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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.18点 書評数:862件

プロフィール| 書評

No.822 7点 葉山宝石館の惨劇
梶龍雄
(2023/08/26 07:05登録)
梶氏の作品が復刻されて、本格推理モノとして素晴らしいのに全く見逃していたことを痛感しています。続けて読んでいこう。
この作品はトリックとしてはかなりがっかりものです。犯人も何となくわかりそうですが、いろいろなひねりが入れてあり、それなりに楽しめました。
気になったのは警察の推理にちょっと難点があります。
リボルバー拳銃の薬きょうはオートマチックと違って発射されるごとに排出されないのです。薬きょうに関した推理は警察官なら絶対しないでしょう。さらにバンドラインスペシャルは1800年代のもので、サイレンサーは20世紀初めに造られたものなので、この拳銃のサイレンサーはないこととなります。まあオリジナルに作ったようなことが書いておるのでぎりぎりセーフとしましょう。
作者の作風が好きなので多少甘めの評価かもしれません。


No.821 5点 アリバイの唄
笹沢左保
(2023/08/26 06:54登録)
とにかく多作の作者の作品らしく、文章がいかにも説明風で必要なことは書きましたよといった乾燥した感覚でした。
分の推敲などはほとんど行わなくても次々とかけてしまうのでしょうね、きっと。
これがちょっといやになって初めのほうは全くよろしくなかったが、トリックの大がかりなこと。この辺りとなると俄然面白い。
バカミスとの評もあるが、有栖川氏が推す意味も分かる気がしました。


No.820 7点 谷根千ミステリ散歩 中途半端な逆さま問題
東川篤哉
(2023/08/19 07:22登録)
東川氏の作風は好きなのです。
このところちょっとマンネリ化しているようにも思っていましたが、本作品は新しいヒロインがなかなか素敵です。名前もいいなあ(岩篠つみれ、いわしのつみれ)。イワシ専門料理屋イワシの吾郎の娘さん。お父さんは岩篠吾郎、お兄さんは岩篠なめ郎。探偵は怪運堂なるラッキーグッズ販売い店を営むかなり怪しくて軽いところがある変人。
短編集というべき4つのお話です。それぞれそれなりの凝ったところがありますが、ユーモアを取り除くと古典的作品のトリックをひねっとようなものがほとんどですので、まじめに読んでは面白くないかもしれません。
ユーモアにくすりと笑いながら読んだことがあるような古典トリックを思い浮かべて読むべきなんでしょう。


No.819 7点 透明な季節
梶龍雄
(2023/08/19 07:08登録)
この作品は江戸川乱歩賞受賞して文庫として出た第1摺を買って読みました。私の本は昭和55年9月発行となっているので40年以上前のこととなります。当時江戸川乱歩賞の受賞作品は文庫化されると必ず読んでいたのです。
当然内容はほとんど忘れてしまいましたので今回再読は全く新刊書を読むのとあまり変わらない感覚でした。
初読の当時は戦争の理不尽さを書いた作品なんだといった程度の感想でした。
今回再読してみると作者が目指していた人間を描いた推理小説といったお話であり、私の好きな内容でした。
確かにトリックはちょっと奇想天外というより無茶ぶり風ですが、若いわたしより今の私の好みに合う小説でした。


No.818 6点 偽りの春 神倉駅前交番狩野雷太の推理
降田天
(2023/08/12 07:38登録)
探偵(この場合は警察官だが)が男で相棒も男なのですが、作者が女性二人の作品出ることは今まで読んだ作者の作品中本作品が一番感じるところでした。
探偵狩野の視線が一見理論的であるが、極めて感情的要素が入った理論で、そういった方面から迫って解決を図るところはいかにも女性の作者らしいと感じたのです(だから悪いといっているのではありません。むしろ視点が私と違っていて新鮮だという意味です)。
こういった作風は嫌いではないのですが、どうしても推理の理論がご都合主義的になったりしがちで、すっきり解決といった感じがやや薄れてしまいました。
いかにも次作ができそうなので次作に期待しましょう。


No.817 7点 六人の嘘つきな大学生
浅倉秋成
(2023/08/11 07:31登録)
なかなか面白い。
有能な主人公たちの若く素敵な感じがまず提示され、その後実は--といった暴きの話となる。これだとちょっと嫌味な小説となりそうだが、その後みんなそんなに悪いやつではないことがわかってくる。
このあたりはなかなかのもので小説を読む手が離せない。
最終的にもいい感じで終わるので読後感もよい。
作者自身が非常に理屈っぽい性格と述べているように、話は「精緻を極める」というとよい方向にとるか、「くどくどとめんどくさい」と感じるかは読み手の感性によるものでしょう。
きっちりした本格物が好きな方はきっと素晴らしいと思われることでしょう。
私はちょっとめんどくさかったかな。
でもよかったですよ。


No.816 7点 清里高原殺人別荘
梶龍雄
(2023/08/06 08:18登録)
梶氏の作品はこの発掘コレクション読むまでは江戸川乱歩賞受賞直後に読んだ「透明な季節」のみでした。
「リア王」を読んでびっくり。即発掘コレクションを購入しました。
本作品は騙されたことに関しては最高に騙されました。
こんな切り口があるんだ。
作者は本格推理と人間を描きたいと述べられていたそうですが、この作品をさらっと読めば人間が描かれていて素晴らしいのです。
でももう少し冷静になると、とんでもない人なのであり、とてもハッピーエンドとはならないに決まっていることはすぐわかります。
でもハッピーエンド風の終わり方。
作者の求めるぎりぎりの選択だったのでしょう。


No.815 6点 龍神池の小さな死体
梶龍雄
(2023/08/05 07:13登録)
途中まではとても素晴らしい内容で、完全に作者に翻弄され、でもどうなるかと読み進むといった本格物を読む楽しさを味わえました。
物語の最後に真相が明らかにされるのですが、作者の見事なミスディレクションに引っかかり、全然犯人が見えていませんでした。
こういったところはとても素晴らしいのですが、解説の三津田信三氏が書かれていたように最後のどんでん返し的終わりは好みがわかれると思います。たぶん三津田氏も好みでなかったのでしょうが、私もこれはちょっと残念です。せっかくいい感じだったのがかなりそがれてしまいました。

以下ちょっとネタバレです。
それともう一つこれも解説で書かれていたことですが、このお話は決定的になり立たないところがあると感じました。重要な登場人物の一人がこのトリックに必ず気付いているはずなのです。それが全く述べられていません。ここが何とか解決できるような話となっていれば。
素晴らしい本格小説なのに残念です。
でも立派な本格物であることは間違いありません。


No.814 7点 世界でいちばん透きとおった物語
杉井光
(2023/07/20 18:41登録)
途中まではかなり面白い。表題の小説とはいったいどんなものだろうと興味がかきたたれます。
主人公もお話の中で翻弄され、この先どんな展開となるか全く読めない。
勿論だんだん話の目鼻がついてきて、結構などんでん返しとなります。
なるほどね。こんなお話であったのかとある意味納得できます。
皆さんの評価も高いのはうなずけますが、私の評価は多少低めです。
これっていくらでも結論が変えられそう。
私が作家だったら(才能がないので全く無理ですが)なんとおりかの結論を出しておいて、さらに読者を混乱させて---、なんて考えてしまいました。


No.813 8点 リア王密室に死す
梶龍雄
(2023/07/14 20:37登録)
こんな小説好きです。
梶氏は江戸川乱歩賞を取った透明な季節をリアルタイムで読んでから、全く忘れておりました。今回何十年ぶりかで氏の作品を読み、旧制高校時代の学生たちの生活が生き生きと描かれているのに感動しました。
私は世代が違いますが、この流れをくむ学校で青春を過ごしたため余計に心に響いたのかもしれません。
密室の謎もなかなかのものでした。
本格推理の中に人間を生き生きと描きたいという作者の姿勢は素晴らしい。ほかの作品も読んでいこう。


No.812 7点 サーカスから来た執達吏
夕木春央
(2023/07/10 19:50登録)
方舟を読んで作者のことを知り、本作品を購入。
なかなかしっかりした本格推理小説です。
探偵役のユリ子もキャラが立っています。
ある意味とんでもないお話なのですが、本格推理小説はもともととんでもないお話なのでその点ではまあ良いでしょう。
殺人事件も宝物の消失もあり、いずれもなかなか一筋縄ではいかないのですが、最終的には鮮やかに解決となります。
その方法についてはちょっと無理があるのですが、この程度ならぎりぎりよしとしたいですね。
方舟と比べるとちょっと落ちる。期待が強かった分多少評価が落ちてしまいました。
こちらを先に読んだらもうちょっと評価が上がったかもしれない。


No.811 7点 急行霧島: それぞれの昭和
山本巧次
(2023/07/09 10:17登録)
山本氏の小説始めて読みました。
いわゆる推理小説風ではなく昭和の人々の描写と当時の社会風景とともに、戦争で行方不明となった父親に会いに行く娘、良家のお嬢様の話、障害事件の犯人と捜査官、スリと鉄道公安官などが色々まじりあって、なかなか楽しい。
これだけ話がいりまじると普通は混乱してしまうのですが、上手に描き分けてあり読みやすい。
さらに鹿児島から東京まで24時以上かかって走る汽車に引かれた急行霧島の情緒も素敵です。
子供の頃に汽車に乗って旅した経験がある私にとっては懐かしい思い出も交じりました。
警察や鉄道公安官に追われる犯人もそんなに悪いやつではなく、読後感がとても良い。
氏は鉄道小説をほかにも書いておられるので読んでみようかな。


No.810 7点 密室狂乱時代の殺人 絶海の孤島と七つのトリック
鴨崎暖炉
(2023/06/28 16:16登録)
前作より相当良いと思います。相変わらず登場人物は作者のトリックの駒であり、名前もダジャレ風。これは名前を覚えるのが苦手な私には都合がよいのです。
これ程たくさんのトリックを考えつきさらにそれを1作に詰め込んでしまうという離れ業はなかなかできるものではないでしょう。
このうちの2-3のトリックで、もっと推理過程を楽しむようにしたらさぞ面白い本格推理小説ができそうですが。
まあそれをしないのが作者のすごいところかもしれません。
勿論トリックのかなりのものが全く無理そうではありますが、こんな大掛かりな新しいトリックを詰め込み、途中の推理はほとんどなしですぐ回答となる。まるでトリックの問題集と回答書みたいなところは否めませんが、前作よりは登場人物の機微が描かれており、私自身も作風になれたこともあり、かなり楽しめました。
次作はどうするのかなあ。トリックネタ切れで終了にならないように期待しております。


No.809 6点 刀と傘 明治京洛推理帖
伊吹亜門
(2023/06/24 19:52登録)
明治維新ごろの時代設定で、江藤新平と尾張藩出身の男がたんていやくの推理小説です。
本格ミステリー大賞受賞とのことで、確かにしっかりした本格物です。
私はこういったものが好きなのですが、この作品はあまりピンときませんでした。
多分精緻な舞台考証がしてあり、不可解事件として成り立っているのだと思うのですが、文章だけだとどうもはっきりしたシチュエーションが見えてきません。図があるとよかった。
さらに登場人物がかなりあっさりと死んでしまったり、全く関係ないのに身代わりとなって罪をかぶってもよいと言ったり。当時のお侍さんが武士道とは死こととみつけたりという方がいたのは確かだとは思いますが、それにしても従容として受けなくてもよい罪を受け入れてしまうのは現代の感覚からすると違和感がぬぐえません。
そういった感じが強かったためあまりよい評価となりませんでした。


No.808 9点 方舟
夕木春央
(2023/06/17 06:59登録)
久しぶりに本格ミステリーらしい、しかも精緻でできの良い作品に出合えました。
このサイトの評判が高いのも当然で、本格物が好きなら読んで損はないと思います。
まずとんでもないシチュエーションが比較的無理なく設定されて、これは本格推理小説の挑戦ではないかと、興味深々となりました。
ホームズ役もワトソン役もちゃんと出てきて、閉鎖空間での脱出と密室殺人という二つの要素があまり無理なく語られるので、途中でやめられなくなり一気に読み進むこととなりました。
このお話は本格物でなく冒険小説としてだって成立しそうですが、本書は立派な本格物としてのお話となっています。
なかなか良い推理小説でこれで一件落着と思っていたら、最後に見事にやられました。これ程見事にやられたのは久しぶりです。
1点減点は動機の点でやや納得しにくかったことです。


No.807 6点 希望が死んだ夜に
天祢涼
(2023/06/10 06:48登録)
最初はひどく生意気な少女が出てきてかなり不快なのですが、読み進むといろいろなシチュエーションの転換があり、お話が全然違ってきます。
作者の作品ではキョウカンカクを読んだのみですが、それとはまったく異なる内容で、ちょっとびっくりしました。
作者はいろいろなことがかける才能があると思います。
このサイトの評判もなかなか高いのですが、私は好き嫌いでいうとあまり好みではなかったので、評価はこの程度です。


No.806 4点 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
桜庭一樹
(2023/06/04 07:45登録)
これは私には合いませんでした。
これってめちゃくちゃなお話です。
なんで親にばらばらに切り刻まれて殺されなければならないのか。全くの必然性がありませんが、幻想に近いストーリーである意味ごまかしているのが目につき出すといやになります。
勿論青春小説の範囲ではない。残酷な話です。
男性の名前なのに絶対女性にしか書けない感覚も、好き嫌いがわかれるかもしれません。
始めてすぐやめよう時間の無駄と思ったが、読んでいくと何とか最後までは読み通すことはできました。でも短くて良かった。長いととても読み通せません。
こんな感覚はわたしが年をとり世間常識的な殻がしっかりついてしまったからかもしれません。


No.805 6点 能面検事
中山七里
(2023/05/29 20:09登録)
ミステリーには検事など司法の人間が主人公となることはままありますが、実際の司法の世界がどんなものかといったことに関してはあまり述べられていないように思います。
中山氏はこれ程の多作家でありながら、こういった司法世界に関しても内部に立ち入った見解があるようで、なかなか興味深いキャラクターを生み出ました。
全く氏の多才ぶりには感心するとともにこれ程の作品を量産してあまりクオリティーが落ちないのは驚異的ですね。
続編も読んでみます。


No.804 5点 記憶の中の誘拐 赤い博物館
大山誠一郎
(2023/05/28 17:45登録)
前作で次作を期待したのですが、今回はいまいちでした。
本格物が好きなものにとってしっかり楽しめるシチュエーションではあるのですが、推理があまりに強引でご都合主義のように感じたのです。
勿論警察がしっかり捜査しても解決できなかった事件を報告を読んだだけで解決に導いてしまうのですから、普通に行けば無理に決まっているではありますが。




No.803 7点 クスノキの番人
東野圭吾
(2023/05/21 09:08登録)
 東野氏が時々発表する推理小説ではない作品の一つです。
相変わらず上手な語り口なのでスラスラと読めます。
内容は結構地味風なのですが、興味深いところもあり、私は好きです。
読後感もよい。
最近の作品は読ませ方がうまいだけの感じがしないでもなかったのですが、これは氏の優しさが伝わってくる良い作品と思います。

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