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ミステリの祭典

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死者にかかってきた電話
ジョージ・スマイリーシリーズ

作家 ジョン・ル・カレ
出版日1965年01月
平均点5.00点
書評数3人

No.3 6点
(2019/12/08 17:49登録)
久々の再読ですが、クライマックスの霧の中の対決部分がなんとなく記憶の片隅に残っていたぐらいで、他は全く覚えていませんでした。『寒い国から帰ってきたスパイ』との関連性も、あれ、こんな感じだったっけというぐらいです。それにしても本作ではハードボイルド探偵並みにたっぷり活躍してくれるスマイリー、途中で上司の無理解に怒って退職願を出しているんですね。最後まで願いは撤回しません。でも『寒い国~』につながっていくということは…
その『寒い国~』でも謎解きやからくり要素はかなりあったわけですが、このデビュー作はそれ以上に謎解き要素に重点が置かれています。要するにスパイ小説の中でも、ル・カレは資質的に少なくとも初期には謎解き好きだったということでしょう。本作のからくりはわかりやすいものですが、死んだスパイ容疑者にかかってきた電話の謎の解決は鮮やかでした。

No.2 5点 クリスティ再読
(2018/07/29 23:35登録)
ただでさえハードル高めなル・カレのスパイ小説のハードルを、さらに上げるような真似はあまりしたくないのだが....評者本作初読なんだけども、これ「ティンカー・テイラー..」読む前に読んでおきたかったな。「寒い国から帰ってきたスパイ」も本作の後日譚みたいな作品だったりする。
本作はル・カレの処女作で、いきなりCWAのシルヴァーダガーをもらっている。注目度は最初から高かったわけだが、本作でのデビューはスマイリーだけじゃなくて、スマイリー三部作で活躍するピーター・ギラムやメンデル警部も本作がデビューだったりする。ル・カレ、話がかなり繋がっていて、スマイリー・サーガとでも言いたいくらいに人物があちこちに顔を出しているんだね。
密告によりスマイリーは外務省の役人の思想調査の面談をする。密告に根拠が無いことをスマイリーは確信して、友好的に別れたのだが、翌日、役人は自殺した。不当な疑惑を持たれたことを抗議する遺書があった....調査のために妻の元を訪れたスマイリーは、自殺した役人宛にかかってきた「朝の八時半を知らせるサービス電話」を受けて、役人の自殺に疑念を持つ...
こんな話なので「本格」扱いしたくなるのもわからないではない。東独のスパイ活動が当然背景にあるので「事件」はあるけども、その説明自体はスマイリーがちゃんとつけなければいけない。箇条書きにして検討するとか、ちょっと「ぽい」描写もある。けど評者の印象だと「警察小説」っぽいかな...捜査がかなり地道だからね。かなり地味な印象である。役人、というのを見ると松本清張風に「小官僚の抹殺」と捉えたら社会派っぽいのかもしれないし。未分化なミステリ、という感覚かな。
スマイリーの個人的背景がちゃんと描写されているとか、本作の読みどころは結構あるんだけども、処女作のせいか妙に凝った文章を書きたがっていて、そこらへんの印象はあまり良くはない。若書き、という感じはする。スマイリーが1900年代後半生れで、戦前から第二次大戦中にスパイとして活躍し、本作時点では半引退、という経歴アウトラインが描かれる。スマイリー三部作より少し年上の印象だ。ル・カレから見ると親世代に当たる主人公のわけで、ちょっとまだ手に余るキャラのように思われる。執筆時が29歳らしいが、この若さで親世代のインテリの肖像をちゃんと描くのって、かなりの難行の部類だと思うよ。

No.1 4点 mini
(2012/04/23 09:52登録)
明後日25日発売予定の早川ミステリマガジン6月号の特集は、”SPY ル・カレから外事警察まで”
「外事警察」ってのは麻生幾原作の和製公安スパイ小説らしいが、6月に映画が公開予定であり前宣伝てことだな
ミスマガでは以前にもやはり映画宣伝で東直己の特集組んでたけど、映画会社からいくらか入ってくるんでねえの?
それにしもさぁ、東直己といい今回の麻生幾といい、当サイトで作家登録されてるにも拘らず書評数が少ねえなぁ
和製警察小説は最近はまぁまぁ人気のようだが、和製ハードボイルドやスパイ小説って人気ねえなぁ

さてミスマガの特集テーマであるSPY、まずは露払いで御登場していただくはル・カレのスマイリーシリーズ第1作
私は未読だが第2作「高貴なる殺人」について某サイトでは作者唯一の本格派作品と有ったし、当サイトでもnukkamさんも本格派作品だと書評に書いておられます
実は第1作「死者にかかってきた電話」も殆ど本格派作品だと断定してもいいのではと思えるのである
たしかに背景には諜報活動が絡んでいるし、どうしてもスパイ小説に分類されてしまいがち
本格至上主義な読者の傾向として、一般的本格作品であっても背景に個人的動機ではなくて諜報活動が絡むのを好まないんだよなぁ
しかし黄金時代の本格にも背景に諜報活動が絡む話はあるんだよね、スパイが僅かでも出てくれば一律にスパイ小説だとは決め付け難い
「死者にかかってきた電話」の場合、冒頭のスマイリーが疑念を抱く場面、その後の捜査小説風な展開など、内容的にはスパイ小説よりも遥に本格派推理小説や警察小説に近い
こういう作風が最初期ル・カレの特徴なんだろう

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