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ミステリの祭典

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仮面幻双曲
文庫版は全面改稿

作家 大山誠一郎
出版日2006年06月
平均点5.75点
書評数12人

No.12 7点 メルカトル
(2023/11/29 22:33登録)
時は戦後まもなく。ある地方都市での出来事。占部製糸は紡績会社としては名の売れた企業だった。占部製糸では、双子がトップにつくと栄えるという歴史があり、社長は、かつて仲違いをした弟の双子の息子たちに会社を継がせた。しかし、その双子の兄弟は、あることから諍いを起こし、弟は家を出た。弟は東京で整形手術を受け、行方をくらませた。そして、その弟から兄への殺人予告が届く。社長である兄からボディーガードを依頼された川宮兄妹だったが、寝ずの番に就いたその夜に兄は殺されてしまった。弟が殺したのか……。容疑者にはアリバイがあり、捜査は遅々として進まない。そして、第二の殺人が起こった。
Amazon内容紹介より。

双子トリックを限界まで駆使した、パズラーの傑作だと思います。一方で疵の多い、それでいて面白ポイントも多いという厄介な作品でもあります。
第一第二の事件が起こって、過去にも何やら遺恨が色々ありそうな雰囲気があり、なかなか謎めいている割りには、読み進める程に何だか単純そうな事件という印象が残るのは、小説としてはかなり損をしている気がします。書き様によってはもっとサスペンスフルに描けたのになあと、そこは残念に思いました。

その辺りと特に第二の殺人事件に於ける瑕疵を改稿された文庫版で修正されていれば、更に輝きを増したのではないでしょうか。自分が読んだのは単行本の方だったので、文庫本を読むべきだったかと、若干後悔しています。それでも素材としては一級品だと思うので、この点数にしました。ハウダニット、フーダニットとしては完璧だけに、大きな傷が目立ってしまい、読み手によってはあり得ないと思わせてしまうところが、如何にも悔やまれますね。

No.11 6点 makomako
(2023/09/02 18:08登録)
今のところ大山氏唯一の長編とのこと。
短編でのトリック一発勝負が作者は得意のようですが、本作品は悪くないです。長編も書いてほしいなあ。
トリックは大胆で見破れそうで結局見事にやられました(まあ大体やられるんですけどね)。
私が読んだのは文庫本で、初版本から相当の改装があったとのことです。
作者が本作品へ注ぎ込む力が感じられますね。全体としてよかったですよ。
残念なのは医療のところで、これほどの形成手術は全身麻酔が必要になってくると思われますが、助手もなく医師一人でやってしまうのは同職を生業にしているものとしては強い違和感があります。要するにほとんど無理。
さらにこの医院には入院患者がいるようなのに、医師は昼ご飯も近くの人に作ってもらっているとの事。入院患者はどうなるのでしょうかねえ。せっかく改装したのならこの辺りも是非直していただきたいものです。次回の改装でご考慮して下さるとありがたいね。

No.10 7点 人並由真
(2023/07/17 08:31登録)
(ネタバレなし)
 昭和22年11月。戦死した父の後を継ぎ、私立探偵業を営む圭介と奈緒子の川宮兄妹は、依頼を受けて滋賀県は、琵琶湖周辺の双竜町に赴く。そこは地方の大企業「占部製糸」が権勢を利かす土地だったが、先代社長の未亡人・喜和子が依頼人だった。現在の占部製糸は、生前に先代社長が後見した甥の青年・占部文彦が社長を務めているが、その双子の弟・武彦が、さる事情から兄の命を狙っているという。しかも武彦は整形外科医に自分の顔を変えさせ、文彦の周囲に潜り込んでいる可能性がある? 喜和子の請願を受けて文彦の護衛につく川宮兄妹だが。

 全面改稿された文庫版で読了。旧版は読んでない。
 裏表紙を見ると大胆なトリックを売りにしているようだが、確かに手ごたえのあるトリックが用意されている一方、むしろ犯罪の組み立て方そのものの方が面白かった。ちょっと(中略)のよくやる手を想起する。

 ちなみに読後に、本サイトのみなさんの感想(時期的に、どれも元版のレビューのようだ)を拝見すると、中盤のトリックは相応に旧版と新版で刷新されたようで、なんかその点では旧版の方が評者の好みに合うような気もする? いつか機会を見て元版を読んでみようか。

 探偵役の川宮兄妹は、明確に、かの仁木兄妹のオマージュキャラっぽく、それが耕助や終盤の由利先生の活躍する時代にとびこんできたみたいな立ち位置で、なかなかいい感じである。
 今回こうやって改訂版という形で復活したということは、作者の方も今後改めて、シリーズ化させる思惑があるのだろうか。それならいいんだけれど。

 ところで本作の世界観は、カーのバンコランもののそれを借款。つまりは広義でフェル博士とも、同じ作品世界にいるという二次創作的な設定なのね。
 だったらいつか、セミパスティーシュとして、その辺の海の向こうの先輩探偵たちと共演させてやってください。

No.9 6点 ぷちレコード
(2022/04/08 22:27登録)
横溝正史風のレトロな色調を前面に押し出しているが、その雰囲気に乗ってしまうと、作者の術中にはまってしまう。特に「双生児」という、本格ミステリではおなじみの設定に対する読者の無自覚な思い込みに仕掛けられた心理トリックには脱帽。

No.8 5点 HORNET
(2019/06/30 19:28登録)
<ネタバレ>


 「整形した武彦は誰なのか?」がメインの謎と思わせておいて、実はそこからひっくり返される・・・やられました。しかも、いかにも「こいつが武彦なんでしょ?」と思わせる、ミステリファンを誘導するミスリードがなかなかうまくて、途中まで「丸わかりじゃん」と思っていた自分を恥じた。考えてみたらそんな単純なオワリなわけないよね(笑)
 ただこれまでの方が述べられているように、第2の事件に関してはかなり強引。理屈としては分かるんだけど、犯人であったら一番緊張し、神経が張り詰めるであろう犯行の行程が「~こうしたのです」とアッサリ説明される(切断した頭部と両腕を棺に戻すとか……それを誰にも悟られずにやることこぞ、至難の業なのでは?)。
 「なぜ崖下に死体を遺棄したのか?」とか「現場に残された針と糸は何なのか?」とか、考えがいのある謎でありながら、答えを聞くと「全部究極の綱渡りじゃん」という思いが拭えず、その点で第2の犯行はイマイチだったなぁ。

No.7 6点 名探偵ジャパン
(2017/07/25 20:40登録)
メインの双子トリックは実に巧妙。現代ならばまず不可能な仕掛けですが、本作の時代設定的にはありです。このネタ一発で短編~中編くらいの分量に収めたほうがよかったかも? 続く第二の犯行は他の方もご指摘の通り、もはや博打レベル。
「密室蒐集家」でも「偶然に担保された犯行の成立」が多くの方から指摘されていましたが、作者の癖なのでしょうね。短いページで一気に読ませる短編ならば、謎解きクイズ的な側面もあるため目をつむれますが、長編となると登場人物に対して、否応なくある程度心情を理解しようとしてしまうため、あまりに現実離れした不自然なトリックは一気にチープ化してしまいます(それが売りになるくらいまで突き抜けてしまえば話は別ですが)。
何とも惜しい作品に映りました。

No.6 8点 青い車
(2016/12/20 21:51登録)
 こちらの思い込みを逆手にとったキレのある双子トリックに痺れました。プロローグから罠を仕掛ける抜け目のなさも憎いです。難点は、相変わらず人物描写が弱いこと、犯人の行動に不合理があり、すべて面白いトリックを使いたいがために書かれたかのような印象を受けることです。ただ、それでも短めな長篇にこれだけ多様なネタを詰め込んだ贅沢さは評価されていいはずです。

No.5 5点 nukkam
(2015/12/31 07:21登録)
(ネタバレなしです) 大山誠一郎(1971年生まれ)の2006年発表の長編第1作である本格派推理小説です。人物描写も雰囲気もあっさりしており悪く言えば書き込み不足、良く言えば簡潔にして要領を得ており個人的には後者に一票を投じたいです。沢山のトリックを組み合わせておりその多くは過去のミステリーで使われたトリックの再利用或いは少々加工したものですが、豊富な謎解き伏線と合わせての推理説明はまさにパズルストーリーの典型です。本格派嫌いの読者にお勧めできる要素は全くなく、逆に好きな人にはたまらない作品です。第二の事件で使われているトリックはあまりにも失敗リスクが高そうですけど(詳しく書けませんが絶対に不自然な痕跡が残りそう)。

No.4 4点 いいちこ
(2015/04/09 14:34登録)
第一の犯行のメイントリックは、双子と整形手術を活かした非常にシンプルな仕掛けで、事態を鮮やかに反転させており巧妙。
しかし、このメイントリックにより自己矛盾とも言える重大な副作用を孕んでしまい、犯人が非常にリスキーな綱渡りを随所で演じている点で、犯行の合理性に疑問。
第二の犯行は、これに輪をかけて合理性とフィージビリティの点で無理筋であり、この犯行を成立させるために警察の無能性は異常な水準に達している。
少ないボリュームの中、随所に散りばめられた伏線のバランス、回収の妙など、ディテールは一定程度評価。
ただ全体としては、メイントリックのワンアイデアを活かすために、無理に無理を重ねた机上の空論と言わざるを得ない。

No.3 4点 虫暮部
(2013/01/22 07:10登録)
ミステリのネタとしてはそれなりに面白い。しかし、小説として、紋切り型の展開や横溝あたりの出来の悪いパスティーシュのような文体で、かなり興が殺がれている。

No.2 7点 isurrender
(2010/04/01 22:45登録)
双子トリックですが、面白かったです

No.1 4点 江守森江
(2009/05/22 16:56登録)
この作者は犯人当て短編だけ書いて出版すれば評価されるのに・・・。
読んですぐに内容を忘れてもかまわない作品。
双子絡みの作品に飽きを感じた。

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