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ミステリの祭典

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競馬シリーズ/キット・フィールディング

作家 ディック・フランシス
出版日1986年12月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点
(2018/09/18 17:17登録)
 障害競馬のチャンピオン騎手キット・フィールディングは、双子の妹の切実な訴えを受けた。仇敵アラデック家の息子ボビイと結婚した妹ホリイだったが、家族と絶縁状態で支援も受けられない二人に、新たな災いが降りかかったのだ。ボビイの厩舎が中傷記事専門のゴシップ誌《デイリイ・フラッグ》の標的にされ、飼料商や馬主たちが取引を中止し、銀行までが融資を打ち切ると通告してきたのだという。
 キットは妹夫婦の窮地を救うため、レースの傍ら独自に行動を始めるが・・・。
 競馬シリーズ24作目。シッド・ハレーに続く複数作主人公の登場。正直「ロミオとジュリエット」的な背景が気乗りしなくて後回しにしてたんですが、読むと結構面白いです。ただ物語の軸は〈匿名の手紙〉ネタ一本ですから少々薄いですね。足りない部分をレース描写や主人公のキャラ付けで補ってる感じ。それが予想以上に上手くいったから、続けて使ってみる気になったのかな。
 本来生きるの死ぬのといったストーリーではないんですがそこはフランシス。「先祖代々からの敵愾心」という要素を入れ込んでピンチを演出します。本来のヤマ場はここかな。それを乗り越えた上で、期せずして集まった関係者たちと鮮やかにケリを付けます。
 ただイマイチ深みに欠けるのはどうしようもない。好きな人も多い作品ですが、全体としては佳作未満の出来だと思います。軽く読んで楽しむ分には良いかな。

No.1 6点
(2014/09/22 23:02登録)
2冊ある騎手キット・フィールディング登場第1作とまずは言っておきますが、フランシスは同一主人公を通常使わない作家ですから、『大穴』だってそうですが、本作もシリーズ化を最初から考えていたわけではないでしょう。
読後に振り返ってみると、ミステリとしては実に地味な事件です。大筋は、主人公の妹夫婦の経営している厩舎が、悪意の中傷記事によって窮地に追い込まれたのを、何とかして救い出すというだけで、殺人は1件も起こりません。中傷記事が書かれた背景には、義弟の父親(何とも嫌な奴です)に対する陰謀があるのですが、そのからくりも大したことはありません。しかしそれでも、ストーリー展開の仕方はうまく、それをフランシスの文章で書かれるとおもしろいのです。
また、レース・シーンの描写が特に多く、競馬小説として充分楽しめるのも本作の特徴となっています。馬主のカシリア王女がいいキャラクタですね。

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