makomakoさんの登録情報 | |
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平均点:6.18点 | 書評数:873件 |
No.33 | 4点 | 絡新婦の理 京極夏彦 |
(2008/11/16 08:35登録) 京極の作品はどれも分厚くて敬遠気味だったが、今回分冊が出た機会に読んでみた。まず不自然と思われるような漢字の使用でねちねちとした文章が好みにあわない。ストーリーも複雑でなかなか進展しないのでうんざりして途中でやめようかと思ったが、このサイトの書評が好評なので何とか我慢して読んだ。私にとって寝る前に読書すると寝つきには最適。探偵は躁病で今も生きていればきっと精神病院に入院しているぞ。京極堂はどこであんなに調査することが出来たか不明(秘密の警察組織を持っているの闇の大物なのだ)。こんなに長くて余分なことをいっぱい書くのならせめて調査の過程を書いてもらわないと。警官も人を罵倒するばかり。犯人側と目される登場人物も変な人ばかりで、まともな人間のいうことは相手にされずどんどんひどい目にあってしまう。 冒頭と最終の雰囲気は谷崎純一郎のような耽美的世界でとても良い。ミステリーではなかなかお目にかかれないほど。ただほとんどのミステリーで犯人がわからず探偵の名推理に唖然とするばかりの私が、珍しいことにこの作品の冒頭部分ですでに蜘蛛の正体がが分かってしまった。どうやってこれをストーリーと結びつけるかなと思って読んでしまったのが、採点の低い原因のひとつではあります。皆さんの評が高いのにこんなこと書いて失礼しました。 |
No.32 | 7点 | 夜と昼の神話 邦光史郎 |
(2008/11/02 15:25登録) 邦光史郎の歴史推理シリーズは日本古代史と推理が同時に楽しめる。探偵の神原東洋は陰気で現代文明嫌い女嫌いなうっとうしいおじさんだが薀蓄はなかなかのもので、邪馬台国の話や三王朝交代説を基にしたような古代王朝の変遷を述べるあたりは古代史に興味があるものにとってはなかなか面白い。本格推理、古代史、超能力、ロマンス、エロティシズムを盛り込んだサービス版ともいえる。最近あまり評価されていないしこのサイトにも採りあげられていなかったが、私的には結構好きな作品です。 |
No.31 | 7点 | 地底獣国の殺人 芦辺拓 |
(2008/10/26 08:27登録) この小説は作者も断っているように本格推理小説ではある。初出版されてすぐ読んだが時はあまり感心しなかったが、10年ぶりに読み直してみると結構面白かった。ただロストワールドだアランクォーターメンだなどと出てくると、秘境冒険小説を読んでいる雰囲気となり、これがまた大好きなのでせっかく作者が張り巡らしてくれている推理の手がかりなどはまたしてもほとんど無視して読んでしまった。これが森江春策シリーズであるのが違和感のあるところで、おじいさんの森江春之助が残した文章を春策が推理するようなかたちなら良かったようにも思う。でもそうするとこの小説のユニークさが薄れるし最後のどんでん返しが成り立たなくなるし。まあこれでよかったのかな。そこで作者へ注文。芦辺さん、田中光二のロストワールド2のような秘境冒険小説の日本版続編を書いてくださいよ。絶対買って読むから。 |
No.30 | 5点 | 暗黒館の殺人 綾辻行人 |
(2008/10/21 22:18登録) 綾辻の館シリーズは大好きで、十角館の殺人からすべてリアルタイムで読んでいた。長い間館シリーズが出なかったので本当に待ち望んだ作品。しかもかなりの長編での発売に年甲斐もなくわくわくして読んだのだが、残念ながらいまいち。ことに前半がやたらに長い。綾辻のでなければ投げ出してしまいそうだった。 |
No.29 | 2点 | どんどん橋、落ちた 綾辻行人 |
(2008/10/21 22:07登録) これはいけません。だますといってもいくらなんでもひどすぎる。学生時代の作品のようで、あとがきに今はそうそうたる推理作家たちの集まりで披露したが誰もわからなかったとかいてある。そりゃそうでしょう。こんなトリックわかるはずないよ。 |
No.28 | 9点 | 猿丸幻視行 井沢元彦 |
(2008/10/21 21:41登録) これは何度読んでも面白い。殺人のトリック自体はやや小粒ではあるが、猿丸太夫と柿本人麻呂をからませた歴史推理とパズル論議が複雑でよい。薀蓄と言うより知的興味をひかれる。登場人物が過去に人物と一体化する作用があるという薬を飲んで民俗学者で歌人の折口信夫に一体化してしまうというありえない設定で始まるのだが、読んでいるとごく自然に物語の世界へ入り込んでしまう。この作品は第26回江戸川乱歩賞に輝いたもの。当時乱歩賞受賞作品はすべて読んでいたので発売されたらすぐ買って読み、これが歴代乱歩賞で一番と思ったのを思い出す。さらにいえば第26回江戸川乱歩賞選考では今は本格好きからは古典のように扱われている島田宗司の占星術殺人事件(このときは占星術のマジック)を抑えての受賞なのだ。私が持っている昭和55年度発行版では選考委員の評も載っておりこれもなかなか面白い。パズルが嫌いでない本格推理愛好家なら必読でしょう。 |
No.27 | 7点 | 僕の殺人 太田忠司 |
(2008/10/19 13:31登録) 太田忠司の記念すべきデビュー作。彼は同じ名古屋在住でもあり個人的にひいきの作家だ。作品も新宿少年探偵団シリーズ以外は大体読んでいるつもり。いろいろな分野の小説を書いているが、やっぱり本格推理が一番だと思う。これは彼の小説の原点でありトリックもどんでん返しも推理の要素も含まれた秀作であろう。ただ彼の作品すべてに見られるように登場人物がかなりナイーブでやさしいため(ことにレストアなどは探偵がもうすぐ病院が必要なほどだ)、本格ものとしてどうしても少し弱い気がするのは私一人だろうか。 |
No.26 | 9点 | 風が吹いたら桶屋がもうかる 井上夢人 |
(2008/10/19 09:47登録) 面白なあ。こんなのすきだなあ。好きな作家でもあまりなじめない作品と言うのがひとつぐらいはあるのだが、井上夢人の作品はどれ読んでも実に面白い。登場人物があわないという評もあるが、私はこんなちょっと変わっているけど憎めない理屈屋のイッカク、ナイーブで誠実な超能力者(低能力者?)ヨーノスケ、そして普通人の峻平の組み合わせが楽しい。ことに話しのはじめにごとに出るヨーノスケの超能力の練習は思わず声を出して笑ってしまった。これぐれも電車の中で読まないこと。変なおじさんに見られますよと注意されてしまった。終盤にちょっとマンネリ気味となるので1点減点とした。 |
No.25 | 7点 | マッチメイク 不知火京介 |
(2008/10/15 22:19登録) プロレスを扱った推理小説ってあまり知らないのだがこれはなかなか面白い。プロレスの仕組みも何となく分かるところも興味深い。プロレスが主体の推理小説だから何となくその方面のおたくなものかと思いきや、江戸川乱歩賞をとった立派なミステリーである。トリックも大掛かりではないがさほど無理がない。軽く読めて読後感も悪くない。 |
No.24 | 5点 | ゴッホ殺人事件 高橋克彦 |
(2008/10/15 22:07登録) ゴッホは大好きな画家で作画した場所に立ちたくてフランスまで行ったぐらい。高橋克彦も好きな作家なのでこの本は非常に期待して読んだ。前半はゴッホと弟のテオに関して斬新な見解がきわめて精緻な構成のもとに述べられているのだが、精緻すぎて私のようなゴッホ好きでもやや疲れてしまった。ひとつの説を組み立てるには実際にはこれぐらいの試行錯誤があるに違いないと思うのだが、それをすべて小説に書かれると読むほうはうんざりしてしまう。期待が大きかったので点数が少し低くなった。長編推理は好きなのだが、これはぐたぐたとしたところが多い。半分ぐらいの長さにしてもらえたらもっと評価点数は高くなると思う。 |
No.23 | 6点 | 写楽殺人事件 高橋克彦 |
(2008/10/15 21:53登録) 高橋克彦がこのサイトになかったのは不思議なことだ。確かに伝奇ものや歴史ものが多いが、ミステリーだってちゃんと書いているのだ。この写楽殺人事件は29回江戸川乱歩賞受賞作品で出版されてすぐ読んだときは、浮世絵のことをまったく知らなかったのでその面白さや奥の深さを知らされ感心したものだ。写楽が誰であるかの新説であるかと思って読んでいくと事件と結びついてきて実に面白かった。今回再読してみると推理の過程がちょっとくどい感じがしてはじめ読んだときほどの感銘はなかった。でもこの作品は高橋克彦のその後発表された多様な作品を読むきっかけとなった私のとっては思いで深いものです。美術に関心があるならお勧めです。 |
No.22 | 8点 | 昆虫探偵 鳥飼否宇 |
(2008/10/13 14:00登録) これは面白い。まず最初からカフカの変身もどきで、主人公がゴキブリになってしまう。しかもゴキブリになって喜んでいるというあっけにとられるような滑り出しでちょっと心配になる。しかも出てくるのがすべて昆虫(蜘蛛も出るが)。こんなことで大丈夫なのかと思いながらオムニバス風の話を読んでいると次第に興味をそそられてくる。すべて私の好きな本格推理小説をパロッたもので、作者の昆虫に対する科学者らしい愛情と遊びの精神が好ましい。出てくる名前も学名風(多分)でいかにも理系の感覚がうかがわれ、昆虫に興味がないものでも十分に楽しめた。 |
No.21 | 5点 | 狂乱廿四孝 北森鴻 |
(2008/10/12 16:25登録) 歌舞伎が好きならきっともっと興味がわいたと思いますが、歌舞伎のことが何も分からないものが読むと名前のややこしさ(なんせ出てくる名前が難しい上に山崎屋とか音羽屋とか言う掛け声で出てくる名前で呼び合ったり、本名で呼んだりそのたびに説明がついてはいるがやっぱり分かりにくかった)があり、ようやく何とか理解したと思っていたらなかなか複雑な終局となりやっぱり混乱してしまった。はっきりいってちゃんと理解できたかどうか怪しいものであるが、江戸の雰囲気はなかなかよろしい。歌舞伎が好きだったらもっと良い評価となると思う。 |
No.20 | 7点 | ザビエルの首 柳広司 |
(2008/10/12 08:52登録) 柳広司の歴史ミステリーは読みやすく楽しいものばかりだが、これは従来のものとは大分趣が違っていた。SFと連作ミステリーを一緒にしたようなユニークな作品で、これはこれで結構面白かった。ただ新道君やキリコさんなど最初に面白そうな脇役が出てきたのだが、この人たちが途中でもうひとつぱっとしなくなり残念。それに終わり方がもうひとつで不完全燃焼気味。なんだか続編がでそうな終わり方だったので続編も是非期待したい。 |
No.19 | 8点 | 崑崙遊撃隊 山田正紀 |
(2008/10/07 22:51登録) このころの山田正紀はよかったなあ。ゆめがあってわくわくするものがある。この作品も読み易く知らない間に秘境の冒険の世界へ連れて行ってくれる。最近の作品はどうもぴんとこないものが多い。神々の埋葬、弥勒戦争、神狩り、氷河民族なんかは最高だった。こういった作品はもう書かないのだろうか |
No.18 | 5点 | からくり人形は五度笑う 司凍季 |
(2008/10/07 22:37登録) はじめの雰囲気はなかなか良いのだが、トリックがいただけない。このトリックは絶対無理でしょう。あまりに物理的に無理なトリックは瞬間移動したとか分身の術を使った(古いたとえですが)というのと同じように感じてしまう。 |
No.17 | 6点 | 危険な童話 土屋隆夫 |
(2008/09/26 18:06登録) 犯人はすぐ分かってしまうが犯行がなかなか証明できないお話。童話を使ったトリックでもあるがちょっと苦しいか。メインのトリックは今となっては使えないところもあるが、これが書かれた昭和30年代ならOKだったのだろう。土屋隆夫らしい誠実できちんと考え抜かれた作品となっていると思う。最後は美しく悲しい。子供はこれからどうしていくのだろう。追求した木曽刑事もちょっとやりきれないかも。 |
No.16 | 6点 | 黙の部屋 折原一 |
(2008/09/16 20:40登録) 文庫本なのにちょっと気持ち悪い絵が載っていてそれが骨子となって進んでいく変わった小説。はじめのとっつきは悪いが少し我慢して読み進むと折原一独特の世界が広がって、最後は一気に読んでしまった。ちょっと暗いがまずます。 |
No.15 | 9点 | 人狼城の恐怖 二階堂黎人 |
(2008/09/16 20:20登録) 当初1部2部と進んで3部が解決編ということとなっていたのに3部はなんと探偵編。4部の解決編の発売まで当分待たされているうちに最初のほうを忘れてしまい(頭が悪いのです)もう一回読みなおした覚えがある。再読にもたえる二階堂の代表作と思う。 |
No.14 | 8点 | 天狗の面 土屋隆夫 |
(2008/09/16 20:04登録) 土屋隆夫の初期の傑作でしょう。作者の本格好きの姿勢が楽しい。トリックはこの作者らしく結構不可能犯罪様で、最近時々見かけるような幻想的(というよりむちゃくちゃというべきか)な話ではなくちゃんと現実的でよいと思う。 |