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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.18点 書評数:862件

プロフィール| 書評

No.462 6点 殺人は容易だ
アガサ・クリスティー
(2015/10/04 08:29登録)
 ポアロやミスマープルが出てこないが、マープル物に近いイギリスの田舎のお話。嫌味のない人物が多くゆったりと読めました。
 解説にもあったが、名探偵マープルおばあさんが出てきてはこの話は成り立たない。読者をミスリードしていく手法はさすがであるが、この話だけだと物的証拠やありばいなどの証明がほとんどなく、ほかの人が犯人であるように書き換えても不都合はないように思えました。
 最後のシーンも急に犯人がべらべらと犯行理由をしゃべらせて(相手は睡眠薬を飲まされて眠る寸前のふりをして聞いている。なかなか寝ないで聞いているのも不自然だよね。)つじつまを合わせようとしているのですが。そのあたりの詰めがもう一つの感じがしました。
 


No.461 5点 時の娘
ジョセフィン・テイ
(2015/09/23 09:18登録)
 私は登場人物の名前を覚えるのが苦手なので、この物語を読むのに非常に苦労しました。ばら戦争に関しては世界史で昔習った程度で、リチャード3世なんて全く忘却のかなたの人物です。何度も系図を見ながら読んでいたのですが、系図に出てこない人物も多々あり、これがどんな関係なのかがわからなくなり、そのまま続けて読んでいくとまた苦難のことか不明の話となってしまう。仕方なく初めのほうを探し出しまた読み返すといった作業の連続なのです。たまたま国際線の飛行機の中で読んでいたので、ある意味良い暇つぶしとはなったのですが。
 歴史推理そのものは決して嫌いではないので何とか読み通しましたが、面白く読むまでにはとても至りませんでした。
 イギリス史に興味がある方や外国人の名前を覚えるのが得意な方にとっては非常に面白かったのかもしれませんが、私にとってはちょっと気を許すと全然話が分からなくなる、難敵の小説でした。


No.460 8点 予告殺人
アガサ・クリスティー
(2015/09/05 17:55登録)
 新聞に殺人の予告。そして集まった人たちの中で意外な殺人?と被害者が出る。実に奇抜な発想。こういった物語はだいたいかなりへんちくりんな人間が登場し、むちゃくちゃと思われる筋立てとなりがちなのだが、さすがクリスティーはきちんと話を作り上げていました。ちゃんと手がかりも示してくれているのだが、やっぱり全然犯人は分かりませんでした。
 私はこの作品、好きです。このサイトでは評価がやや低いようですが、本作品はミスマープル物の最高傑作と評価する方も多いのです。私も本作品は傑作と思います。残念ながら全作品を読んだわけではないので最高かどうかは分かりませんが、今まで読んだマープル物の内では一番と思いました。
 唯一欠点としては、外国人のメイドのミッチーがやたらうるさく、めちゃくちゃな人間として描かれているところぐらいでしょう。我々にとってはヨーロッパやアメリカは同じ感じがするのですが、イギリス人にとっては大陸の人やアメリカ人はおおいに異質な人種なんだということがよくわかる。


No.459 5点 猫とアリス
芦原すなお
(2015/08/29 21:11登録)
 「雪のマズルカ」が私には合わないと評価しましたが、芦原氏のファンなので続編もやっぱり読んでしまいました。多少の免疫ができたのか、作者も前作よりは本来の姿を見せているのかわかりませんが、「マズルカ」よりは良かった。でも芦原氏のほかの小説のほうがずっと好きです。ほんわかとした話ばかり書いているとこんな話を書きたくなる気持ちは分からなくもないのですが。話として現実性に無理があるところは、はんわか物なら許せるのですが、こういったシリアスなものとなると傷として目立ってしまいます。
 


No.458 5点 闇からの声
イーデン・フィルポッツ
(2015/08/09 08:15登録)
 小説だから許されるのでしょうが、現実にこれをやったら大変なことになるでしょう。完全な思い込み操作でもあり、冤罪が続出間違いなし。
 古い小説ですが、当時は(今もか?)イギリスが階級社会であることを改めて認識させられました。
 犯人も探偵も本質的には狂的要素が強くても、外見は極めて人当たりが良く紳士的です。
 フィルポッツのほかの作品でもそうですが、平凡な描写が多く退屈してしまうところが多々ありました。感じの悪い話ではありませんが、大して面白くもなかったというのが感想です。


No.457 7点 鏡は横にひび割れて
アガサ・クリスティー
(2015/08/08 07:40登録)
 クリスティーが70過ぎて書いた小説だけあって、話の組み立てや展開についてはよくできた小説と思います。相変わらずの意外な犯人や、意外な動機。それらをきちんと散らばらせてくれているのですが、やっぱり犯人は分からなかった。だからといって無理な話では決してなく、ミスマープルが謎を解いてくれるとなるほどと納得できます。
 私として多少評価が低めなのは、ミスマープルの話なので当然ではありますが、日常の平々凡々たる描写が結構多い(ここが魅力だという方も多いと思いますが)。私としてはちょっと退屈といった感がぬぐえません。探偵としてはポアロよりミスマープルのほうが好きなのですが、話としてはポアロ物のほうが好みかもしれません。


No.456 8点 葬儀を終えて
アガサ・クリスティー
(2015/07/26 08:10登録)
 登場人物がやや多いが、表に系図と人物像が載せてあるので読むのに苦労はなかった。
 意外な犯人、巧みな伏線など過不足なくくわえているのに(しかもこれが伏線ですよといわんばかりの書き方!)犯人は全然わからず、見事にやられました。
 こういった内容であると途中で緩むと急に面白くなくなるのだが、本作品はそういったところもなく、登場人物もあまり極端な人間はおらず(最終的には変な人間だが、まあ変でなければこんなことはしないが)、読んでいていやな感じは全く受けなかった。
 クリスティーの作品の中でも好きなもののひとつです。大変面白かった。


No.455 7点 高座の上の密室
愛川晶
(2015/07/19 11:25登録)
 前作はミステリーとしてはちょっと弱かったのですが、本作ではだいぶんミステリーっぽくなっています。古典落語などほとんど知らない私にとって、なかなか興味深い落語のさわりなどもさりげなく触れてあるのも、話のスパイスとして効いていました。
 面白かったです。
 多分次作も出てくるのでしょう。ちょっと楽しみです。


No.454 7点 動く指
アガサ・クリスティー
(2015/07/19 10:34登録)
 スマープルものではあるが、彼女が出てくるのは本当に最後に近くなって「これってミスマープルシリースのはずだよなあ?」と心配になったころでした。
 それまでは田舎でのめったに起きないような出来事のお話が続きます。やや平凡な感じはしますが、読み進むのに苦痛なことはなくすらすらと読めました。
 クリスティーの作品にはこんな人本当にいるのと思わせるような変な人物はあまり登場しないので、安心して読めるのもよいのでしょう。かなりしつこくうっとうしい人物は出てくるけどまあ許せる範囲です。
 乙女チックな感じ出てくるので若い女性が読むともっと面白いかもしれません。
 最後はめでたしめでたしに近いので読後感は良いです。


No.453 6点 神楽坂謎ばなし
愛川晶
(2015/07/07 21:39登録)
 作者独特の落語ミステリー。落語なんかミステリーになるのかと思って読んでいたのだが、結局はあまりミステリーっぽくないお話でした。昔落語ブームがあってその際にちょっとだけ落語に興味を抱いたこともあったが、最近は全くのごぶさた。でも粋の世界に生きる人たちのお話にはそれなりに興味が持てました。
 次作ではもっとミステリーっぽくなるらしいので期待しましょう。


No.452 5点 魅入られた瞳
五十嵐貴久
(2015/07/05 20:37登録)
 前作がいまいちだったがamazonの書評がよかったので買ってみました。
 全体として軽いのりで読みやすいのだが、まあ大したことはないですね。暇つぶしぐらいならよさそうです。
 この次が出ても今のところ読むつもりが起きないといった感じでした。
 


No.451 5点 雨の匂い
樋口有介
(2015/07/03 19:07登録)
 これは純粋な推理小説ではないが、読んでいくと最終的には相当に怖い話でした。樋口氏の洒落た会話(解説によるとこういうのをワイズラックというのだそうです)に満ちているのですが、これはちょっとやりすぎの感がありました。
 氏の小説では、段落の初めに花鳥風月の描写が巧みに入れ込んであるのですが、この作品ではちょっと過剰に感じました。ここまでやると読むのが多少面倒になってしまうのです。
 登場人物に温かみが少なく、冷たい話を巧みな表現で語るといったところなのでしょうが、私の好みからはやや外れていました。


No.450 7点 だれがコマドリを殺したのか?
イーデン・フィルポッツ
(2015/06/27 19:23登録)
 物語の半分以上たっても事件は発生せず、恋愛小説風なのでどうなることかと思っていましたが、最後まで読めばまごう事なき推理小説でした。
 登場人物は外国の推理小説にありがちな(最近は日本の推理小説でもしばしばだが)変な人ばかり出てくるといったことはない。むしろ我慢強く他人をおもんばかる人物のお話なので、読んでいて嫌な感じはしない。ただしその話が長く、人物が必ずしも魅力的に描かれているわけではないので、凡長な感じとなるのは否めないと思います。こんな人物ばかりで推理小説となるのか心配となるぐらいに思っていると、途中からは推理小説へ変身して、トリックも立派にあり見事に騙されてしまいました。


No.449 5点 南青山骨董通り探偵社
五十嵐貴久
(2015/06/23 18:49登録)
 さらりと読めてまあ楽しめるのだが、そこまでといった感じです。お話はなんだかむちゃくちゃ風ではあるが、まあこれぐらいならありかな。
 嫌みなく読みやすいのですが、あんまり多くを求めてはいけない雰囲気ですので、暇つぶしにはちょうど良いかも。
 シリーズものとなるようなので、次もまあ読んでみよう。


No.448 7点 レーン最後の事件
エラリイ・クイーン
(2015/06/22 20:43登録)
 レーン4部作の最終章。確かに4つの作品はそれぞれ独立して読んでもよいが、やはり初めから読み通していくのがよいのでしょう。
 ただ作品としてはZからあとはちょっと落ちるような気もします。
 本作品では興味深い謎が提示されはしますが、なかなか殺人事件は起きてこない。
だいぶん読み進むにつれようやく事件発生。なるほどレーン最後の事件でしたね。
 しばらくの間レーンのお話に満たされて推理小説の読者としては満足でした。


No.447 6点 Zの悲劇
エラリイ・クイーン
(2015/06/21 08:21登録)
 XとYは読んでいたのですが、Zと最後の事件は未読でしたのでちょっとワクワクしながら読みました。
 期待ほどではなかったというのが正直な感想です。
 若い女性の一人称で語られる物語は興味深いところですし、レーンの推理も相変わらず精緻ではあるのですが、XやYと比べるとだいぶん落ちる感じでした。
 なにがといってまず颯爽とした老人だったドルリーレーンが10年たってよたよたのじじいになっている、というシチュエーションが面白くない。どうしてこんな風にしたのでしょうかね。
 若い女性の語りも悪くはないが、全然可愛げがなくずうずうしい。日本人でよかったというところか。
 物語も途中までレーンの活躍がパッとせず、最後の推理に至っても3人に絞ったといっているが、そこまでわかればこんな無茶の方法を取らずとも十分解決したでしょう。

以下ネタバレ気味です。
レーンの推理は推理ゲームとしては面白いが現実性に乏しく、最後には救おうとした人間に実にひどい仕打ちをあたえたうえ、事実上命を奪ってしまった。こんな行き当たりばったりの事件で、このような方法で解決というのは、どうも納得がいかない気もします。ほかの犯人だってあり得そうな感じが否めません。


No.446 6点 刑事さん、さようなら
樋口有介
(2015/06/13 18:36登録)
 軽妙な語り口で描かれていますが、内容は警察の不正に対する相当な抗議を含んだお話となっていました。
 二つの話が全くかみ合いそうもないと思っていたら、きちんとそのあたりはかたはつく。題名も最後になってなるほどということとなる。ミステリーとして問題ないのだが氏の小説としては読んでいてもう一つであったことは否めませんでした。


No.445 8点 Yの悲劇
エラリイ・クイーン
(2015/06/08 20:52登録)
 Yの悲劇を読むのは40年ぶり。ストーリーやトリックなどすっかり忘れてしまうが常の私でも、このお話の犯人だけははっきり覚えていました。それもテレビドラマ(当時テレビドラマで放映されたのです)での犯人が明らかにされるシーンとBGMが頭と耳に浮かんできてしまい、犯人捜しや意外な犯人で驚くことができない分ちょっと残念でした。
 昔読んだときはあまり気にならなかったのですが、今回読み返すと何とも悲惨な話で救いようがないなあ。悪ガキも本当に気に障る。
 初めて読んだときは明らかにxの悲劇より上だと思ったのですが、今回はそれほどとは思えませんでした。やっぱり犯人がわかっていたことが大きいのかもしれません。


No.444 7点 フランス白粉の秘密
エラリイ・クイーン
(2015/05/29 21:30登録)
 推理の塊のような小説。事件が起こってそれに対するシチュエーションが述べられ、色々な手がかりも出てきて最後にはさあ犯人はお分かりですか?とくる。
 このサイトの方の中には簡単に犯人がわかってしまった方もおられるようですが、私にはさっぱりわかりませんでした。
 相変わらずの精緻な推理には感心するのですが、これほど細やかな推理をするなら現実としての無理も目立ってしまう。

以下ネタバレ気味

 心臓へ弾が当たったので大量出血したはずなのに、被害者が見つかった場所での出血が少ないから違う場所で殺害されたなんてことがしばらくわからないなんて変でしょ。服にはいっぱい血がついているはずでしょうから、一目でわかるはず。
殺害場所での大量出血の処理はどうしたのかなあ。机は血だらけだろうにその処置はブックエンドの処置だけで済むのかなあ。出血した死体を運んだらどこかに血痕が落ちそうだなあ。いくら女性といっても結構な距離を誰にも見つからずに運ぶのも相当大変だなあ。
 そんな不満はありますが、本格物として立派な小説と思います。


No.443 9点 Xの悲劇
エラリイ・クイーン
(2015/05/20 22:37登録)
40年以上前にこの小説を読みました。Yの悲劇が一番すごいぞといわれてまずYから読んだのでXはやや落ちるような気がしたのだけを覚えていました。
 今回再読してみるとなんともおもしろい。物語などはすっかり忘れていたので実に新鮮に楽しめました。
 推理小説に対する志向が随分変わったものだと我ながら感じています。
 こういった精緻な推理と緻密な構成を楽しむのは推理小説を読む醍醐味だと今は思えます。
 1点減点は赤毛の被害者に関するレーンの推理がやや物足りないのと、犯人がわかっていながらみすみす殺人を許してしまったところぐらい。
 この小説が国名シリーズほど売れなかったのはなぜでしょうかねえ。

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