共犯マジック |
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作家 | 北森鴻 |
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出版日 | 2001年07月 |
平均点 | 5.50点 |
書評数 | 8人 |
No.8 | 7点 | 斎藤警部 | |
(2021/02/22 18:52登録) 長篇じゃん、って思ったりもするが、各話で完結する登場人物や各話ならではの味わいも充分あるから、やはり連作短篇集なのか(この微妙な構造、いいねえ)。それにしては最終話。。よくも繋げきったなあ(連城「暗色コメディ」を彷彿とさせた)。だけどちょっと大袈裟空回りかなあ、、ファンタジーの力を借りたとは言え。。無理筋の行動もあるし。。エンドも特に怖い拡がりがあるわけでは。。でもやっぱよくよく緻密に構築されてる話だわ。 それぞれの短篇があからさまな結末積み残し感を見せつけて終わる分、全体結末への期待値は高まる。 一方でそれぞれの短篇も実に面白い。 フォーチュンブックなるキーガジェットが放つ何やらの平成的安っぽさも手伝い、最初は軽い軽い連作短篇かと思ったけど、どっこいだぜ。。問題のブックが悪の主役として前面で立ち回るのでなく、悪意の傍観者的狂言回しの役に徹するのも良い感じ。連城を思わせる細かな、或いは大きな真相意外性もたっぷりだ。横須賀線爆弾の件、未完成彫像の件、贋作トリックの件、偽500円硬貨の件、通りがかりの親切な人の件、或るものの入手動機の件、それらの、より大きな事件との繋がり方がそれぞれレベル違いの複雑怪奇っぷりで実に面白い。時系列のアレもねえ。。。。中小叙述トリック的なものもあるけれど、それより大叙述ギミックの爆発が見得切りまくりですよね。 戦後昭和犯罪史をストーリーの背景と見せつつ、実は。。 あと一つ、強烈なクサビを打ち込んでほのかに漂う何気なチープさと残留違和感をぶっ飛ばしてくれてたら8点行ったなあ。。 再読じゃなくて、すぐ読み返したくなるよなあ。。 |
No.7 | 6点 | まさむね | |
(2018/03/29 23:03登録) 連作短編の名手らしい作品で、昭和史に残る数々の事件の使い方(?)も上手いです。よくもまぁ、繋げたよなぁ…と感心するのですが、それがもの凄い爆発力を生んでいるものでもないよなぁ…という気もいたしました。 |
No.6 | 6点 | ボンボン | |
(2017/06/10 16:26登録) (ネタバレ気味) 蜘蛛の巣のような共犯関係がすごい。いや、それよりも、戦後昭和史の犯罪部門、全部自分がやりましたという勢いの大胆さがすごい。あまりにやり過ぎで、笑ってしまうほど。レディ・ジョーカー級の超大作な原材料で、文庫で約270ページしかない短編集を創るというのもまた個性的。復讐とか報いとか、八つ当たりみたいなのも含め、暗い感情しか出てこないので、読後に残るものが少ないかな。しかし、徹底して全ネタをつなげきった構成力には拍手を。 |
No.5 | 5点 | E-BANKER | |
(2011/09/11 14:57登録) 北森鴻といえば「連作短編」というわけで、本作もその例にもれない連作形式の作品。 占った人が必ず不幸になるという伝説の書「フォーチュンブック」を軸に展開される事件の連鎖。 ①「原点」=学生運動華やかな頃が舞台。タイトルどおり、この先の不幸な出来事の原点とも言える事件が起こる。 ②「それからの貌」=500円硬貨が初めて世に出た年、早速偽造硬貨が出回る。そして、1人の女性が捜査線上に浮かぶが・・・その女性は本編の主人公である新聞記者の元恋人だった。(ホテルニュージャパンの火災なんて、20代の方には分からないだろうな・・・) ③「羽化の季節」=1枚の油絵を見た男が突然膝まずいて涙を流す・・・そこには、過去の忌まわしい事件が! そして、ここにも「フォーチュンブック」の影がつきまとう。 ④「封印迷宮」=②の主人公だった新聞記者が再度登場。そして、懐かしい「グリコ森永事件」(知ってる?)。謎の男「サクラダ」の正体は実は「アイツ」。 ⑤「さよなら神様」=④まできて、連作の意図が垣間見えてきたと思ったところで、今までの流れからやや浮いているのがこの⑤。ただ、最後になって⑤の意味が分かる仕掛け。 ⑥「六人の謡える乙子」=ここでまたしても新顔の登場人物。埋められた彫刻作品の謎とは? ⑦「共犯マジック」=ついに、ここまで断片的に語られてきたストーリーがつながる! しかし、こんな大掛かりな話だったとはねぇー。 以上7編。 いやぁ、想像以上に大掛かりなプロットだった。 まさか、戦後の著名事件の数々(「グリコ森永」や「3億円事件」、ついには「帝銀事件」までも・・・)がつながっていたとは! 作者の連作テクニックがあればこそでしょう。 ただ、ちょっと上っすべりしているような気がしないでもない。(ここまで事件がつながってるなんて、正直荒唐無稽な感は否めない) 風呂敷を広げすぎたかな? |
No.4 | 4点 | makomako | |
(2010/07/11 17:47登録) 北森鴻は好きな作家であるがこれは私にはあわなかった。悪いことのみが当たる占いのお話なんてだいたいがいやな感じがする上に結末ももうひとつすっきりしない。 |
No.3 | 4点 | しゃん | |
(2002/06/21 17:48登録) どうも、一編一編ごとのラストが後味が悪くて私はキライ 各話ごとのつながりも悪い意味で複雑におもえる |
No.2 | 7点 | ao | |
(2002/06/21 03:55登録) ラストに向ける加速が見事で謎解きの期待が高まる。「昭和史」との絡めもうまいし、これだけ多くの登場人物を余すことなく操っている所がすごい。序盤は少しダレ気味だったし短編一つ一つの魅力はそれほどでもないけど、全体的にはとてもうまくまとまっていると思う。 |
No.1 | 5点 | 由良小三郎 | |
(2002/06/17 20:29登録) 昭和史のなかで、さまざまな出来事が起る、「白夜行」みたいな構成の連作短編集ですが、後半のつじつまあわせといいますか、まとめに失敗して、いい作品にならなかったような気がします。 |