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ミステリの祭典

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アリバイの唄
夜明日出夫シリーズ

作家 笹沢左保
出版日1990年07月
平均点5.62点
書評数8人

No.8 6点 ことは
(2024/05/26 12:11登録)
「有栖川有栖選 必読! Selection」シリーズのカバーがなかなかよいので、1冊選択してみた。
これは、ちょっと事前情報を入れただけで、余計な気付きにつながる作品だ。なので、明確なネタバレはしないけど、未読の人は下記を読まないほうがいいかも。
1990年の発表の作品なので、笹沢左保が新本格をふまえたうえで書いた作品ととらえるのが適当で、そう考えると、メインの趣向はいかにも新本格的だ。
読み口は軽快で、軽快さを優先させるためか、情景描写/心理描写には深入りしていない。そのため作品全体の印象はあっさりしている。事件が発生するのがかなり遅いし、質疑応答や試行錯誤も少ないので、読み終わって記憶に残るのは、メインの趣向だ。あえて、メインの趣向に全振りしたのかもしれない。
あと、タイトルはどうなのかな。タイトルと事件の様相から犯人わかっちゃうよ。

No.7 7点 斎藤警部
(2024/02/29 23:30登録)
元刑事の口癖は「ベイビー」(笑)。 彼の苗字は「夜明」。 まさか、その珍姓に引っ掛けた前代未聞の叙述アリバイトリックでも登場するのではアルマイナ、と半笑いで余計な緊張!
退官し今はタクシー運転手の「夜明」が東京で乗せた、激しい喧嘩真っ最中のわけあり男女。その女の方が愛知で屍体となり発見される。 一方、数日後に上野から逗子まで運んだ女性の訪問先には、まさかの「夜明の初恋の人」が住んでいた! こりゃ夜明元刑事、自身の事件ってとこか。 さてこの偶然、ミステリ的にサホリンはどう落とし前を付けるつもりか。。


“崩しようもない完璧なアリバイがある。それが、いまの夜明には唯一最大にして、何ともやりきれない希望といえそうであった。”


あまりにモノあり気な早朝の電話連絡。 鉄壁のようなチラリズムのような、心惹かれるアリバイ夜話。 大トリック物理的側面の核心を掠る、実に際どい地の文もあった。 ”○○○の○” なる、まるで初恋の帰り道のように儚いようで儚くないミスディレクション兼ちいさな手掛かり(?)もクイッと引っ掛かって来ましたよ。

島田一男ばりの粋な言葉の投げ合い、島田荘司ばりの大規模バカトリックに、ちょいと小粋で(?)おバカな手掛かりまで。。 まるで長い電報文の様な、口頭ダイイングメッセージらしきもの、こいつもなかなかのおバカさん。 第一この表題はある意味バカタイトルと言っても良いのかな? ふむ、本作はまるで「バカ」のタペストリーだ。 しかし、そのタイトルの意味するものが炸裂するラストシーンはどうしたって泣ける。 つか泣き笑い。 結構重い人間ドラマは後付けの装飾だと思う。 それで良い。 この本は面白い。

「正解だぜ、ベイビー」

No.6 6点 ねここねこ男爵
(2024/02/10 22:05登録)
ネタバレ気味です。

おそらくミステリ史上屈指であろうほど金のかかったトリック。
読んでるときに思いついてはいたものの、「建物の外を見せないならワンチャンあるけど見ちゃってるからなぁ…」と却下。まさかそれを金の力で解決するとは思いませんでしたw
この作者らしく非常にテンポが良く読みやすいし、アリバイ自体は非常に強固。楽しく読めました。

No.5 5点 makomako
(2023/08/26 06:54登録)
とにかく多作の作者の作品らしく、文章がいかにも説明風で必要なことは書きましたよといった乾燥した感覚でした。
分の推敲などはほとんど行わなくても次々とかけてしまうのでしょうね、きっと。
これがちょっといやになって初めのほうは全くよろしくなかったが、トリックの大がかりなこと。この辺りとなると俄然面白い。
バカミスとの評もあるが、有栖川氏が推す意味も分かる気がしました。

No.4 5点 ボナンザ
(2023/07/11 19:15登録)
ある意味笹沢のミステリの中で最も有名なシリーズ。バカミスの類だが、それを感じさせない疾走感もよし。

No.3 6点 nukkam
(2015/08/29 08:54登録)
(ネタバレなしです) 1990年発表の夜明日出夫(よあけひでお)シリーズ第1作の本格派推理小説です。容疑者は2人しかおらず、犯人当てに挑戦する謎解きではなくアリバイ崩しのプロットになっています。発表した時代は新本格派推理小説の全盛期時代で、1960年代に自身が新本格派を標榜していた笹沢としては先輩作家の意地を見せたかったのかもしれません。講談社文庫版では「前代未聞の大トリック」と宣伝していますがまさにトリック一発に全てを賭けたような作品です。感心するよりも呆れる読者の方が多いかもしれませんが、よくもここまでと唸りたくなるような手の込んだトリックが使われています。

No.2 5点 江守森江
(2010/12/15 21:14登録)
先週の土曜ワイド劇場は、もはや名物シリーズな「タクシードライバーの推理日誌」だった。
作者が没して早ウン年で、山村美紗サスペンスと並ぶドラマが一人歩きした代表的シリーズになっている(安定して視聴率が良いのだから作者も草葉の陰で喜んでいるだろう)
図書館の書庫にあったのでおさらいを兼ねて読んでみたが、本作は初期にドラマ化されたのを観たような気がした(作品を混同している可能性もあり)
一人歩きした最近のドラマではシリーズの特色であるアリバイ崩しすらないタクシー運転手の人情記になっているが、冒頭での乗客との掛け合いなど定番な笑いに慣れた身にはドラマの方が楽しい。
※書評よりコレが書きたかった!
タイガーマスクの必殺技は「タイガー・ドライバー」
渡瀬恒彦の必殺技は「タクシー“ヅラ”イバー」オデコのテカリに目が殺られる。

No.1 5点 kanamori
(2010/09/24 17:39登録)
元警視庁捜査一課刑事のタクシー運転手・夜明日出夫シリーズの第1作。
このシリーズは、毎回トンデモ系のアリバイ・トリックを見せてくれますが、アリバイ・トリックのために何億円も支出するという犯人は前代未聞だろう、しかも、あの程度の殺人動機で。費用対効果を考えるとバカミスと言っていい作品。
探偵役のニヒルでストイックな造形は作者の定番ながら、木枯し紋次郎がタクシー運転手をやっているように思えて笑える。

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