makomakoさんの登録情報 | |
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平均点:6.17点 | 書評数:895件 |
No.375 | 7点 | ビブリア古書堂の事件手帖5 三上延 |
(2014/02/16 12:15登録) シリーズも7作目となるとだんだんだれてくることが多いのですが、これはなかなかしっかりしています。 古書を中心とした推理を交えながらラブストーリが展開していくのですが、お話は佳境となってきて次が出ればすぐ買ってしまいそう。 古書推理としては手塚治虫のブラックジャックが一番興味深かった。わたしの年代はこれをリアルタイムで読んでいるのだが、まさか違ったバージョンが何冊もあるとは知らなかった。コレをかいた時期の手塚治虫の評価が下がり気味であったこともぜんぜん知らなかった。驚きです。 |
No.374 | 6点 | キングを探せ 法月綸太郎 |
(2014/02/16 12:03登録) 良くできた本格推理小説であることは間違いないでしょう。答えが見えているようでも一筋縄ではいかない。謎も複線もそれに対する資料の呈示もまず申し分なく、このサイトでの評価が高いのは当然といえます。 作者は初期には非常につらい物語を書いていたのですが、最近は乾いた文章で推理の結晶体を求めているように感じます。 それが好きな方(たいていの本格物の好みの方は好きなのでしょう、わたしもその一人ではあります)にはとても面白くそうでない人には全く興味が湧かないといった内容となっています。 ただここまでやってしまうとなんだか数学の問題の答えを順々に教えていただいているような味気ない感じが否めませんでした。 |
No.373 | 7点 | 三百年の謎匣 芦辺拓 |
(2014/01/31 20:46登録) 一つの物語の中に連作と歴史を取り入れた贅沢な構造を持つ意欲作だと思います。それぞれの話が興味深くしかも最後にみごとに終結した結末となる、そういった点では素晴らしい作品だと思います。最後に森江俊作が謎を解き明かすのですが、それはもう凄い博覧強記で、いくらなんでもここまで頭に入っている人はいないのでは。 解決まで余分でいやみな話がだらだらと述べられているのもどうかと思いますが、ここまで簡略された解決編を見せられるとどうも問題の回答を盗み読みしているような感覚にとらわれてしまった。もうすこし解決に至るまでの過程が書かれていたほうが良かった。 |
No.372 | 4点 | いつまでもショパン 中山七里 |
(2014/01/20 19:53登録) 前2作がよかったので期待して読んだのですが、残念ながらこれは良くなかった。 スケールを広げるということからか、ポーランドのショパンコンクールが主たる舞台となっているが、アフガニスタンや日本の話も絡ませてあるが必然性が少なく、推理小説としては単純であまりできがよろしくない。 さらにショパンのピアノ演奏方法についての長々とした描写があり(前作ではこの部分がよかったのですがいかんせん長くてくどすぎる)クラシック音楽が好きなわたしですら飛ばし読みしてしまうのだすからこの分野に興味のない方はきっとうんざりすることと思います。 作者はもうこういった方向で書かないほうがよいのかもしれない。 なお作中に出てくるショパンコンクールでのポーランド人優勝者のラファウ・ブレハッチは本当にこんな体験をしたのでしょうか。そういえば昨年彼のコンサートで曲が終わって舞台から降りる際にあちこちを見ていたことがちょっと気になっていたのですが。 蛇足ですがコンサート自体は素晴らしかったです。 |
No.371 | 6点 | はやく名探偵になりたい 東川篤哉 |
(2014/01/19 10:16登録) このシリーズのファンなのですが、これはもう一つでした。ユーモアも若干足りないし、トリックも無理が多すぎるのです。 でも本格物の大家とされる方の作品で「どんどんーー」や「奇想--」みたいに無茶なトリックを見せられるとそりゃないよと思ってしまうのだが、もともとお遊びですと断っているようなシリーズではまあ許せるかな。あとからみればちゃんと伏線も張ってあることだし。 悪くはないのだが、ファンとしては作者にはもうちょっとパンチが効いた作品を期待したい。 |
No.370 | 5点 | 貴族探偵 麻耶雄嵩 |
(2014/01/13 10:49登録) どうもこの作家とは相性が良くないのかもしれない。貴族探偵と自分で名乗っているのだが、自分は全く何もしないでお助けマンのような使用人たちが事件を解決する。この探偵のもとは昔漫画であった「おぼっちゃまくん」なのであろうか。 推理内容もまあ納得できるものもあるが、ひどいのもあるよ。 以下ネタバレ。 そっくりさんが出てくるのは反則みたいだし、死にいたるような怪我をしているのにそれに気づかず犯罪を犯していたなどと、到底納得しかねる結論で物語りはおしまい。 作者は本格推理なんて所詮こんなもんですと言いたいのであろうか。 かく言う私も文庫の帯に2014本格ミステリベスト10、第1位をみて購入してしまったのだが、良くみるとそのあとに---のシリーズの第1弾!!とある。 だまされた。 |
No.369 | 8点 | 殺意は必ず三度ある 東川篤哉 |
(2014/01/10 20:51登録) このシリーズは作者が代表作というだけあってユーモアもミステリーも出来がよい。 物語のはじめは抱腹絶倒といってよい面白さで、何度も声を出して笑ってしまった。電車の中などで読むと変な人と勘違いされそうなので一人で読んだほうがよいかも。 途中から本格推理小説となりこれも実にきちんと書かれている。トリックも大胆で周到と思います。個人的には作者がブレークしたディナーシリーズよりずっとよい出来だと思います。 以下多少ネタバレ。 減点はご主人が亡くなったのにえらく冷静で悲しみなどほとんどみせずに謎を解いていく車椅子の婦人。悪くかかれてはいないのですが実際の行動としてはとても冷たく違和感を感じたところです。 |
No.368 | 6点 | 丑三つ時から夜明けまで 大倉崇裕 |
(2014/01/06 21:13登録) 推理小説に幽霊のような超常現象を取り入れるとばかばかしい限りのお話となってしまうのだが、この小説はまあ何とかギリギリ合格といったところでしょう。 怪しいスタッフが揃った幽霊専門の県警五課なるものが登場して一課をコケにするかと思えば、結構どじな推理もしたりして、まあそれなりに面白い。 五課のスタッフは全員格好といい名前といい凄そうなのだが、その割にはたいしたことはなく、幽霊に簡単にやられたりしてしまう。こんな登場人物ならもうすこし特徴だった活躍ができそうなのに、なんだかその他大勢といった感じとなってしまっているのが残念です。 最後の話はちょっとびっくりではあるが、このお話はこの連作一つで十分でしょう。 |
No.367 | 6点 | 花の鎖 湊かなえ |
(2014/01/02 17:08登録) 三人の女性の話が別々のようで、でもいずれ必ず絡み合ってくるという展開が初めから誰にでも分かるようになっているので、どんな風に絡むのかが読みどころといったところなのでしょう。 三人の女性の話はどろどろとした展開となり最後には確かに結びついてくる。なるほどこういう話だったのかと納得はするのだがそれが感動に結びつくというものではなかった。 女性にしか書けないお話ではあり、その点男性にとって興味深いとともに理解し難いところもある。 女性が読んだらもっと面白いのかもしれない。 |
No.366 | 3点 | 鏡の城の美女 石崎幸二 |
(2013/12/30 13:00登録) これはぜんぜん良くなかったです。 たった一つのトリックを思いついたのでそれをうすーく延ばして長編風に仕上げたとしか思えない。そのトリックもほとんどのトリックを見破れないわたしでも簡単に分かってしまうようなちゃちなもので、それ以外はばかな娘たちとやたらセクハラだと決め付けられて女に殴られるという自虐的な作者の会話を延々と語られるのです。さらに3人の娘のうちミリアとユリの書き分けができていないので発言かはっきりしない。ひょっとして何作目かのシリーズ物なのでずっと読んできた人にはわかるのかも(こんなものずっと読むかなあ)。 短編化してくだらない会話をなくしたらまだ読めたかもしれない。 |
No.365 | 7点 | 放課後はミステリーとともに 東川篤哉 |
(2013/12/27 20:30登録) 私としては作者の名を知らしめた「謎解きはーー」シリーズよりこちらのほうが好きです。本格物としても明らかに上だと思うのです。 まず名前が良い。探偵が(あんまり探偵として機能してはいないが)霧ヶ峰涼とは実に覚えやすい。なかなか愛らしいキャラクターで読んでいてだんだん好きになりました。 結構なトリックも楽しめる。お話ごとに結構大胆なトリックを惜しげなく投入しているんです。まあ現実には無理そうなトリックもあるけど、ユーモアミステリーだから許せてしまう。 バカミスなる小説ではしばしば内容も貧弱でばかばかしいものがみうけられるけど、作者の小説はそれとは一線を画する本格ユーモアミステリーと思います。 |
No.364 | 7点 | ペルソナ探偵 黒田研二 |
(2013/12/23 09:07登録) インターネットを介したお話はあまり得意ではないが、これならわたしでも何とかついていけました。 いろんな作者の作風を書き分ける作者の筆力はなかなかのものです。作中作のいずれもがそこそこの面白く、しかも最後にかなりのどんでん返しもあるサービス満点の作品でもあります。 最後が多少複雑で分かり難いところもあったが、結構楽しめました。 |
No.363 | 6点 | 疾風ロンド 東野圭吾 |
(2013/12/15 14:27登録) 東野圭吾氏は話題作を次々にかけるということだけでも本当にすごい才能だと思いますが、やはり多作すぎると内容は薄いものが出てきてしまうのは避けられないのでしょうか。 本作品は細菌学兵器開発についてのお話なのですが、以前の氏の作品であったらもっと凝った内容となったのではと思われます。 本格推理度はきわめて薄く、冒険物というほどでもありません。話の進行は二転三転しますが、どこか行き当たりばったりでご都合主義なのです。 それでもさすがに物語を語る手腕があるのでなんとか最後まで読ませてしまいますが、帯にあるようなぶっとびとは程遠いのは残念です。 まあ暇つぶし程度なら問題ない作品ですが。 |
No.362 | 6点 | 一応の推定 広川純 |
(2013/12/10 20:14登録) 保険調査員としばしば話をせざるをえない仕事をしているのでこの業種に対する不信感はどうしてもぬぐえない。保険って入るときは良いことばかり言っているけどいざ払うとなると何とか理由をつけて払わないことに全力を尽くす。この本を読むとやっぱり保険調査員は保険金を払わない調査をすると報奨金が出るんだということが良く分かりました。やっぱりね。 作者は保険調査会社関係の方。こういった職種でも正義感が強くきちんとやる方もいることを今後理解することとしましょう。 ただ小説のないように関しては??がつくところがかなりあります。 死体検案書に自殺と書いていないなんてところにこだわっているのはありえないでしょう。自殺か他殺か事故かなんてことは医師にとって何の係わり合いもないのです。これを決めるのは司法の領域でしょう。 また最後の報告では残念ながら決定的な証拠とはなりえません。 なまじ自分が知っているところではあまり楽しめないようです。 こんなこと知らなかったらもっともらしい話に納得して感動したかもしれません。 このサイトでは社会は推理小説は取り上げられ方が少ないのですが、感動的な話しだし良い小説と思います。 |
No.361 | 6点 | 謎解きはディナーのあとで 2 東川篤哉 |
(2013/12/03 18:09登録) このシリーズがどうしてこんなにあたったのか分からない。氏の作品にはもっと面白いものがたくさんあるのだが。 でもこれだってまあ悪くはない。ユーモアがパターン化されているのであんまり笑えないが、きちんと本格していると思います。さらっと読むには良いのではないでしょうか。 ところで今回も気になったのですが、作者はジャガーが左ハンドルであると思っているようです(他の作品でも日本のスポーツとジャガーが並んで止まって運転手が両側から出てきたというシーンがあった)。イギリスは日本と同じ「人は右車は左」の交通ルールの世界なので当然ジャガーは右ハンドルなのです(なぜかウインカーとワイパーの配置は日本と反対についているの)。 本格物をはじめて読む方にとってはハードルが低く、しかも本格物の楽しさは味わえるのですからお勧めではないかと思います。 |
No.360 | 6点 | 目白台サイドキック 魔女の吐息は紅い 太田忠司 |
(2013/11/29 20:24登録) このシリーズの第1作を読んだときから次が出ることを予想していましたがやっぱり出てきました。第1作の「女神の手は白い」で北小路準を何でこんな設定にしたかが疑問でしたが、この作品を読んで分かりました。 なるほどこれがやりたかったのだ。太田さんこの作品を書くために1作目に本格物としての「キズ」をあえて作ったのですね。 太田氏の作品ではその物語の内容より登場人物が好きで読んでしまうところがあるのですが、本シリーズの南塚君はあんまり感じが良くないね。しかも今回は北小路との掛け合いが少なくちょっと物足りない。シリーズ化するために内容を薄めたような感じでした。 本格ものを書き続けるのは大変と思いますが、ファンとしては作者にはぜひ頑張ってもらって霞田シリーズのようなお話を作ってもらいたいのです。狩野君シリーズも書いてほしいなあ。 |
No.359 | 6点 | 女王陛下のユリシーズ号 アリステア・マクリーン |
(2013/11/23 17:26登録) まあ海洋冒険小説として素晴らしいのでしょうが、たくさんの登場人物がきちんと描ききれていない上に人を呼ぶのに本名だったり愛称で呼んだりして(これがイギリスでは当然なのでしょうが)とても分かり難かった。 それにしてもイギリス海軍は統制が取れていないことはなはだしい。イギリス軍は最悪の気象条件でぼろぼろ。しかるにどういうわけかドイツ軍は同様の気象条件で戦っているのに(そんな風には書かれていないがきっとそうでしょう)実に有能で勇敢。Uボートなんか遅くてちっちゃくてユリシーズよりきっと大変だよ。 もちろん有名な作品なので面白いところも多々あったのだが、期待したほどのことはなかったというのがわたしの印象です。 |
No.358 | 7点 | 仮面山荘殺人事件 東野圭吾 |
(2013/11/10 09:19登録) これを書いたころの東野氏の作品のほうが今のものより好きです。最近のものはこれだけ多作にもかかわらず比較的でこぼこが少なく良く出来ていると思うのですが、だんだん孤独で冷たい感じがするのです。その点20年ほど前のこの作品はどこかに暖かさがありしかもトリック、どんでん返しと読むものをひきつけます。 この作品も登場人物がある面では寛容であたたかい。心の冷えた人間の心の冷えたお話というのはびっくりしたりぞっとしたりしますが読後感が悪いのです。 以下ネタバレがあります。 本作品は殺害?された明美も非常にかわいく同情の念を禁じえません。 ただ雪絵がこの役割をどうして引き受けたかがわからない。この娘がいなければ話は成り立たないのだが、こんなこと普通絶対引き受けないと思うのですが。 ここが多少減点です。でも大変面白く優れた本格物と思います。 |
No.357 | 6点 | セカンド・ラブ 乾くるみ |
(2013/11/05 20:44登録) わたしにはこの作品は分からないところが多くあります。どういう風にもとれる様に書かれたのだとは思いますが。それがすっきりしないといえばすっきりしない。 イニシエーション・ラビと同様に女はかわいいけど怖いよというところをまざまざと見せてくれます。わたしのような読者は当然作者の思いどうりにだまされ最後にぎゃふんと言わされるのですが、みなさんが述べておられるようにイニシエーション・ラブよりちょっと落ちる。どうもすっきりしないところがあるのです。 |
No.356 | 7点 | 猫は知っていた 仁木悦子 |
(2013/11/05 20:32登録) かなり前の作品なので社会情勢が今と異なるところがかえって面白かった。だいたい医院の病室に下宿するなんてことは今では到底考えられないのだが当時はこんなこともあったのでしょうね。 家の中で殺人事件があったのに家族が案外ドライでいるところなど今の無機質なパズル小説に近い感じがしました。 ただトリックはどうかなあ。猫を使って実験したって確実性は乏しいしちょっと無理があるように思うけど。 でも全体としてまずまずきちんとした本格推理小説でした。だからこそ何度も再販されているのでしょう。 |