makomakoさんの登録情報 | |
---|---|
平均点:6.17点 | 書評数:886件 |
No.806 | 4点 | 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 桜庭一樹 |
(2023/06/04 07:45登録) これは私には合いませんでした。 これってめちゃくちゃなお話です。 なんで親にばらばらに切り刻まれて殺されなければならないのか。全くの必然性がありませんが、幻想に近いストーリーである意味ごまかしているのが目につき出すといやになります。 勿論青春小説の範囲ではない。残酷な話です。 男性の名前なのに絶対女性にしか書けない感覚も、好き嫌いがわかれるかもしれません。 始めてすぐやめよう時間の無駄と思ったが、読んでいくと何とか最後までは読み通すことはできました。でも短くて良かった。長いととても読み通せません。 こんな感覚はわたしが年をとり世間常識的な殻がしっかりついてしまったからかもしれません。 |
No.805 | 6点 | 能面検事 中山七里 |
(2023/05/29 20:09登録) ミステリーには検事など司法の人間が主人公となることはままありますが、実際の司法の世界がどんなものかといったことに関してはあまり述べられていないように思います。 中山氏はこれ程の多作家でありながら、こういった司法世界に関しても内部に立ち入った見解があるようで、なかなか興味深いキャラクターを生み出ました。 全く氏の多才ぶりには感心するとともにこれ程の作品を量産してあまりクオリティーが落ちないのは驚異的ですね。 続編も読んでみます。 |
No.804 | 5点 | 記憶の中の誘拐 赤い博物館 大山誠一郎 |
(2023/05/28 17:45登録) 前作で次作を期待したのですが、今回はいまいちでした。 本格物が好きなものにとってしっかり楽しめるシチュエーションではあるのですが、推理があまりに強引でご都合主義のように感じたのです。 勿論警察がしっかり捜査しても解決できなかった事件を報告を読んだだけで解決に導いてしまうのですから、普通に行けば無理に決まっているではありますが。 |
No.803 | 7点 | クスノキの番人 東野圭吾 |
(2023/05/21 09:08登録) 東野氏が時々発表する推理小説ではない作品の一つです。 相変わらず上手な語り口なのでスラスラと読めます。 内容は結構地味風なのですが、興味深いところもあり、私は好きです。 読後感もよい。 最近の作品は読ませ方がうまいだけの感じがしないでもなかったのですが、これは氏の優しさが伝わってくる良い作品と思います。 |
No.802 | 5点 | 神酒クリニックで乾杯を 知念実希人 |
(2023/03/26 20:22登録) 現実味がかなり少ない軽いお話でした。はっきり言って漫画みたいな登場人物です。キャラが立っているといえばたっています。 作者は本格物や医療もののホープとして期待していますが、お医者さんとこのところの多作からみて忙しすぎるのかな。ちょっと手抜きして売れそうなお話をこしらえたようなところがあります。 一応は最終的にどんでん返しみたいなところもあるのですが、安易な感じは免れません。 本格推理は現実味と奇想天外なトリックを組み合わせねばならず、さらに以前あったものは使えないのですから、当然手詰まりとなります。手の込んだ新作を作るのは大変と思いますが、作者の才能を信じてゆっくり待ちますので。 |
No.801 | 7点 | 永遠についての証明 岩井圭也 |
(2023/03/11 07:48登録) 数学についてのお話です。難しい法則などが出てきますが、こんなことは知らなくても問題なく読めました。数学者はどんなことを考えているのかが、おぼろげながらわかりました。 これを読むと何か数学ってファンタジーに近い学問なのかと思わせるところがありましたね。 私事ですが、高校まで数学が一番得意だったのですが、高校の数学の先生が数学は文科系だ、解法を暗記するのだから、と言われがっくり来たことを思い出しました。 数学なんてとっくに縁を切った生活をしているものにとっても結構面白く読めましたよ。 |
No.800 | 5点 | 異邦人(いりびと) 原田マハ |
(2023/03/05 08:30登録) 前半ぐらいまでは京都の風情を感じてとてもよい。川端康成の古都を感じさせると解説にあったが、私はむしろ細雪かなと思ってしまう素晴らしい感性が感じられました。 物語としては奔放な母親と娘が出てきます。娘のご主人となった男はこれらに振り回されて大変な目にあいつつも頑張るのです。ことに娘はまれな審美力があり美がすべての大金持ち令嬢。美のためなら何でもやってしまう。家がつぶれようがだんながむちゃくちゃになろうが構わない。旦那は平身低頭頑張るのですが、ついにはほぼ破滅の道へと転落する。でも彼女は全然平気。 物語は後半になりかなり乱れてきて、最終的に意外な結末となります。これを推理小説ならどんでん返しとするのでしょうが、本作品は伏線も何もなく突然いろいろな経歴が暴露されます。はっきり言ってこんな経歴となるような性格の登場人物ではないので唖然とするよりあきれるといったほうがよい感じでした。前半だけなら素晴らしいのですが残念です。 作者は娘を理想の女性としていると解説にありましたが、もしそうなら作者とはお近づきにはならない方がよさそうです。 |
No.799 | 4点 | 11文字の檻 青崎有吾 |
(2023/03/01 22:54登録) 本作品集は推理小説風のものもあるが、私には理解できにくいお話がかなりありました。 後ろに作品の背景があるのでそれを読むとああこんなことかと思うものもありましたが、読んでいる間はほとんど意味不明なものもあります。 たぶん私の感覚が古いのでしょうが、全然知らない{わたもて」を種に書いたものなどはちんぷんかんぷんでした。 青崎氏は平成のエラリークイーンなどと言われるほど精緻な推理が魅力だと思っていますが、短編となると精緻な推理力を発揮するスペースがないので、魅力的な推理が発揮されませんでした。推理小説風なのだがとんでもないトリックだけの作品もあり、残念ながら全くの期待外れでした。 |
No.798 | 7点 | 濱地健三郎の幽たる事件簿 有栖川有栖 |
(2023/02/20 21:43登録) 有栖川氏のホラーもの(あんまり怖くないからオカルト的というべきでしょうか)は結構おもしろい。 登場人物が抜群の能力を持っているのではないが、しばしば相当な超能力者らしい力も発揮する。本格推理ではないから理論的に完全に帰結するわけではないのですが、何となく納得してしまうのは作者の力量でしょうか。 こういった作品も時々書いていってほしいものです。 |
No.797 | 6点 | D坂の殺人事件 江戸川乱歩 |
(2023/01/30 19:40登録) 江戸川乱歩と言えば子供の頃(60年ぐらい前)怪人二十面相を読んだ(当時テレビでもやっていたのです)記憶が強くその時の名探偵明智小五郎はかっこよくスマートな印象でした。ところがこの小品集では金田一耕助風の容貌であったりしてだいぶんイメージが違っていました。 時代が古い作品ですから、当然社会環境なども違い違和感があるところもありますが、私にとってはまああまり問題はなかった。 短編であることも影響しているとも思いますが、小説が意外なトリックのみで成り立っています。本格小説は当然こういった風なのですが、当時の多くの読者からばかばかしい子供だましとか、人間が書けていないとか批評されて、一時衰退。その後の新本格の登場を待たねばならなかったのも何となくわかるような気がしました。 |
No.796 | 6点 | 儚い羊たちの祝宴 米澤穂信 |
(2023/01/23 19:13登録) 帯には座布団10枚級の大どんでん返し5連発とありますが、これが大どんでん返しでしょうかねえ。 作者ではなく出版社にちょっとだまされた感があります。 米澤氏は才能のある作家さんですので駄作ではありません。私は作者の古典部シリーズなどは大好きなのですが、インシテミルなど独特の毒を待った作品もありこちらはあまり好みではありません。 本作品は毒を持った方に属するものだとは思いますが、この程度ならまあ何とかといった感じでした。 |
No.795 | 4点 | 逆転美人 藤崎翔 |
(2023/01/18 21:42登録) このサイトでとても高い評価をされている方がいるのに、このような評価するのはどうかとも思いますが、これが素直な私の感想です。 はじめのうちは文章が悪く内容が暗くて読むのがやや苦痛でした。伝説級のトリックと帯に書かれていたので、何とか読み通しましょうと読んでいるうちにまあ読むのが苦痛ということはなくなって、最後まで読めました。 うーん確かにこのトリックは全く分かりませんでしたが、私にとってはトリックに感心するよりご苦労様なことですと言った印象が強かった。 本格推理のトリックは私自身好むところなのですが、それはあくまでもこんな方法で一見不可能なことをやったのかとか、あーうまくやられたわからんかったと感心するトリックなのです。 本書のトリックは作者にとって実に大変な苦労のもとに作られていると思いますが、だからどんでんがえしとなるとか、不可能犯罪の解決になるといったものではないように思えてしまうため、私にとってはご苦労様といった印象になってしまいました。 |
No.794 | 3点 | まほり 高田大介 |
(2023/01/12 20:26登録) 民俗学的を主体とした推理小説は好みなので、楽しみにして読み始めました。 確かに民俗学のお話ではあります。 さすがというか学者さんが書いたため文献の読み方や統計的分類法、文献そのものの客観性を高めるための方法など事細かく記載されており、あたかも研究論文の書き方みたいな内容が延々と続きます。大学の講義みたいです。 これで私は完全にいやになってしまいました。 さらに研究内容があまりに暗く残酷であり、読み続けるのに骨が折れたというのが正直な感想です。 今まで読んだ民俗学などをベースとした推理小説なんかでは、多くが変わった意見を述べている文献や学者の意見をうまく取り入れて探偵が推理するといったところが面白いのですが、本書を読むとそんなのは学術的手法ではなく単なる空想(妄想)であるようです。 空想だから感覚的に取り入れやすいのですが、現実の学問をそのままやられると、ちょっとうんざりしてしまいます。 |
No.793 | 7点 | medium 霊媒探偵城塚翡翠 相沢沙呼 |
(2022/12/11 13:47登録) 表装を見ると本格好きがはたして手に取るか心配なほどの派手で漫画チックにに思えました。霊媒探偵だしなあ。 とんでもないものかもしれないと思いつつ読むと、かわいい女の子が霊媒ではあるがそれほどとんでもないお話ではなさそう。あらかじめ答えがわかってしまうので、一種の倒叙物をアレンジしたものなのかなどと思ってしまった。 見事に一杯食わされました。ここまで騙されたのもなかなかないなあ。 |
No.792 | 5点 | 倒産続きの彼女 新川帆立 |
(2022/12/06 20:24登録) お話として読んでいく分にはもちょっと高い評価でもよいと思いますが、主人公が全く好みでない。 作者は東大出の弁護士さんだったようだが、そういったエリートにありがちな嫌味な感じが漂っている。女主人公は苦労して、親は自殺してでも頑張って弁護士になり(すごいよね)おばあちゃんとくらしている。 外見的にはとても素敵なで、全然エリート意識がないようにふるまっているが、心の中はこの人嫌い、こんなやつの弱点はないかと考えてしまう。めちゃくちゃにいやらしい。 作者がこんなメンタリティーなんでしょうかね。 |
No.791 | 8点 | 仕掛島 東川篤哉 |
(2022/11/06 07:49登録) 館島の続編ともいえるお話です。作者はユーモアミステリーの旗手として知られており、もちろんこの作品でもユーモアセンスたっぷりですが、館島と同様がっちりした本格物です。 はじめは従来のユーモアミステリーの色が濃いのですが、瀬戸内海の孤島で起きる不可解な殺人事件が20年以上前の事件と絡み合って、読み進むにつれ興味深い展開となります。 最終的には見事などんでん返し。 お話はプロローグからすべて意味があり、しかもきちんと収まります。 館島は私見では作者の最高傑作と思っていますが、それに肩を並べる素晴らしい作品でした。 表装の絵もよいですね。いかにも奇怪な島でこれから本格ミステリーが始まるぞっていった感じがよく出ています。 |
No.790 | 6点 | 殺しへのライン アンソニー・ホロヴィッツ |
(2022/10/29 07:23登録) ホーソーンシリーズの3作目です。勿論今回も隠された謎と不可解な事件を取り扱う小説。 探偵と作者の分身たるホロビッツが島で行われる文芸フェスティバルに参加する。フェスにはそこにいろいろな人が集まり、それぞれのキャラクターや立場などが紹介されていく。事件はなかなか起こらずちょっと退屈。 そうしているうち、にはなもちならない大金持ちの夫婦が殺される。ようやくお話が面白くなります。今回もホーソーンの隠された過去が少し現れます。 犯人が指摘されこれでよいのかと思っているうちに何となく終了?。ページにまだ残りがある。こんなんじゃないよねと思っているとやはりどんでん返しがあります。 推理小説としては謎が一部残ったままで終了。ホーソーンの過去も彼が何をしたのかももう一つはっきりしません。 多分次作へのおたのしみといったところでしょうが、ちょっとすっきりしないな。 |
No.789 | 7点 | Iの悲劇 米澤穂信 |
(2022/10/09 08:10登録) 本の題名から人里離れた村に新しい住人が移って来て連続殺人が起きて――、と思って読み始めましたが、全然違ったお話でした。 以下ちょっとだけネタバレ。 一種の連作ものですが殺人などの血なまぐさい事件は全く起きません。 まじめな役人とちょっととぼけた新人女性が主として動き回り、その上司はやる気がなさそうだが突然鋭いところを見せる。 役人さんは本当に頑張って仕事をするが、どうしてもうまくいかず移住者は次々と去っていく。 まさにそして誰もいなくなった風なのです。 最終章はちょっとびっくり。完全にやられました。 |
No.788 | 6点 | QED 東照宮の怨 高田崇史 |
(2022/09/11 08:53登録) 久しぶりにこのシリーズを読みなおしています。 薀蓄が好きな私は殺人のお話などはすっかり忘れてタタルの薀蓄はまあおぼえていました。 結局はこういった薀蓄が楽しみで読んでいたということになるのかもしれません。 殺人の動機も犯人もすっかり忘れていたが、初読当時にもこれで殺人の動機となったとするのはちょっと無理があると思ったことだけは覚えていました。 意外な犯人と意外な動機そして歴史からくる謎など魅力的な内容ですが、それを結びつけるにはやはりある程度の無理があることは否めないのでしょう。 |
No.787 | 7点 | QED 六歌仙の暗号 高田崇史 |
(2022/09/05 18:51登録) QEDシリーズ第2弾。 再読です。初めて読んだときも感じたのですが、このお話は作者が第1作よりさらに良い作品をといった努力がしっかり積み込まれた、まさに力作です。 こんな話は長く続けられそうにないなと思っていた時にこういった力作が出て感心したものでした。そしてこれが私が高田氏のファンとなっていった原点でもあります。 薀蓄がうっとうしい人にはまったく向きませんが、好きな人にはなかなかの魅力なのです。 |