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ミステリの祭典

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清里高原殺人別荘

作家 梶龍雄
出版日1988年11月
平均点7.22点
書評数9人

No.9 6点 ことは
(2024/11/05 00:02登録)
メインのアイディアはなかなか好み。いや、これは発表された新本格初期の時代に、もっと評判になっていてもおかしくない。
とはいえ、すごく面白いかといえば、そこまでではないかな。
心理描写と情景描写はあまりなく、文章はいまひとつ。体言止めが多くて、下書きのような感じさえする。例えば「朝食といっても、もう十時過ぎ。兼昼食の感じ」といった文がある。地の文で「兼昼食の感じ」って、どうなの?
視点人物は固定されているので、視点人物の心理描写を増やして、サスペンスを盛り込めていれば、かなり面白くなったのになぁと思う。
とはいえ、極めて個性的な作なので、これを絶賛する人がいるのもわかる気はする。

No.8 7点 makomako
(2023/08/06 08:18登録)
梶氏の作品はこの発掘コレクション読むまでは江戸川乱歩賞受賞直後に読んだ「透明な季節」のみでした。
「リア王」を読んでびっくり。即発掘コレクションを購入しました。
本作品は騙されたことに関しては最高に騙されました。
こんな切り口があるんだ。
作者は本格推理と人間を描きたいと述べられていたそうですが、この作品をさらっと読めば人間が描かれていて素晴らしいのです。
でももう少し冷静になると、とんでもない人なのであり、とてもハッピーエンドとはならないに決まっていることはすぐわかります。
でもハッピーエンド風の終わり方。
作者の求めるぎりぎりの選択だったのでしょう。

No.7 8点 sophia
(2023/07/10 19:18登録)
ネタバレあり

「梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクション」と仰々しく銘打たれた本作。こんなに面白い作品がよく今まで未文庫化だったものです。別荘(ビラ)に最初からいた秋江と闖入者の勝浦グループの双方が秘密を抱えており、解決編で2つのサプライズが味わえます。目ぼしいトリックはそう使われていないのですが、唯一と言ってもいいとあるトリックが明かされることで犯人の抱える秘密も明らかになるという技巧が冴えます。また本作は本格ミステリーと恋愛小説が融合しているとも言えるでしょう。難点を挙げるならば、章タイトルである程度結末が予想できてしまったことです。それと序盤から頻繁に名前が出る「川光」という人が何者なのかよく分からなかったので早めに説明してほしかったです。いやしかし、勝浦の女性蔑視がすごいことと呉殺しの動機が酷いこと(笑)

No.6 8点 ボナンザ
(2023/03/18 23:36登録)
夢でも幻覚でもない。幻の名作の復刊である。
今となっては古く感じてしまうところもあるが、傑作であることに変わりはない。

No.5 6点 レッドキング
(2019/02/14 22:09登録)
設定どんでん返しトリックは素晴らしい。不可能刺殺トリックがチトちゃちだが、こういう類のラストは大好きだ。 主人公、あの女と逃げ切ってほしい。

No.4 6点
(2018/05/28 07:05登録)
 高評価かつ入手難度A級の本作、なぜか近隣の図書館に梶龍雄作品が軒並み揃っていてカモネギ状態。さあアタックだ!
 ・・・と読み始めたのはいいんですが、「自分はトリックだけではダメな人間なんだ」というのが判明しただけでした。「龍神池」はこんな事なかったんですが。
 ちょっと人物設定や会話が不味過ぎるんですよね・・・著者と登場人物の世代がアレなのか、それとも自分が神経質過ぎるだけなのかは分かりませんが。
トリックはホント素晴らしいです。この世代の作家が時代を先取りする構成の作品を晩年に書くというのは特筆に価します。
でもそれだけではちょっと・・・ノベルス形式で出したのが良くないのかな・・・もっと枚数があれば何とかなったかもしれませんが。
 トリックで1点プラスしましたが、本来なら5点作品ですかねえ。梶龍雄は自分には合わないのかもしれません。
 あとあんなに死体がゴロゴロ転がってる殺人現場から、ヤバいタイミングで名乗っての通話2回はどうなんでしょうかね。親父に掛けた方は黒電話の時代でも場所まで知られちゃってると思うんですけど。しかもBMWに乗ってっちゃってるし。
ランデブーとは行かないような気がするんですが。男はともかく女の方はそんな事どうでもいいのかもしれないですけど。

No.3 8点 蟷螂の斧
(2015/07/08 14:05登録)
777冊目。7.7には1日遅れの書評となりました。以前から読みたいと思っていたのですが、絶版で中々手に入らなかった。ようやく図書館で見つけ拝読。一部のファン?の評判通りの作品で楽しめました。著者の初期作品の雰囲気とは一味違って、エンタメに徹した作品といえますね。雪の山荘、連続殺人ものです。1988年の作品で、「十角館の殺人」(1987)の新本格ブームに刺激されたのかもしれません。著者の言葉として「作者としては、特上の意外な真相と結末を用意したつもりでいるが・・・」と自信をうかがわせています。発行元や題名のイメージがマイナーだったのか?、もっとメジャー扱いされてもいい作品ではないかと思います。

No.2 7点 kanamori
(2011/01/12 17:53登録)
いわゆる"雪の山荘”もので、逃げ込んだ銀行強盗犯5人組が殺されていく本格ミステリ。
なかなかインパクトのある一発ネタトリックが炸裂しています。こちらを先に読んだので衝撃度は大きかった。
現在読めばそれほどとは思わないですが、昭和ミステリの生き残りのような作家が、新本格に先んじてコレを書いた事を評価して、プラス1点を献上。

No.1 9点 こう
(2010/05/09 02:15登録)
 この作品のメインプロットの後発作は既読でしたが20年以上前しかも晩年にこれを書くのが素晴らしいですしこれが文庫化されていないのがつくづく残念です。
 人物像や会話などに不満な点はありますし旧制高校シリーズ程の伏線の美学の様なお話ではありませんが現代の読者ならこの作品の方が読み易く楽しめると思います。
 既読作品でも今の所「リア王」や「龍神池」よりこちらの方が好みです。戯曲化や映像化できそうな内容で一読をお薦めする作品です。
 正直「本格ミステリフラッシュバック」を見るまでは「透明な季節」以外全く作品名すら知りませんでしたがこの作者は素晴らしいです。

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