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ミステリの祭典

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はやく名探偵になりたい
烏賊川市シリーズ

作家 東川篤哉
出版日2011年09月
平均点5.75点
書評数8人

No.8 6点 nukkam
(2023/08/21 12:28登録)
(ネタバレなしです) 2008年から2011年にかけて雑誌発表された烏賊川市シリーズ短編を5作集めて2011年に出版されたシリーズ第1短編集です。ユーモア本格派推理小説が揃っていますが変わり種系が多い印象を受けました。「藤枝邸の完全なる密室」(2011年)は犯人が最初から明らかな倒叙本格派推理小説で、密室トリックで犯行を誤魔化そうとするプロットがウイリアム・ブリテンの有名短編の「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」(1965年)を連想させます。ブリテンとは異なる皮肉な結末が用意されています。「時速四十キロの密室」(2009年)もそれでいいのかと言いたくなるような風変わりな結末です。「宝石泥棒と母の悲しみ」(2008年)は動物視点が織り込まれているのがユニークです。探偵役の鵜飼の発言にアンフェアっぽいのあるのが気になりますが。これらの変化球的アイデアが好き嫌いの分かれ目になるかもしれません。

No.7 7点 mediocrity
(2019/08/16 06:13登録)
烏賊川市シリーズの短編集第1弾。鵜飼と流平がメインで、砂川警部と大家の女性(名前忘れた)は登場しない。

①『藤枝邸の完全なる密室』
謎解きと言えるようなレベルの作品ではないがオチはいい。
②『時速四十キロの密室』
長編で使ったら袋叩きにされそうなトリック。
③『七つのビールケースの問題』
ドタバタしすぎだが、アイデア自体は面白い。
④『雀の森の異常探偵な夜』
流平の探偵にあるまじき注意力の無さはちょっと無理があるが、それを除けばすばらしい出来だ。これはトリックよりロジックの作品。
⑤『宝石泥棒と母の悲しみ』
愛らしくて楽しい作品です。

①が食前酒、②が前菜(珍味)、③が創作料理、④がメインデッシュ、⑤がデザートみたいな感じで全て雰囲気が違う、コース料理みたいな短編集だと感じました。本全体としては好みです。

No.6 7点 E-BANKER
(2014/01/26 20:25登録)
TVドラマ化もされ、ますます大人気(?)の「烏賊川市シリーズ」短篇集。
今回も鵜飼&流平のコンビが、依頼された(というか巻き込まれた)くだらない(?)事件の数々を解き明かしていく。
(今回は砂川警部や朱美など、他のレギュラーメンバーは登場せず・・・)

①「藤枝邸の完全なる密室」=倒叙型の変化球ミステリー。折原の黒星警部シリーズものに近い風味だが、こういう軽快なミステリーは作者の得意技っていう感じ。オチもマズマズ決まっていてよい。
②「時速四十キロの密室」=トラックの荷台に積まれ、追尾車両に監視された状態の人間が気付いたときには死んでいた、という謎。伏線が最初からあからさまなのが玉に瑕だし、これはまぁおフザケミステリーだな。
③「七つのビールケースの問題」=ギャグ度合いは別にして、こういう短編が書けるというのは、やっぱり本格ミステリー作家としてレベルが高いのだと感じる。もっとも、こんな偶然の連続あるわけない! ということはもちろんであるが・・・
④「雀の森の異常な夜」=本格ミステリーの名作を彷彿(?)させるようなロジックあふれる作品。人間の目ってそこまで節穴か?というツッコミはさておき、ここまでロジックを効かせられるとは「有栖川有栖もビックリ!」だろう。特に、死後硬直をこんなことにブッ込んでくるミステリーは初めてお目にかかった。
⑤「宝石泥棒と母の悲しみ」=最初は宮部みゆき氏のアノ作品かと思わせておいて、実は綾辻行人氏のアノ作品の本歌取りだった・・・という仕掛け。大学のミステリー研辺りで書かれそうな作品だけど、決して嫌いではない。ラストにはタイトルの意味にも納得させられ、なかなかウマイ。

以上5作。
これは予想以上に面白かった。
とにかく作者の本格ミステリー愛が伺える作品が並んでいて、作者の力量を感じられる作品集に仕上がっている。
「謎解きはデイナーのあとで」があまりにも有名になり過ぎたけど、やっぱり作者の本筋はこの「烏賊川市シリーズ」にあるのだろうと思う。
最近濫作気味なので、あまりに頑張りすぎてネタが枯渇することのないよう祈りたい。
軽い読書にはお勧め。
(個人的ベストは④。あとは⑤と③の順。)

No.5 6点 makomako
(2014/01/19 10:16登録)
 このシリーズのファンなのですが、これはもう一つでした。ユーモアも若干足りないし、トリックも無理が多すぎるのです。
 でも本格物の大家とされる方の作品で「どんどんーー」や「奇想--」みたいに無茶なトリックを見せられるとそりゃないよと思ってしまうのだが、もともとお遊びですと断っているようなシリーズではまあ許せるかな。あとからみればちゃんと伏線も張ってあることだし。
 悪くはないのだが、ファンとしては作者にはもうちょっとパンチが効いた作品を期待したい。

No.4 5点 HORNET
(2012/04/30 09:42登録)
 ここまでの書評(2012/4/30現在)が全部「5点」なのが一番分かりやすくこの作品評を示していると思う。まぁ、格段よいわけでもないが、楽しむことはできる。烏賊川市の私立探偵鵜飼杜夫と、弟子の戸村流平のドタバタコンビが活躍する、とても作者らしいユーモアミステリシリーズ。肩の力を抜いて楽しんで読める。「七つのビールケース」などは、仕掛けとしてもなかなかのものだった。一作目「藤枝邸の完全なる密室」は「何だそりゃ」と笑ってしまうが、こういうのこそが作者の持ち味といえる。

No.3 5点 こう
(2012/01/21 00:45登録)
 烏賊川市シリーズは短編ではいまいちというのは私も同感でした。長編よりはまじめな推理小説になっていたかもしれませんが笑えるポイントが減ってしまうとこのシリーズの良さが失われるのとつっこみ役の朱美さんとの絡みがないと個人的には物足りないので次回作に期待します。

No.2 5点 kanamori
(2011/10/17 20:19登録)
烏賊川市シリーズの探偵・助手コンビによる初の短編集。
比較的長めの3編は、ハズシ気味のギャグのなかにさりげなく伏線をばらまくという長編同様のわりと正攻法のパズラーで、「七つのビールケースの問題」がまずまずですが、他はイマイチの出来。
残る短めの2編は変化球で、そのうちの「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」を髣髴とさせる倒叙形式の密室もの「藤枝邸の完全なる密室」のオチがよかった。
「宝石泥棒と母の悲しみ」は仕掛け自体は面白いものの、ただそれだけという感じ。

No.1 5点 まさむね
(2011/10/12 20:03登録)
 烏賊川市シリーズでお馴染みの探偵・鵜飼&助手・戸村コンビが織り成す短編集。どの短編も本格の体裁は保持していますが,出来栄えはまちまちでしたねぇ。作品ごとの感想を。
1 藤枝邸の完全なる密室:もう一捻り欲しい印象。
2 時速四十キロの密室:謎は魅力的。
3 七つのビールケースの問題 :微妙な「やっつけ感」が漂う。
4 雀の森の異常な夜:なかなかの正統派。
5 宝石泥棒と母の悲しみ:短く,単純なトリックながらも個人的には好み。佳作。
 
 全体印象としては,烏賊川市コンビは長編の方が活きるような気がしましたね。

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