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ミステリの祭典

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復讐は合法的に

作家 三日市零
出版日2023年07月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 7点 ミステリーオタク
(2023/12/21 22:01登録)
 昨年の「このミス」大賞の最終候補にまで残ったという4話からなる短編集。

《女神と負け犬》
 本書のタイトルとカバーからドロドロした内容を予想していたが、意外にもライトタッチな文調で実に読みやすい。第一話からなかなか痛快。

《副業》
 結局どうなる?という感は残ったものの巧みな展開に引き込まれて読み止まらず。

《潜入》
 目新しいトリックではないが、たまに(何年かに一度ぐらい)こういうのを作りのいい短編で読むのは悪くない。

《同類》
 IT関連の話はよく解らないところもあったが(ていうか全部理解できるのはかなりマニアックな人だけでは?)強力な敵との戦いのストーリーは十分楽しめた。
 

 ミステリとして図抜けたものはなかったかもしれないが、物語の構成力、そして文章そのものにも女性作家のデビュー作とは思えない程の完成度の高さを感じた。(「いい」が全て「良い」と書かれているのには少し引っ掛かったが)
 月並みな誉め言葉だが「今後が楽しみ」。

 さて、来年3月に綾辻行人の「十角館の殺人」が実写映像化されることが決まり、関連サイトではファン達の「一体どうやって?」という声で騒然としているが、それ以上に実写化が難しいのが本短編集ではないかと思う。何しろ主人公を演じられる俳優が存在するだろうか。(「宝塚」とかにならいるかな?)

No.2 5点 makomako
(2023/09/19 20:04登録)
4つの話の連作です。
このミスの隠し玉とのこと。
復讐を手伝う稼業のお話なんてちょっと陰湿で、性格が悪そうな感じです。
実際最初の話などやっぱりなあというところがあり、復讐が成功してもあまり良い気分になれませんでした。
ところが読んでいくとこんな設定にも慣れてくるのか、自分の性格が悪くなってくるのか、違和感は感じなくなりそれなりの面白く読めました。
いかにも次作ができそうな感じなのですが、もし出ても読むかどうかは今のところ不明です。

No.1 6点 みりん
(2023/07/07 00:43登録)
第21回「このミステリーがすごい」は「名探偵のままでいて」や「レモンと殺人鬼」が受賞したそうで(両方とも未読…)それらの作品には及ばなかったものの隠し玉として書籍化されることになったのが本作。

主人公の仕事や依頼の内容などがスピーディに展開される全体的に無駄がない構成。
【ネタバレします】


「女神と負け犬」では2年間彼氏に騙されたOLが依頼人。エリスの違法スレスレでどこかユーモアのある数々の嫌がらせを楽しめる。ラストのやりとりは痛快。
「副業」では"法律では問えない小悪党"相手にどうやって復讐するのか。そして小悪党の行なっている副業とは何か。ラストのエリスのセリフに痺れます。
「潜入」では小学四年生にしてエリスの秘書メープルの活躍が見れます。真相はなかなかアクロバティック。しかしこのアリスとメープルもなかなか複雑な関係そうだ…
「同類」ではいわゆる暴露系インフルエンサーの正体を推理する内容である。"同類"を追いつめる中でエリスなりの復讐への捉え方や仕事の流儀などが最後にわかる良い構成となっている。

シリーズならないかな。短編集ということでプロットはちょっと小粒なので、ぜひ長編を読んでみたい。
エリスとメープルの関係性とかも明かされるといいな
そしてエリスが好き。××だけど…いや××の方が良いか…

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