシの予定調和」を皮肉に見ていたのか、と評者はそういうあたりに興味を憶える。

No.4 7点 おっさん
(2016/01/30 11:11登録)
1970年代に、全四巻が予定されながら、半分で刊行が止まったまま、結局、編訳者の稲葉明雄氏の逝去(1999年没)もあって中絶した、創元推理文庫のハメット・アンソロジー。
その第2巻は、『スペイドという男』として1986年に改装版が出るまでは、長く『ハメット傑作集2』として流通しており、今回、筆者が“積ん読”の象の墓場(?)から掘り起こしてきたのも、その旧版のほうです。
なんだかんだで、収録短編の過半数を、他の本で読んでしまっていたため、これまで、イマイチ通読する意欲が湧かなかった一冊でしたが、さて……。

収録作は以下の通り。
①スペイドという男(1932.7 American Magazine)②二度は死刑にできない(1932.11.19 Collier’s)③赤い灯(1932.10 American Magazine)④休日(1923.7 Pearson’s Magazine)⑤夜陰(1933.10 Mystery League Magazine)⑥ダン・オダムズを殺した男(1924.1.15 Black Mask)⑦殺人助手(1926.2 Black Mask )⑧ああ、兄貴(1934.2.17 Collier’s)⑨一時間(1924.4.1 Black Mask)⑩やとわれ探偵(1923.12.1 Black Mask)
これに、『フェアウェルの殺人』(旧題『ハメット傑作集1』)同様、エラリー・クイーンの“序文”が付されている構成ですが、今回は、その文章の出典が、クイーンの編んだハメット・アンソロジー The Adventures of Sam Spade and Other Storiesであることが明記されています(と、こういう、当たり前のことが前巻では出来ていなかったんだよなあ)。
「訳者あとがき」によれば、前掲書の収録作品(①②③⑦⑧)に、新たにコンティネンタル・オプもの二編(⑨⑩)と、稲葉氏が「とくに気に入っているもの三篇」(④⑤⑥)を追加したのが本書ということになるわけですが#……しかし、この編集方針は、あまり感心しません。
だってねえ、1944年に出版された The Adventures of Sam Spade and Other Stories は、それまで雑誌掲載のまま埋もれていた短編をクイーンが掘り起こしてまとめた労作(60年代初頭まで、都合9冊が刊行された、クイーン編纂のハメット・アンソロジーの皮切りで、あの〈クイーンの定員〉では #098 に挙げられています)なわけですよ。本来、きちんとした形で、つまりクイーンの選択になる本としてそのまま紹介すべき一冊を、お手軽に利用しているようにしか思えない。結果として、親本(?)より充実した内容になったとしても……稲葉氏のアンソロジストとしての姿勢には疑問が残ります。

気を取り直して、作品を見ていきましょう。
本書のウリは、まずは、名作『マルタの鷹』の主人公・サム・スペイド(創元推理文庫版での、探偵名の表記。ハヤカワだとサム・スペードですね)が活躍する、三作しかない希少な短編がすべて読めるということに、なります。 筆者は、「スペイドという男」は創元推理文庫の『世界傑作短編集4』で、「二度は死刑にできない」と「赤い灯」は、講談社文庫から出ていたハメット短編集『死刑は一回でたくさん』(各務三郎編)で既読でしたが、どれもストーリーをまったく忘れている始末で、その意味では、新鮮な気分で読み返すことができました。
が――う~ん、微妙。『マルタの鷹』の設定を踏襲しただけで、まったく陰影のない、アルファベットのVっぽい顔立ちをした金髪野郎が、ゴチャゴチャ入り組んだ事件をバタバタ解決していくだけの、平凡な仕上がりでした。
3編のなかでは、枚数に余裕のある「スペイドという男」が、二次創作的なキャラクター小説として、トリックと手掛かり(消えたネクタイ)を配した謎解き小説として、まあ、そこそこ無難な仕上がりといえなくはありません。しかし、顔見知りの警察関係者を差し置いて、巻き込まれた殺人事件の現場で捜査の主導権を握ってしまうスペイドは、まるで“エラリー・クイーンのライヴァルたち”の仲間入りをしてしまったみたいです。褒めてるんじゃありませんよ。作中、私立探偵が“名探偵”としてパフォーマンスを披露できるだけの、前提がまったく用意されていないんですから。

民間の私立探偵が、警察(公立探偵)と対立するのではなく、協力して、というか、むしろ警察を利用して仕事を遂行するというシチュエーションは、同じ作者のコンティネンタル・オプものでも、まま見られました。本書収録の「一時間」(“ゴチャゴチャ入り組んだ事件をバタバタ解決”する話が、かっきり一時間におさまることで、逆に笑いを誘う。前掲『死刑は一回でたくさん』にも収録)と「やとわれ探偵」(オプが“やとわれ探偵”となったホテルでおきた、意味ありげな謎の三重殺人――の、意味のなさ! オフビートな佳品)にも、その要素はあります。しかしオプものでは、それがむしろ、一匹狼ではない、主人公の属する組織(ピンカートン探偵社がモデルである、全国規模のコンティネンタル探偵社)の大きさを感じさせることになり、紙上のリアリティは保たれていたのです。

短編に関するかぎり、スペイドものは、試行錯誤を繰り返したオプものより、後退してしまっています。シリーズ最後の登場となった、「二度は死刑にできない(死刑は一回でたくさん)」の幕切れでは、犯人を前にいかにも“悪魔”然としたセリフを決め、笑ってみせたスペイドですが、いやいやオプが、「金の馬蹄」(ハヤカワ・ミステリ『探偵コンティネンタル・オプ』所収)で犯人におこなった非情な仕打ちに比べれば、甘い甘い。
『マルタの鷹』の、あの結末(スペイドと秘書エフィとの関係性の変化、そして相棒の未亡人と続けていくことになるであろう、虚無的な日常の予感)を無かったことにして、キャラクターを流用し形式的に続きを書くのであれば、むしろ完全に二次創作に徹して、『マルタの鷹』の前日譚のエピソード――スペイドと相棒との出会いやら、その妻と不倫にいたる経過やら、を何らかの事件と絡めて――でも描いたほうが、ファン・サービスになり、商売上もよかったかもしれません。まあ、それを潔しとするような作者でなかったことは、分かるのですがね。

本書の真価は、じつのところ、雑多な印象を受けることは否めないにしても、ハメットの初期から後期にかけての、作家としてのさまざまな試みを概観できる、ノン・シリーズもののほうにあると言えるでしょう。
胸の病気で入院中の患者が、一か月分の生活費をもって外出する、その散財の一日の出来事を綴った「休日」は、まだハメットがコンティネンタル・オプものを書きはじめる前に文芸誌に発表された、習作の域を出ない(と個人的には思う)掌編ですが、主人公のモデルが、結核を患い入退院を繰り返したハメット自身であろうことが、付加価値になっています。この、最初期の、ミステリでもなんでもないお話など読むと、もともとのハメットは、普通文学のほうに行きたかった人なのかな、という思いを強くします。
「夜陰」については、後述。

「ダン・オダムズを殺した男」と「殺人助手」は、オプものの合間に『ブラック・マスク』誌に書かれた作品です。脱獄囚の“旅路の果て”の物語である前者(前掲『死刑は一回でたくさん』にも収録)は、あらためて読むと、三人称客観描写のハードボイルド文体のテスト・ケースにも思えてきます。あまりにも大きな偶然に依存しているのが難ですが、舞台となる西部の背景描写は素晴らしく、一種の寓話として、目をつぶるべきか。これ一作きりの、刑事くずれで醜怪な容貌の私立探偵アレック・ラッシュものの後者(ハヤカワ・ミステリ『名探偵登場⑥』に採られていたんだよなあ)は、「三人称客観描写」を謎と解明の物語に適用している点で、オプものからスペイドものへの移行の、準備段階とも言える作品。ですが、お話を複雑にしすぎて、前記の文体では、読者が作中の人間関係をスムーズに把握できない弊害をもたらしています。また、当初の犯行計画にも大きな論理的欠陥(カトリーヌ・アルレーの『わらの女』にも通じる問題)がありそう。そんなわけで“名探偵”ものとしては失敗作なのですが……小説がまったく別なものに変わってしまうような、ラスト5行が凄い。ハードボイルドの定型に亀裂が入り、ノワールが深淵を覗かせています(そのへんの凄さは、初読時の、子供の頃の自分には、ま、理解の外だったでしょう)。

そして。
スペイドものの長短編を経て、ハメットの作家としての最後期の仕事といえるのが、「夜陰」と「ああ、兄貴」です。うん、ともに今回が初読のこの2編は、いいですよ。主人公の“おれ”とトレーナーの兄の関係性、その魅力でグイグイ読ませるボクシング小説の後者は、最後に殺人も発生しますが、その謎解きは――幾つかの可能性は語られるものの――ないんですね。リドル・ストーリーとも違う。あくまで起こってしまったことが問題で、あとからその真相を云々したところで、死者が帰ってくるわけでもない、という、いわば脱ミステリの境地で終わるわけですが、それが肩すかしにならず、余韻に昇華されています(内容的に、女性読者にお勧めしたいハメット作品――と個人的には思っていますw)。
余韻といえば……「夜陰」も然り。夜道を通りかかった“私”が、嫌な男たちに絡まれている女の子を助け、車で彼女の希望する酒場に連れていってやる――という、ストーリー的には、ただそれだけの掌編。なのですが、最初期の「休日」と決定的に違うのは、そこに、作話上のある仕掛けが隠されている点(「訳者あとがき」の、稲葉氏の本作に対するコメントは、できれば先に読まないのが吉)。オチのつけかたの妙味という点では、過去に言及したことのある、同じ作者の「アルバート・パスター帰る」(筆者のお気に入り。本サイトの、ハメット『悪夢の街』のレヴューをご参照ください)にも通じますが、オチが、意外性の演出にとどまらず、それ以上の小説的効果をあげているという点では、こちらに軍配があがるでしょう。「普通文学のほうに行きたかった人」かもしれないハメットが、既存のミステリ短編の枠にとらわれず、しかしまぎれもないミステリ・スピリットを発揮してみせた、この洗練された逸品を投じたのは、『ミステリー・リーグ』誌――わずか四号で終焉を迎えはしたものの、あのエラリー・クイーンが、『EQMM』以前に情熱をもって世に送り出したミステリ専門誌の、創刊号でした。

# 念のため、The Adventures of Sam Spade and Other Stories の初刊本(1944)の収録作を資料で確認してみると―― 
「 赤い灯」「二度は死刑にできない」「スペイドという男」「殺人助手」「夜陰」「判事の論理」「ああ、兄貴」
となっており、稲葉氏の記述とは若干の齟齬がありますが、これは同氏が使用されたテクストが、1945年のデル・ブックス版ということで、収録作に異動があった(アブリッジされた版であった)ためと思われます。

No.3 6点
(2014/10/12 13:32登録)
編者であるクイーンによる序文を載せたサム・スペイドものを中心とした5編に、日本版では5編を追加した短編集です。その序文の「彼は新しい種類の探偵小説を発明したのではない-その新しい語り方を発明したのだった」という最後の文は、分析されている『マルタの鷹』にはあてはまりますが、『赤い収穫』についてはどうかな、という気もします。
本短編集の中で言えば、サム・スペイド3編、コンチネンタル・オプ2編と、やはり私立探偵小説の『殺人助手』では、きっちり謎解きをしています。その中では『一時間』のハードさと真相が印象に残りました。『殺人助手』は二人の人間から同じ人を殺してくれと依頼された男という設定の部分はおもしろいのですが、そのため人間関係が複雑になり過ぎているのが難でしょう。
一方『休日』はもちろん、『夜陰』『ああ、兄貴』もミステリと呼ぶには微妙かな。臣さんも書かれているようにどちらもいい作品なのですが。

No.2 6点
(2011/04/08 10:40登録)
スペイドもの、コンチネンタル社もの、一般小説風のもの、謎解き度合いの高いもの、低いもの、長めのもの、超短編もの等々、種々(10編)そろっていて、なかなか楽しめた。これだけそろっていれば、どんな読者でも、どれかが嗜好に合うのではと思った。
かなり軽めでオチもあるショートストーリーの「夜陰」と、プロットが楽しめる「ああ、兄貴」がとくに印象に残ったが、その他も概ね基準点をクリアしている。
「ああ、兄貴」は、伏線はわかりやすいがミステリ性は十分にあるし、兄を崇拝する主人公の描写もよかった。
全体としては中の上程度の小品集だった。
分析すると、みな凝ったつくりではないし、いかにもハードボイルドという作り物っぽさもない。そのへんがチャンドラーとは違うところなのかな?どちらの作家も既読作品はすくなく、まだまだ比較評価する域には達してはいないが。

No.1 7点 Tetchy
(2009/04/04 22:07登録)
評価のしにくい短編集だ。
平均的な水準の作品ばかりが並んでいると、つまらない印象を受けた1編ないし数編が妙に目立ってしまい、評価を下げるような結果に繋がるし、またつまらない作品が数編あっても傑作と呼べる極上の1編があれば評価は俄然高くなるから困りものだ。そこでこの短編集は、と云えば前者に含まれる。
「殺人助手」という登場人物が乱雑に出てくる1編のつまらなさが頭に残っていてあと一歩という感じ。でも結構好感の持てる作品があるのも確かなのである。
う~ん、難しい。

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