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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.17点 書評数:894件

プロフィール| 書評

No.814 7点 世界でいちばん透きとおった物語
杉井光
(2023/07/20 18:41登録)
途中まではかなり面白い。表題の小説とはいったいどんなものだろうと興味がかきたたれます。
主人公もお話の中で翻弄され、この先どんな展開となるか全く読めない。
勿論だんだん話の目鼻がついてきて、結構などんでん返しとなります。
なるほどね。こんなお話であったのかとある意味納得できます。
皆さんの評価も高いのはうなずけますが、私の評価は多少低めです。
これっていくらでも結論が変えられそう。
私が作家だったら(才能がないので全く無理ですが)なんとおりかの結論を出しておいて、さらに読者を混乱させて---、なんて考えてしまいました。


No.813 8点 リア王密室に死す
梶龍雄
(2023/07/14 20:37登録)
こんな小説好きです。
梶氏は江戸川乱歩賞を取った透明な季節をリアルタイムで読んでから、全く忘れておりました。今回何十年ぶりかで氏の作品を読み、旧制高校時代の学生たちの生活が生き生きと描かれているのに感動しました。
私は世代が違いますが、この流れをくむ学校で青春を過ごしたため余計に心に響いたのかもしれません。
密室の謎もなかなかのものでした。
本格推理の中に人間を生き生きと描きたいという作者の姿勢は素晴らしい。ほかの作品も読んでいこう。


No.812 7点 サーカスから来た執達吏
夕木春央
(2023/07/10 19:50登録)
方舟を読んで作者のことを知り、本作品を購入。
なかなかしっかりした本格推理小説です。
探偵役のユリ子もキャラが立っています。
ある意味とんでもないお話なのですが、本格推理小説はもともととんでもないお話なのでその点ではまあ良いでしょう。
殺人事件も宝物の消失もあり、いずれもなかなか一筋縄ではいかないのですが、最終的には鮮やかに解決となります。
その方法についてはちょっと無理があるのですが、この程度ならぎりぎりよしとしたいですね。
方舟と比べるとちょっと落ちる。期待が強かった分多少評価が落ちてしまいました。
こちらを先に読んだらもうちょっと評価が上がったかもしれない。


No.811 7点 急行霧島: それぞれの昭和
山本巧次
(2023/07/09 10:17登録)
山本氏の小説始めて読みました。
いわゆる推理小説風ではなく昭和の人々の描写と当時の社会風景とともに、戦争で行方不明となった父親に会いに行く娘、良家のお嬢様の話、障害事件の犯人と捜査官、スリと鉄道公安官などが色々まじりあって、なかなか楽しい。
これだけ話がいりまじると普通は混乱してしまうのですが、上手に描き分けてあり読みやすい。
さらに鹿児島から東京まで24時以上かかって走る汽車に引かれた急行霧島の情緒も素敵です。
子供の頃に汽車に乗って旅した経験がある私にとっては懐かしい思い出も交じりました。
警察や鉄道公安官に追われる犯人もそんなに悪いやつではなく、読後感がとても良い。
氏は鉄道小説をほかにも書いておられるので読んでみようかな。


No.810 7点 密室狂乱時代の殺人 絶海の孤島と七つのトリック
鴨崎暖炉
(2023/06/28 16:16登録)
前作より相当良いと思います。相変わらず登場人物は作者のトリックの駒であり、名前もダジャレ風。これは名前を覚えるのが苦手な私には都合がよいのです。
これ程たくさんのトリックを考えつきさらにそれを1作に詰め込んでしまうという離れ業はなかなかできるものではないでしょう。
このうちの2-3のトリックで、もっと推理過程を楽しむようにしたらさぞ面白い本格推理小説ができそうですが。
まあそれをしないのが作者のすごいところかもしれません。
勿論トリックのかなりのものが全く無理そうではありますが、こんな大掛かりな新しいトリックを詰め込み、途中の推理はほとんどなしですぐ回答となる。まるでトリックの問題集と回答書みたいなところは否めませんが、前作よりは登場人物の機微が描かれており、私自身も作風になれたこともあり、かなり楽しめました。
次作はどうするのかなあ。トリックネタ切れで終了にならないように期待しております。


No.809 6点 刀と傘 明治京洛推理帖
伊吹亜門
(2023/06/24 19:52登録)
明治維新ごろの時代設定で、江藤新平と尾張藩出身の男がたんていやくの推理小説です。
本格ミステリー大賞受賞とのことで、確かにしっかりした本格物です。
私はこういったものが好きなのですが、この作品はあまりピンときませんでした。
多分精緻な舞台考証がしてあり、不可解事件として成り立っているのだと思うのですが、文章だけだとどうもはっきりしたシチュエーションが見えてきません。図があるとよかった。
さらに登場人物がかなりあっさりと死んでしまったり、全く関係ないのに身代わりとなって罪をかぶってもよいと言ったり。当時のお侍さんが武士道とは死こととみつけたりという方がいたのは確かだとは思いますが、それにしても従容として受けなくてもよい罪を受け入れてしまうのは現代の感覚からすると違和感がぬぐえません。
そういった感じが強かったためあまりよい評価となりませんでした。


No.808 9点 方舟
夕木春央
(2023/06/17 06:59登録)
久しぶりに本格ミステリーらしい、しかも精緻でできの良い作品に出合えました。
このサイトの評判が高いのも当然で、本格物が好きなら読んで損はないと思います。
まずとんでもないシチュエーションが比較的無理なく設定されて、これは本格推理小説の挑戦ではないかと、興味深々となりました。
ホームズ役もワトソン役もちゃんと出てきて、閉鎖空間での脱出と密室殺人という二つの要素があまり無理なく語られるので、途中でやめられなくなり一気に読み進むこととなりました。
このお話は本格物でなく冒険小説としてだって成立しそうですが、本書は立派な本格物としてのお話となっています。
なかなか良い推理小説でこれで一件落着と思っていたら、最後に見事にやられました。これ程見事にやられたのは久しぶりです。
1点減点は動機の点でやや納得しにくかったことです。


No.807 6点 希望が死んだ夜に
天祢涼
(2023/06/10 06:48登録)
最初はひどく生意気な少女が出てきてかなり不快なのですが、読み進むといろいろなシチュエーションの転換があり、お話が全然違ってきます。
作者の作品ではキョウカンカクを読んだのみですが、それとはまったく異なる内容で、ちょっとびっくりしました。
作者はいろいろなことがかける才能があると思います。
このサイトの評判もなかなか高いのですが、私は好き嫌いでいうとあまり好みではなかったので、評価はこの程度です。


No.806 4点 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
桜庭一樹
(2023/06/04 07:45登録)
これは私には合いませんでした。
これってめちゃくちゃなお話です。
なんで親にばらばらに切り刻まれて殺されなければならないのか。全くの必然性がありませんが、幻想に近いストーリーである意味ごまかしているのが目につき出すといやになります。
勿論青春小説の範囲ではない。残酷な話です。
男性の名前なのに絶対女性にしか書けない感覚も、好き嫌いがわかれるかもしれません。
始めてすぐやめよう時間の無駄と思ったが、読んでいくと何とか最後までは読み通すことはできました。でも短くて良かった。長いととても読み通せません。
こんな感覚はわたしが年をとり世間常識的な殻がしっかりついてしまったからかもしれません。


No.805 6点 能面検事
中山七里
(2023/05/29 20:09登録)
ミステリーには検事など司法の人間が主人公となることはままありますが、実際の司法の世界がどんなものかといったことに関してはあまり述べられていないように思います。
中山氏はこれ程の多作家でありながら、こういった司法世界に関しても内部に立ち入った見解があるようで、なかなか興味深いキャラクターを生み出ました。
全く氏の多才ぶりには感心するとともにこれ程の作品を量産してあまりクオリティーが落ちないのは驚異的ですね。
続編も読んでみます。


No.804 5点 記憶の中の誘拐 赤い博物館
大山誠一郎
(2023/05/28 17:45登録)
前作で次作を期待したのですが、今回はいまいちでした。
本格物が好きなものにとってしっかり楽しめるシチュエーションではあるのですが、推理があまりに強引でご都合主義のように感じたのです。
勿論警察がしっかり捜査しても解決できなかった事件を報告を読んだだけで解決に導いてしまうのですから、普通に行けば無理に決まっているではありますが。




No.803 7点 クスノキの番人
東野圭吾
(2023/05/21 09:08登録)
 東野氏が時々発表する推理小説ではない作品の一つです。
相変わらず上手な語り口なのでスラスラと読めます。
内容は結構地味風なのですが、興味深いところもあり、私は好きです。
読後感もよい。
最近の作品は読ませ方がうまいだけの感じがしないでもなかったのですが、これは氏の優しさが伝わってくる良い作品と思います。


No.802 5点 神酒クリニックで乾杯を
知念実希人
(2023/03/26 20:22登録)
 現実味がかなり少ない軽いお話でした。はっきり言って漫画みたいな登場人物です。キャラが立っているといえばたっています。
 作者は本格物や医療もののホープとして期待していますが、お医者さんとこのところの多作からみて忙しすぎるのかな。ちょっと手抜きして売れそうなお話をこしらえたようなところがあります。
 一応は最終的にどんでん返しみたいなところもあるのですが、安易な感じは免れません。
 本格推理は現実味と奇想天外なトリックを組み合わせねばならず、さらに以前あったものは使えないのですから、当然手詰まりとなります。手の込んだ新作を作るのは大変と思いますが、作者の才能を信じてゆっくり待ちますので。


No.801 7点 永遠についての証明
岩井圭也
(2023/03/11 07:48登録)
 数学についてのお話です。難しい法則などが出てきますが、こんなことは知らなくても問題なく読めました。数学者はどんなことを考えているのかが、おぼろげながらわかりました。
 これを読むと何か数学ってファンタジーに近い学問なのかと思わせるところがありましたね。
 私事ですが、高校まで数学が一番得意だったのですが、高校の数学の先生が数学は文科系だ、解法を暗記するのだから、と言われがっくり来たことを思い出しました。
 数学なんてとっくに縁を切った生活をしているものにとっても結構面白く読めましたよ。
 


No.800 5点 異邦人(いりびと)
原田マハ
(2023/03/05 08:30登録)
 前半ぐらいまでは京都の風情を感じてとてもよい。川端康成の古都を感じさせると解説にあったが、私はむしろ細雪かなと思ってしまう素晴らしい感性が感じられました。
 物語としては奔放な母親と娘が出てきます。娘のご主人となった男はこれらに振り回されて大変な目にあいつつも頑張るのです。ことに娘はまれな審美力があり美がすべての大金持ち令嬢。美のためなら何でもやってしまう。家がつぶれようがだんながむちゃくちゃになろうが構わない。旦那は平身低頭頑張るのですが、ついにはほぼ破滅の道へと転落する。でも彼女は全然平気。
 物語は後半になりかなり乱れてきて、最終的に意外な結末となります。これを推理小説ならどんでん返しとするのでしょうが、本作品は伏線も何もなく突然いろいろな経歴が暴露されます。はっきり言ってこんな経歴となるような性格の登場人物ではないので唖然とするよりあきれるといったほうがよい感じでした。前半だけなら素晴らしいのですが残念です。
 作者は娘を理想の女性としていると解説にありましたが、もしそうなら作者とはお近づきにはならない方がよさそうです。


No.799 4点 11文字の檻
青崎有吾
(2023/03/01 22:54登録)
 本作品集は推理小説風のものもあるが、私には理解できにくいお話がかなりありました。
 後ろに作品の背景があるのでそれを読むとああこんなことかと思うものもありましたが、読んでいる間はほとんど意味不明なものもあります。
 たぶん私の感覚が古いのでしょうが、全然知らない{わたもて」を種に書いたものなどはちんぷんかんぷんでした。
 青崎氏は平成のエラリークイーンなどと言われるほど精緻な推理が魅力だと思っていますが、短編となると精緻な推理力を発揮するスペースがないので、魅力的な推理が発揮されませんでした。推理小説風なのだがとんでもないトリックだけの作品もあり、残念ながら全くの期待外れでした。


No.798 7点 濱地健三郎の幽たる事件簿
有栖川有栖
(2023/02/20 21:43登録)
 有栖川氏のホラーもの(あんまり怖くないからオカルト的というべきでしょうか)は結構おもしろい。
 登場人物が抜群の能力を持っているのではないが、しばしば相当な超能力者らしい力も発揮する。本格推理ではないから理論的に完全に帰結するわけではないのですが、何となく納得してしまうのは作者の力量でしょうか。
 こういった作品も時々書いていってほしいものです。
 
 


No.797 6点 D坂の殺人事件
江戸川乱歩
(2023/01/30 19:40登録)
 江戸川乱歩と言えば子供の頃(60年ぐらい前)怪人二十面相を読んだ(当時テレビでもやっていたのです)記憶が強くその時の名探偵明智小五郎はかっこよくスマートな印象でした。ところがこの小品集では金田一耕助風の容貌であったりしてだいぶんイメージが違っていました。
 時代が古い作品ですから、当然社会環境なども違い違和感があるところもありますが、私にとってはまああまり問題はなかった。
 短編であることも影響しているとも思いますが、小説が意外なトリックのみで成り立っています。本格小説は当然こういった風なのですが、当時の多くの読者からばかばかしい子供だましとか、人間が書けていないとか批評されて、一時衰退。その後の新本格の登場を待たねばならなかったのも何となくわかるような気がしました。


No.796 6点 儚い羊たちの祝宴
米澤穂信
(2023/01/23 19:13登録)
 帯には座布団10枚級の大どんでん返し5連発とありますが、これが大どんでん返しでしょうかねえ。
 作者ではなく出版社にちょっとだまされた感があります。
 米澤氏は才能のある作家さんですので駄作ではありません。私は作者の古典部シリーズなどは大好きなのですが、インシテミルなど独特の毒を待った作品もありこちらはあまり好みではありません。
 本作品は毒を持った方に属するものだとは思いますが、この程度ならまあ何とかといった感じでした。
 


No.795 4点 逆転美人
藤崎翔
(2023/01/18 21:42登録)
 このサイトでとても高い評価をされている方がいるのに、このような評価するのはどうかとも思いますが、これが素直な私の感想です。
 はじめのうちは文章が悪く内容が暗くて読むのがやや苦痛でした。伝説級のトリックと帯に書かれていたので、何とか読み通しましょうと読んでいるうちにまあ読むのが苦痛ということはなくなって、最後まで読めました。
 うーん確かにこのトリックは全く分かりませんでしたが、私にとってはトリックに感心するよりご苦労様なことですと言った印象が強かった。
 本格推理のトリックは私自身好むところなのですが、それはあくまでもこんな方法で一見不可能なことをやったのかとか、あーうまくやられたわからんかったと感心するトリックなのです。 
 本書のトリックは作者にとって実に大変な苦労のもとに作られていると思いますが、だからどんでんがえしとなるとか、不可能犯罪の解決になるといったものではないように思えてしまうため、私にとってはご苦労様といった印象になってしまいました。

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