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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1515件

プロフィール| 書評

No.1135 8点 アンクル・アブナーの叡智
M・D・ポースト
(2019/11/11 23:09登録)
久々の再読。文庫本で平均18ページ程度のパズラー系18編というと、小説としてのおもしろ味のない推理パズル系のものが多いと思われますが、本作は別格。いずれも重厚な小説に仕上がっているところが驚きです。
謎解き的には、最も長い(と言っても22ページですが)『神の使者』はアブナー伯父の推理の時間的経緯が今一つはっきりしないとか、『魔女と使い魔』が密室的興味をかきたてながら、それに対する解答が明確にできていないとかいった不満のある作品もありますが、まあいいでしょう。また犯人像がかなりワン・パターンで(『黄金の十字架』などの例外もありますが)、最後に置かれた代表作『ナボテの葡萄園』なんか、それまでの作品を読んできていればすぐ真犯人の見当がついてしまいますが、これも狙いが犯人の意外性ではないので、それで結構。『神のみわざ』は推理部分だけでも実際の単語を取り上げてもらいたかった気もしますが。


No.1134 6点 岩窟姫
近藤史恵
(2019/11/05 19:58登録)
タイトルはもちろんアレクサンドル・デュマから採っているわけで、巻頭にもごく簡単な粗筋が置かれていますし、第1章終りにも「モンテ・クリスト伯」のことが触れられます。ただし黒岩涙香の翻案により日本で広く親しまれるようになった邦題が『巌窟王』なのに対して、本作では1字目に「岩」の字を使っています。
モデルの蓮美(れみ)は、同じ事務所に所属する友人沙霧(さぎり)の自殺が彼女のいじめによるものだとする疑いをかけられるのですが、デュマと違って誰がなんのためにそのようなデマを流したのかが、最大の謎になります。したがって、復讐の前に、蓮美は既にモデルをやめているもう一人の友人チホの手を借りて、その謎を探っていかなければなりません。
最後には意外な事実が明らかにされますが、デマの理由を含め、ちょっと無理があります。タイトルが示す「復讐」については、そういうことかと納得しましたが。


No.1133 9点 アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
フィリップ・K・ディック
(2019/11/01 23:13登録)
2019年11月ロサンジェルス、昼なお暗い街の上空をスピナーが飛び交い…
リドリー・スコット監督のSF映画古典『ブレードランナー』の設定です。というわけで、その原作を手に取ってみました。ディックは『トータルリコール』原作も収録した短編集を1冊読んだことがあるだけ。
読み終えてみると、『ブレードランナー』を認めないディック・ファンが意外に多いらしいというのもわかる気がしました。アンドロイド(レプリカント)の人数とかデッカードが既婚だとか、原作舞台が1992年のサンフランシスコとかいった細部はどうでもいいのです。映画公開は原作発表の14年後ですが、アンドロイド・テーマ的には原作よりも考え方が古典的すぎる(その表現が優れていても)のです。
ミステリ的には映画に比べ捜査的興味に欠けるとか、最後の対決があっけないとか、不満もあるでしょうが、やはり傑作。
ところでデッカードの「三人で充分ですよ」のセリフには笑ってしまいました。


No.1132 5点 見習い女探偵
リザ・コディ
(2019/10/29 23:15登録)
ジャンルは思い切って警察小説としてみました。もちろん、主役のアンナは警察官ではなく、私立探偵です。しかしホームズやポアロだって私立探偵ですから、主役の職業をもって、ハードボイルドあるいは私立探偵小説と呼ぶ根拠とすることはできません。逆にフレンチ警部等の登場作品も警察小説とは呼べないでしょう。
結局のところ、あくまで捜査組織の一員という三人称探偵役の位置づけが明確なことにしても、粘り強い聞き込み捜査の末唐突に証拠が転がり込んでくる小説構成にしても、印象は警察小説と呼ばれるものに近いと思えるからです。さらに英国作家ですしね。ストーリーはマクベインよりはるかに地味です。アクション・シーンがないわけではありませんが、ハードボイルドや本格派のラストで感じるカタルシスが全くないのです。それが悪いというのではなく、作者の書きたかったところだろうと思えるから、この点数なのですが。


No.1131 5点 動物園の鳥
坂木司
(2019/10/26 10:12登録)
ひきこもり探偵シリーズの3冊目完結編にして初の長編。日常の謎系らしいこの作者のものでもひとつ、と気まぐれに選んでみたのですが、最初に読むべき作品ではなかったようです。
でも、とりあえず人間関係のねじれを暖かい筆致で解きほぐしていく話はおもしろかったですし、以前の同シリーズ作を読んでいることが必須という作りにはなっていません。まあレギュラー登場人物たちの関係が多少わかりにくいとは言えますが、長編なだけに、人物紹介にも筆を費やしています。
それにしても、日常の謎とは言え、また巻末解説では「警察や探偵などが介入してくる種類の騒ぎではない」と書かれていますけれど、本作で起こる動物虐待は、事件解決部分でも法律的扱いに触れられているように、れっきとした犯罪です。悪質な場合には警察が乗り出してくることもあり得ます。しかし本作の読みどころは、その虐待犯人が明らかにされた後の部分にあります。


No.1130 6点 殺意の日曜日
マーシャ・マラー
(2019/10/20 22:50登録)
初期作品では普通にかわいい感じの女性だったシャロン・マコーンも、元恋人のDJを思い出して感傷的になったり、事件関係者に対して激高しそうになったりすることはあっても、ずいぶん落ちつきが出て来て、ある程度貫録を感じさせるようにもなってきています。前回読んだ次作『カフェ・コメディの悲劇』に比べると、事件自体が最初の殺人は明らかに故殺(一時の激情による殺人)と思われますし、最後も次作のような派手な展開にはならず、地味目なところも、本作のシャロンが特に大人びた感じに思える理由でしょうか。まあパレツキーのヴィクと比べると、運動神経の方はたいしたことはなさそうですが。
巻末解説には、マラーはロス・マクドナルドからの強い影響を自認していることが書かれていますが、本作の人間関係やクライマックスなど、確かにそうだと思わせられます。ただ、ロス・マクに比べると、謎解きを鮮やかに見せる手際には少々欠けます。


No.1129 6点 神の街の殺人
トマス・H・クック
(2019/10/17 22:31登録)
重厚な心理サスペンスが知られるクックの初期作品には捜査側から描かれたものが多いようですが、この第3作は、犯人側の視点をところどころにはさむ警察小説タイプです。
モルモン教の本部があるソルトレイクシティで起こる連続殺人事件を扱っていて、邦題もその意味です。なお原題の “Tabernacle” は礼拝堂の意味で、クライマックスの舞台を意味しています。常軌を逸した思想を持つ犯人視点の部分では犯人の名前は隠されていますが、登場人物表と照らし合わせれば、候補者は絞り込まれてしまいます。まあ、それで犯人の名前だけ見当がついても、中心となる謎は動機ですので、おもしろさが低減してしまうような作品ではありません。
後年の作品に通じるような味わいもありますが、礼拝堂での事件の決着のつけ方が、刑事の過去と密接につながって来ず、また犯人がその動機を持つにいたった経緯が説明されていないのは不満でした。


No.1128 5点 湯殿山麓呪い村
山村正夫
(2019/10/14 09:39登録)
横溝正史を意識した作品ですが、同時期に『悪霊島』を執筆中だった横溝正史本人からも激励を受けていたことが、ハードカバー版作者あとがきには書かれています。ただ、構成的に、6割過ぎあたりから犯人を示す記述が急に露骨になって来るのは、横溝正史とは発想が全く異なるところではないかと思えました。で、最後真犯人が探偵役の滝連太郎によって明かされた後まだ40ページぐらいも残っています。さらなるどんでん返しはあり得ないし、どうするつもりなのだろうと思っていたのですが、明確になっていなかった動機が語られるのと、犯人がどうなるかの決着部分がほとんどでした。
かなり早い段階で犯人の口から暗示的な手がかりが出されるのですが、これが雰囲気の古めかしさにもかかわらず、あとがきで作者の言う「テーマはアクチュアルなもの」というところにもつながっていたんですね。
海外超有名作の完全ネタバレあり。


No.1127 5点 五時の稲妻
ウィリアム・L・デアンドリア
(2019/10/11 22:51登録)
瀬戸川猛資氏の巻末解説によればデアンドリアの「現代史もの」のひとつです。時代設定は発表の約30年前の1953年。著者まえがきには、「大半の登場人物はまったくの虚構である」と書かれていますが、それは実在の人物も少しは登場するということであり、実際にセリフなどもある人物は、ヤンキースのミッキー・マントルです。ただメジャー・リーグについては知識のない自分としては、この選手のことも全然知らなかったのですが。その名選手が命を狙われることになるというのも主筋に一つになっています。その動機というのが、当時のマッカーシズムとも関連するとんでもなく乱暴なもの。
謎解きの意外性を重視する作家らしく、最後には鮮やかにトリックを解明していますし、その後の決着の付け方は作者の敬愛するクイーンの某作品なども連想させます。しかし犯人側の視点も所々に取り入れた作品構成全体はいまひとつでした。


No.1126 6点 帰ってきたミス・メルヴィル
イーヴリン・E・スミス
(2019/10/05 08:41登録)
ミス・メルヴィルは殺し屋だというので、ハードなものではないにしても犯罪小説系スリラーかと思っていたのですが、この第2作は謎解き系のミステリになっていました。
ミス・メルヴィルはオールド・ミスと表現されていますが、ミス・マープルみたいな高齢者ではなく、中年女性といったところ。お嬢様育ちの彼女の上品でおっとりした感じは、作品世界そのものにもなっています。本作では、画家として人気が出てきたため、殺し屋はとりあえず廃業した彼女が、美術界の事件に素人探偵として活躍します。画廊で死んだ芸術家(立体美術の作者)は実は殺されたのではないかという疑いから始まり、さらに画廊の経営者が殺され、また評判の画家の正体に関する疑問など、謎の要素は豊富です。
ただ、事件の真相説明はもっぱら犯人により語られるようになっているところが、本格派と言うにはどうかなとも思えますが。


No.1125 6点 毒の矢
横溝正史
(2019/10/01 20:18登録)
中編に加筆した作品だそうで、サスペンス重視の通俗的なものではなく、200ページ弱でほどよくまとまった純粋なパズラーになっています。殺人トリックそのものは、英国有名作家の映画化もされた作品とそっくりですが、背中に彫られたトランプの刺青という作者らしい趣向をうまく利用して、さらに重要手掛かりにもしているところが評価できます。ただこの手がかりの与え方は、少々不自然かなとは思えますが。町中にばらまかれる匿名の手紙の動機も、一応納得できる形にしていますし、金田一耕助が殺人事件発生の当夜に事件を解決してしまうという名探偵らしさを見せてくれるのも好印象です。
角川文庫版には、同じ世田谷区緑ヶ丘を舞台にした中編『黒い翼』を併録しています。表題作の原型中編と連続して雑誌に発表されたそうで、テーマ的にも「幸運の手紙」系の葉書という表題作と似たものです。


No.1124 6点 ガールハンター
ミッキー・スピレイン
(2019/09/28 07:48登録)
前年に未発表旧作(一応手を加えているんじゃないかとも思えますが)『縄張りをわたすな』で長編を再開したスピレイン、新作マイク・ハマーものは、作者だけでなくハマー自身の復活物語でもありました。スピレイン自身がハマーみたいにアル中になっていたわけではないでしょうけれど。作品設定としては、ハマーは7年間飲んだくれて落ちぶれていたことになっています。いくら悔恨と悲しみに打ちひしがれたとはいえ、そんなにまでなるかなあとか、恨みを持つ輩によくも狙われなかったもんだとかいう疑問は、この際無視することにして。
冒頭で生きているらしいとわかったヴェルダは、作中では一切登場しません。二人の再会は次作でのお楽しみ、とういうことで。昔みたいな体力はないとかくよくよ考えながらも、殺し屋相手に頑張るハマーには、やはり拍手を。ラストシーンは、伏線がわざとらしいですが、いかにもスピレインです。


No.1123 6点 夜の試写会
S・J・ローザン
(2019/09/23 23:23登録)
日本で独自に編集されたローザンの短編集。
収録7編中、最初と最後にリディアとビルが2人とも登場する(いずれもリディア視点)作品を置き、その間にリディア単独事件を2編、ビル単独事件を3編並べています。すべて、何らかの意味で結末の意外性を狙ったものになっていますが、パズラー系作家に比べると謎解き的にはちょっとワン・パターンかなとも思えます。
巻末解説にはビル主役作はハードボイルド的、リディア主役作はコージーっぽいと書かれていますが、本書の中で最もハードボイルドでないのは、ビルの『天の与えしもの』で、困りもの宗教家撃退法を描いたユーモア・ミステリです。一方重いテーマを持ちハードに徹したのはビルの『ただ一度のチャンス』とリディアの『人でなし』。さらにアメリカ探偵作家クラブ最優秀短編賞受賞の軽快な『ペテン師ディランシー』など、作風的には変化に富んでいます。


No.1122 6点 時の審廷
芦辺拓
(2019/09/18 23:15登録)
戦前のハルビンから現代の日本へと、実際の有名犯罪事件をモデルに壮大なスケールで描く「権力者」の悪徳の限り…
2010年4月に序篇が雑誌に掲載されたことが、前書きに記されていますが、巻末の「+書き下ろし」という記載からすると、序篇執筆の3年後にそれ以降は書かれたということでしょうか。前書きではその間に「…東日本大震災が発生、物語の根底をくつがえす結果となりました」とも書かれていて、意味はわかりますが、フィクションにとっては現実との相違はどうでもいいことでしょう。昭和23年の「大都銀行事件」なんてモデルは明らかですが、だからといって現実の事件の真相も本作の結末に近いものだというわけではありません。
ハルビンで「警尉補」として登場し、戦後の東京では警部になっている人は、日本語での名前は明確にされませんが、ロシア語発音の呼びかけ等から、あのアリバイ崩し名手であることは明らか。


No.1121 6点 犯罪王カ~ムジン
ジェラルド・カーシュ
(2019/09/14 19:06登録)
2003年にアメリカで編集された17編のカームジン・シリーズには、直訳すれば「最も偉大な犯罪者あるいは最も突飛な嘘つき」という副題が付いています。
英首相チャーチル等愛読者が多いということで、とんでもない作品を期待していたのですが、第1作『カームジンの銀行泥棒』から始まり、全体的に意外にまとも? という感じでした。直前に読んだクレイグ・ライスが予想ほどお笑い要素がなかったのにはむしろ好感を持ったのですが、本作の場合は少々期待外れでした。いや、トリックとしてはなかなかのものなのですが。巨額の金を動かした犯罪者だと言いながら、語り手にコーヒーや煙草をおごらせたりする現在の状況とのギャップも、個人的にはそれほどおもしろいとは思えません。でもまあ『カームジンとあの世を信じない男』とかその続編とも言うべき『カームジンと透明人間』という珍品もあります。
シリーズ外の2編も収録。


No.1120 6点 幸運な死体
クレイグ・ライス
(2019/09/10 20:20登録)
ライスは初読みですが、予想とは違う印象を持った作品でした。
まずはさほどコメディしていなかったのがひとつ。特に笑わせてやろうという感じがしないのです。大げさな比喩表現もありますが、うまくはまる場合にしか使っていないと思いますし、いくらでも派手にできそうな「幽霊」騒ぎも人々のリアクションはむしろ控えめなくらいです。またマローンは酔いどれ弁護士と紹介されることが多いですが、ジェイムズ・クラムリーのミロやシュグルーみたいなことはありません。まあ最後には、酒場で乱闘の挙句留置場に一時ぶちこまれもしますが、これは事情を考えれば当然でしょう。事件がどう決着しようが、マローンにとって「幸運な死体」ことアンナ・マリーとの関係がめでたしめでたしになるわけがありません。
謎解き的には、アクション・シーンの後、これで終わるわけがないしと思っていたら、やはりそう来ましたか。


No.1119 5点 断層
高木彬光
(2019/09/06 22:55登録)
タフな私立探偵大前田英策を主役としたシリーズは、神津恭介との共演のため本領が発揮されていない久々登場の『狐の密室』だけしか読んでいなかったのですが、本作はその第3作、1959年発表という時代性からして、事件の裏に隠された秘密など、多少社会派的な要素も入ってきています。一方謎解き的にはシンプルで、ハウダニットの要素はありません。それは神津恭介とは違うものを期待して読んでいるからいいのですが、最後に犯人が仕掛けた罠を大前田英策が見破る決め手について、後から説明されるだけでフェアプレイが全く守られていないのだけはちょっとどうかと思います。
立風書房版には、同じ大前田英策ものの4短編が併録されていますが、中ではSF的な謎と人情噺を融合した『二十三歳の赤ん坊』が気に入りました。『飛びたてぬ鳥』は、同じ効果を出すには死体発見を遅らせる方がよっぽど簡単だろうと思えてしまいます。


No.1118 6点 追跡
ビル・プロンジーニ
(2019/09/01 15:38登録)
原題の "Bindlestiff" は、訳者あとがきでは「渡り鳥」としゃれた言葉を使っていますが、要するに浮浪者、ホームレスのこと。
前々作『迷路』で私立探偵ライセンスを失うことになった名無しのオプに、無事ライセンスが再交付されるところから話は始まります。そのことがマスコミにとりあげられるのですが、アメリカでは本当にそんなこともニュースになるんでしょうか。まあそれで祝福の電話をかけてきた人の中に、会ったことのある女私立探偵シャロン・マッコーンがいたというのにはにやりとさせられます。プロンジーニ夫人のマーシャ・マラーの探偵役で、本作の翌年には夫婦合作『ダブル』も発表されます。
内容的には、二つの部分に分かれています。前半は浮浪者になっている父親を捜してほしいという娘の依頼で、その問題に一応決着が付いた後、さらにそのことが元で新たな事件が起こるという展開で、この構成は『迷路』よりは気に入りました。


No.1117 5点 殺したくないのに
バリ・ウッド
(2019/08/28 20:41登録)
本作に興味を持ったのは、デイヴィッド・クローネンバーグ監督の映画『戦慄の絆』の原作者(の一人)の小説だからということでした。そして読み始めてみると、なんとクローネンバーグ監督を有名にした『スキャナーズ』―頭が爆発する衝撃映像が話題になった超能力SF映画と同じ題材ではないですか。本作が発表されたのは『スキャナーズ』公開の5年前、1975年です。
しかし、SFと言うには科学的側面が弱いのです。超能力者ジェニファーの周辺と、彼女が正当防衛で殺した(と思われる)強盗の不可解な死因を異様な執念で突き止めようとする警部の視点を組み合わせた構成で、その意味ではミステリ的要素の方が強いと言えます。法律的にはばかばかしい警部の執念の理由は、最後の対決部分で明確になります。筆力がある作家なのは間違いないのですが、警察官がこんなことを考えては、という思いが先に立ってしまいました。


No.1116 7点 めぐり会い
岸田るり子
(2019/08/24 23:02登録)
絵が得意な主婦華美と、バンドのボーカル祐の二人の視点を章ごとに切り替えていくカットバック手法で、最後にその二つの話がどう結びつくかという点に興味の焦点を置いた作品です。岸田るり子はこのように小説構成で読者を惹きつけるのが得意な作家ですが、本作は中でもかなり成功した例でしょう。
今回その手法で提示される謎はSF的な時間のずれで、真相解明直前には「タイムスリップ」という章まであります。トリックはごく簡単ですが、その章まで時間的な謎は読者にだけ示して、登場人物たちは全く知らないように話を組み立てているのが、なかなかうまいと思います。
華美と祐のどちらも家族、特に「愛」の問題に悩んでいて、そこがじっくり描き込まれた作品でもあります。最後にタイトルどおりの結末になるのは当然ですが、どのように「会う」ことになるのか、そこは読んでのお楽しみ。ただ、連続放火事件の真相だけはちょっとなあ…

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