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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.17点 書評数:895件

プロフィール| 書評

No.495 6点 神の時空 倭の水霊
高田崇史
(2016/05/22 17:50登録)
 このシリーズの第2弾。一冊ずつが長編小説なのですが、時間的には6冊が終わってもまだ1週間足らずということとなっている。私もその時間に沿ったように1週間足らずで6冊を読んでしまった。
 本作品は日本武尊に関するお話。殺人事件が起きるが、これに対する推理の要素は少なく歴史推理、ことに通常知っている歴史から抹殺された怨霊の話です(このシリーズ全編がある意味同じ傾向)。
 私の認識では景行天皇の皇子である日本武尊は古代史のヒーローであり、悲劇の主人公であったのですが、この作品では彼は結構姑息な手段で敵を滅ぼしており、彼のために命を懸けて海神を鎮めた弟橘姫が怨霊となったということになっています。
 うーんまあ納得とまではいかないけれどそう言った考え方もありかなあ。
 


No.494 6点 神の時空 鎌倉の地龍
高田崇史
(2016/05/22 12:19登録)
 高田氏のQEDシリーズは大変好きで、発表されるとすぐに読んでいたのですが、その後発表のものはもう一つといった感じがあり、しばらく遠ざかっていました。
 楠木正成の話が出たのを期に氏の作品を調べたら、この神の時空シリーズがなんと6冊も出ていましたのでさっそく読んでみました。
 このシリーズはどこから読んでいくのかインターネットで見る限りよくわからず、とりあえず興味のありそうな題のついているものを購入。「貴船の沢鬼」でした。これはなんと3作目であることがわかったのですが、作品の順番が題目だけではわからない。本屋で中身を見るとよいのでしょうが、インターネット購読はこの辺りがもうひとつですねえ。結局全部買って読むこととしました。
 どの作品から読んでも極端に差し支えるということはないのですが、時系列で書かれたお話ですので、本書「鎌倉の地龍」から読むべきでしょう。
 このお話は本格推理の要素は少なく、歴史ミステリーにファンタジーを加えたようなお話でした。例によって高田氏独特の歴史認識から文献的解釈を取り入れ読者に納得して読ませる内容ではあります。幽霊やぬりかべ、超能力を持つ猫などが出てくるとちょっとしらけそうですが、うまく話になっていると思いました。
 鎌倉幕府開設時のあの凄惨な陰謀合戦を氏独特の歴史観で見つめているのはなかなかのものです。
 話の中毒性はかなり強いので6冊とも次々と読むこととなりました。
 


No.493 6点 スペイン岬の秘密
エラリイ・クイーン
(2016/05/03 09:24登録)
 このお話はフーダニットとしては古典的なため、私でも犯人は分かりました。エラリーの挑戦で答えの前に分かったのは実は初めてなのです。
 ただし被害者が裸でマントのみ着ていたという理由はさっぱりわかりませんでした。
 種明かしを読んで、まあそうかとは思ったのですがーーー。
 下着まで脱がせて真っ裸にする必要はなかったのでは?
 まあこのほうが派手なのでこんな設定としたのでしょう。
 


No.492 6点 新車の中の女
セバスチアン・ジャプリゾ
(2016/04/24 20:43登録)
 最初は実に読みにくい。翻訳文のせいもありますが、文章が実にあいまいで、その中に何か仕掛けがあるようないような。読み進むにつれて読み難さはなくなりましたが、実に変な感じの展開なのです。
 フランス物はアングロサクソンの文学と違って特有の雰囲気があると思っていますが、主人公が良くも悪くもいかにもラテン的なのです。
 すらりとした金髪の美人で、社長からサンダーバードを預かるとそれを勝手に乗り回す(日本人ではあまりないシチュエーション)。挙句の果ては遠い南のマルセイユまでいってしまう(ありえないねえ)。初めてあった男と3時間ぐらいで肉体関係を結んでしまう(いいなあ)。これが普通のフランス娘さんなのでしょうか(ちょっとフランスに生まれたかったような)。
 ところが初めていった南フランスなのですが、なぜか現地の人は昨日会ったばかりだと、サンダーバードも明らかに修理した車で間違いないといわれたりーー。
 わけがわからない展開となるが、こんな話は大体が文章にミスリードするような内容が隠されていると思うのですが、なんせ翻訳文なのでそのあたりがしっくりしない。
 翻訳がそれほど悪いとは思いませんが、フランス語で読んだらきっともっと面白いのでしょう。
 最終的にはなるほどということとはなるのですが、読むのがちょっとつらかったところを差し引いて、私としてはこの程度の評価です。


No.491 8点 ナイルに死す
アガサ・クリスティー
(2016/04/15 22:36登録)
 とても面白かった。本作品は大変有名で映画化などもされているのですが、本を読む前に絶対に見ないようにしていたものです。以前「Yの悲劇」や「オリエント急行殺人事件」を映像で見て20年以上たってから本を読んだのですが、忘れっぽい私でも犯人やそのシチュエーションを明らかに覚えていたため(それだけ映画が良かったとも言えますが)、小説を読む興味が半減したことがあったためです。
 エジプトは今まで訪れた国の中でも指折りに好きな国で、そこでこのような豪華なお話が組み立てられているというだけでも、たまらない魅力です。
 お話も実に綿密に作られていて、殺人事件がなかなか起きないのに、全く飽きさせることなく読ませてしまうのはすごいですね。

以下多少ネタバレです。
 ただ今まで読んだクリスティ-の作品で犯人がわかったことがない私ですが、この作品に限っては犯人はこれだとかなり初めからわかりました。ただしトリックが全然わからない。あらゆる本能?がこの人物と示しているのですが、犯行は絶対無理だからなのです。最後まで読んでみれば簡単で納得がいくトリックでした。
なるほどね。参りました。さすがクリスティー。


No.490 6点 軍神の血脈
高田崇史
(2016/04/10 21:18登録)
 高田氏の作品は久しぶりです。QEDシリーズは大好きで発表されるとすぐに読んでいたのですが、カンナシリーズはちょっと薄味な気がして、途中からやめてしまったのです。
 今回楠木正成に関するお話が出たと知り、再び読んでみることとしました。
 なるほど氏の歴史観はなかなかのものです。勿論これは学術書ではなく小説なのでこの内容が真実であると主張するものではないと思いますが、こんなことがあったとすれば日本の歴史はある意味で大きく塗り替えられることとなるでしょう。
 私にとっては引っかかるところも多々ありますが、ここまで考え抜いて書かれているのですから立派なものと感心しました。
 推理小説としてはまあぼちぼちですが、こういったかたちで推理小説を書き続けている作者は本当にすごいですね。


No.489 8点 白昼の悪魔
アガサ・クリスティー
(2016/04/10 21:06登録)
 いつものことですが、クリスティーには見事に騙されてしまいます。この作品は氏の作品の中では有名ではない方?にも思いますが、なかなかの名作です。
 びっくりするようなトリックではなく、でもやっぱり最後には驚かされました。
 未読な方はぜひ。おすすめですよ。


No.488 7点 幻坂
有栖川有栖
(2016/03/27 13:14登録)
 有栖川氏の作品なので当然本格物と思ってネット購入したのですが、この作品集は本格ミステリーではありませんでした。だからといってよくなかったわけではなく、むしろ作者の大阪に対する愛情やそこはかとない美しさがあり、満足でした。
 ちょうど大阪へ出張しているときでしたので、時間を作って坂と天王寺へ行ってきました。最近流行となりつつある真田幸村の戦死したところにたつ神社もありました。
 なるほど。大阪にもこんなしっとりしたところがあるんだ。


No.487 6点 私の嫌いな探偵
東川篤哉
(2016/03/18 07:57登録)
 烏賊川シリーズは結構気に入っているのですが、これはまあ普通ぐらい。
作者も最近は売れっ子となり著作も大量に必要となったいるので多少ゆるくなっているのでしょうか。
 それでも本格としての体裁はきちんと保っている。まあユーモアミステリーでなければ怒るようなトリックもありますが。


No.486 3点 悲しみのイレーヌ
ピエール・ルメートル
(2016/03/04 17:48登録)
 ああこの小説は私には合わない。その女アレックスよりさらに残酷なシーンの連続。異常な趣味の犯人と大嫌いな結末。
 


No.485 7点 菩提樹荘の殺人
有栖川有栖
(2016/02/21 16:19登録)
 4つの中編小説が入っていますが、「雛人形を笑え」が一番好きかな。トリックはちょっと強引なところもありますが、氏独特のやさしさと余韻があります。
 有栖川氏のこういった長さの作品だとどうしてもトリック中心となってしまい、その出来不出来によって作品の価値が変わってしまう。
 今まで読んだ中でもがっかりといったものもないわけではありませんが、ここに納められた作品はどれも暖かい余韻が漂い、私の好きな感じに出来上がっていました。


No.484 7点 中途の家
エラリイ・クイーン
(2016/02/16 21:24登録)
 こんな作品の犯人を理論的に見破ったなんてすごい方もおられますねえ。私は読者への挑戦のところではたと考えてみたのですが、全然犯人は分からず(まあいつものことですが)、回答となるエラリーの話を読み進み、犯人が死んでしまったところでもまだよくわからずという情けない読者でした。
 作者にとってはうまく騙され、さらに次も読んでくれるのですから、良い読者ということとなるのでしょう、と思っていることとします。
 終わりは余韻がありなかなか素敵なのですが、今回のエラリーはことに理屈っぽく感じが悪い。もともと好感が持てるというほどのキャラクターではないのですが、本作品では今まで読んだ作品と比べてもだいぶん悪い。さらに初めのほうに出てくる警察署長も相当嫌なやつで、読み始めのあたりでは妙に感じの悪い同士が意味なくぶつかり合っているようで、ちょっといただけない。
 それにしてもクイーンはよくここまで精緻な小説をたくさん書けたものだと感心します。

以下ネタバレ

 推理小説として読めば犯人の追及も理論的で素晴らしいのですが、この犯人まったく魅力がないように書かれている人にずっと惚れていたなんて、あとで考えると変だなあ。


No.483 7点 ポケットにライ麦を
アガサ・クリスティー
(2016/02/11 09:03登録)
 物語が始まるとほどなくして殺人事件が起き、それに対して登場人物が過不足なく語られてと、とてもテンポがよい。途中からちょっと緩むが、それでもお話の興味を割くことはなく、表題の不思議な謎について次第に明らかになってくる。これは、ああマザーグースなんだ。
 ところがさすがクリスティーで、伏線なのかミスリードなのか混乱させられながら終盤を迎える。ミスマープルの推理は鮮やかですが、その発想が決めつけから始まるのはちょっとどうかなあ。まあ小説の中でしかもマープルなのですから、当然的を得ているのですがね。
 推理小説として過不足なく書かれた秀作と思います。


No.482 9点 災厄の町
エラリイ・クイーン
(2016/01/30 19:50登録)
 今まで読んだエラリークイーンの作品の中で最高でした。作品の出来としてはYの悲劇などが良いと思うのですが、テレビで見た後で読んだため衝撃がちょっと少なかったのです。
 それにしても文学と推理小説の合体を目指した本作品は本当に素晴らしい。当然ながら殺人はおき(ただしお話がだいぶん進んでから事件が起きる)、強烈などんでん返しもあるのですが、クイーン独特のパズル型小説ではなく論理は精緻でありつつ文学的作品に仕上がっているのです。
 登場人物も共感するところが大きく、読後感も実によい。
 1点減点なのは翻訳小説なのでやむを得ないとは思うのですが、今まで読んだクイーンものはすべて登場するエラリークイーンのことをクイーンとかエラリーとかの表現であったと思うのですが、今回はクイーン氏という表現であったため、これは偽エラリーに違いないといらん推理をして読んでいたため、あれ?と思ったところです。


No.481 6点 陽気なギャングが地球を回す
伊坂幸太郎
(2016/01/24 19:27登録)
 初めのうちは変な人間が出てきて、あり得ないお話に付き合わされそうでちょっとどうかなとも思いましたが、途中から物語は思いがけない展開となりそれなりに楽しめました。
 作者は才能があるように思いますし、本来はもっと楽しめそうな感じなのですが、私の感覚にどこか受け入れにくいところがあるようでした。
 次作を読む気は今のところしません。


No.480 5点 おしどり探偵
アガサ・クリスティー
(2016/01/09 18:03登録)
 ずい分軽いお話でした。連作集で一つの話が短いためすららと読んでしまえるのですが、内容はあまり濃いとは言えませんでした。本格推理だと思ってまじめに読んではいけないよという内容のもあります。
 トミーもタペンスもやたらに冒険好きで、大ピンチになっても全然めげないため、漫画チックで現実感に乏しいですねえ。子供のころテレビで見た少年ジェットやまぼろし探偵みたい(古いなあ。分かった人はかなりの年配の方でしょうね)。
 いろんな探偵小説のパスティーシュになっているようなのですので、当時の推理小説ファンが読めばもっと面白かったとは思いますが、私には本家本元がわからない部分がかなりあったため、充分に楽しめなかったところもあるとは思います。
 


No.479 6点 九尾の猫
エラリイ・クイーン
(2015/12/31 11:08登録)
 これは長いね。大体クイーンの長編小説はかなり長いものが多いのですが、読んでいて長さを感じさせない。無駄に長い感じがしたのはこれが初めてかもしれません。
 それというのも犯人がお話の中盤ぐらいでわかってしまってあとはそれの詰めといった感じがするため、やたら長い描写に付き合わされてしまう(ようにみえる)ためなのでしょう。
 最後まで読むと実はその長さが大切であったことがわかるのですがね。
 この小説を読む方は絶対に途中でやめてはいけませんよ。
 


No.478 6点 春にして君を離れ
アガサ・クリスティー
(2015/12/18 21:19登録)
 この作品は推理小説ではない。クリスティーも発表当時メアリ・ウェストマコットの名義で発表し、長くクリスティーの作品であることを秘密にしたとのこと。
 私はそう言ったことを知らず、推理小説であろうと読んでいて、あれ?といった感じでした。
 主人公やご主人のキャラクターは今日の日本の夫婦でも極めてありがちなことなので、しばしばわが身に置き換えて読むこととなりました。
 ご主人のロドニーの気持ちは自分もそういった環境に置かれておるところもあるのでとてもよくわかる。解説の栗本薫さんのご主人はいやなやつと感じたらしいが、私は自分不本意ではあるが、それを選ばざるを得なかった環境の中で、精一杯働いた彼は立派だと思います。成功しても本意ではないが、でも文句は自分の中に納めて力いっぱい働いて世間的には成功したのですから。
 一方主人公のジョーンはちょっと嫌いだなあ。優等生であることが人生の目標でありそれ以外は決して認めようとしない(全然見えないというべきか)。こんな人が自分を見直すことなど本当にあるのかなあ。


No.477 7点 桐島教授の研究報告書
喜多喜久
(2015/12/18 20:58登録)
小説は当然ながら文系の最たるものの一つと思いますが、推理小説部門では作者が理系、テーマも理系といった作品もさほど珍しくはない。本作品はテロメアのお話のような副題がついているので、そういったことが主として取り上げられていると思いきや、テロメアの話はほとんどない。
 いままで作者の作品は短編連作ばかり読んだのですが、これはれっきとした長編推理小説です。
 桐島教授に関しては荒唐無稽と思われる設定ですが、理系の作者が書いているだけあって理論的にありそうな気もしてくるところが作者の力なのでしょう。
 シリーズものとなりそうなので次作を期待します。


No.476 6点 終りなき夜に生れつく
アガサ・クリスティー
(2015/12/11 20:41登録)
 この作品は読者によってかなり評価がわかれるようです。クリスティーの最高傑作という方もおられるようですが、私はそれほどでもなかった。
 もちろんクリスティーなのですから悪いということはないのですが。恋愛小説風の書き出しで、しかもそれが当分続く。ところどころにちょっと引っかかるところがあるので、ただの恋愛小説ではなさそうと思っていたらやっぱり最後はやられました。
 どんでん返しというよりはだまされた感じが強く、自分としてはあまり面白くはなかったのです。

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