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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.18点 書評数:862件

プロフィール| 書評

No.342 6点 天霧家事件
太田忠司
(2013/09/04 16:15登録)
 このシリーズの主探偵の俊介君はでてこない。いつも脇役の野上探偵が今回の名探偵となって活躍する。このシリーズは太田氏にとって本格志向が強い霞田兄妹シリーズとジュブナイル志向のの新宿少年探偵団の間にあるものと思います。トリックはちゃんと入っており読みやすいのですが、探偵が子供と猫では子供向け風といった雰囲気は否めません。
 その点本作品は大人のみの登場で子供向きのところが少ないかもしれませんが、俊介君が出てこないとちょっと寂しい気もします。
 このシリーズは結構深刻な話もあるのですが読んで気分が悪いということはないので気軽に読めます。長さもちょうど良い。
 ところが軽すぎるため読んでいる間は楽しいのですが、読み終わるとほとんど何も残らない。時間つぶしには最適なのだが。


No.341 7点 玄武塔事件
太田忠司
(2013/08/25 18:17登録)
ちょっと綾辻の館シリーズを思わせるようなお話です。ちゃんと本格嗜好ではあるのだが、俊介君の話なので軽くて読みやすくどうしても漫画チックなところはあります。まあそれがこのシリーズと作者の個性でもあるのですが。
 でだしはなかなかよいのです。結構わけありでおどろおどろしい雰囲気にもなりそうなのです。でもこのまま怪奇本格とはならずに終わります。
 話の内容からなら俊介君シリーズでないほうがもっとよかったのかも。結構などんでん返しもあることだし。 


No.340 7点 ガラスの恋人
森村誠一
(2013/08/25 18:02登録)
社会派ミステリーとしては読みやすい。歳の離れた過去に相当の何かを持った男女が惹かれあっていくさまはさベテラン作家らしく巧みに描かれている。しかも桐生という男がやたら強い。この男の過去は最後まではっきりしたことは述べられていないのだが、やくざ関係のゴルゴ13なみの殺し屋だったようだ。その割には女を失ったあとのダメージが怖くてやたら引いてしまっているところは、作者が歳をとったせいだろうか。
 こんな男ならもう少し決断力がありそうに思いますが。
 未消化なところも残るのですが、結構面白かった。


No.339 7点 夜叉沼事件
太田忠司
(2013/08/18 08:35登録)
 この小説が出てすぐ読んだのでもう20年ほどたってしまいました。今回再読しましたが内容はすっかり忘れていましたので楽しく読みました。
 俊介君シリーズは霞田兄妹シリーズとだいたい平行して出てきたので、当時こちらはなんとなくお子様向きのように思えたのですが(装丁も漫画チックでおじさんが読むには気恥ずかしい)、きちんとトリックも使ってあり軽めの本格物として十分通用する内容と思います。
 比較的つらい話なのですが読みやすく読後感も悪くありません。長さもちょうど良く一日でだいたい読めます。休日に読むにはちょうど良いと思います。
 このシリーズは本棚にすべてあるので読み直してみようかな。


No.338 6点 折れた竜骨
米澤穂信
(2013/08/11 15:33登録)
古典部シリーズなんかは結構すきだったのですが、インシテミルで米澤氏の小説に嫌悪感を感じて以来ちょっと遠ざかっていました。
 この作品は作家としてデビューする以前に構想されたとのことなので初期の作品のようなみずみずしさが味わえるのではと思いよんでみました。
 外国の名前ばかりで実に読みにくいのですが、何とか最後まで読み通しました。
 わたしの評価は皆さんと比べて低いようです。本格物のもファンタジーもすきなのですが、本格とファンタジーを融合させるととても変な感じに思えてしまうのです。
 本格のための無理やり作り話(所詮本格物は作り話なのですが)といった感が強くこういった話はさほど楽しくないのです。


No.337 7点 シートン(探偵)動物記
柳広司
(2013/08/04 08:25登録)
この手の話は好きです。確かに本格推理小説としてはちょっと甘いのですが、動物の行動から推理していく過程は実に面白い。
 シートン老人も友人と鳥の言葉で会話したりして誠に楽しい。からすの言葉にいたってはちゃんと五線譜がついており歌うこともできる(ちょっと歌ってみたのです)。
 話としては一番初めの「カランボーの悪魔」が断然面白く、以下少し落ちるように思います。
 話の数を減らしてでももう少し内容を濃くしてもらえていたらもっとよかった。
 これは子供が読んでもよいように書けるとは思いますが、あくまでも大人向きの小説です。


No.336 6点 幻竜苑事件
太田忠司
(2013/08/03 07:58登録)
 この作品もちゃんと本格嗜好にできているのですが、探偵がれいによって子供と猫なので(大人も端には出るが)かなり軽い感じとなってしまう。読みやすいしお話としてもそれなりなのだが、表装や挿絵がさらに漫画チックな雰囲気を盛り上げており、1作目の月光亭が結構よかったのにちょっと買うのをためらったことを思い出します(ずいぶん昔のことですが)。
 今回再読してみましたが、やっぱりそれなりに面白く一気に読破してしまいました。
 子供でも楽しめるというところはよいのですが、子供にはやや難しく大人には気恥ずかしいという若干中途半端な感じは否めません。
 本格物の入り口として読むにはなかなかよいのですが。


No.335 7点 奇談蒐集家
太田忠司
(2013/08/01 07:57登録)
久しぶりに作者の最近作を読みました。太田氏は同郷の作家でもありひいきにしていたのですが、だんだん本格物から遠ざかっている印象がありました。ことに本格物もどきの幻想小説を読んだ際にはだまされた感がつよく、以後作者から遠ざかっていたのです。
 この作品は初めから幻想小説の要素があることを示した上での話しなので納得して読めました。
 昔のものに比べてかなり引き締まった表現となっており、作者の文章力の変化(多分進歩)を感じました。
 話の内容も興味深くいかにもといった雰囲気でよい。最後に全員見事に現実的判断が下されてしまうのでこれもまずまず爽快でした。最後のすべては奇談のためにで、もうひとひねりあるので帯にあるようにこの本は必ず初めから読まないといけませんね。


No.334 6点 ダブル・ジョーカー
柳広司
(2013/08/01 07:47登録)
 シリーズ第2作目だが、わたしは3作目を初めに読んだので3回目のD機関とのお付き合いとなりました。
 さすがに3作目となるとちょっと飽きてきた。
 かなり現実感があるお話なのでちょっと違和感の生じてきたのです。
 超人的なスパイたちなのだが、スパイ活動にあらゆる部門に特別に秀でている必要はないでしょう。格闘技などはずっと訓練していないとすぐにだめになるし、訓練していれば人目を引く体つきとなるので、このお話に出てくるようなスパイには向かないでしょう。
 それに自尊心だけでこんな割の合わない仕事に忠誠心を持って働かせるのは無理そうな気もしますね。
 でもお話としてはまあ良くできているし、読んで悪い印象を持つようなことはない。ただ余り爽快感もないので印象がやや悪い。
 この話の中ではダブルジョーカーが一番面白かった。これが初めにあるのでそれ以後の作品がちょっと落ちる感じとなってしまったことは否めません。話の順番を変えたほうがよさそうです。


No.333 7点 ジョーカー・ゲーム
柳広司
(2013/08/01 07:36登録)
間違えて第3作のパラダイスロストを読んでしまったので、改めて第1作を読みました。D機関の成立などが分かって、やっぱりこの作品は1作目から読んだほうがよいようです。
 こんな機関や人材が本当にいて、これほどうまくいけばなんでも解決しそうです。まさに昔のスパイ大作戦のよう。
 まあ読んでいて面白いし読みやすい。
 でも自尊心が強く他人を信用しない人たちですから本当に裏切らないでやってくれるのかなあ。忠誠心など全くないようだしすぐに寝返ったり二重スパイなんかをやりそうですがねえ。


No.332 7点 月光亭事件
太田忠司
(2013/07/24 16:32登録)
 20年ぶりぐらいに本書を再読しました。うーん思ったより本格している。メインのトリックもかなり大掛かりです。初回も今回も思ったのですが、探偵が子供とネコではねえ。当時の徳間書店版では漫画チックな表紙と挿絵がさらにお気軽主義的な雰囲気を守り立てている。
 おじさんが読むにはちょっと気恥ずかしい。
 作者は結構気に入っているようですが、本格派好きの方は初めから手に取らないのがこのサイトでの不評の原因なのかも。
 非常に読みやすくちゃんと密室トリック(しかもかなり大掛かり)もあって本来なら本格派が好みの読者にうける要素がたっぷりなのですがねえ。


 以下ネタバレ
 ちょっとだけ口うるさい読者としての付け足しをすると、じつはこのトリックの一部はほとんど成り立たない。やけどと電撃傷はちょっと詳しくみるとすぐ分かってしまうのです。鑑識が生体反応があるところとないところがあるまで調べるなら、このトリックはその時点で分かるのです。せっかく面白いものに口出しをして申し訳ないのですが、職業柄どうしても気になってしまうのです。


No.331 7点 メディアスターは最後に笑う
水原秀策
(2013/07/24 16:16登録)
お話としては結構面白いのだが、あまり好きな小説ではない。
主人公が気に入らないのです。傲岸不遜なうえに反省や思いやりなど一切なし。最後のほうになり何とか納得できるキャラも見せるのだが。こんなやつはいっそ犯人のほうが気分がよいぐらい。


No.330 7点 パラダイス・ロスト
柳広司
(2013/07/21 09:39登録)
 なかなか面白かった。実はわたしはこの作品が第3作とは知らずに購入してしまった。インターネット販売は気をつけないとこういったどじを踏むようです(わたしだけかもしれませんが)。でもぜんぜん読むのに不都合はありませんでした。
 うーむ、これぐらい優秀な人間が何人もいたら日本は負けなかったかもね。若干現実感がないためか楽しく読めたことは確かです。
 でもやっぱり最初の作品から読むべきなのでしょうね。早速購入します。


No.329 6点 猿の悲しみ
樋口有介
(2013/06/30 09:26登録)
 お気に入りの樋口氏の新作ということで早速購入。相変わらず文章はテンポが良くなのだが、なんだか違和感がある。今までの氏の作品では話の合間に微妙な季節感のある描写があり、これがまた楽しいのだ。ところが本書ではそういった描写はあるのだが、自然に対する文章がすっかり抜けている。人工的なものの文のみではなんだか寂しい。登場人物の洒落た会話も以前の作よりはかなり低下している。
 主人公のサエはヤンママで殺人の過去があり、とこれまた極端な設定ではあるが、氏にはホームレスの元刑事もあったりしたこともありそれほど違和感はない。作者の女性体験が豊富になるにつれ?女性に対する目はさらに冷えてきているようです。同世代の男として良く分かるけどもうちょっとやさしい女の子もいてほしいなあ。
 それにしてもサエは強すぎるねえ。女でこれほど強い状態を維持するのなら毎日練習に励んでいないと無理そうですが--。まあ天才なのでしょう。


No.328 6点 崇峻天皇暗殺事件
豊田有恒
(2013/06/26 21:12登録)
この本はずいぶん前に読んだものなのだが余り印象に残っていない。たまたま整理していたら出てきたので再読してみた。
 歴史推理は大好き。この小説の時代も興味を持っている。しかも意外な内容。どれをとっても非常に興味深いもののはずなのだが、もうひとつ面白みに欠ける。
 聖徳太子が皇位につかなかった理由も推古天皇が女帝として始めて皇位についた理由もかなりすっきり説明されている。しかしわたしの頭のなかには陰気で要領の悪い聖徳太子像や恐ろしい女である推古天皇というのはどうしてもなじまないのです。
 初めて読んだときはずいぶん若いころだったのだが、このある意味で驚くべき内容をほとんど忘れてしまうとは!。当時から頭が固かったのかなあ。


No.327 8点 イニシエーションラブ
乾くるみ
(2013/06/21 21:12登録)
 「最後から2行目で本書は全く違った物語に変貌する」と裏書に書いてあるのだが、読んでみるとなかなか素敵な青春小説のよう。なんだか自分の青春時代に重なるようにも思えて実にほほえましい。これがどうなるのだろうと思いつつ後半になると何となく違和感を感じてきた。
 確かに最後でびっくり。こんな風とは思わなかった。はっきり言って良く分からないまま終了。大矢氏の解説に再読のお供にとあったところを読み、再読してみるとこれはなかなかの話なのだ。
 女は怖いねえ。


No.326 6点 十八の夏
光原百合
(2013/06/19 17:03登録)
 日本推理作家協会賞の作品なのだが、あまり推理的要素はない。かといって帯にあるように恋愛小説部門第1位というほどのものでもないように思います。悪くはないのですが、そんなにもてはやされるほど良くもない。女性が読めばよいのかもしれない。
 わたしには女性が若いころを描くものはどうも感情移入ができにくいところがあります。若い男からみると素敵な女性はいつも神秘でした。ところが女性が女性を描くとそういった神秘性は全くなく(当然ですが)、美人の描写があっても男をひきつける性的魅力が表現されていないことが多い。まあ同姓が描くのですからやむをえないのですが、女性主人公はどうも魅力に乏しくさらに男にはかけない鈍感さが目立ってしまうのです。
 そういった感じがこの作品にもあり、主人公にさほど魅力を感じなかったので読んでいてさほど感銘を受けませんでした。


No.325 7点 追悼者
折原一
(2013/06/16 13:25登録)
 折原一の作品は複雑で精緻な構造なものが多いため時に読むのがつらいということもあるのですが、この作品は誰でも知っている事件のようなストーリーのため入り込むのに苦労はありませんでした。読んでいくと興味深いが複雑でわたしなどは完全に作者の掌でもてあそばれた状態で、途中でぜんぜん違う結果を提示されているにもかかわらずその時点ではそうなのかと納得してしまった。
 犯人など当然指摘できず、名前を指摘されてもえーと誰だったかなといった始末です。きっと読み返すとしっかり伏線が張ってあると思うのですが、もういちど読む気にはなれず、作者を信用して?これでよいということとしました。
 でも読んでいて結構楽しかったのだから不思議なものです。


No.324 6点 京都祇園舞妓追走の殺人
柏木圭一郎
(2013/06/12 21:30登録)
 このシリーズは結構書かれておりドラマ化もされているのですが、このサイトではまったく取り上げられていない。確かに旅情ミステリーとされるジャンルなので、本格物とすればちょっと弱いことは否めませんが、読みやすくちょっとした時間つぶしには悪くないと思います。
 ダイイングメッセージなども出てくるが本格物として読むとちょっといけない気もする扱いかたではあります。
 主人公に癖がなく、京都の雰囲気と料理番組風の内容が盛り込まれているので読んでいて楽しいといえば楽しい。


No.323 5点 最も遠い銀河
白川道
(2013/06/12 21:15登録)
 文庫本4冊に渡る長編小説で作者は相当力を入れたことと思いますが、残念ながら私にははあまりよろしくありませんでした。出だしはなかなかよいのです。主人公も悪くありません。長編なのに読みやすくすらすら読めるのもよろしい。
 ところがこの小説は根本的に天国への階段の焼き直しなのです。さらに悪いことには主人公を追い詰める退役警察官の執念が的外れなことです。これでは主人公を心から慕う女性の思いを踏みにじることとなってしまうのに命が尽きようとしているのに追い詰めていく姿は、共感が得られ難いでしょう。金が有るとは思えないのに北海道から東京へ何度も旅行して相当日数滞在して、被害者が(本当は被害者ではないのですが)最もやってほしくないことを暴き続ける姿はストーカー以外何ものでもない。
 この小説の話の展開で相手のこともわかり真相も分かったら、それ以上追求しないのが人というものと思いますけども。
 そういった内容なので「天国への階段」より評価が大幅に下がってしまいました。

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