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ミステリの祭典

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真実の絆

作家 北川歩実
出版日2001年09月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 虫暮部
(2024/10/25 12:26登録)
 人間が “多い” と感じる最小の数は七である。だから奇術師が鳩を出す時は七羽にする。それより多くしても、扱いの難しさに見合う効果が得られない――。
 と言ったようなことを泡坂妻夫が書いていた記憶があるな。作者は本書で頑張り過ぎて十羽くらい無理に仕込んでしまった。捻って捻ってまた捻り、しかしそれは読者を楽しませると言うより困惑に導いてしまった。前半の各話を独立したエピソードとして読んでいた時点の方が、纏めに入る後半に進んで以降よりも楽しかった。杉樽は及ばざるが如し。

No.1 6点
(2019/11/18 23:04登録)
幻冬舎の月刊誌PONTOONの1998年12月号からほぼ3か月に1回の割合で掲載された、ある死期の迫った大富豪の子孫をめぐる様々な欲望と企みをテーマとした連作短編7編に、書き下ろしの2編、というか最後の「うつろな縁」は全体をまとめる「章」と言うべきものを加えた作品です。最終章を除けば、他の部分を知らなくても一応独立した短編ミステリとして読める作りになっています。第2、3番目以外は、大富豪から依頼を受けて子孫の行方を追う児玉弁護士が一応名探偵役として登場します。さらにそれぞれのエピソードの後に、「依頼人との対話」という断章が挿入されています。
人工授精など、この作家らしい医学的なアイディアが使われていますが、特に3番目の『誕生日のない母』は複雑なことを考え出しています。このエピソードがむしろ全体構成の中では不要で、しかもその計画が実現されていないのには、不満を感じました。

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