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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.18点 書評数:862件

プロフィール| 書評

No.362 6点 一応の推定
広川純
(2013/12/10 20:14登録)
 保険調査員としばしば話をせざるをえない仕事をしているのでこの業種に対する不信感はどうしてもぬぐえない。保険って入るときは良いことばかり言っているけどいざ払うとなると何とか理由をつけて払わないことに全力を尽くす。この本を読むとやっぱり保険調査員は保険金を払わない調査をすると報奨金が出るんだということが良く分かりました。やっぱりね。
 作者は保険調査会社関係の方。こういった職種でも正義感が強くきちんとやる方もいることを今後理解することとしましょう。
 ただ小説のないように関しては??がつくところがかなりあります。
 死体検案書に自殺と書いていないなんてところにこだわっているのはありえないでしょう。自殺か他殺か事故かなんてことは医師にとって何の係わり合いもないのです。これを決めるのは司法の領域でしょう。
 また最後の報告では残念ながら決定的な証拠とはなりえません。
 なまじ自分が知っているところではあまり楽しめないようです。
 こんなこと知らなかったらもっともらしい話に納得して感動したかもしれません。
 このサイトでは社会は推理小説は取り上げられ方が少ないのですが、感動的な話しだし良い小説と思います。
 


No.361 6点 謎解きはディナーのあとで 2
東川篤哉
(2013/12/03 18:09登録)
 このシリーズがどうしてこんなにあたったのか分からない。氏の作品にはもっと面白いものがたくさんあるのだが。
 でもこれだってまあ悪くはない。ユーモアがパターン化されているのであんまり笑えないが、きちんと本格していると思います。さらっと読むには良いのではないでしょうか。
 ところで今回も気になったのですが、作者はジャガーが左ハンドルであると思っているようです(他の作品でも日本のスポーツとジャガーが並んで止まって運転手が両側から出てきたというシーンがあった)。イギリスは日本と同じ「人は右車は左」の交通ルールの世界なので当然ジャガーは右ハンドルなのです(なぜかウインカーとワイパーの配置は日本と反対についているの)。
 本格物をはじめて読む方にとってはハードルが低く、しかも本格物の楽しさは味わえるのですからお勧めではないかと思います。


No.360 6点 目白台サイドキック 魔女の吐息は紅い
太田忠司
(2013/11/29 20:24登録)
このシリーズの第1作を読んだときから次が出ることを予想していましたがやっぱり出てきました。第1作の「女神の手は白い」で北小路準を何でこんな設定にしたかが疑問でしたが、この作品を読んで分かりました。
 なるほどこれがやりたかったのだ。太田さんこの作品を書くために1作目に本格物としての「キズ」をあえて作ったのですね。
 太田氏の作品ではその物語の内容より登場人物が好きで読んでしまうところがあるのですが、本シリーズの南塚君はあんまり感じが良くないね。しかも今回は北小路との掛け合いが少なくちょっと物足りない。シリーズ化するために内容を薄めたような感じでした。
 本格ものを書き続けるのは大変と思いますが、ファンとしては作者にはぜひ頑張ってもらって霞田シリーズのようなお話を作ってもらいたいのです。狩野君シリーズも書いてほしいなあ。


No.359 6点 女王陛下のユリシーズ号
アリステア・マクリーン
(2013/11/23 17:26登録)
 まあ海洋冒険小説として素晴らしいのでしょうが、たくさんの登場人物がきちんと描ききれていない上に人を呼ぶのに本名だったり愛称で呼んだりして(これがイギリスでは当然なのでしょうが)とても分かり難かった。
 それにしてもイギリス海軍は統制が取れていないことはなはだしい。イギリス軍は最悪の気象条件でぼろぼろ。しかるにどういうわけかドイツ軍は同様の気象条件で戦っているのに(そんな風には書かれていないがきっとそうでしょう)実に有能で勇敢。Uボートなんか遅くてちっちゃくてユリシーズよりきっと大変だよ。
 もちろん有名な作品なので面白いところも多々あったのだが、期待したほどのことはなかったというのがわたしの印象です。


No.358 7点 仮面山荘殺人事件
東野圭吾
(2013/11/10 09:19登録)
 これを書いたころの東野氏の作品のほうが今のものより好きです。最近のものはこれだけ多作にもかかわらず比較的でこぼこが少なく良く出来ていると思うのですが、だんだん孤独で冷たい感じがするのです。その点20年ほど前のこの作品はどこかに暖かさがありしかもトリック、どんでん返しと読むものをひきつけます。
 この作品も登場人物がある面では寛容であたたかい。心の冷えた人間の心の冷えたお話というのはびっくりしたりぞっとしたりしますが読後感が悪いのです。

以下ネタバレがあります。
 本作品は殺害?された明美も非常にかわいく同情の念を禁じえません。
 ただ雪絵がこの役割をどうして引き受けたかがわからない。この娘がいなければ話は成り立たないのだが、こんなこと普通絶対引き受けないと思うのですが。
 ここが多少減点です。でも大変面白く優れた本格物と思います。


No.357 6点 セカンド・ラブ
乾くるみ
(2013/11/05 20:44登録)
 わたしにはこの作品は分からないところが多くあります。どういう風にもとれる様に書かれたのだとは思いますが。それがすっきりしないといえばすっきりしない。
 イニシエーション・ラビと同様に女はかわいいけど怖いよというところをまざまざと見せてくれます。わたしのような読者は当然作者の思いどうりにだまされ最後にぎゃふんと言わされるのですが、みなさんが述べておられるようにイニシエーション・ラブよりちょっと落ちる。どうもすっきりしないところがあるのです。


No.356 7点 猫は知っていた
仁木悦子
(2013/11/05 20:32登録)
 かなり前の作品なので社会情勢が今と異なるところがかえって面白かった。だいたい医院の病室に下宿するなんてことは今では到底考えられないのだが当時はこんなこともあったのでしょうね。
 家の中で殺人事件があったのに家族が案外ドライでいるところなど今の無機質なパズル小説に近い感じがしました。
 ただトリックはどうかなあ。猫を使って実験したって確実性は乏しいしちょっと無理があるように思うけど。
 でも全体としてまずまずきちんとした本格推理小説でした。だからこそ何度も再販されているのでしょう。


No.355 6点 七人の鬼ごっこ
三津田信三
(2013/11/03 08:17登録)
 ホラーと本格を結びつけるといった作者の意図は確かに感じられる作品です。ことに本作品はホラーのほうが強い感じ。
 犯人は以外だし、最後の結果もびっくりなのだがあんまり楽しくはなかった。
 


No.354 5点 キョウカンカク
天祢涼
(2013/11/03 08:12登録)
 これはまあメフィスト賞作品らしいといえばそれまでなのですが、本格物のような雰囲気で読むとかなりがっくり来ることは間違いない。
 キョウカンカクとは聴きなれない言葉であるが、ある刺激を受けるとそれと違う感覚も同時に刺激されて感じてしまう間隔のこととっ説明されている。主人公の女性は音から色が感じられるという感覚の持ち主で、その感覚のみで犯人を確信して強引にそれを結び付けてしまう。途中までは文章の問題はともかく比較的面白く読めたのですが、犯人が指名されてからの展開はもうめちゃくちゃ。極めて残酷な話となり私の嗜好にあわなかった。


No.353 8点 ある閉ざされた雪の山荘で
東野圭吾
(2013/11/03 08:01登録)
 この作品は20年ほど前に読んだのだが、当時は本格物の変り種といった印象が強かった。作者はかなりのへそ曲がりで新手の種を思いついたのでさっさと書いてみたという風に思えたのです。
 今回再読してみるとこの物語はまるみえの虚構のようでそうでもなく、登場人物がだまされそれを読むものもだまされるといった凝った内容がとても楽しかった。最終的にある意味でのハッピーエンドでもあり最近の東野氏にない暖かさがあった様に思います。
 ただ犯人の執念はすごすぎますけどね。


No.352 6点 パティシエの秘密推理 お召し上がりは容疑者から
似鳥鶏
(2013/10/20 13:07登録)
 三上氏のビブリア古書堂が当たってからこの手の物は良く見かけるようになったが、どれもビブリアより落ちると思います。似鳥氏のトリックメイクはなかなか優れていると思いますが、いかんせん直井巡査のーーッス言葉は何とかならないものかねえ。女の警官がこんな言葉使いは(作者もそんな風に書いてはいるのだが)いただけませんね。読むのが嫌になる。
 最後の話は犯人は何となく分かってしまった。犯人を決めておいてから後出しのような展開はもう少し何とかできそうなんだけど。
 氏のトリックメイクに期待はしています。


No.351 7点 白亜館事件
太田忠司
(2013/10/06 19:52登録)
狩野俊介シリーズもこのあたりから本格嗜好が強くなり仕掛けも大掛かりとなってくる。言ってみれば霞田兄妹シリーズが小道具を使用しているのに対して狩野俊介シリーズは大道具を使用したシリーズといえるかも知れません。
 漫画チックな表紙や挿絵にとらわれなければ(作者は気に入っているようですが)本格物として読んで遜色ないお話となっていると思います。
 すらすら読めて結構面白いと思います。


No.350 7点 目白台サイドキック
太田忠司
(2013/10/06 19:46登録)
 なかなか面白いのです。相棒ミステリーという分野があるのかどうか分かりませんが、本格物として遜色のない出来合いなのですが、最後に行くとがっくり(これをびっくり驚愕とは思えません)。どうしてこんな仕立てにしたのかわかりませんが、こういう形をとる必要がないように思います。最近の作者の傾向としてミステリーと幻想を融合しようとしているような傾向を受けますが、ミステリーの答えが幻想ではだまされたような感じとなるのではないでしょうか。
 本作品は最後にこんなかたちとなっていても本格物として問題はないのですが、いかにも本格物といった雰囲気で読ませた上でこういったこととなるといんちき臭い話と感じてしまうことは否めません。
 さらにこの作品は本格物としては明らかにキズだらけの終わり方をしています。謎が解き明かされていないところが多いのです。きっと続編が出て解決してくれるものと思います。
 作者は同郷で昔からずっと読み続けている数少ない方です。次を期待します。期待をこめた評価です。


No.349 7点 いつか、ふたりは二匹
西澤保彦
(2013/09/23 20:22登録)
 ミステリーランドの作品なので本格物のおどろおどろしさや残虐性は全くない。
 ファンタジックな性格が強く推理要素は少ないけど結構楽しました。こんなのも好きだなあ。


No.348 8点 銀扇座事件
太田忠司
(2013/09/23 20:19登録)
 どういうわけか狩野俊介シリーズでわたしが最も衝撃を受けた銀扇座事件がこのサイトにのっていないので追加させていただきました。
 このシリーズ初の上下二巻で登場し、上巻を読んだときは本当にびっくりしました。え?本当?。なんだか変だけどこんなのでよいの?でもまだ下巻もあるのだしいったいどうなったのだろう。
 このシリーズを読み続けていたものほどびっくりするだろうと作者も書いておられますが、まさにそのとうり。
 そのわりに下巻がもう一つではありますが、当時の衝撃を懐かしみ高評価です。これだけ読んだ方はもっと評価は下がるかも。


No.347 7点 久遠堂事件
太田忠司
(2013/09/23 20:08登録)
この作品は狩野俊介シリーズで最も衝撃を受けた銀扇座事件のあとに発表されたものと記憶する。
 途方もない建造物(巨大な釈迦涅槃像の内にお堂と宿坊があるという設定)でおきる事件のお話で、なかなか興味深い。前作ぐらいからこのシリーズはジュブナイルとして捕らえるより表紙に書いてあるように本格推理小説の様相が強くなってきている。
 結構面白かったですよ。


No.346 6点 美人薄命
深水黎一郎
(2013/09/23 19:58登録)
 本の帯には世界が反転する驚きと溢れでる涙の最終章とうたってあるけれどもそれほどのことはなかった。
 深水氏の作品は多彩な教養に裏付けられていてとても興味深いものであるが、この作品にはそういった要素は少ない。ただ洒落のような表題名とその外国語訳がついているのがこの作者らしいところ。
 まあ読後感も悪くないのでよしとしましょう。本当は氏の作品ならならもっとすごいものを期待していたのですが。


No.345 7点 魔術師の弟子たち
井上夢人
(2013/09/13 13:29登録)
題名からへたくそな超能力氏のお話かと思って読んだ。井上氏ならそんな話を書きそうなのでね。
 ところがどうしてどうして。致死性の病原体であるウイルスに感染して生きながらえたらあらふしぎ、とんでもない能力が3人の主人公に備わってしまっと思っていたら次第にその能力がものすごいこととなり、とんでもない展開となる。このあたりさすがに作者はうまい。だんだん深刻な話となり最後は救いがたいこととなりそう(なった)と思わせたところでちょっと違ったエンディングとなる。
 面白いですよ。


No.344 7点 腐葉土
望月諒子
(2013/09/13 13:16登録)
 かなり重い話でした。とんでもない人間、普通の人間、正義と善意の人間たちがくりひろげる話は非常に複雑に絡み合い最後にはどんでん返しもあって読み応えは十分です。
 文章に強い情熱が感じられるます。ただしそれが余ってかなりくどい。残酷冷酷なシーンはこの話には必須なのですが、これほどくどく語られるとここで嫌になってしまいそう。
 幸いというか海外旅行中飛行機の中で読んだので投げ出さずに読み通しました。
 読後感も悪くないし力作であることは間違いがないのです。もうちょっとさらりと書いて長さも三分の二ぐらいに納めたらもっと良い評価が得られそうです。


No.343 6点 降魔弓事件
太田忠司
(2013/09/04 16:26登録)
これは少年向きとしては結構悲劇的な内容です。作者は書きながら泣けてしまったとあとがきに記していますが、読後に印象が薄れる傾向の本シリーズの中ではまあ心に残るほうではあります。
 本書が発売されたときにすぐ読んだのですが、この本は何となく覚えていました。(他の俊介シリーズはほとんど忘却のかなた。新しく読み直しても全く忘れているので新鮮に楽しめました。記憶力の減退はよいこともあるのです。
 ただトリックや警察のずさんな調査(屋根に上ってちょっと調べれば分かることも分かることも探偵が調べるまで不明?、このトリックもちょっと調べれば絶対分かりそうなどなど)が目立って推理小説としてのできはやや悪いと思います。読後に印象が多少残ったということで評価はこの程度。

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