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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.18点 書評数:873件

プロフィール| 書評

No.133 7点 顔のない男
北森鴻
(2010/04/25 10:54登録)
連作のような長編のような複雑な形態の上読み進むにつれ話が二転三転と込み入ってくる。文章がうまいのでさらさらとは読めるが、複雑な話なので途中で意味がよく分からなくなって読み返すこととなった。作者の仕掛けに注意を払いつつじっくり読めばミステリー好きなら面白いと思う人も多いだろう。最後のどんでん返しもなかなかすごい。


No.132 6点 屋上物語
北森鴻
(2010/04/19 21:32登録)
なかなか凝ったいかにも北森鴻らしい作品。文章も雰囲気もよいので後味はあまり悪くないような錯覚を受けてしまうが、結構救われない話や残酷な結末なのでしばらくしてちょっと待てよといった感じとなる。北森氏は好きな作家であるがこの作品はどちらかというと好きなほうではない。でも奇抜なアイデアで違った主人公の視点からこのような連作を作ってちゃんと読ませることが出来る作者の力量は相当なものだと感心する。


No.131 3点 五声のリチェルカーレ
深水黎一郎
(2010/04/11 19:20登録)
深水氏の作品は今まで読んだのはどれもが水準をはるかに向くすばらしいものであったが、これはぜんぜんダメでした。作者の才能と教養からこういった作品が生まれうることは何となく感じてはいたのですが、私にとって最後まで読むのが苦痛な作品でした。


No.130 5点 支那そば館の謎
北森鴻
(2010/04/10 20:10登録)
「ぶぶ漬け伝説の謎」を先に読んだので馬鹿っぽいキャラクターに慣れたせいかすらすら読めた。それなりに面白いが、ミステリー度は低く主人公の魅力で読ませる北森作品としてはあまり評価できない。ストーリーも読んだ傍らから忘れてしまいそうなお話でインパクトに乏しい。


No.129 5点 ぶぶ漬け伝説の謎
北森鴻
(2010/04/03 07:31登録)
北森鴻の短編集は謎を解くというより登場人物の会話と雰囲気や薀蓄を楽しむといった要素が大きいので、読者にとって登場人物がいかに気に入るかによって作品の楽しみが大きく変わる。このシリーズは魅力的な登場人物が多い北森作品の中ではちょっと馬鹿っぽいキャラクターに振りすぎており残念ながらあまり好みではない。美意識と孤独感を内に備えた人物の小説を書いているとこんなタイプのも書きたくなったのだろうか。


No.128 8点 赤い帆船(クルーザー)
西村京太郎
(2010/04/01 22:31登録)
この頃の西村京太郎はきっちりした本格ものを書いていたことを再認識した。スケールが大きい本格海洋推理小説でプロットもしっかりしており二転三転の物語の展開も明快な文章ですらすらと読める。書かれた時代が大分古いが、当時をリアルタイムで経験している私にとってはぜんぜん問題にならない。この後大量に出回るトラベルミステリーの探偵十津川警部(この本ではまだ警部補)がヨットマンとして登場するのも興味深い。薄利多売のようなトラベルミステリーとは格段の差が有ると思うが、この小説でも一介の刑事が気軽に海外出張したり犯人がぺらぺらと犯行の詳細を自供してしまうといった安易な設定がすでに見えるところが減点。


No.127 8点 二島縁起
多島斗志之
(2010/03/26 21:50登録)
はじめは海洋冒険小説のようだが途中から推理小説の様相となる。冒険小説としても本格物としても中途半端ともなりかねないのだが、それがバランスよく進行するためなかなか興味深く楽しい。舞台となった島に行ってみたくなる素敵な小説。作者が行方をくらましたようなことが新聞に出ていたがその後どうなったのだろうか。ぜひ復帰してこんな小説を読ましていただきたいものだが。


No.126 4点 湯煙りの密室
中町信
(2010/03/23 18:53登録)
殺人事件が次々と起き、伏線が張ってあり、どんでんがえしで意外な(すぐ分かってしまうが)犯人と犯行があり、と何だか面白そうなのだがそれがあんまり面白くない。テシピどうりに作ったこくのない料理を老舗の味ですといっているようなもので、なんとも物足りないのだ。すぐに読めてまあ無茶苦茶の話ではないので時間つぶしぐらいにはなるかも。


No.125 7点 花窗玻璃 シャガールの黙示
深水黎一郎
(2010/03/22 10:40登録)
 作者らしい斬新なトリックときちんとした伏線がちりばめられたなかなかのお話。当て字の感じがやたら多くこれがこの話のひとつの要素でもあるが気を入れてまともに読んでいると作者が意図した?読者が被害者となりかねない。私だけかもしれないが欧米の名前を漢字で書いてそれをルビで読むとどうも印象が残りにくく、登場人物が多くないのにどの人物だったかがよく分からなくなって時々読み返す必要があった(これも作者の狙いかもしれない)。
 作者はヨーロッパの芸術や文化に深い教養と理解があるようで今回は教会がテーマ。前作のイタリアオペラよりはまだましだが教会は苦手のほう。ヨーロッパを回るとどの国にも町ごとに自慢の教会があり、途方もない労力をかけて建てた陰鬱でごてごての(失礼!)ところへ必ず案内される。キリスト教徒でない私などは日本の寺院のほうがはるかに美しく見えるのだが。作者のようなヨーロッパに対する理解の深い人にはやはり特別なものなのだろう。教会の話と分かりにくい文章が減点だがそれでも楽しませるだけの力量には感服。


No.124 6点 トスカの接吻
深水黎一郎
(2010/03/20 16:14登録)
 読んでいて悪くはないが前作のエコール・ド・パリに比べると意外な犯人ではあるがトリックは大分おちる。クラシック音楽は大好きだがイタリアオペラは言葉が分からないこともあってちょっと敬遠気味。トスカはストーリーは知っているが一度も見たことが無い。それが中心となった話なのでやはり興味がもうひとつわきにくいのも評価が低めの一因です。
 ところで作者は外国語が堪能なせいか題名が私のようなものには意味不明。ウルチモ・トルッコ、レザルティスト・モウディは何の意味か読んだ後でも分からない。ミステリーとなっております。誰か教えてくれないかなあ。


No.123 5点 写楽・考
北森鴻
(2010/03/11 22:56登録)
 北森のシリーズはほとんどが読み進むにつれて興味深くなる傾向にあるのだが、この蓮丈那智シリーズは残念ながらだんだんつまらなくなってしまった。主人公にシンパシーがわかないせいであろうか。それとも歴史や民俗学はなまじ興味を持っている分野だけにあらが見えてしまうためなのか。
 物語としての出来はそんなに悪くないと思うのですが。


No.122 6点 触身仏
北森鴻
(2010/03/08 21:58登録)
北森のメインキャストはいずれも魅力的でそれが彼の作品を好む大きな理由となっているのだが、残念ながら蓮丈那智はあまり好きなキャラクターではない。他のキャラクターがかもし出す孤独感や隠れた愛情が薄いからかもしれない。古典も民俗学も好きなテーマなので期待できそうなのだが、かなり強引なストーリー展開にはちょっとついていけないところがある。これだけの話を短編で比較的短い時間に何編もかくのは大変だったのだろう。北森の才能からすればもう少し推敲して長編にしてくれたらもっとすばらしいものとなったのではないかと思うが、若くして亡くなられたのでもはや望むべくもない。残念。


No.121 6点 ふたたび赤い悪夢
法月綸太郎
(2010/03/05 22:24登録)
全体としてみればよく練られたストーリーで悪くないと思います。今回は結末も救われる話なので読後感は悪くない。しかし作品の最初からぐだぐだと暗い話が続き、作者の根暗と気の滅入り方につき合わされうんざりしてしまう。以前に読んだときはさほど思わなかったが、10年以上たって再読した今回は変に教養があるために余計落ち込む作者に嫌気がさしたことは否めない。このあたりの話を削って長さを3分の2ぐらいにしたらきっとすばらしい本格推理小説となったに違いないのだが。


No.120 7点 ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!
深水黎一郎
(2010/03/01 21:20登録)
すごいトリックだと思いますよ。読者が犯人といったものはまず無理なんだけどこれならまあ納得できるのではないでしょうか。作者の知力と能力にまず賞賛を。もちろんいろいろな点で無理もあるので減点もやむをえないけど最近無難にまとめた作品や無茶苦茶の作品が多いなかで出色の出来でしょう。こんな作品をもうひとつというのは難しそうだけど期待してしまいます。


No.119 7点 瑠璃の契り
北森鴻
(2010/02/27 22:27登録)
緋友禅につぐ冬狐堂宇佐見陶子シリーズの連作。相変わらず雰囲気がよくうまく仕上げてある。北森鴻は独特の世界を描き出すがそれが自分の好みと合っていればとても楽しめる。骨董は好きなのでこのシリーズは読めば必ず満足するが、ストーリーのインパクトはあまり強くない。黒髪のクピドが一番好きかな。


No.118 7点 緋友禅
北森鴻
(2010/02/27 22:18登録)
北森鴻の小説は主人公の魅力が大きな要素となっているように思える。冬狐堂こと宇佐見陶子はそのなかでも好きなキャラクター。深い情ときつい仕打ちが交差するところはなんともいえません。この連作はミステリーとしてはまずますていどだが、雰囲気と薀蓄を楽しむならとてもすばらしい。先日作者が若くしてなくなったことが惜しまれます。


No.117 5点 カンナ 戸隠の殺皆
高田崇史
(2010/02/21 09:41登録)
 カンナシリーズはいろいろな場所が舞台となっているが今回は戸隠。何度も訪れた大好きなところなので期待したが残念ながらあまりぱっとしなかった。こういった歴史推理は斬新な歴史アイデアがないと成立しにくいため、やはり量産は無理なのだろうか。推理物としても歴史物としてもインパクトに乏しくだれ気味。シリーズが出ると必ず買っていたがもう止めようかなと思えてくる。高田氏のひいきを入れてこの程度の評価です。


No.116 6点 死神の座
高木彬光
(2010/02/17 18:44登録)
 30年ぶりぐらいに読み直してみた。ストーリーはすっかり忘れて再読という感じではなくそれなりに楽しめた。逆に言えばはじめて読んだときの感想がほとんど心に残らなかった作品とも言える。
 占星術、かぐや姫のパロディー、さまよえるオランダ人、暗号解読と盛りだくさんそして舞台は昔懐かしい軽井沢とサービスがしてある割にはもうひとつ内容の濃さが感じられない。目だったトリックがなくストーリがやや単調だからなのかもしれない。推理小説としては正統的で読んでいて決して不愉快でもなく退屈でもないのでまずますといったところ。


No.115 8点 過ぎ行く風はみどり色
倉知淳
(2010/02/11 15:37登録)
 きちんとした推理がありトリックもちゃんとしている。人物もそれなりに描いてあるしロマンチックなところにも過不足ない。猫丸先輩はあまり好きな探偵ではないが、でも嫌いでもない。霊媒やそれを暴こうとする超常現象の研究者など怪しげな人物も登場しなかなか面白い。読後感も悪くない。
 要するによく出来た推理小説なのだと思う。今まで読んだ倉知淳の小説の中で一番よかった。なのに満点でないのはすべてに平均点以上といった優等生的なところでインパクトに少しかける気がするからかな。


No.114 6点 林檎の木の道
樋口有介
(2010/02/07 09:14登録)
 「ぼくとほくらの夏」とほとんど同じ感じ。登場人物も名前は違うが原則的に同じ。もちろんストーリーは違うのだが続けて読むと何だか同じ小説を繰り返し読んでいるような感じになる。シリーズものならだんだん主人公や周辺の人たちに愛着を感じるてくることも多いのだが、違う小説で同じような内容だと作者の限界を感じてしまう。
 読書感のよい小説なのだが二番煎じといった感じを受けたので評価はこの程度。

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