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ミステリの祭典

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アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

作家 フィリップ・K・ディック
出版日1977年03月
平均点7.29点
書評数14人

No.14 4点 みりん
(2023/07/22 17:55登録)
こういう古典の金字塔的作品に低評価をつけると己の教養と読解力が浮き彫りになりますね。

放射線が降り注ぐ終末的な世界観に火星からアンドロイドが逃げてくるという SF要素。
で、なぜか動物を飼うことがステータスとなっている世界(これもよく分からん)で主人公は電気羊を飼っている。うん、ちょっと世界観が独特すぎるな。よう思いつくわこんなん。
オペラ歌手に扮したアンドロイドを処理するところまではついていけたんだけど、そこから置いてけぼりにされた。自分は「星を継ぐもの」みたいにわかりやすく謎の解明がないと楽しめないらしい…

テーマは電気動物→動物 アンドロイド→人間(とイジドア)の対比を描写する事でアンドロイドと人間には果たしてどこに差異があるのか、人間固有の特性とは何かを問いているっぽい。たぶん。"電気羊の夢"=本物の動物になることを指しているとすると「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」というタイトルは「アンドロイドは人間と同じになれるのか?」という解釈で良いのか?

No.13 5点 ボナンザ
(2022/10/16 20:15登録)
個人的にはSFというよりハードボイルドとして楽しんだ。

No.12 5点 メルカトル
(2021/08/21 22:57登録)
第三次大戦後、放射能灰に汚された地球では生きた動物を持っているかどうかが地位の象徴になっていた。人工の電気羊しかもっていないリックは、本物の動物を手に入れるため、火星から逃亡してきた〈奴隷〉アンドロイド8人の首にかけられた莫大な懸賞金を狙って、決死の狩りをはじめた! 現代SFの旗手ディックが、斬新な着想と華麗な筆致をもちいて描きあげためくるめく白昼夢の世界!
リドリー・スコット監督の名作映画『ブレードランナー』原作。
35年の年を経て描かれる正統続篇『ブレードランナー2049』キャラクター原案。
Amazon内容紹介より。

正直100頁位まで私の心は1ミリも動きませんでした。それ以降漸く脈動し始めたはずの心も激しく興奮することはありませんでした。Amazonでも本サイトでも高評価で名作の名高い本作ですが、それ程までとは思えませんねえ。
色々説明不足な点が多いのがまず気になります。例えば如何に何故アンドロイドが造られたのか、動物を飼う事に何ゆえ人間は夢中になるのか、マーサー教とは何か、特殊者とは?など。そうしたバックボーンが作者の頭の中に存在しているにも拘らず、読者には十全に開示されていない様に思われて仕方ありません。いささか不親切ではないでしょうか。
で、派手な賞金稼ぎの主人公とアンドロイドの戦闘なども見られず、ストーリーに抑揚もあまりなく、何だか読み進める事に対して私の気持ちは拒否反応を示す始末。

まあ私がマイノリティなのは分かっています。そして読解力がないのだという自覚もあります。どうにもハードSFというやつと相性が悪くていけません。この名作を楽しめなかった自分が情けないです。

No.11 6点 バード
(2020/08/13 22:21登録)
本作のテーマは「機械と人間の境界線とは?」である。
この本が書かれた当時は、上記の問題はフィクションの世界の問題だった。しかし、AI発展が目覚ましい昨今では、この問題が現実の問題となりつつある。(もちろん、まだAIができる事は限られており、生物との差は明白だが。)
時代が進み、上記テーマが身近になった結果、本作のスケールは相対的にダウンしたと言わざるを得ない。このような理由から、本作は水準レベルを超えてはいるが、少し物足りないと感じた。(この作品の歴史的価値を考慮できる程、SF小説を読みこんでいる読者ならば違う評価の仕方もあるのだろうが。)
個人的には、魅力ある映像を楽しめる映画『ブレードランナー』の方が本書より好き。ほぼ別物な気もするが・・・。

最後に、小説ならではの良さについて述べる。アンドロイドへの呼称「彼・彼女」と「これ・あれ」が、登場人物のメンタル状態によって使い分けられているところが良かった。結構短い間隔で呼称が変わる場面もあり、繊細な心情変化を逐次的に読み取ることができる。

No.10 5点 蟷螂の斧
(2020/06/29 23:05登録)
映画「ブレードランナー」は、SF映画ベスト100(情報誌Time Outロンドン版2014年)の第2位、史上最高の映画500(エンパイア誌2008年)の第20位と名作なのですが、主人公がレプリカント(小説はアンドロイド)に惚れてしまう物語という程度の記憶しか残っていません(苦笑)。本作は映画の原作というより、「原案」と言った方がよいのかも。アンドロイドは殺人を犯し地球にやってきたのですが、どうして殺人を犯してしまったのか説明がされていません。単純に奴隷からのがれるためだけでは短絡的過ぎませんか?。よって、残念ながらアンドロイドに感情移入できませんでした。殺人が出来ないようにプログラムすればいいだけの話なのに、まだ殺人ができる次世代のアンドロイドを製作中というのです。この辺がよく分かりませんでした。映画の方がアンドロイドを愛してしまう人間性を描いているという点では上回っているような気がしました。

(参考)SF映画ベスト100の上位10作品(*は2008年、英国「エンパイア」の映画ベスト500)
1位「2001年宇宙の旅」(1968)(*16位)
2位「ブレードランナー」(1982)(*20位)
3位「エイリアン」(1979)(*33位)
4位「未知との遭遇」(1977)(*59位)
5位「エイリアン2」(1986)(*30位)
6位「スター・ウォーズ」(1977)(*22位)
7位「未来世紀ブラジル」(1985)(*83位)
8位「メトロポリス(1926)(*-)
9位「ターミネーター」(1984)(*308位)
10位「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」(1980)(*3位)

No.9 9点 小原庄助
(2020/06/09 09:30登録)
人間と機械の違いは何か。もしそれが将来の夢を見るか否かで決まるなら、夢を見る機械はもはや人間といえないか。機械にそんな感情移入をしてしまう自分は異常なのか。それとも。命がけのアンドロイド狩りに挑むリック・デッカードは自問する。
言わずと知れた映画「ブレードランナー」の原作。映画から入った方は冒頭からリックが妻と感情操作装置のダイヤル争いをしたり、隣人に見栄で機械仕掛けのペットを飼う悩みを話したりするので戸惑われるかもしれない。
でも、読み進めるうちにこの世界が生命と機械の狭間にあり、そこから生じたアンドロイドは一体何かというSFならではの問題提起の前置きであることに気付く。現在様々な分野で問い直されているテーマを描き、作品としても古びていない。

No.8 10点 SU
(2020/05/11 18:07登録)
これには驚いた! この時代に書かれたとは信じられないほど。SFは苦手だけど、これは良かった。

No.7 9点 クリスティ再読
(2020/02/13 22:21登録)
いつのまにか本作が「SF/ファンタジ―」部門の評価5件以上の最高平均評価作になってるね。とはいえ、本作の「ミステリ色」は、どっちかいうと映画「ブレードランナー」の「混沌とした未来社会でのフィリップ・マーロウ的な探偵の物語」という独自の狙いから来たものしかないようにも思うんだ。原作小説の方はデッカードは妻帯者で、情緒不安定な妻に悩まされ、相続した山羊が死んだための身代わりの「電気動物の山羊」にコンプレックスをもち、腕利きの賞金稼ぎ(バウンティハンター)であるが、アンドロイドを殺戮する稼業に心理的な限界が近づきつつある...と、まったく主人公像も映画とはまったく違う。おおまかな事件の枠組みは同じかもしれないが、美術とSFXが凄いが内容的には安全なハリウッド・アクション映画の域を出ない映画とはニュアンスが全然違う話である。評者映画見てかなり後に原作を読んだから、呆れ果てたんだ。まあ評者、オトコノコじゃないせいか、SF映画の「カッコよさ」ってわからないタイプなんでね、「ブレードランナー」より「惑星ソラリス」の方が好きだなあ。ちなみに「ソラリス」の荒廃した宇宙ステーション像が、サイバーパンクのハシリだ、なんていうと嫌な顔をされるかな。
つまりね、原作小説は人間/アンドロイド:動物/電気動物の対比図式を、マーサー教の「感情移入の教義」を媒介として何が排除され何が融合されるのか、その線引きの動揺による、一種のショックが見どころなように思うんだよ。人間でもイジドアのように「役立たず」として人間世界から排除される存在もあれば、ルーバのように人間にとってどうみても「有用」でもアンドロイドがバレれば廃棄される存在もある。蜘蛛の足を切り刻むブリスの行為がアンドロイドの「感情移入能力を持ちえない」証拠だとすれば、アンドロイドを無慈悲に殺戮して何の動揺も感じないフィルという存在な何なのか?このただなかでデッカードは悩み動揺する。「自分はいったい何者か?」
このように「さあ、この矛盾を解いて見よ!」というほどの「人間の条件とは何か?」というエンタメぎりぎりの哲学的な問題提示が興味深い。原作小説でマーサー教が担うショーペンハウアー風の共苦の世界の方が、評者は「酸性雨の降りしきるアジア的猥雑の無国籍都市」よりもずっと魅力的である。このマーサー教の「感情移入」の救いとは、たとえそれがハリボテであったとしても、「同情によって悟る純粋な愚か者」に向けられた救いであろう、ということなんだね。

No.6 10点 麝香福郎
(2020/01/30 20:03登録)
AIやアンドロイドなど、高度な知性を有する人間と同等の存在、あるいは人間以上の存在が登場する中で、どうやって人間がその存在に立ち向かい、戦っていくのか。それを見る時、私たちは「人間」というものを理解していくのです。
この作品は、そんな「人間とそれ以外の存在の違い」を描く多くのSF作品の先駆けであり、完成系です。AIが発達しつつあるいま、人間の能力を超える可能性についての議論が現実味を帯びて語られるようになりましたが、この作品が描かれたのは、まだそんな時代の到来が予見されていなかった時代です。そんな時代にあって、この不朽の名作と言っていいSFの金字塔は、「人間(ホンモノ)」と「ニセモノ」の姿を事細かく描いています。
表題にもなっている「アンドロイド」と「電気羊」はニセモノです。第三次世界大戦で放射能が蔓延し、生き物の数が減ってしまっているために、本物の生き物は高価な値段で取引され、本物の生き物に対して「電気羊」などのニセモノの生き物が増えています。そして人間のニセモノとして存在しているのは「アンドロイド」。ある一点を除いて、人間と全く変わりがない生き物として描かれています。その一点とは、感情移入です。
何かを慈しむ能力を持ったホンモノであるにもかかわらず、ニセモノに対して慈しむ心を失っている世界。この社会はどこか矛盾していて、その矛盾を乗り越えていく主人公の姿を見て、読者は「人間」というものを探し考え、そして人間以外の存在が出てきた時、社会がどう変化するのか、空想するのです。

No.5 9点 猫サーカス
(2020/01/14 19:54登録)
人造人間の犯罪集団を追う賞金稼ぎの話。ただし、単なるSFサスペンスではない。相手が人間かアンドロイドかを判定するテスト、宗教や芸術に関わる人間の振る舞い、鍵となる「感情移入」という現象。ここには人間の根本を探求する真剣でまっすぐな志が見られるし、ところどころにユーモアのくすぐりが仕掛けられてもいる。映画「ブレードランナー」の原作として知られるが、ディックの思想の深みに触れるためには、映画だけでは駄目。この本を読む必要アリです。

No.4 9点
(2019/11/01 23:13登録)
2019年11月ロサンジェルス、昼なお暗い街の上空をスピナーが飛び交い…
リドリー・スコット監督のSF映画古典『ブレードランナー』の設定です。というわけで、その原作を手に取ってみました。ディックは『トータルリコール』原作も収録した短編集を1冊読んだことがあるだけ。
読み終えてみると、『ブレードランナー』を認めないディック・ファンが意外に多いらしいというのもわかる気がしました。アンドロイド(レプリカント)の人数とかデッカードが既婚だとか、原作舞台が1992年のサンフランシスコとかいった細部はどうでもいいのです。映画公開は原作発表の14年後ですが、アンドロイド・テーマ的には原作よりも考え方が古典的すぎる(その表現が優れていても)のです。
ミステリ的には映画に比べ捜査的興味に欠けるとか、最後の対決があっけないとか、不満もあるでしょうが、やはり傑作。
ところでデッカードの「三人で充分ですよ」のセリフには笑ってしまいました。

No.3 9点 糸色女少
(2019/02/23 09:41登録)
舞台は、最終世界大戦後の地球。放射性物質から成る「死の灰」に汚染されて多くの動物が絶滅、人間も大勢死んだ。生き残った人の多くは、火星など別の惑星に移住していった。
ある日リックが出勤すると、上司から呼ばれる。同僚のデイヴが撃たれたというのだ。デイヴは新型のアンドロイド8人を追い、2人までは殺したが、3人目に逆にやられた。リックはデイヴの仕事を引き継ぎ、残りの6人を追うことになる。
やっかいなのは、新型アンドロイドが従来に増して、人間と区別しにくいこと。見分けるためにこれまで使っていた検査法は、新型に通用するのか。
作者の設定によれば、アンドロイドと人間を見分けるときの鍵は、感情移入や共感。両者を判別する検査方法も、これを指標とする。しかし人間の側の共感力が強ければ、アンドロイドに同情したり愛情を持ったりする可能性もある。そんな人間が、相手を無慈悲に殺せるだろうか。
登場人物が人間なのかアンドロイドなのか、判断に迷う場面も出てくる。さらに、アンドロイドが今の社会で差別されている人たちと重なって見えてきて、誰に味方をすればいいのか、だんだん分からなくなってくる。
人間とは何か。人間らしさとはどんなものか。示される問いは人間存在の根源に迫っている傑作。

No.2 6点 響の字改
(2017/05/19 18:15登録)
ミステリなのかコレはwww(;゚Д゚)

哲学色を織り込んだ人工知能モノのパイオニアではあるんだけど
原作本を絶妙に切り貼りしたブレードランナーの方が背景設定を上手にオミット出来てて面白い。鳩、湯気、うどん、そして折り紙w
短編集読まないと原作の痒い所がわかんないよね。

人間社会に擬態する機械→舞台装置としての登場人物に擬態する犯人
と位置付けるなら同じプロットでミステリたりえるのかしら。

No.1 6点 E-BANKER
(2016/09/18 19:58登録)
1968年に発表された伝説的SF作品。
ハリソン・フォード主演「ブレードランナー」の元ネタとなったことでも著名。

~第三次世界大戦後、放射能灰に汚された地球では、生きている動物を所有することが地位の象徴となっていた。人工の電気羊しか持っていないリックは、本物の動物を手に入れるため、火星から逃亡してきた<奴隷>アンドロイド八人の首に掛けられた莫大な懸賞金を狙って、決死の狩りを始めた! 現代SFの旗手ディックが斬新な着想と華麗な筆致を用いて描き上げためくるめく白日夢の世界!~

正直なところ、作者の狙いやテーマを理解できたのかは全く不明。
・・・っていう感じだ。
訳者の浅倉氏は、作者のテーマは「現実の探求」と「物質的世界の背後に隠れた真実の発見」とあとがきで書かれている。
???
もともとSFはそんなに読んできてないし、作者の独特すぎる世界観もスッと頭に入ってこなかった。

アンドロイドVS人間というと、SFでは割と普遍的なテーマではないかと思うけれど、本作では両者の境界線がたいへんビミョーに書かれている。
アンドロイドかどうかを判定するテストが出てくるのだが、人間と思っていた人物が実はアンドロイドだったり、その逆もあったり、途中では主人公まで自身がアンドロイドではないかと疑心暗鬼になったりして・・・などなど、とにかくグラグラしているのだ。
そしてもうひとつの象徴が「動物たち」。
本物の動物と電気製の動物。
見た目にそれほどの差異はないのだが、人々は本物の動物を手に入れるため、危険な仕事にも手を染めていく・・・

これは物質的社会への警鐘なのか? はたまた単なるエンターテイメントの追求なのか?
終章。大枚をはたいて購入した“天然のヤギ”を死なせてしまった主人公に訪れる一匹の醜い動物。
これまでも実は・・・だったなんて!作者も人が悪いよ。

本当は再読したほうがいいんだろうなぁー。
(でも、あまり気が進まないかも・・・)

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