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ミステリの祭典

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一応の推定

作家 広川純
出版日2006年06月
平均点7.00点
書評数3人

No.3 7点 パンやん
(2016/04/06 06:39登録)
保険業界の内幕が描かれる社会派であるが、コツコツと事実を積み上げて真相に近づく過程は、大トリック好きにはとても新鮮。舞台が、大阪、滋賀、京都と関西なのもうれしいが、やはり、キックバックがあるのかぁ〜。

No.2 6点 makomako
(2013/12/10 20:14登録)
 保険調査員としばしば話をせざるをえない仕事をしているのでこの業種に対する不信感はどうしてもぬぐえない。保険って入るときは良いことばかり言っているけどいざ払うとなると何とか理由をつけて払わないことに全力を尽くす。この本を読むとやっぱり保険調査員は保険金を払わない調査をすると報奨金が出るんだということが良く分かりました。やっぱりね。
 作者は保険調査会社関係の方。こういった職種でも正義感が強くきちんとやる方もいることを今後理解することとしましょう。
 ただ小説のないように関しては??がつくところがかなりあります。
 死体検案書に自殺と書いていないなんてところにこだわっているのはありえないでしょう。自殺か他殺か事故かなんてことは医師にとって何の係わり合いもないのです。これを決めるのは司法の領域でしょう。
 また最後の報告では残念ながら決定的な証拠とはなりえません。
 なまじ自分が知っているところではあまり楽しめないようです。
 こんなこと知らなかったらもっともらしい話に納得して感動したかもしれません。
 このサイトでは社会は推理小説は取り上げられ方が少ないのですが、感動的な話しだし良い小説と思います。
 

No.1 8点
(2013/10/21 17:15登録)
第13回(2006年度)松本清張賞受賞作。
男性が駅のホームから落下し、列車に撥ねられ轢死した。
事故死なのか自殺なのか。事件性がないことは警察が早々と解明している。保険の支払いの要否(自殺なら損保保険金は出ない)をめぐって、定年間際の保険調査員、村越が聞き込みをしながら調査する。その聞き込みスタイルは刑事のそれと変わりはない。

タイトルの「一応の推定」は法律用語を連想させ、内容もそれに合った重苦しい社会派モノを予想していたが、そんなことはなかった。わずかずつだが聞き込みにより謎が解明していき、そして最後にはどんでん返しもある。そんな内容に満足した。伏線もよかった。
聞き込みにより、絡まった糸が少しずつほぐれていくというストーリーと、流れるような話の展開にぐいぐいと引き込まれた。読みやすいというだけではなく、読み応えがあった。
なお「一応の推定」というのは、保険会社側の自殺の立証が困難であっても、典型的な自殺の情況が立証されればそれで足りるという、裁判の際の判断基準のこと。

事故死か自殺かを探るだけの話だから地味であることにはちがいないが、この程度の謎をもとに長編ミステリーを書き上げた作者の筆力をむしろ讃えたい。
ということで、本格ミステリーとしても楽しめる、賞に値する社会派地味ミステリーという評価でいいでしょう。

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