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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.17点 書評数:887件

プロフィール| 書評

No.387 4点 扼殺のロンド
小島正樹
(2014/06/08 10:28登録)
 途中まではなかなか良い。「お、小島正樹氏もだんだん小説が上手になったなあ」などど思っていた。
 氏の小説には多くの謎やトリックが詰め込まれており、途中まではこれで本当に謎が解けるのだろうかと思うほどなのだが、登場人物の魅力がいまいちなのと最後の謎解きでたいていはがっくりしてしまう。謎が不思議すぎるのでどうしても解決に無理を生じてしまう。
 この小説では犯人は意外だし、殺害方法も一見納得される方も多いと思うのですが、実は医学的に言えばこの方法はほとんどありえない。この分野を専門としてきた者の悲しさで、現実にはできないことがわかってしまうと解決部分は実にばかばかしくなってしまう。ありえない医学的方法の殺人は密室は超能力を使いましたと説明されると同様なのです。
 残念です。もう少しきちんと調べてから書いてほしかったなあ。


No.386 6点 夜歩く
ジョン・ディクスン・カー
(2014/05/28 18:48登録)
 カーの作品はあまり多く読んだわけではないですが、以前は変な登場人物といかにも作り物と思われるようなシチュエーションさらにこなれない翻訳にかなり違和感を感じていました。最近は日本の作品でもへんてこな登場人物がよく出てくるのでだいぶん慣れたせいかこの作品ではさほど違和感がなく読めました。
 密室のなぞは全然解けなかったけど、こんな程度でよいのかなあ。
 本格推理が好きな方には面白いと思いますが、そうでなければ読んでいくのも苦痛かもしれない。


No.385 6点 海神の晩餐
若竹七海
(2014/05/18 21:19登録)
 再読です。出だしは良いです。氷川丸に主人公が乗るあたりまではワクワクして素敵な雰囲気。作中作やパズルなど魅力的ななぞが提示され前に読んだことなどすっかり忘れて興味津々となるのですが、途中からちょっとだれてきて最後になってもパズルのなぞは解かれずなんだか期待外れとなって幸せなエンディングとなってしまう。
 どうも尻切れトンボなのです。作者は海外ミステリーにも造詣が深いようで色々な薀蓄が好事家のためのノートとして巻末に乗っているのも楽しいのですが、これ程のバックグラウンドを含めているのだったらもっと本格としてがちんと書いてほしいなあ。


No.384 5点 邪馬台
北森鴻
(2014/05/03 08:06登録)
 北森氏逝去により未完となった作品を浅野里沙子氏が書き継ぎ完成させた大作。邪馬台国と忽然と消失した村に伝わる文献の謎解きという魅力的なテーマに果敢に挑んだ野心作ではある。しかし完成に持ち込んでくれた浅野氏には申しわけないが、途中からえらくご都合主義となり腰砕けとなってしまったのは残念です。
 北森氏は好きな作家ですが、蓮杖那智が好きでないのでこのシリーズのみ読み残していました。魅力的な内容なのにやたらな暴君の主人公にペコペコの助手というのが面白くない。読んでいるとだんだん腹が立ってきて、とても主人公に肩入れできないのです。他のシリーズのメインキャラクターで本作にも出てくる性悪の冬狐や越間なんかは大好きなんですがねえ。


No.383 6点 晴れた日は図書館へ行こう
緑川聖司
(2014/04/25 21:30登録)
子供向けとなっているが、はたしてこれは子供が喜ぶ内容か否かは不明。子供が主人公となっているから子供向けということなのだろうか。主人公は小学5年生にしては随分物わかりがよく大人びている。
 一応謎はあるが、当然ながら残酷な犯罪や殺人などはなく日常の不思議な事柄を取り上げたお話。
 素敵なお話となるには一味足りない気がします。
 暇つぶしに読むには悪くはないが、すぐ読めてしまうのであんまり暇つぶしにもならないかも。


No.382 6点 生存者ゼロ
安生正
(2014/04/13 11:32登録)
 このミス大賞受賞作品で本屋に山積みとなっていたものを購入。
 なかなかテンポは良い。はじめは強力な病原性を持ち感染力が強く対処不能な細菌の話のようなので何となく昔映画で見たアンドロメダ病原体に似ているなあと思っていたら、途中から大きく様相は異なってきて、一筋縄ではいかない。
 かなり面白いのだが、途中からなんだか神がかった展開となってくるのが違和感を覚える。美人生物学者ももう一つ魅力的でない。
 この作者の次作がどうなるか興味を抱いています。
 良いほうへ振れれば素晴らしい作品に出会えるかも。


No.381 6点 珈琲店タレーランの事件簿3
岡崎琢磨
(2014/04/13 11:17登録)
 このシリーズ初めての長編なのでちょっと期待して読んだのだが、まあこんなもんでしょう。こういった話では主人公の魅力が大きいのだが、切間美星なるチビのバリスタはやたら気が強く私としてはもう一つ。大体このシリーズは「ビブリア古書堂」が売れたのに乗じて発売された?ような気もするのだが、主人公の栞子さんと比べてだいぶ劣る。まあ好き好きだけどね。
 本格物として伏線も張ってあり犯行手段もあまり無理がないのだが、私のように作者に大体は騙されて翻弄されているのが好きなものにとっては犯人は割と簡単にわかってしまってやや興ざめ。
 話がバリスタコンクールで次々に起こる奇怪な事件。こんな事件が起きればすぐ中止になるはずなのになぜか続行される。うーん現実性がないんだなあ。
 でも作者がしっかり本格物を書こうとしている姿勢はすばらしい。
 次作を期待しています。


No.380 6点 和菓子とアン
坂木司
(2014/03/19 21:04登録)
 これはミステリーというよりテレビの連ドラ風のお話です。読んでいていやみはなく実に読みやすいがインパクトといったものはほとんどない。
 殺伐とした小説よりはずっとよいが、アームチェアーデテクチブとして読んだら大いに物足りない。
 NHKの連ドラを毎日見て楽しんでいる人にはお勧めだが、複雑なトリックを好む読者だと「なにこれ」といった感じとなるかもしれません。


No.379 4点 青空の卵
坂木司
(2014/03/12 20:40登録)
 作者はシャーロックホームズが好きなのか、名探偵役は些細なところから真相に迫りしかもそれがいつも的をえてしまう。女が廊下や道のふちを歩き、フロアの主任を呼べといったからデパートに勤めていると推理する。それが当たっているから話が成り立つのだが、もし彼女がホテルに勤めていてもきっと同じような行動をとると思われるが(実は私はそのように思ってしまったのだ)そうだったらこの話はうまくいかなくなってしまう。
 推理小説にはお決まりがあって「銭形平次の銭が当たらず犯人が逃げたということにはならない」と由良三郎氏が書いているのだが、本作品はあまりにご都合主義ではないだろうか。
 またひきこもり探偵の鳥居が実に傲慢で、こんな性格のひきこもりはありえないでしょう。坂木もうじうじと泣きすぎでみっともないね。
 切れない糸がよかったので読んでみましたが、これはいただけませんでした。


No.378 5点 鼓笛隊の襲来
三崎亜記
(2014/03/07 20:37登録)
 これは読み手によって評価が異なる作品と思います。読んで嫌な感じはしないと思いますが、へんてこな感覚の物語なので共感する人は共感するが、そうでない人は単なる変な物語で、何を言いたいのかさっぱり分からないといった風になりそうです。短い話ですので読むのに苦労はないのですが、私は「何これ」といった感覚のほうが強かった。


No.377 7点 切れない糸
坂木司
(2014/03/03 20:26登録)
 はじめはちょっと変わった文体に戸惑いがあったが、すぐに慣れた。登場人物はなかなか魅力的。ことにアイロン職人のシゲさんは良いねえ。
 殺人事件など残酷、大掛かりなトリックなどはないが、読んでいて気分の良い作品でした。
 沢田君の推理はシャーロックホームズ風でちょっとした変化から真相を見通してしまう(すなわち無理もある)。でもちょっと当たりすぎ。こんなにうまくはいかんでしょう。
 まあでも気分よく読めるのだから許すとしましょう。


No.376 5点 クール・キャンデー
若竹七海
(2014/02/23 09:24登録)
 途中まではテンポも良くなかなか楽しかったのだが、最後に来て急にだめになったと感じました。意外などんでん返しというより物語が破綻しているというべきでしょう。そうでなければまったくのアンフェアーな展開。どうみても途中で出てくる主人公の女の子の感じ方と後半の告白は矛盾しています。
 若竹氏の作品は読みやすく好感が持てるのです。ところがどうも最後に来て話に無理が出てくる気がするのでしばらく離れていたのです。今回久しぶりに氏の作品を読んで途中まで楽しんでいたのですが、やっぱりがっくり。もうちょっとで素敵なお話になると思うのですがねえ。


No.375 7点 ビブリア古書堂の事件手帖5
三上延
(2014/02/16 12:15登録)
シリーズも7作目となるとだんだんだれてくることが多いのですが、これはなかなかしっかりしています。
 古書を中心とした推理を交えながらラブストーリが展開していくのですが、お話は佳境となってきて次が出ればすぐ買ってしまいそう。
 古書推理としては手塚治虫のブラックジャックが一番興味深かった。わたしの年代はこれをリアルタイムで読んでいるのだが、まさか違ったバージョンが何冊もあるとは知らなかった。コレをかいた時期の手塚治虫の評価が下がり気味であったこともぜんぜん知らなかった。驚きです。


No.374 6点 キングを探せ
法月綸太郎
(2014/02/16 12:03登録)
 良くできた本格推理小説であることは間違いないでしょう。答えが見えているようでも一筋縄ではいかない。謎も複線もそれに対する資料の呈示もまず申し分なく、このサイトでの評価が高いのは当然といえます。
 作者は初期には非常につらい物語を書いていたのですが、最近は乾いた文章で推理の結晶体を求めているように感じます。
 それが好きな方(たいていの本格物の好みの方は好きなのでしょう、わたしもその一人ではあります)にはとても面白くそうでない人には全く興味が湧かないといった内容となっています。
 ただここまでやってしまうとなんだか数学の問題の答えを順々に教えていただいているような味気ない感じが否めませんでした。


No.373 7点 三百年の謎匣
芦辺拓
(2014/01/31 20:46登録)
 一つの物語の中に連作と歴史を取り入れた贅沢な構造を持つ意欲作だと思います。それぞれの話が興味深くしかも最後にみごとに終結した結末となる、そういった点では素晴らしい作品だと思います。最後に森江俊作が謎を解き明かすのですが、それはもう凄い博覧強記で、いくらなんでもここまで頭に入っている人はいないのでは。
 解決まで余分でいやみな話がだらだらと述べられているのもどうかと思いますが、ここまで簡略された解決編を見せられるとどうも問題の回答を盗み読みしているような感覚にとらわれてしまった。もうすこし解決に至るまでの過程が書かれていたほうが良かった。


No.372 4点 いつまでもショパン
中山七里
(2014/01/20 19:53登録)
 前2作がよかったので期待して読んだのですが、残念ながらこれは良くなかった。
 スケールを広げるということからか、ポーランドのショパンコンクールが主たる舞台となっているが、アフガニスタンや日本の話も絡ませてあるが必然性が少なく、推理小説としては単純であまりできがよろしくない。
 さらにショパンのピアノ演奏方法についての長々とした描写があり(前作ではこの部分がよかったのですがいかんせん長くてくどすぎる)クラシック音楽が好きなわたしですら飛ばし読みしてしまうのだすからこの分野に興味のない方はきっとうんざりすることと思います。
 作者はもうこういった方向で書かないほうがよいのかもしれない。
 なお作中に出てくるショパンコンクールでのポーランド人優勝者のラファウ・ブレハッチは本当にこんな体験をしたのでしょうか。そういえば昨年彼のコンサートで曲が終わって舞台から降りる際にあちこちを見ていたことがちょっと気になっていたのですが。
 蛇足ですがコンサート自体は素晴らしかったです。


No.371 6点 はやく名探偵になりたい
東川篤哉
(2014/01/19 10:16登録)
 このシリーズのファンなのですが、これはもう一つでした。ユーモアも若干足りないし、トリックも無理が多すぎるのです。
 でも本格物の大家とされる方の作品で「どんどんーー」や「奇想--」みたいに無茶なトリックを見せられるとそりゃないよと思ってしまうのだが、もともとお遊びですと断っているようなシリーズではまあ許せるかな。あとからみればちゃんと伏線も張ってあることだし。
 悪くはないのだが、ファンとしては作者にはもうちょっとパンチが効いた作品を期待したい。


No.370 5点 貴族探偵
麻耶雄嵩
(2014/01/13 10:49登録)
 どうもこの作家とは相性が良くないのかもしれない。貴族探偵と自分で名乗っているのだが、自分は全く何もしないでお助けマンのような使用人たちが事件を解決する。この探偵のもとは昔漫画であった「おぼっちゃまくん」なのであろうか。
 推理内容もまあ納得できるものもあるが、ひどいのもあるよ。
 

以下ネタバレ。
 そっくりさんが出てくるのは反則みたいだし、死にいたるような怪我をしているのにそれに気づかず犯罪を犯していたなどと、到底納得しかねる結論で物語りはおしまい。
 作者は本格推理なんて所詮こんなもんですと言いたいのであろうか。
 かく言う私も文庫の帯に2014本格ミステリベスト10、第1位をみて購入してしまったのだが、良くみるとそのあとに---のシリーズの第1弾!!とある。
 だまされた。
 


No.369 8点 殺意は必ず三度ある
東川篤哉
(2014/01/10 20:51登録)
 このシリーズは作者が代表作というだけあってユーモアもミステリーも出来がよい。
 物語のはじめは抱腹絶倒といってよい面白さで、何度も声を出して笑ってしまった。電車の中などで読むと変な人と勘違いされそうなので一人で読んだほうがよいかも。
 途中から本格推理小説となりこれも実にきちんと書かれている。トリックも大胆で周到と思います。個人的には作者がブレークしたディナーシリーズよりずっとよい出来だと思います。

以下多少ネタバレ。
 減点はご主人が亡くなったのにえらく冷静で悲しみなどほとんどみせずに謎を解いていく車椅子の婦人。悪くかかれてはいないのですが実際の行動としてはとても冷たく違和感を感じたところです。


No.368 6点 丑三つ時から夜明けまで
大倉崇裕
(2014/01/06 21:13登録)
 推理小説に幽霊のような超常現象を取り入れるとばかばかしい限りのお話となってしまうのだが、この小説はまあ何とかギリギリ合格といったところでしょう。
 怪しいスタッフが揃った幽霊専門の県警五課なるものが登場して一課をコケにするかと思えば、結構どじな推理もしたりして、まあそれなりに面白い。
 五課のスタッフは全員格好といい名前といい凄そうなのだが、その割にはたいしたことはなく、幽霊に簡単にやられたりしてしまう。こんな登場人物ならもうすこし特徴だった活躍ができそうなのに、なんだかその他大勢といった感じとなってしまっているのが残念です。
 最後の話はちょっとびっくりではあるが、このお話はこの連作一つで十分でしょう。

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